●「ハクソー・リッジ Hacksaw Ridge」
2016 オーストラリア・アメリカ  Cross Creek Pictures and more.139min.
監督:メル・ギブソン
出演:アンドリュー・ガーフィールド、サム・ワーシントン、ヴィンス・ヴォーン
   ルーク・ブレイシー、テリーサ・パーマー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

沖縄戦をまともに扱ったハリウッド映画は意外に少ないのではないか。
一方的な闘い過ぎて、アメリカ軍の物量に任せた攻撃が酷いと見られて
しまうからだろうか。テーマになりづらいのだろう。今でも時々再放送が
WOWOWで放映されているHBO制作テレビドラマ、スピルバーグ総指揮の
「ザ・パシフィック」が戦闘のテイストとしては本作に近いかもしれない。

というわけで大手配給会社の腰が引ける中、買い付けたKino Filmに感謝
しなくてはならない。史実であるし、映画の最後には本人だけではなく
戦闘に参加した米兵の証言も付くので、さらに日本側での検証も行われるから
デタラメも描けない。メル・ギブソンとしてはそのあたりは悩んだのではないか。

しかし、本作の主題は、沖縄戦の戦闘が残虐だったとか、そうでなかったとか
言う問題でなく、あくまでも一人の「勇気ある武器を持たない兵士」の話なのだ。
確かに私達日本人側から見れば、圧倒的不利な火力の状態の中で、サブマシンガンで
なぎ倒される突撃日本兵を見ているのは愉快ではない。が、現実はそれに近いもの
であったのだろう。ギブソンは、敵兵たる日本兵のしゃべりを入れていない。
私が聞き取れたのはひとこと「天皇陛下」という単語のみ。日の丸も出てこない。
バンザイも聞こえない。ジャップという単語は米兵の間では交わされるが、ことさら
日本軍を卑しめるようなセリフはない。戦闘はむしろ、ギリギリの人間同士の
殺し合いを描いていて、そこに理性も正義もない状況が描かれていた。それは
ギブソン監督が主題をそらさないように仕組んだことだろうし、日本軍憎し、の
映画ではないからそうすることが必要だったのだろう。

さて、前置きが長くなったが、本作、ラストシーンあたりでは、主人公のあまりの
純粋な博愛精神に涙が出てきた。ここまでする人間がいるのか、と。

ただし、よく考えてみると、アメリカという国は「良心的兵役拒否」が法的に
守られていて、「選抜徴兵制」という日本とは異なった兵役制度が敷かれ、
さらに国の基本としてキリスト教という強いバックボーンがあったことを理解
しておく必要があると思う。1945年(終戦の年)に「志願する」ということが
日本人として不思議に感じるだろう。

もし、本作の主人公のような人物が日本にいた場合、同じように立ち回れるのか
といえば、絶対にありえない。まず特高に捕まり拷問の上、投獄されるのが関の山。
たとえ軍隊に入ったとしても、「銃をもちません」なんてことを言おうものなら
「なにい!きさまあ!軍隊をなめとるのかああ!」とボコボコにされるのは必定。

衛生兵として「救うこと」が僕の戦争、という理屈が認められるのはアメリカだから。
それを割り引いても、志願入隊し、信念を曲げず、ついにはハクソーリッジの闘いで
1日に敵味方合わせて75人ものけが人を救いだす、ということを成し遂げた彼の
強さには参った。ああいう人物がいた、ということを知っただけでも観た甲斐が
あった。主人公が仲間に受け入れられていく過程は、ちょっと周りがいい人たちに
描かれ過ぎ(恋人のドロシーを含め)のウラミはあるが、当時のリアルな仲間たちも、
彼ほどの勇気は持てないと彼を受け入れたからにすぎない。主人公も「ボクは守る。
君らは殺せ」との立場で決して、仲間たちが敵兵を殺すことを邪魔しようとは思わ
ない。その立ち位置が受け入れやすかったという面もあろう。

一部では「やりすぎ」の声もある戦闘シーン。だが、目をそむけたくなるほどの
状況が戦争の本質ということを思うと、主人公のやり遂げた行動を一層際立たせる
ためにも、リアルであって良かったと思う。戦場とは、隣に「死」が常にいると
いうことをこれでもか、という具合に見せる。

主人公デズモンド・ドスを演じたアンドリュー・ガーフィールドは、「沈黙-
サイレンス-」に次ぐキリスト教的立場の役柄だったが、オスカー主演男優賞に
ノミネートされたように、主題を良く表現出来た演技であった。その他は
ことさらメジャー級の配役をせず、物語を浮き上がらせることが出来ていたので
はないか。
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<ストーリー>

衛生兵として一晩で75名の日米の負傷兵を救い、武器を持たない兵士として
アメリカ史上初の名誉勲章を受けたデズモンド・ドス。アンドリュー・
ガーフィールドがドスを演じ、メル・ギブソンがその半生を映画化した人間
ドラマ。沖縄の激戦地“ハクソー・リッジ”でドスが取った勇気ある行動が
臨場感あふれる戦闘シーンとともに描かれる。

ヴァージニア州の田舎町で育ったデズモンド・ドス(アンドリュー・
ガーフィールド)の父トム(ヒューゴ・ウィーヴィング)は第1次世界大戦
出征時に心に傷を負い、酒におぼれて母バーサ(レイチェル・グリフィス)
との喧嘩が絶えなかった。
そんな両親を見て育ち「汝、殺すことなかれ」との教えを大切にしてきた
デズモンドは、第2次大戦が激化する中、衛生兵であれば自分も国に尽くせると、
父の反対や恋人ドロシー(テリーサ・パーマー)の涙を押し切り陸軍に志願
する。

グローヴァー大尉(サム・ワーシントン)の部隊に配属され、上官のハウエル
軍曹(ヴィンス・ヴォーン)から厳しい訓練を受けるデズモンド。生涯武器には
触らないと固く心に誓っている彼は、上官や仲間の兵士たちから責められても
頑なに銃をとらなかった。
ついに命令拒否として軍法会議にかけられても貫き通した彼の主張は、思わぬ
助け舟により認められる。1945年5月、グローヴァー大尉に率いられ、
第77師団のデズモンドとスミティ(ルーク・ブレイシー)ら兵士たちは沖縄の
ハクソー・リッジに到着。そこは150mの断崖がそびえ立つ激戦地だった。
倒れていく兵士たちに応急処置を施し、肩に担いで降り注ぐ銃弾の中をひるむ
ことなく走り抜けるデズモンドの姿に、感嘆の目が向けられるように。
しかし丸腰の彼に、さらなる過酷な戦いが待ち受けていた。(Movie Walker)

<IMDB=★8.2>
<Rottten Tomatoes=Tomatometer:87% Audience Score:92% >


# by jazzyoba0083 | 2017-06-25 12:15 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

●「帰らざる河 River of No Return」
1954 アメリカ 20th Century Fox Film Co.90min.
監督:オットー・プレミンジャー
出演:ロバート・ミッチャム、マリリン・モンロー、ロリー・カルホーン、トミー・レティグ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

観ているはずだが、NHKBSで放映してくれたので、録画して鑑賞してみた。
マリリン・モンローは大学生の頃から好きで、作品も「モンキー・ビジネス」(未)
以降大体観ているはず。もちろんリアルタイムではないが。
でも、今回観てみると殆ど忘れていた。
西部を舞台にしているので時代的に古さは感じないが、河を下るシーンはCGなど
無い頃なので、どうしても合成画面の辛さは出てしまう。物語が短い上映時間では
あるがそれなりにきちんとしているので、大作ではないが印象深い「映画史に残る1本」
と言ってもいいだろう。まとめ上げた手堅さはオットー・プレミンジャーの手柄という
べきか。

なかんづく、マリリン・モンローの美しさと、エヴァーグリーンとなった同名の
主題歌の存在無くしては語れない映画である。マリリンは1953年から56年くらいが
一番輝いていたのではないか。

過去に傷を持つ男、その息子。母はいない。そして酒場の女マリリンと彼女が
惚れた詐欺師。ラストで息子が取った行動はかつて父親のトラウマとなった行動と
同じであり、時として男は大事なものを守るために背後から銃を撃つこともある、
というオチであった。マリリンの詐欺師からミッチャムへのいい意味での心変わりも
含め、どうということのないストリート言えばそれまでだが、愛すべき作品となって
いる。これからも永く愛される映画であろう。
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<ストーリー:結末まで書かれいています>
1875年、ゴールド・ラッシュのアメリカ北西部へマット・コールダー
(ロバート・ミッチャム)という男が、今年16歳になる息子マークの行方を
尋ねてやって来た。マークは酒場の芸人ケイ(マリリン・モンロー)の世話に
なっていたが、マットは彼を引き取って新しく買った農場に落ち着いた。

ある日、マットは農場のはなれを流れている河で、筏に乗って漂流している
ケイと夫ハリー(ロリー・カルハウン)を助けた。賭博師のハリーは
ポーカーでとった砂金地の登記をするためケイと一緒にカウンシル・シティへ
行く途中だった。マットがこの河は危険だというと、ハリーは銃をつきつけて
マットから馬と食糧を奪い、隙をみて銃を奪おうとするマットを殴り倒し、
ハリーの態度にあきれるケイを残して1人で旅立った。

マットがケイに介抱されて気をとり戻したとき、農場はインディアンに襲撃
されそうになっていた。彼は直ちにケイとマークを連れて筏に乗り激流を下った。
マットはハリーに復讐しようと思っていたが、ケイは極力それを止めようとし、
口論のはずみにかつてマットがある男を背後から射殺したのを暴露した。
実は殺されそうになった親友を助けるためにしたことだったのだが、その
事情を知らぬ息子マークはこれを聞いて父を卑怯な人だと思いこんでしまった。

2日目の夜、水浴びに行ったケイをマットが迎えに行っている間にマークが
山猫に襲われそうになったが、通りがかりの2人の男に救われた。2人は
イカサマ賭博でハリーから砂金地をまき上げられた連中で、ケイに怪しい
振る舞いをしかけたがマットに追い払われた。

マットら3人はインディアンの執拗な追跡を逃れ、ようやくカウンシル・シティに
着いた。ケイからマットに詫びるよう忠告されたハリーは、承知した風を装い、
隙を見てマットめがけて滅茶撃ちをした。それを見たマークは思わず傍らの
銃をとってハリーを背後から撃ち、父を救った。そしてかつての父の事件を
思い出し、父への尊敬を新たにした。そのまま町を去ろうとしたケイはマットに
引き止められ、3人は新しい生活に入ることになった。(Movie Walker)

<IMDB=★6.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:62% Audience Score:54% >



# by jazzyoba0083 | 2017-06-23 22:50 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「グッド・ネイバー The Good Neighbor」
2016 アメリカ Anonymous Content,Ball & Chain Productions and more. 96min.
監督:カスラ・ファラハニ
出演:ジェームズ・カーン、ローガン・ミラー、キーア・ギリキリスト、ローラ・イネス他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」以来、未だに低予算で作ることが出来るため
映画館では掛かりづらいが、WOWOWなどでは良くお目にかかるフェイクドキュメント。
(本作も日本劇場未公開)

本作は全部がそうではなく、法廷のシーンは普通の映画として作られている。が、
やはりどこか、「実在した話」ふうな構成となっている。短い映画なので一気に
見ることは出来るが、やはり底の浅さはいかんともしがたい。一応スジは通っているし
伏線も埋めてあり、回収もされるのであるが、骨子となるテーマが、なんというか
救いがないというか、意外な結末に、おそらく面白いという人もいるでしょう。
好き好きなので別にいいんですが、個人的にはこういう救いのない映画はいわゆる
「読後感」ならぬ「鑑賞後感」が悪い。

気に食わない隣のオヤジを、監視カメラや電化製品の遠隔操作を仕掛けることにより
救いを求めて神を信じるようになるか、という実験を、未成年のガキ二人が
挑戦する。たしかに偏屈親父だが、彼には最愛の妻を無くした悲しみを引きずって
いるんだということをガキらは理解していない。

死の床で、大声を出さずに自分を呼ぶためにと、妻に買ったハンドベル。ガキの
一人がそれを夜中に侵入し、いわれを知らず、地下においてあったものを居間に
置いてくる。妻が呼んでいると思い込んだ老人は、妻のところへと行くために銃で
頭を撃って自殺した。流石に動揺した二人だった。異常警報で駆けつけた警官に
その場で逮捕された。

他愛のないガキのいたずらなんだろうが、裁判になったものの終身刑にも出来る罪
だが、未成年でもあるし、家宅侵入などの軽い刑で、2年間の保護観察と
500日の社会奉仕で決着がついてしまう。裁判所の外には多くのマスコミや
抗議に来た人たちで埋め尽くされていた。ラストシーンはガキの一人がそんな
状況を見て片頬を上げてニヤけるところで終わる。

一つだけ褒めておく点があるとすれば、ガキ二人が撮った映像で構成される
本編が突然裁判のシーンに変わるのだが、「なにかやっちゃったんだな」と
思わせ、「私が入った時には、すでに被害者は血だらけで倒れていた」、と
いうような趣旨を警官が証言しているのだが、その被害者が誰かは明かされ
ない。そこはいい隠し方だったと思う。
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<ストーリー>

この老人、凶暴につき、侮ると後が怖い。ドッキリ用のカメラを仕掛け
られた“良き隣人たる”ひとり暮らしの老人をJ・カーンが不気味に
怪演した低予算B級サスペンス。

近所の独居老人宅にドッキリ用のカメラをひそかに仕込み、あれこれ
いたずらをして老人の反応を楽しもうとした高校生2人組。ところが、
ほんの軽いお遊びのつもりで始めた彼らの“実験”は、次第に意外な方向へ
と向かい、いつしか彼ら自身をも恐怖のどん底へたたきこむことに…。

「ゴッドファーザー」や「ミザリー」で知られるベテランの名優カーンが、
“良き隣人”たる老人に扮して不気味な怪演を披露。

監督は、「マイティ・ソー」などで美術監督を務め、本作で念願の長編
監督デビューを飾ったK・ファラハニ(WOWOW)

<IMDb=★6.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:17% Audience Score:46%>



# by jazzyoba0083 | 2017-06-19 22:45 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「教授のおかしな妄想殺人 Irrational Man」
2015 アメリカ Gravier Productions 98min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ホアキン・フェニックス、エマ・ストーン、ジェイミー・ブラックリー、パーカー・ポージー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

原題は、「非合理的な、筋の通らない男」ほどの意味だが、邦題から類推されるのは、いささか
コメディに振った感じを受けるであろう。確かに、いつものウディのように、シリアスな中にも
ジョーク(しかも相当ブラックな)を交えて、サスペンスコメディとでもいうようなジャンルを
形成するのだが、本作も大まかに言えばそいういう作りだ。だた、今回はやや薄味。
しかし、これも彼の作品に共通することで、作品に現れる辛辣なジョーク・夢想などから、人生の
実相を描き出しているのは彼の作品の味である。

ウディファンの私としては、本作はちょっと、発端がドストエフスキー「罪と罰」の思想に
似すぎたかな、という印象を受けた。確かに哲学教授エイブ(ホアキン・フェニックス)は
ドストエフスキーが好きだし、彼に入れあげてしまう女学生ジル(エマ・ストーン)も、
ドストエフスキーは読破したわ、と言っているので、物語の底には、ラスコーリニコフが明確に
存在しているのかもしれない。

ウディ自身は出演はしていない。人種やユダヤ教(人)に関する執拗な?辛辣ギャグもない。
ストーリーは非常に分かりやすく、O・ヘンリの短編を読んでいるようなわかりやすさと寓意で
ある。全編で使われるラムゼイ・ルイスの「ジ・イン・クラウド」が非常に作品にマッチしていた。
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人生に行き詰まってしまった哲学教授エイブが、ダイナーで教え子ジルと食事中、たまたま後ろの
席に座っていた一家の会話を聞いたことから話しが大きく動き出す。その話というのが
離婚に際しての子どもの親権についてなのだが、どうやら旦那方の弁護士と判事は癒着していて
母親に不利な判決を出すらしい。エイブは、この悪徳判事を亡き者にすることが人生の
生きがいになってしまうのだ。それまでは着任してきた大学で、哲学を教えはするが覇気はなく、
人生の意味を見失ってしまし、離婚したこともあり、加えてインポになっていた。
それが、悪徳判事を亡き者にする、ということの人生の生きがいを感じた途端、精力絶倫、
気力充実になってしまうのだった。
エイブは最近他の大学から異動しきた哲学科の教授。
だが、人生の意味を見失っていて、情緒不安定、自殺願望さえあった。そいいう状況だった。

教え子ジルはロイという結婚も視野にいれた恋人がいたが、彼を愛しつつも、高踏で知識が高く
面白い会話をし、奥が深いエイブに惹かれていく。しかしエイブは女学生との一線を絶対に
超えない。いらつくジル。疑うロイ。

エイブは悪徳判事の行動パターンを調べ上げ、毎週土曜に公園をジョギングし、途中で必ず
キオスクでオレンジジュースと新聞を買い、ベンチで一休みするという機会を伺うことに
決定した。そして、予定通りベンチに座って新聞を読んでいる判事の横に座り、予め買って
おいた同じ容器の青酸カリ入りのジュースと入れ替えに成功する。

判事は死亡し、エイブは狂喜、一緒にダイナーで話を聞いていたジルも、何も知らずに
無邪気に喜んで、お祝いの会食を開いたりする。

しかし、天網恢恢疎にして漏らさず。次第にエイブの行動がバレ始める。化学室でクスリを
いじっているところをジルの友人に目撃されたり、大学の友人教師でエイブに入れあげている
化学担当が、自分の家から化学室の鍵が無くなった、と騒ぎ、次第に、ジルはエイブが
判事殺しの犯人ではないか、と疑うようになっていった。その頃にはエイブへの愛を押さえきれず
ロイとは別れてしまっていた。

ついにジルはエイブが判事毒殺の犯人である確たる状況証拠を入手し、エイブに詰め寄る。
しかも、警察は間違った男を逮捕してしまう。ここに至って、ジルは無実の人を終身刑には
できないとエイブに自首を促す。あんなに惹かれていたのに、殺人を犯すのはジルにとっては
ありえないことだった。普通はそうだわね。
自白するエイブ。その理論は「罪と罰」のラスコーリニコフと同じだった。
自首しないと私が警察に告白するわよ、と言われ、自首を約束するエイブだったが、それは
ウソで、友人の化学の先生とスペインに高飛びを計画していた。
自首の日、かつてバイトで扱い方を知っていたエレベーターを細工。ピアノのレッスンに来た
ジルをエレベーターホールで呼び止め、開いた箱のないエレベーター扉からジルを突き落とし
殺そうとした。しかし、もみ合ううちに、エイブは小さい懐中電灯を踏みつけ、転倒、勢い
余って自分がしかけた罠に自らはハマりエレベーターの中へと落ちていった。(死んだのだろう)
因果応報。その懐中電灯というのが、二人で一緒に遊び行った夜店のルーレットで当てたヤツ
で、伏線の回収が心地よかったりする。

ジルはロイと寄りを戻した。「エイブは私には理解できない人だったのよね。」"Irrational Man"
だったということだ。しかし、エイブの心情、分かりますねえ。最期は自業自得という結末だけど、
あの結末だけで、因果応報とは言い切れない感情が残るのがウディ作品の面白みでしょう。
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<ストーリー>
「ミッドナイト・イン・パリ」「マジック・イン・ムーンライト」のウディ・アレン監督が
ホアキン・フェニックスとエマ・ストーンを主演に迎えて贈る不条理シニカル・コメディ。
世の中のための殺人に生きる意味を見出し鬱から脱した哲学教授と、彼に恋する2人の女性が
織りなす皮肉な運命をコミカルに綴る。共演はパーカー・ポージー、ジェイミー・ブラックリー。

 アメリカ東部ロードアイランド州ニューポート。この小さな海辺の町の大学に赴任して
きた哲学教授のエイブは、“人生は無意味である”との哲学的答えに至ってしまい、すべての
ことに無気力となってしまっていた。ところが、そんな悩める中年男に、教え子の優等生
ジルは興味津々。さらに夫婦生活に問題を抱える同僚リタからも猛アプローチを受けるが、
彼の心は沈んだまま。

そんなある日、ジルと立ち寄ったダイナーで悪徳判事の噂を耳にするエイブ。その時、彼の
脳裏にある完全犯罪への挑戦という企てがひらめく。以来、生きる意味が見つかったことで、
見違えるように気力を取り戻したエイブ。その急変ぶりに戸惑いつつも、ますます彼の虜に
なっていくジルだったが…。(allcinema)

<IMDb=★6.6>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:44% Audience Score:46% >




# by jazzyoba0083 | 2017-06-17 22:50 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「スーサイド・スクワッド Suicide Squad」
2015 アメリカ Atlas Entertainment,DC Comics,Warner Bros.Pictures.123min.
監督・脚本:デヴィッド・エアー
出演:ウィル・スミス、ジャレッド・レトー、マーゴット・ロビー、ジョエル・キナマン
   ヴィオラ・デイヴィス、ジェイ・コートニー、福原かれん 他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

本作、シネコンの予告編でイヤと言うほど見ていたけれど、シネコンに行く気は
なかったもの。この度WOWOWで放映していたので、録画してみてみた。
やさぐれた半端者の集まりが招集を受けて、悪と敢然と戦う、というタランティーノ風の
作品かとおもっていたら、なんとDCコミック原作なんだね。個人的にはちょっとフィット
しなかったなあ。火を吹くやつとか、日本刀の達人とか、結構魅力あるキャラはいたのだ
けれど。

バットマン亡き後のゴッサムシティでやりたい放題の悪党らに、悪党だけで組織した
「決死部隊」が立ち向かう。これがDCコミックに出てくる悪役なのだね。私、マーヴェル系は
まあ分かるのだが、DCは、バットマン、スーパーマンくらいしか知らない。故に集められた
悪党たち、だれがどういう由来を持っているのか、不明なまま鑑賞に突入。ジョーカーって
あのジョーカーでいいのか、とかね。

故に、後半のチーム一丸となっての戦闘に至るまでは退屈。DCコミックものってだいたい
全編暗いんだよなあ。ゴッサムシティがそうだからかもしれないが、見づらい。
お互い一匹狼の悪党たち、次第に力を合わせ、見事地球を救ったあかつきには、国から
ご褒美をそれぞれの希望によって貰えるというカタルシスまでの部分は見ることは出来た。
そして、ベン・アフレック登場で続編の匂いと。 おそらく続編はそうとう魅力的でないと
見に行かないと思う。この前の「バットマンvsスーパーマン」も出来のいい映画とはいえな
かった。
いずれにせよ、私のタイプの映画ではなかった。
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<ストーリー>

DCコミックスのスーパーヒーローたちと対峙する悪役(=ヴィラン)たちが結集した異色
アクション。死刑や終身刑をくらった彼らが、強大な悪に立ち向かう姿を描く。バットマンの
敵でチーム最凶の男、ジョーカーをジャレッド・レト、娘に首ったけな元マフィアの殺し屋
デッドショットをウィル・スミスが演じるなど、実力派が多数出演。

迫りくる世界崩壊の危機を前に、政府はある決断を下した。バットマンをはじめとする
ヒーローたちによって投獄され、死刑や終身刑となったヴィラン(悪役)たちを、減刑と
引き換えに自殺に等しい任務を強制する集団スーサイド・スクワッド(自殺部隊)へ入隊
させるのだ。
こうして、情に厚い凄腕暗殺者デッドショット(ウィル・スミス)、狂気の道化師ハーレイ・
クイン(マーゴット・ロビー)、軍人リック・フラッグ(ジョエル・キナマン)、地獄の
炎を操る小心者エル・ディアブロ(ジェイ・ヘルナンデス)、必殺縄師スリップノット
(アダム・ビーチ)、ブーメラン使いキャプテン・ブーメラン(ジェイ・コートニー)、
唯我独尊を貫く女侍カタナ(福原かれん)、魔女エンチャントレス(カーラ・デルヴィーニュ)、
ウロコに覆われた怪力男キラー・クロック(アドウェール・アキノエ=アグバエ)という
強烈な個性が揃った寄せ集めの最狂チームが誕生した。思いがけず“正義のヒーロー”を任された
彼らは、世界を救うことができるのか!?(Movie Walker)

<IMDb=★6.2>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:25% Audience Score:62%>




# by jazzyoba0083 | 2017-06-16 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

アウトバーン Collide

●「アウトバーン Collide」
2016 イギリス・ドイツ DMG Entertainment 99min.
監督:エラン・クリーヴィー
出演:ニコラス・フォルト、フェリシティー・ジョーンズ、マーワン・ケンザリ、ベン・キングズレー
   アンソニー・ホプキンス他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

既視感ありありのストーリー仕立ではあるが、アンソニー・ホプキンスvsベン・キングズレーが
観られたり、「マッド・マックス 怒りのデスロード」で活躍したニコラス・ホルト君や
「ローグワン」のフェリシティー・ジョーンズも出ているということで鑑賞に及んだ。

輸入車ファンかつ貧乏性の私としては、この手のクルマがぶっ壊れる映画は、勿体なさが
先にたつのがナニである。新車のジャガーXE、F-type、ポルシェ・カイエン、メルセデス、
アストンマーチン、シトロエンなど、新車がアウトバーンをガンガンにぶっ飛ばして
ガンガンに壊れる。もったいないなあ・・・おれに呉れろ、と思ってしまう。

この映画の売り物は、高速でのカーチェイスと破壊シーンと、ホプキンスとキングスレーの
名優の対決だろう。後のストーリーはオチも含めてよくあるパターン。謎の豪華キャスティングと
クルマのぶっ壊れっぷりもなかなかいいので、観てしまったのだ。
主役のホルト君はちょっと優男すぎる感じ。恋人のフェリシティは彼女じゃなくてもいいね。
ツッコミどころも楽しい。ホルト君のクルマに敵の弾が当たらなさすぎなのは毎度のこと
だけど、ケルンのCAFEで二大老名優が対決するシーン、警察がCAFEを取り囲むのだけど、
みんな裏口から逃げちゃうのだね。おいおい、裏口をちゃんと固めんかい!と。
ホルト君、逃亡中、ガソリンが無くなり立ち寄ったGSで、高額な500ユーロを使わせない
店主に「俺は悪い人間ではない」とか言っちゃって、ここまでどんだけ一般人に迷惑を
かけていると思ってるの?と。いくら彼女の腎臓移植のためにカネが必要だからといって、
ケルンのまちなかやアウトバーンであれだけやりたい放題やらかして、悪くないはずが
ないでしょう、ねえ。
棚ぼたの大金を見事せしめて、相棒にも山分けし、警察と取引して無罪放免となり
二人してアメリカに渡っていったんだけど、ご都合主義もここまで来るとむしろご立派。
責める気にもならない。
勢いとテンポで観せてしまう99分。カーチェイスが前半でもっとあればもっとアドレナリンが
出ただろうに。
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<ストーリー>

『マッドマックス 怒りのデス・ロード』で物語の鍵を握るキャラを演じたニコラス・ホルト
主演のカー・アクション。恋人を救うため、高速道路を高級車で激走する男の姿をスピード
感満点の映像でつづる。数々のアクション大作を手がけてきたジョエル・シルバーが製作を
担当し、『ビトレイヤー』のエラン・クリーヴィーが監督を務める。

ドイツのケルン。トラックには麻薬、高級車に500万ユーロ。巧妙に仕掛けられた危険な
取引に巻き込まれたケイシー(ニコラス・ホルト)。2つの巨大な悪の組織から追われる身と
なった彼は、その追跡を逃れ、恋人ジュリエット(フェリシティ・ジョーンズ)を救うため、
高級車を乗り換えて速度無制限の高速道路“アウトバーン”を疾走する。運命に抗う大きな
賭けの行方は……?(Movie Walker)

<IMDb=★5.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:20% Audience Score:38%>




# by jazzyoba0083 | 2017-06-12 23:20 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)

メッセージ Arrival

●「メッセージ Arrival」
2016 アメリカ Paramount Pictures,21 Laps Entertainment.116min.
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ 原作:テッド・チャン「あなたの人生の物語」
出演:エイミー・アダムズ、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー、マイケル・スタールバーグ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

「未知との遭遇」「コンタクト」など、意思を表示しない宇宙からの生命体と地球人との
やりとりを描いた映画はこれまでも何本か作られてきている。本作も、突然地球の12箇所に
現れ、空中に浮かぶ繭型の飛翔体と、そこから出てきた7本足のタコの大きなやつみたいな
異星人たちとの「コミュニケートの苦闘」を描くと当時に、彼ら異星人が持っている(操る?)
時制の不思議を、宇宙モノでは極めて地味に、哲学的、内省的に、形而上的ともいえる描き方で
綴っていく。
本作で多く使われ、しかも重要な表現となる「フラッシュバック(フォワード)」、しっかり
観ていないと時制が混乱するかもしれない。 私はラストでなんとなく腑に落ちた程度で
しっかり理解出来たか、というと「すっきりと判った」レベルではなく後から考えればそういう
ことなのだろうなあ、という状況であった。

冒頭にルイーズと娘、その娘が病を得て、やがて死別というシーンが示され、娘との
交流からインスパイアされ(霊的に導かれたようにも見える)異星人たちとの会話を
成立させていく。彼らとの接触から時制を解き放された主人公ルイーズは、共同研究者で
あるイアンとの未来を獲得していくのだった(んで良いんだっけ?)。
ルイーズの娘の名前はHannah。どちらから読んでもハンナだ。これは、映画全体の
メタファーとして認識してよいのではないだろうか。はずれのないヴィルヌーブ監督、
自作の「ブレードランナー2049」に期待が膨らむ。

異星人たちは攻撃をしてくるわけではなく、墨絵みたいな黒い煙で大気中に文字を書く。
この解読に呼ばれたのは、国際的言語学者のルイーズ(エイミー)だった。彼女は最愛の
娘を白血病のような病で失っていて、そのダメージを引きずっていたのだった。
相棒を組むのは物理学者のイアン(ジェレミー)。二人を中心とし、軍により結成された
異星人の言語解析チームは、「何のために地球に来たのか」と問うために、まったくゼロの
状態から、解析を始める。まるで言葉を覚えたての赤子に言葉を教えるように、また古代
文字を解析するように。

彼らの使う文字は「象形」「表意」「表音」ではなく、「表義」文字という種類らしい。
「未知との遭遇」のような音で表すのもまた面白いが、原題の私達の文字という概念では
推し量れない模様のようなものを、ルイーズとイアンは(相手が悪なのかどうなのかも
分からない中)果敢に解読に挑む。

意思が通じえない同志が、苦労して意思を通わせることが出来る状況は、穿ちすぎかも
しれないが、現在の地球人同士にも通じる重いテーゼではないか。「言語こそ武器」と
本作の異星人たちは教えているのだ。果たして、地球人はこのことを上手く使えて
いるのだろうか。
時間切れで、宇宙船への攻撃が始まる直前、異星人たちは地球を救いに来た、3000年後に
自分たちが助けてもらう状況が来るから、ということが分かり、(つまり意志の疎通が
出来た、ということ)一旦異星人たちは地球を離れていく。
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<ストーリー>
言語学者のルイーズ・バンクス(エイミー・アダムス)は湖畔の家に独りで住み、
今はいない娘ハンナとの何気ない日常を時おり思い出す。ある日、地球各地に大きな
宇宙船のような物体が出現する。
ルイーズは、宇宙船から発せられる音や波動から彼らの言語を解明し、何らかの手段で
こちらのメッセージを彼らに伝えるよう、国家から協力を要請される。
タッフのなかには、物理学の見地から取り組むよう招集されたイアン(ジェレミー・
レナー)もいた。

ウェバー大佐(フォレスト・ウィテカー)に急かされながら、スタッフは少しずつ
相手との距離を縮めていく。ルイーズは忙しくなるほど、ハンナの思い出が色濃く蘇る。
しびれを切らした中国は核攻撃をしようとしていた。ルイーズは自分を指して「人類」と
いうところからコミュニケートの端緒を掴む。

彼らにはタコの足に似たものがあったため、彼らをヘプタポッドと呼ぶようにした。
彼らはその先端から図形を吐き出す。刻々と変化する図形の規則性を見出すと、それらを
コンピュータに打ち込んで会話ができるようになる。ルイーズとイアンはそれらの2体を
アボットとコステロと名付ける。
政府や軍はヘプタポッドが地球を攻めようとしているのではと相変わらず疑っていたが、
そんなとき、ヘプタポッドの時間の概念は自分たちと大きく違っていることに気付く。
彼らはアインシュタインの相対性理論の進化形の如く、驚くべき真実をルイーズたちに
伝える。それは、3000年後の地球も現在と同じ座標軸にあるというものだった。

ルイーズは彼らの言語を研究し理解するにつれ、自分の人生における経年も今までの
時間軸の概念を超越したものになることを知る。ルイーズは彼らからの影響に混乱するが、
過去が未来にやってくることが分かっても、愛することをやめないと確信する。
ついに最終決断を下した中国の行動を止めるため、ルイーズはイアンを使って思い切った
賭けに出る。彼女の行動は、地球を、そして彼女自身を救うことができるのか?
(Movie Walker)

<IMDb=★8.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 93%  Audience Score:82%>




# by jazzyoba0083 | 2017-06-10 18:00 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「マンチェスター・バイ・ザ・シー Manchester by the Sea」
2016 アメリカ Amazon Studios 137min.
監督・脚本:ケネス・ロナーガン
出演:ケイシー・アフレック、ミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジス他
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            <2016年度アカデミー賞脚本賞・主演男優賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
タイトルのマンチェスター・バイ・ザ・シーというのはアメリカ・マサチューセッツ州に実際に
ある街の名前で、ボストンの北に位置し、人口5000人程度の小さい港町である。
この小さな港町を舞台にした、主人公リー・チャンドラー(ケイシー)とその周辺の人々の
ドラマである。大向うを唸らせるような事件が起こるのでもなし、殺人があるわけでもない。
小さな街のどうってことない一人の男の人生の一コマを切り出してドラマとしている。

なぜこの作品がオスカーの脚本賞を獲ったか、考えてみるとわかるのだが、全く何気ない
いわゆる「everyday people」に起きる小さな(個人にとっては大きな)出来事を体験しつつ
どう人生を送ったか、言い方は悪いかもしれないが、そこらにある「何の変哲もない」、ある
人生をドラマツルギーにまで高めた構成力、作劇力が評価されたのであろう。

ドラマツルギーと言えば、シェイクスピアの「お気に召すまま」に以下の台詞がある。

『全世界は劇場だ。すべての男女は演技者である。人々は出番と退場のときを持っている』

本作でも、リーという男の人生の一コマも切り出しで、観客に人生の有りようとは、こんな
ものもありますが、あなたはどう考えますか?と問うているように感じたのだった。

この作品でオスカーを獲ったケイシー、これまでも割りと覇気のないヘタレな役を演じる
ことが多かったと思うのだが、ここでも、精力に満ちた男ではない。善人なのだが、周りの
人に振り回され、自分というものを確立し得ない。しかし、そこにはかつて自分の過失から
起こした火事で二人の娘を死なせてしまったという大きなトラウマというかグリーフが
大きく影を落としていたのだった。そこへ持ってきての兄の急死。でもこの男、不思議と
悩みを柳に風とばかりに右から左へと受け流していく。強い意志をもっているわけはない
のだが。急死した兄の子高校生のパトリックの後見人をしぶしぶ引き受け、自分の人生を
なんとかしなくてはならないのに、いつも周囲のことに振り回されるというか、気遣って
しまう。(しかし最後まで見れば、彼なりに必死に考えていたことが理解できる)

こうした作品中のリーに対し、観客は知らず知らずに同化していくように思う。ああすれば
いいのに、こうすればいいのに、と思うだろう。これすなわち、主人公の人生を追体験して
いることにほかならない。そして、リーに対し、応援しているのではないか。私はそうだった。
二人の娘の死、兄の急逝、そしてその息子の後見人の役割と、その中で、なんとか自分の
暮らしを立て直さなくてはならないリーに対し、私たちは静かに応援をしたくなるのだ。
最後に、兄の息子に対し、自分なりに決断したこれからのことを説明するリーは、これまでの
リーとは違うな、と思わせたとき、私達はそこにカタルシスを感じることができるのであろう。

どこにでもいる人々のどこにでもある出来事が、観客を巻き込みつつどういう顛末になるかという
物語に仕立てた、そのドラマツルギーの見事さに尽きる。そしてケイシーの目線の動きを始めとした、
内面をしっかりと演技したその演技力を堪能するに尽きる。もちろん、イングランド地方の風景の
美しさ、切り取られる画の構成、音楽の選曲、登場人物たちのキャラクター設定など、
トータルでよくできた映画といえる。そこらにある話をここまでの映画に高める力、ケネス・
ローガン監督、次作が楽しみである。
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<ストーリー>
アメリカ・ボストン郊外でアパートの便利屋として働くリー・チャンドラー(ケイシー・アフレック)。
ある日、一本の電話で、故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーにいる兄のジョー(カイル・
チャンドラー)が倒れたことを知る。リーは車を飛ばして病院に到着するが、ジョーは1時間前に息を
引き取っていた。冷たくなった兄の遺体を抱き締めお別れをしたリーは、医師や友人ジョージと共に
今後の相談をする。ジョーの16歳の息子で、リーの甥にあたるパトリック(ルーカス・ヘッジズ)にも
父親の死を知らせるため、ホッケーの練習をしている彼を迎えに行く。見知った街並みを横目に車を
走らせながら、リーの脳裏に仲間や家族と笑い合って過ごした日々や、美しい思い出の数々が浮かび
上がる。
リーは兄の遺言を聞くため、パトリックを連れて弁護士の元を訪れる。ジョーがパトリックの後見人に
リーを指名していたことを知ったリーは絶句する。弁護士は遺言の内容をリーが知らなかったことに
驚きつつ、この町に移り住んでほしいと告げる。弁護士の言葉でこの町で過ごした記憶が鮮明によみがえり、
リーは過去の悲劇と向き合わなくてはならなくなる。なぜリーはこの町を出ていったのか? なぜ誰にも
心を開かずに孤独に生きるのか? リーはこの町で、パトリックと共に新たな一歩を踏み出すことができ
るのだろうか?(Movie Walker)

<IMDb=★7.9>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:96% Audience Score:78%>






# by jazzyoba0083 | 2017-06-10 15:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「ゴーストバスターズ(2016) Ghostbusters(2016)」
2016 アメリカ Columbia Pictures(a sony campany) 116min.
監督・(共同)製作・脚本:ポール・フェイグ
出演:メリッサ・マッカーシー、クリスティン・ウィグ、ケイト・マッキノン、レスリー・ジョーンズ
   クリス・ヘムズワース、ビル・マーレイ、アンディ・ガルシア他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

レイ・パーカー・ジュニアの主題歌も懐かしいオリジナル版が1984年。当時、幽霊の
SFXは目をみはるものだったが、現代のCGバリバリの時代にはもう特に驚かなくなって
しまっている。そうした時期に、女性版とはいえなんで、新しくもないテーマで
同じタイトルの映画か?と思う向きも多かろう。私もそうだ。

オリジナルに出ていたビル・マーレイ、ダン・エクロイド、シガニー・ウィーバーらも
出ているけど、とにかく全編主人公4人の女性のおバカ炸裂に、日本人の私としては
やり過ぎ?とも言うべきギャグやジョークの連発に、いささかついて行けない雰囲気もあった。

じゃあ、面白くないのか、と言われればそうでもない。幽霊退治のシーンはNYの街並みを
バックに迫力があるし、女子4人組のキャラもそれぞれにユニーク。個人的には兵器の専門家
ホルツマン(マッキノン)の、おもしろ真面目なバカっぷりが気に入った。
ローワン(ニール・ケイシー)がいわゆるラスボスで、自殺して自らゴーストとなり、NYを
襲う作戦。これを女子4人組があの手この手でやっつけるのが後半の主軸となる。
そこはいいのだが、冒頭からいわくありそうなゴーストが出てくるのだけれど、それぞれの
いわくについてもう少しコミットしてくれると物語として面白くなったのではないかと
思った。ツッコミどころ(だらけ)はあれど、まあ幽霊映画なので、力を抜いて観るとして
ストーリーはそれなりに起承転結つけているから、最後まで見切ることは出来た。

そして、美味しいところはエンドロールに隠されていて、彼女らが市民に認められるシーン、
シガニー・ウィーバーの登場あたりから続編への期待に繋げるあたり、ビジュアルも含めて
いい感じでは有った。中年?女性の下世話なギャグ連発に耐性のある方は大いに面白かろう。
全体としてポール・フェイグのチカラワザ、で持って行った感がある。
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<ストーリー>

ニューヨークに現れた幽霊を退治しようと奮闘する男たちを描き、80年代にヒットした
『ゴーストバスターズ』をリブートしたコメディ。心霊現象の専門家など4人の女性たちが、
ピンチに陥ったニューヨークを救うため立ち上がる。
前シリーズ2作を監督したアイヴァン・ライトマンが製作を、コメディを得意とする
ポール・フェイグが監督を務める。

ニューヨークのコロンビア大学で教鞭を執る物理学者エリン・ギルバート(クリステン・
ウィグ)の元に、幽霊の調査依頼が舞い込む。彼女がかつて幽霊本を出版したことが
その理由だったが、大学内で微妙な立場にあるエリンは、ヒギンズ科学大学で幽霊研究に
打ち込む幽霊本の共著者で友人のアビー(メリッサ・マッカーシー)を訪ねる。
その話に目を輝かせたアビーと、彼女の相棒ジリアン・ホルツマン(ケイト・マッキノン)と
共に訪れた現場で、ゴーストに遭遇。だが、その映像をネットで公開したところ、世間を
騒がせたという理由で3人とも大学をクビになってしまう。

やむなく3人は、頭の悪い青年ケヴィン(クリス・ヘムズワース)を秘書に雇い、
中華料理店の 2階をオフィスとして超常現象の調査会社を設立する。最初の依頼者は、
地下鉄の女性駅員パティ(レスリー・ジョーンズ)。地下鉄構内でゴーストに追いかけ
られたと駆け込んで来たのだ。
現地でそのゴーストの姿をビデオに収めたものの、ネットに公開した映像は世間から
完全にインチキ扱い。ゴーストの存在を証明するには捕獲するしかないと悟った3人は、
パティを仲間に加え、ジリアン開発の捕獲装置プロトンビームをバックパック型に改良
してチャンスを待つ。そして、再び訪れる出動の時。オジー・オズボーン主宰のロック
フェス会場にゴーストが出たというのだ。万全の装備で乗り込んだ4人は、ステージ上で
ゴーストの捕獲に成功。これが彼女たち“ゴーストバスターズ”最初の大手柄となった。

だがその裏で、ニューヨークに危機が迫っていた。一連の幽霊騒ぎは、天変地異に
よって世界を浄化しようとする黒幕ローワンの仕業だったのだ。果たしてゴースト
バスターズたちは、ニューヨークの街を守ることができるのか?人類の未来を懸けた
ファイナルバトルが、今始まる!(Movie Walker)

<IMDb=★5.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:73% Audience Score:53%>




から

# by jazzyoba0083 | 2017-06-09 23:30 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「ラスト・スキャンダル~あるハリウッドスターの禁じられた情事~The Last of Robin Hood」
2013 アメリカ Big Indie Pictures and more.91min.
監督・(共同)脚本:リチャード・グラツァー
出演:ケヴィン・クライン、ダコタ・ファニング、スーザン・サランドン、マット・ケイン他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

郷ひろみのヒット曲「ハリウッド・スキャンダル」が頭を流れた。まあ、典型的な
ハリウッド・スキャンダル。絵に描いたような。エロール・フリンとは原題にあるように
「ロビン・フッド」を当たり役とした俳優さんで、話が1959年だから、映画産業が
隆盛を極めているこの時期には、いささか手垢にまみれた古いタイプの俳優であった。

とにかく彼は女と見れば手を出す風の女性にだらしないというかマメというか、そう
いうタイプであり、スキャンダルが歩いているような感じ、しかし自分の時代が
過ぎ去っていくという恐怖みたいなものはあったのだろう。

一方でハリウッド女優を夢見るビバリー・アードランド(ダコタ)は、オーディションと
称しエロールの自宅で処女を奪われる。女たらしのエロール、これまで3度の結婚を経験
してきているが、ビバリーへの恋は真面目だった。仕事を貰う都合上18歳と自称していたが
実はまだ15歳であった。ビバリーは歌も演技もダンスも、実は大したことはない。
いわゆる大部屋女優であったが、エロールの力で主役の映画を与えられる。

その映画とはハリウッドではことごとく断られた挙句、キューバで革命に身を投じた女性を
描くものをエロール自らの資金と演出で製作されたものであった。(本作では
「ロリータ」の企画を前に、自分とビバリーを売り込むが、キューブリック監督に
にべもなく断られるシーンが出てくる)そこまでにエロールはビバリーに入れあげて
いたのだ。

一方、ビバリーの母フロレンス(サランドン)は、娘をなんとか売り出そうとエロールに
取り入ったり、できの悪いステージママっぷりが炸裂していた。これがきっかけで
離婚までしてしまう。アフリカ行きは反対したのに。

ビバリーも最初は何も知らないうちに処女を奪われたが、エロールの心が真面目で
自分はほんとうに彼から愛されていることが分かり、歳の差を超えての愛情生活が
始まる。そして婚約にまで至るのだった。

大きな仕事もなくなったエロールは資金を捻出するために大型のヨットを手放したり
していたが、彼が50歳の時、バンクーバー滞在中のパーティーで急死してしまう。
映画はそこから始まる。アメリカに戻ると待ち構えていた記者から矢継ぎ早の質問の
嵐。最後にいた女は未成年だったということで大騒ぎとなった。ビバリーと、背後に
いた母フロレンスもバッシングにあった。ビバリーは精神科に入れられる始末。
母は世間の間違った理解を正そうと出版を目論む。ビバリーもエロールも本当に
心から愛し合っていたと言いたいと。でも実はカネに困ってもいたのだった。
母が記者に口述することが映像として構成されいく。ビバリーは母に取材は絶対に
受けないで、というが、母は出版するのだった。

1950年台後半の古き良きハリウッド、オーディションに来た女性を頂いちゃった
スターはたっくさんいるだろう。今は未成年でそれをやったら逮捕されてしまう
けれど当時はおおらかだったのだね。ゴシップネタになるだけですんじゃう。
さして珍しくないお話だと思うのだけれど、スター、少女とその母、という構図で
起きた事件は、事実としてそれなりに面白くはあるけど、所詮ゴシップを覗いた、
という感じにしか収まらない。「へえー、そんな事があったんだ」で終わってしまう。
人間ドラマとして描かれていないというか、テレビの再現ドラマのようだ。

ケヴィン・クラインがエロールによく似ていてびっくり。ダコタはこの時期くらいが
少女役としてのハイライトって感じかなあ。最近は役に恵まれず、天才子役の
行末が案じられる。一番の怪演だったのは母フロレンスを演じたスーザン・サランドン。
こういう母親いるよねえ、と思わせる。一見娘のことを思っているようでいて、どこか
常に打算が働いているという・・。
しかし、昔の人はよくタバコを吸ったねえ。四六時中タバコ吸っている。

日本劇場未公開。WOWOWで鑑賞。
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<ストーリー>
往年のハリウッド俳優エロール・フリンの晩年にスポットを当て、最後の恋人となった
若手女優ビバリー・アードランドとのスキャンダラスな関係を描いた伝記ドラマ。

1959年10月、人気俳優のエロール・フリンが50歳の若さで急逝した。マスコミは
プレイボーイだったフリンの最後の恋人である17歳の女優ビバリーに注目。ビバリーの
母親フロレンスは暴露本の出版を勧められ、2年前のビバリーとフリンの出会いから
死別までを赤裸々に語りはじめる。
フリン役をケビン・クライン、ビバリー役をダコタ・ファニング、フロレンス役を
スーザン・サランドンがそれぞれ演じた。
監督・脚本は「アリスのままで」のリチャード・グラツァー&ウォッシュ・ウエストモアランド。
<映画.com>

<IMDb=★5.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:30% Audience Score:24%>





# by jazzyoba0083 | 2017-06-07 23:05 | 洋画=ら~わ行 | Trackback | Comments(0)

●「20センチュリーウーマン 20th Century Woman」
2016 アメリカ A24,Annapruna Pictures and more.119min.
監督・脚本:マイク・ミルズ
出演:アネット・ベニング、エル・ファニング、グレタ・カーウィグ、ルーカス・ジェイド・ズマン
   ビリー・クラダップ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

この前に観た「グランドフィナーレ」ほどではないが、どこか観念的なニュアンスがある作品。
でも、その性質はまるで違うのだけれど。本作はマイク・ミルズが自分の母親をモデルにして
制作した、1979年を懸命に生きる女性への愛と尊敬に溢れたなかなか考えさせられる作品と
なっている。出演者が全員いいのだが、やはり大活躍のアネット・ベニングの円熟の演技が
見どころである。1979年といえば作品中にも出てくるようにジミー・カーター大統領時代で、
イラン大使館人質事件、第二次オイルショック、朴正煕暗殺、など国際的には緊張していた
一方、本作でも語られるように、セックスに対するタブーが外れ、性に関する書籍が次々と
発行され、男女の役割に対する議論も多く行なわれるようになっていた。

ただでさえ性に目覚める15歳の男の子を女手一つで育てるドロシア(ベニング)。
家をいろんな人に貸していて、奇妙な共同生活が繰り広げられている。
離婚を経験し、多感な男の子を育てているドロシア、子宮頸がんを患っている
写真家アビー、夜な夜な息子ジェイミーと一緒に寝に来る、友人以上恋人未満
(体には触らせない)幼馴染のジュリー、ドロシアに惹かれているヒッピー大工の
ウイリアムズとそれれぞれ難しい人生を生きている人たちと関わりながら、自分も
大変、周りも大変なんだけど、捨てておけないドロシアの苦悩が描かれていく。

そもそも多感期に入った息子の教育を若い同居人アビーとジュリーにお願いしたのが
問題の発端。女性二人はいい子なのだが、ドロシアが育った頃とは考え方が全然違い、
あけすけな性の世界に連れて行ってしまう。息子ジェイミーも素直で良い子なのだが
性に関してはやはり男の子で、若い女性二人に感化されていく。見ていてハラハラ
し通しのドロシアだった。

自分の老いも意識しながら、自分だって恋もしたいと思いながら、回りの事に
精一杯頑張ってしまうドロシアだった。「子どもを育てるって大変よね」とか
言われて。作中にカーター大統領のテレビ演説をみんなで見るシーンがあるのだが、
まさにカーターが指摘しているのは社会秩序の崩壊。ドロシアは共感してしまう
のだった。

彼女はタバコの吸い過ぎで、1999年に肺がんで亡くなるのだが、再婚も果たし、
それぞれ関係していた人たち(ひとつ屋根の下にいたひとたち)もそれぞれの
幸せな人生を獲得したと説明される。再婚相手がドロシアの誕生日には必ず
プレゼントしたという複葉機での遊覧飛行のシーン。BGMが「As Time Goes By」
で、眩しく美しい青空の中を満面の笑顔で飛んでいるドロシアに決定的な
カタルシスを感じたのだった。音楽といえば、基本的には1979年当時に流行っていた
ロックやパンクが使われるのだが、ドロシアが聞く時はいつもベニー・グッドマンら
の活躍していた1930~40年代のスウィング・ジャズだったりするのも、さりげない
主人公の心情を表していて素敵だった。

本作、とにかくアネット・ベニングのシワも隠さない薄いメイクとボサボサ頭で母親と
女性を演じている姿が圧倒的である。
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<ストーリー>
「サムサッカー」「人生はビギナーズ」のマイク・ミルズ監督が自身の母親をテーマに
描いた半自伝的ドラマ。多感な思春期の少年が、自由奔放なシングルマザーと2人の
個性的な女性たちに囲まれて過ごしたひと夏の成長の物語を、ユーモアを織り交ぜ
瑞々しいタッチで綴る。
主演は母親役にアネット・ベニング、その息子をルーカス・ジェイド・ズマン。
共演にグレタ・ガーウィグ、エル・ファニング、ビリー・クラダップ。

 1979年、サンタバーバラ。シングルマザーのドロシアと母ひとり子ひとりの生活を
送る15歳の少年ジェイミー。家には他に、子宮頸がんを患いニューヨークから地元に
戻ってきたパンクな写真家アビーと元ヒッピーの便利屋ウィリアムが間借りしていた。
さらにジェイミーの2つ上の幼なじみジュリーも夜な夜な彼の部屋にやってきては一緒の
ベッドで眠っていく。けれども決して体には触らせてくれない。

そんな中、反抗期を迎えた息子のことがまるで理解できず、お手上げ状態になってしまった
ドロシア。そこで彼女は、アビーとジュリーに息子の教育係になってほしいと相談する。
こうしてジェイミーは、強烈な個性を持つ3人の女性たちと15歳の特別な夏を過ごすことに
なるのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:89% Audience Score:74%>



# by jazzyoba0083 | 2017-06-06 13:50 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)

●「グランドフィナーレ Youth」
2015 イタリア・フランス・スイス・イギリス Indigo Film and more.124min.
監督・脚本:パオロ・ソレンティーノ
出演:マイケル・ケイン、ハーヴェイ・カイテル、レイチェル・ワイズ、ポール・ダノ
   ジェーン・フォンダ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

この監督の作品は初めてかもしれない。非常に観念的な映画で、私の苦手とする
ジャンルである。観ながら、カンヌやベルリンで評価されそうな作品だなあ、と
思っていたら、やはりそうであった。

出ている人は円熟の役者ばかりだから玄人受けはするだろうが、日本での興業は
おぼつかなかったのではないだろうか。素直な感想を言えば、「何をいいたいのか
よく分からない」ということ。邦題もミスリードを誘う。現代の「YOUTH」(若さ)に
こそ、この映画の本質があろう。出てくる人がほとんど老人で、おそらく
過去と現在と未来に行き来する、それぞれの様々な思いが重層的に重なって表現
されているのだと思う。断片的エピソードは理解できるのだが、全体として、何を
表現したかったのか、「若さ」とは何か?ということなのか?それはちょっと違うだろう。

スイスの温泉療養施設付き豪華ホテル。セレブが集まるところだ。
コアになるエピソードをもたらすのは、クラッシック音楽の世界の巨匠ブレッド・
バリンジャー(ケイン)。彼は高名な指揮者であり作曲家。引退してここにいる。
もう一人はそろそろ映画監督業も終いにしようかと考え最後の作品を製作中に
滞在しているミック・ボイル(カイテル)の二人。二人は親友という設定。
(ブレッドの娘の旦那がミックの息子、という関係。親戚ですな)

もう人生は最終ステージ。これから新しいことはしない、と決めいているブレッドは
女王陛下が勲章を授けたいと言っている、ついてはフィリップ殿下の誕生日でもある
授賞式に、代表曲「シンプル・ソング」を指揮して欲しいと懇願してくるイギリス
政府の役人に「引退したからもうやらない」とにべもなく断る。

一方、監督のミックは、まだまだ演出に色気を出し、これまで長い間コンビを
組んできた恋人でもある大女優ブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)がスイスに
到着するのを待ち、ラストシーンを仕上げようとしていた。
(ミックが今作っている映画がどう見ても傑作になるとは思えないような描かれ方)

そんな二人は温泉に入れば健康や病気の話、でも全裸で温泉に入ってくるミス・
ユニバースを見ると「神だ」とか言って、まだまだ男としての名残がある状態。

この二人の男の考え方というか、自分が理解している自分自身の立ち位置が
少しずつ変化していくところが面白い。ブレッドは、勲章を受け、BBC交響楽団を
指揮して女王夫妻の前で「シンプル・ソング」を演奏することになり、片や、ミックの
元にやっとのことでブレンダ・モレルがやってくるのだが、ブレンダは映画には出演しない、
と断言する。慌てるミックに、ブレンダは53年間の恨みつらみが爆発するのだった。

作品全体としては上記だけのことではなくもっと複雑であって、二人の老人の
家族や生い立ちが絡んでくる。そしてブレッドがなぜ指揮をしようとしたかも
ミックの存在が大きかったりするのだ。

最終局面での老人二人に起きる大変化については面白く観たが、それが「若さ」と
いうタイトルにどう結びついていくのかは、謎だった。
Life goes on.ということなのだろうかなあ。年齢に関係なく。

画がとても綺麗で、構図などに非常にコダワリが感じられる。なんでも説明してしまう
作品よりも、観ている側の想像を刺激する意味での「観念的」な描写もいいのだが、
時としてシュールに過ぎてしまうと、言いいたいことが分からりづらくなる。

そうした意味で「観念的な」本作は、見る人に人生のいろいろな側面を考えさせる
ことだろう。だめな人は途中で脱落するタイプの映画。
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<ストーリー>
アルプスの高級リゾートホテルでバカンスを送る作曲家フレッド・バリイジャー
(マイケル・ケイン)のもとに、女王陛下からの勲章の授与と出演依頼が舞い込んでくる。

フレッドの名を世界中に知らしめた不朽の名曲「シンプル・ソング」を、フィリップ殿下の
誕生日に指揮するという名誉あるオファーであったが、彼は興味すら示さない。
BBC交響楽団の演奏で偉大なソプラノ歌手スミ・ジョーが歌うと言われてもフレッドは
もう引退したからと頑なに拒むのだった……。

母国イギリスのロンドン、そしてニューヨーク、最後はヴェネチアの楽団で24年、
作曲と指揮に持てる才能の全てを注ぎ込んだフレッドは、80歳となった今ではすっかり
燃え尽きていた。ホテルの宿泊客は、今も世界中のヒーローである元サッカー選手や
かつて大ヒットしたロボット映画の役名で呼ばれることにウンザリしているハリウッド
スターのジミー・トリー(ポール・ダノ)などセレブぞろい。そんな彼らは皆世間とは
違う風変わりな事情を抱えていた。

フレッドの60年来の親友である映画監督のミック・ボイル(ハーヴェイ・カイテル)も
同じホテルに宿泊していたが、現役を続けるミックは若いスタッフたちと新作の脚本
執筆に励んでいる。そんな中、父を心配する娘のレナ(レイチェル・ワイズ)が予約した
マッサージやサウナ、健康診断を淡々とこなすフレッド。何ごとにも無気力になって
しまったフレッドの唯一の楽しみは、ミックとの昔話と悪ふざけ、そして歳を重ねたが
ために頭と体のあちこちに出て来た不具合自慢だった。

ある時、部屋へ戻ると、夫のジュリアンと旅行に出かけたはずのレナが泣きじゃくっている。
ジュリアンの父であるミックに、君の息子が私の娘を捨てたと告げるフレッド。
驚いたミックはすぐに息子を呼び出すが、彼は新しい恋人を連れて来る。フレッドは
レナを慰めようとするが、音楽が全てでママのことなど一切顧みなかったパパに夫婦の
愛情の何が分かるのかと激しく責められる。フレッドのもとに女王の特使が再び現れ、
頑として断るが必至で食い下がる特使に遂にフレッドは本当の理由を語り出す。

「シンプル・ソング」にまつわる母への想いを初めて聞いたレナは思わず涙する。
そんな折、長年タッグを組んできたブレンダ・モレル(ジェーン・フォンダ)に主演を
断られたミックの映画が製作中止に追い込まれる。ミックが選んだ結末に衝撃を受けた
フレッドは「君の音楽は驚きや新しい感動をもたらした」という友の言葉を胸に最後の
ステージに立つことを決意。だが彼はその前に会わねばならない人がいた。
そしてフレッドは10年ぶりにヴェネチアに暮らす妻を訪ねる……。(Movie Walker)

<IMDB=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 74%  Audience Score:68% >



# by jazzyoba0083 | 2017-06-05 23:25 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)

●「トリプル9 裏切りのコード Triple 9」
2015 アメリカ Worldview Entertainment and more.115min.
監督:ジョン・コルヒート
出演:ケイシー・アフレック、キウェテル・イジョフォー、アンソニー・マッキー、
   ウディ・ハレルソン、ケイト・ウィンスレット他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
オスカー主演男優賞を獲り今や旬のケイシー・アフレック主演で、他にも注目すべき
配役なのと、警察モノは好きなので観てみました。

終始暗い画面で、ストーリーの暗さとシンクロしている。それはいいとして、個人的に
参ったのは、新米刑事クリス役ケイシー・アフレックと、元警官で強盗団の一人
ゲイブ役のアーロン・ポール、現役刑事で強盗団の一人マイケル役のキウェテル・イジョフォーと
同じ刑事のマーカス役のアンソニー・マッキーの主要な配役の二組がよく似ているので
混乱したこと。よく見れば全然違うのだが、画面が暗い上、同じ強盗団で黒人刑事だったり
するし、役名が「マ」で始まるなど、混乱に拍車を掛けた。

故に早送りでもう一度確認しながら観た次第。ケイト・ウィンスレットの使い方も
もったいないし、結果ラスボスとなるフランコ刑事役のクリフトン・コリンズ・Jrの
存在感の希薄さといい、全体的にミスキャストじゃないかなあ。日本人の私だからかも
しれないけど。そういうわけで、ラストの銃撃戦も何がどうなっているのか初見では
分からず、映画の良さが伝わらなかった。

最後の最後、クリスのおじである刑事ジェフリー(ウディ・ハレルソン)とフランコの
刺し違えはまあ、納得だけど。

999とは、警察内の符丁で、警察官が襲撃された現場があることを周辺に知らせるもの。
これがコールされると、周辺にいる警察官は何はともあれその現場に駆けつける。
これを利用して、警察官不在の瞬間を創り出し、悪事を働こうというのが、この映画の
骨子となる。

舞台はジョージア州の州都アトランタ。黒人の多い都市として知られる南部の町だ。
ここの現役刑事や元軍人らで構成される強盗団がいた。一応仕切っているのは
ロシアンマフィアのボスの妻の妹を嫁にしているマイケル刑事(イジョフォー)。
(ボスの妻がケイト・ウィンスレット)
こうした状況で市警にやってくるのが新米刑事クリス(アフレック)。彼の叔父が
市警のベテラン刑事ジェフリーである。このおじさん結構やさぐれている。

マイケル刑事は自分の子どもを人質に取られ、国の機関ビルからセキュリティコードを
盗み出すというヤバイ仕事を請け負わされる。この仕事をやり遂げるためにバディを
組んでいるクリス刑事を騙して、999の状況を創り出し、強盗を成功させようとした。
事態が進むに連れて、クリス刑事は自分が騙されていたことを理解する。

いわば警察内の悪と新米刑事とその叔父の虚々実々の駆け引きと、999が成功するのか
どうかが本作の見どころになるのだろう。が、これまでに書いてきたように、
わかりづらく、せっかく意図するところが表現できていないと感じたのだった。
個人的に一番の見どころは、最初の強盗シーンで、盗んだカネから赤い煙が吹き出して
車の中やら、体やらが真っ赤に染まってしまい、強盗団が泡を食う所かな。
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<ストーリー>
ロサンゼルスやマイアミを凌ぐ凶悪犯罪都市アトランタ。ある時、5人組の武装グループが
銀行を襲撃する。特殊部隊の元兵士と悪徳警官で構成された犯人グループを率いる
リーダーのマイケル(キウェテル・イジョフォー)は、この仕事を最後にロシアン・
マフィアとの関係を絶つつもりだった。ところが、非情な女ボスのイリーナ
(ケイト・ウィンスレット)は、それを許さなかった。最愛の一人息子を人質に
取られたマイケルは、不可能と言われる警戒厳重な国土安全保障省の施設を標的に
した襲撃計画を練り上げる。
それは、警官が撃たれたことを意味する緊急コード“トリプルナイン”を発動させ、
アトランタ市警の機能を10分間完全停止させるというものだった。
しかし、標的となった警官クリスや重大犯罪課の刑事アレンを巻き込んだその
犯罪計画は、マイケルたち犯行グループの内部対立や裏切りも絡み、予想外の事態へ
発展してゆく……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:53% Audience Score:42%>



# by jazzyoba0083 | 2017-06-03 23:10 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)

サウスポー Southpaw

●「サウスポー Southpaw」
2015 アメリカ Escape Artists and more.124min.
監督:アントワーン・フークア
出演:ジェイク・ギレンホール、フォレスト・ウィッテカー、レイチェル・マクアダムズ、
   ナオミ・ハリス他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

割りと表面的な描き方ではあるが、ジェイク・ギレンホールら配役の演技により
また、ボクシングシーンの見事な描写により、一級の映画になっている。

本作を観ていて、「目標」という言葉が思い浮かんだ。施設育ちからボクシングの
世界で3つの団体でのライトヘビー級チャンプとなった英雄ビリー・ホープ(ジェイク)。
腕っ節一本でのし上がったこの男は攻める人生しか歩んでこず、それで成功してきた
ため、ボクシングでも人生でも天才肌ではあるが「無手勝流」でガードということを
しない。それがこの映画の根本である。栄光に包まれたこの男の人生に暗転が
訪れた時、「守る」ということを学ぶのだろうか、その過程がエンディングに向けて
描かれていくのだ。息を飲むようなストーリーでも、驚愕の結末でもないが、
一人の男の人生の「取り舵いっぱい」は、なかなか感動的ではある。


地位も名誉も、カネも、そして同じ施設で育った美しい妻も、可愛い娘も手に
入れたビリー。冒頭で描かれる試合でも逆転勝利し、最強伝説は継続していた。
そして、勝利の後、自分と妻が育った施設への寄付を求めるチャリティパーティーで
自ら次回の対戦相手と名乗り出たジョーダンとその取り巻きから、挑発を受け
喧嘩となり、誰かが銃を撃ち、その流れ弾が妻に当たり妻はその場で亡くなって
しまう。

ビリーの喪失感は大きく、生活は荒れる。喧嘩をしたことなどから1年間の試合
停止となり、たちまちカネも無くなり、トレーナーやプロモーターたちも離れて
いってしまう。そのために娘からも離されてしまい、更生プログラムの実施を
命じられる。

そんな彼を救ったのが街のボクシングジムトレーナー、ティック(ウィテカー)
だった。ビリーの、人生は「自制」すること、「守ること」「目標を持って
努力すること」を欠いたまま突っ走ってきた。ティックは、ジムで雇うことに
より、ビリーの考え方を少しずつ変えていった。娘と離されたことで、ビリー
自身も考え方を変えていく。

そして1年後、ラスベガスで、あの挑発したジョーダン(今はチャンピオンに
なっていた)との試合が組まれることになった。ビリーは、ティックを
トレーナーに、独自の方法でサウスポーにスタイルを変え、ボクシングも
良くガードもするものに変化させていった。そして試合当日。
真面目な更生プログラムに対する姿勢が評価され、娘との同居を認められた
ため、娘も控室で父の闘いを見つめる。試合は怨恨も入り、壮絶な殴り合いに
なる。ジョーダンは試合中にも挑発してくるが、ビリーは自分を押さえられる
ようになっていた。最終12ラウンドで、決定的なダウンを奪うビリーだったが、
カウント中に試合終了となり、結果は判定となった。結果は2-1でビリーの
勝利だった。会場は帰ってきた強いチャンプに沸き返り、コーナーにかがんだ
ビリーは亡き妻に感謝と報告をし、控室で娘としっかり抱き合ったのだった。
ビリーの人生は、いま始まったのかもしれない。

以上のような話で、難しいところは何もない。半年かけて体を絞った
ギレンホールのボクシングシーンは非常にリアルで、本物の試合を観ているか
のようだ。いや演出されているので本物より迫力があるようにみえる。
また映画全体としてもテンポが良いので2時間超えの映画だという感じは
まったく受けなかった。妻マクアダムズ、ウィテカー、そして娘を支える
司法団体の女性に、「ムーンライト」で主人公のジャンキーの母親を好演した
ナオミ・ハリスが配される。ストーリーの主だった登場人物は少ないものの
非常に締まった演技陣で、これに支えられ、深い味わいのある映画となった。

監督は、フィルモグラフィーを観てみれば、私が好きな「ザ・シューター/
極大射程」「トレーニング・デイ」「イコライザー」などの作品を
手がけたアントワーン・フークワであった。
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<IMDb=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:60% Audience Score:76%>



# by jazzyoba0083 | 2017-06-01 23:15 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「フェイク・ライフ ー顔のない男ー Un illustre iconnue」
2014 フランス・ベルギー  Capter 2,Pathe and more 118min
監督・(共同)脚本:マチュー・デラポルト
出演:マチュー・カソヴィッツ、マリ=ジョゼ・クローズ、エリック・カラヴァカ他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
特殊メイクを使って他になりかわってしまうことを、趣味以上の性癖に
してしまっている男の話。冒頭の爆発シーンからリバースする画面を見ると
この話一つ、というカンジがするのだが、大団円はさにあらず。

他人と入れ替わる、という映画はこれまでもいろいろとあったのだが、
本作は、主人公の背景を説明せず、性癖のみに特化して展開させ、最終場面で
彼が手に入れたものを提示して終わるのだが、それが彼の心の動きを
単純化して示していて分かりやすく面白かった。特殊メイクのプロだからと
言って、子どもの認知を迫る女性や、子どもからはバレないものだろうか?
もともと似ている顔立ちを選ぶといっても。

不動産屋の従業員セバスチャン・ニコラは、部屋を探しに来た男になりすまして
みる。彼の部屋に行ってあたかも彼のように過ごしてい見る。(おかしいやつ
なんだよね)断酒会のカードを見つけると、彼になるりすまして参加し、
作った身の上を語ったりしていている。バレることを考えないのだろうか。
案の定、そこで「お前は誰だ?」と指摘され、逃げ出し、後を追いかけられると
いう危険にも会うわけなんだけど。

そのセバスチャン、次回に狙いを付けたのは、高名なピアニストなのだが事故で
指を二本失いった男。世をはかなんで隠遁しているような男モンタルトに目を
付ける。二本の指が無いのなら、と自分の指も包丁で落としてしまう。(痛い!)
さっそく完璧な変装。喋り方までしっかりと研究する。さらに彼を自分の家に連れ
込み、自分に仕立て上げて、「この電話を聞く頃自分はいません」と留守番電話に残し、
ガス爆発で家ごと吹き飛ばしてしまう。これが冒頭のシーンだ。
しかし、モンタルトの元に愛人クレマンスが登場、自分の子ヴァンサンを認知しろと
迫る。このヴァンサン少年、凄腕のバイオリニストなのだ。
クレマンスとヴァンサンに愛されているという感情が芽生え、「他の誰でもない」
「自分という存在を消して生きる」という人生を楽しんでいたセバスチャンの
生き方に変化が生まれる。それはモンタルトとして生きることで、ヴァンサンの
成長を見つめ続ける幸せ、ということだ。

だが、ガス爆発を調べていた警察は、ついにモンタルトがセバスチャンであり
殺人犯であるということを突き止め、セバスチャンは逮捕され、刑務所に送られる
ことになる。が、彼はこれまでの性癖を脱し、ついに自分を見出したのだ。

「何者でもない自分」「他人の人生でしか楽しめない自分」でも、自分とは誰か、
とわかった時はすでに遅かったのかもしれないが、刑務所から出てきた時の
セバスチャンはきっと、人を愛せる「自分がある」人間になっているのだろう。
高邁で哲学的なテーマではあるが、描写が俗っぽいので、そのあたりで魅せる映画だ。
ヨーロッパの映画だなあ、と感じさせる一編だ。
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<ストーリー>
42歳の独身男性セバスチャンは表向き、不動産会社で働く真面目な人物。だが、
自分が出会った男性に特殊メイクを使ってなりすますことで、自身が孤独である
ことをごまかしながら生きるという、異常な一面があった。そんなセバスチャンは、
著名だが気難しいバイオリニスト、アンリに家を探す仕事を担当し、本人に悟られ
ないようアンリになりすまし始めるが、アンリが自分の息子の父親であると主張
する女性クレマンスと出会い……。
(wowow)

<IMDb=★6.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100% Audiece Score:62%>







# by jazzyoba0083 | 2017-05-31 23:20 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)

モアナと伝説の海 Moana

●「モアナと伝説の海 Moana」
2016 アメリカ Walt Disney Pictures.107min.
監督:ジョン・マスカー、ロン・クレメンツ 
出演(声):アウリィ・クラヴァーリョ(モアナ)、ドゥエイン・ジョンソン(マウイ)
      レイチェル・ハウス(タラおばあちゃん)、ジェイマン・クレメント(タマトア)他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

回りの大人たちに結構評判が良かったのと、ハワイ好きなら観ておくべし、ということで
まさしく、先日のホノルルからの帰国便で観てみました。故に2D版。★は7.5。

ハワイの話ではなく、古代のポリネシア全体の話として描かれるので、昔、昔、と
始まるお話ですよ、というのが分かりやすい。モアナはハワイ語で「太平洋」を
意味している。「リトルマーメイド」「アラジン」を作ったコンビなので、破綻の
ないストーリー仕立て、そして冒険におけるハラハラ感やカタルシスの演出、そして
音楽と、どれを取り上げても一流であることは間違いない。喋る言葉や仕草が今日的
だが、それは今日のアニメなので、キャラクターの魅力を今日的に際立たせるためには
(味付けとして)必要だと理解できる。特に「マウイ」のキャラは非常に魅力的で
仕草やセリフも、おちゃめで力持ち。子どもにとっては観ていて気持ちのよいヒーロー
だろう。特に最後の登場の仕方は。

今回日本語字幕で観たのだが、吹き替えではどういうニュアンスであったのか、訳が
ちょっと気になる。基本的には子どもが観て分かるような仕立なので、単純で、勇気を
持って冒険に繰り出す、人間として「愛と優しさと勇気」という不朽の3大テーマを
ディズニーらしい作り方で提示するという筋立てである。

言わんとすることろが普遍的なので、大人が観ても十分に鑑賞に耐えうる、というか
より深い意味合いを汲み取れるという点では、大人が観たほうが良いんじゃないか
(ギャグの味わいも含め)と思えてしまう作品である。大人びたことをいうモアナと
なかなか会話のセンスが良いマウイとのやりとりは、大人の方が味わい深いんじゃ
なかろうか。
子供向けアニメなので、突っ込んでしまえば突っ込めるところもあるが、それを
言っちゃあディズニー・アニメにならんでしょ、ということで、気にしないのが礼儀。

キャラクターたちの動きもモーションキャプチャをアニメ化したのではないか、と思う
ほどリアルで自然だし、波の感じなどもCGというより写真を観ているようなリアルさを
感じる。重要な狂言回しとなる「頭のネジの切れた鶏」ヘイヘイがいい味を出す。
唯一、マウイのタトゥーがやたらにかっこいいので、これを真似たいという人が出てくると
ヤバイかもね。(ポリネシアやハワイには伝統的タトゥーをした男性を多く見るが)

時間も適当でエンドの想像も容易だが、モアナとマウイの冒険、なかなか楽しく
感動的だ。
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<ストーリー>
 「リトル・マーメイド」「アラジン」のジョン・マスカー&ロン・クレメンツ
監督が、海に選ばれた少女モアナを主人公に描く冒険ファンタジー・ミュージカル・
アニメーション。
海と運命的な絆で結ばれたヒロインが、世界を救うために伝説の英雄とともに
大海原を舞台に繰り広げる大冒険を描く。
声の出演はヒロインのモアナ役にオーディションで選ばれたハワイ出身の新星、
アウリイ・クラヴァーリョ、伝説の英雄マウイ役にドウェイン・ジョンソン。

 神秘的な伝説が息づく南海の楽園、モツゥヌイ島。16歳の少女モアナは、
幼い頃のある体験がきっかけで海と特別な絆で結ばれていた。島では外洋に出る
ことが固く禁じられていたが、好奇心旺盛なモアナは、いつか外の海を見て
みたいとの思いを募らせていた。
そんな中、島で不穏な出来事が起こり始める。それは、かつて半神半人の
マウイが命の女神テ・フィティの“心”を盗んだために生まれたという暗黒の闇が、
島にも迫っていることを示していた。
モアナは祖母タラに背中を押され、伝説の英雄マウイを見つけ出し、テ・フィティに
“心”を返すために大海原へと飛び出していくのだったが…。(allcinema)

<IMDb=★7.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer: 96% Audience Score:89%>




# by jazzyoba0083 | 2017-05-25 15:00 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

夜に生きる Live by Night

●「夜に生きる Live by Night」
2017 アメリカ Warner Bros.,Appian Way,Pearl Street Film.129min.
監督・脚本:ベン・アフレック 原作:デニス・ルヘイン『夜に生きる』
出演:ベン・アフレック、エル・ファニング、ブレンダン・グリーソン、クリス・メッシーナ、
   シエナ・ミラー、ゾーイ・サルダナ、クリス・クーパー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

こちらにはプロデューサーとしてレオナルド・ディカプリオの名前がある。本作は
5年前ほどに出版されてエドガー賞などを受賞したルヘインの長編小説を映画化した
ものだ。WOWOWで放映されている「ボードウォーク・エンパイア」などと時期も
綴る大河な雰囲気も、似ている。

第一次世界大戦に出征した青年ジョー・コフリン(ベン)が、戦争で味わった
上から受ける不条理な命令に嫌気が差し、父親がボストン市警の幹部だというのに
一匹狼風な「無法者」となり、組織を組むマフィアギャングと対立、ここに恋愛を
絡めて綴るロアリングトゥエンティの恋愛+ノアールドラマということになろう。

ギャングの世界の駆け引きが面白く、ガンアクション、恋愛模様と、欲張っては
いるが、ありがちではあるがアンハッピーエンドも含めてエンターテインメントと
してそこそこ面白く見ることができた。才人ベン・アフレック、手堅く纏めてある。
ただ、人生訓とかを見出す映画ではないので、テレビドラマっぽい薄さは感じるが。
かと言ってエンタメに振り切ってもいないので、そのあたりが原作があるとはいえ
本作の弱みであろう。

全体の骨格は、「戦争から帰って身内のなかまだけで賭場などを襲うギャング時代」
「アイルランド系の親分の情婦を恋人にし、それがバレて情婦は殺され自分はボコボコに
される時代」「アイルランド系親分への復讐心にもえ、一転、イタリア系ギャングに加わり
フロリダ州タンパを任され、一大勢力を築く時代」「一大勢力になったがために
イタリア系親分からも命を狙われ、自分の手下を率いて、両勢力と戦う時期」
「フロリダ時代に知り合った女性を心から愛し、勢力争いに勝利を収め、隠居、
平和な家庭で静かに暮らそうとした矢先、妻が撃たれて死亡」、「死んだはずの
最初の女が実は生きていて、彼女に会いに行く」そして幼い息子を連れて、しかし
彼の人生は続く・・・。

こんな流れとなっている。これにタンパ時代に腐敗した警察のボスの娘が登場、
禁酒時代が終わりこれからはギャンブルだ、と思った矢先に、「神の意志に
反している」と大衆を扇動されて、中止に追い込まれるものの、彼女は自殺。
警官のボスは気が触れて「悔改めよ」と呟き続ける毎日、彼がジョー一家の
自宅前で乱射した銃の流れ弾に当たり妻が死亡したのだ。

この手の映画は、どのくらいドラマティック(劇的)な人生として観ている方を
飽きさせず、埋めた伏線を回収しながら、ストーリーをいかに面白くしていくか、
にかかるわけだが、原作があったとはいえ、脚本にまとめ演出し主演したベンには
はやり非凡さは感じる。全体としてエンタテインメントとしては(軟派だが)面白く
仕上がったと思った。
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<ストーリー>

『ミスティック・リバー』など数々の映画化作で知られるデニス・ルヘインの
小説を、ベン・アフレックが監督&主演を務めて映画化したクライム・サスペンス。
1920年代のボストンを舞台に、犯罪者として裏社会でのし上がっていく男をベン・
アフレックが演じる。
エル・ファニングやシエナ・ミラーなど演技派女優が華を添える。


1920~30年代の禁酒法時代のアメリカ・ボストン。ボストン警察の幹部を父親に
持ち、厳格な家庭に育ったジョー(ベン・アフレック)は、父に反発して仲間と
強盗を繰り返していた。
街ではギャングの2大勢力が対立していたが、誰にも支配されたくないジョーは
組織に入る気などなかった。しかし、一方のボスの愛人エマ(シエナ・ミラー)と
出会い、恋に落ちる。欲しいものをすべて手に入れるには、ギャングとしてのし
上がるしかない。こうしてジョーの人生は激変するのだった……。(Movie Walker)

<IMDb=★6.4>
<RottenTomatoes=Tomatometer:34% Audience Score:43%>







# by jazzyoba0083 | 2017-05-24 14:30 | 洋画=や行 | Trackback | Comments(0)

ムーンライト Moonlight

●「ムーンライト Moonlight」
2016 アメリカ A24,Pastel,Plan B Entertainment.111min.
監督・脚本:バリー・ジェンキンス 製作総指揮(共同):ブラッド・ピット
出演:トレヴァンテ・ローズ、アンドレ・ホランド、ジャネール・モネイ、マハーシャラ・アリ他
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       <2016年度アカデミー賞作品、脚本、助演男優各賞受賞作品>
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

「ゲイの少年が、貧しいフロリダやアメリカ南部で苦労して成長してく話」ではない。
ゲイはこの映画の重要なファクターだが、決定的なものではない。
 この映画、とても雰囲気を持っていて、観ていて美しいし、クラッシック音楽を、
この灼熱の南部の貧民街に持ってきたのも良い、映像もおそらく大判のデジタル
カメラを使用したと思われ、貧民のエリアが描かれる割には美しい。そういう雰囲気の
良さをもっているので観ていて辛くなるようなものではないし、ゲイの場面はほとんど出て
こない。暴力的に苛烈であるわけでもない。ゆえに、どうだろう、この映画を観た人の
多くは「この映画、何を言いたいのだろう」と思うのではないだろうか。

ジャンキー漬けの母親に育てられ(育児は放棄状態ではあったが)た、いじめられっ子の
ゲイの少年が、なにがどうなったのか、大人になり一番自分が唾棄していた大人、ヤクの
売人になっていた。この一人の男、シャローンの半生を淡々と南部の光の中で綴る。
そうした暮らしや人々との交流の中から、観ている人は、エピソード毎に人生の実相に
ついて考えさせられるだろう。

全体はシャローンの少年時代(ここで彼をサポートするヤクの売人の親分が、オスカー
で助演男優賞を獲ったマハーシャラ・アリ。彼の存在感はデカイ。ヤクの売人を
しながら、自分のしている仕事を肯定しているフシがない。彼のインパクトは成長する
シャローンに大きく影響したのだった)
しかし、シャローンの母は売春でカネを稼ぎ、リトルと呼ばれるシャローンとまとも
に向き合わず、荒れた生活をしているのだが、彼女にヤクを売っているのもフアン
(アリ)だったりする。

やがて高校生になると、更にイジメは苛烈になり、ついに同級生の悪を椅子で殴って
刑務所送りとなる。青春時代に同級生で自分をブラックと呼ぶケヴィンとゲイの間と
なる。でもほんの一瞬。すでにフアンは亡くなっていた。

刑務所から出てきたシャローンは、子供の頃の面影は何処へやら。口中金歯の
入れ歯を付けて、どこからみても立派なヤクの売人になっていた。シャローンは
同じく刑務所に入っていた高校生時代の友人で、今は保護観察身分ながらコックを
しているケヴィンに会いに行く。彼には離婚はしたが、小さい子供がいる。
彼が店長をするダイナーに出かけ、再会。ケヴィンの、自分の暮らしとは違う
人生に、思うところは有った。シャローンはその晩ケヴィンのところに泊めてもらう。

その後、シャローンは施設に入っている母親に会いに行く。母親は幼い頃のことを
謝るのだがシャローンには今さらそれをどうこう言うつもりもない。

ラストは海辺で遊ぶ黒人の子供ら。そして小さい頃のシャローンがムーンライトに
照らされるところで終わる。

バリー・ジェンキンス監督はマイアミの危ない当たりに住んでいたことがあり、この
話、抒情詩のような一編は監督の実体験に基いているらしい。

貧困をベースにした、ゲイの(ハードではない)成分の入った男の子が、夢も
希望もないような世界で、何を思って行きてきたのか。自分の居所はここにしかない
男たち。結婚して家庭を持っている友人。死にそうに働くけど稼ぎは少ない、けどもう
あの世界には戻りたくないという。すさんだ暮らしはしているが、ゲイという心情は
どこかシャローンに人間らしさを取り戻す(実際にゲイと付き合っているわけではない
のだが)心根であったにちがいない。

貧困、育児放棄、イジメ、ゲイ、麻薬取引、暴力、刑務所、人生に対するあらゆる
マイナーなファクターの中で育って来たシャローンはどこへいくのだろうか、いや
どこへも行けないのかもしれない。

本作を観て何をどう考えるのかは、観客に任されている。

最後に技術的なカット割りについて。全体的にアングルが低めだと思った。幼少期を
描く時も、上からのショットより、目線と平行して画角を設定し、安定を引き出すと
共に、観ている人に共感を生みやすくしている感覚がした。またラストに近く、
シャーローンがケヴィンとレストランで会う時の呼び鈴のカットアウトの音の使い方も
とても印象的だった。カメラが基本的に終始優しいという印象も得られた。(青年に
なってヤクの売人になったシャローンの目つきも、優しい)だからこそ観ている人に
いろいろなんことを考えさせてくれるのだろう。シャローンは幸せを掴めるのだろうか、と。

名古屋ではシネコンでは上映されなかった作品だ。オスカーで作品賞を獲っていると
いうのに。「地味」「分かりづらい」という点が敬遠されたのだろう。
好悪は別れると思うけど、私には、みずみずしく心が優しくなるような作品であった。
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<ストーリー>
シャロン(アレックス・ヒバート)は、学校で“リトル”というあだ名で苛められて
いる内気な少年。ある日、いつものようにいじめっ子たちに追われていたところを、
麻薬ディーラーのフアン(マハーシャラ・アリ)に助けられる。
何も話さないシャロンを、恋人のテレサ(ジャネール・モネイ)の元に連れ帰る
フアン。その後も何かとシャロンを気にかけるようになり、やがてシャロンも心を
開いていく。

ある日、海で“自分の道は自分で決めろよ。周りに決めさせるな”と生き方を教えて
くれたフアンを、父親のように感じ始める。家に帰っても行き場のないシャロンに
とって、フアンと男友達のケヴィンだけが心を許せる唯一の“友達”だった。

やがて高校に進学したシャロン(ジャハール・ジェローム)だったが、相変わらず
学校で苛められていた。母親のポーラ(ナオミ・ハリス)は麻薬に溺れ、酩酊状態の
日が続く。
自宅に居場所を失くしたシャロンは、フアンとテレサの家へ向かう。“うちのルールは
愛と自信を持つこと”と、変わらずにシャロンを迎えるテレサ。ある日、同級生に
罵られ、大きなショックを受けたシャロンが夜の浜辺に向かったところ、ケヴィンが
現れる。シャロンは、密かにケヴィンに惹かれていた。月明かりが輝く夜、2人は
初めてお互いの心に触れることに……。

しかし翌日、学校である事件が起きてしまう。その事件をきっかけに、シャロン
(トレヴァンテ・ローズ)は大きく変わっていた。高校の時と違って体を鍛え上げた
彼は、弱い自分から脱却して心身に鎧を纏っていた。
ある夜、突然ケヴィン(アンドレ・ホーランド)から連絡が入る。料理人として
ダイナーで働いていたケヴィンは、シャロンに似た客がかけたある曲を耳にして
シャロンを思い出し、連絡してきたという。あの頃のすべてを忘れようとしていた
シャロンは、突然の電話に動揺を隠せない。翌日、シャロンは複雑な想いを胸に、
ケヴィンと再会するが……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:98% AudienceScore:80%>



# by jazzyoba0083 | 2017-05-23 14:10 | 洋画=ま行 | Trackback | Comments(0)

●「ザ・コンサルタント The Accountant」
2016 アメリカ Warner Bros.Pictures.130min.
監督:キャビン・オコナー
出演:ベン・アフレック、アナ・ケンドリック、J・K・シモンズ、ジョン・バーンサル他
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<評価:★★★★★★★★★☆☆>
<感想>

面白い。巧妙に練られた脚本なので、ちりばめられた伏線がバシバシ回収される
快さとともに、いささか込み入ったストーリーがわかりづらく感じるかもしれない。
この後観たベン・アフレックの「夜に生きる」より、物語の出来としては(映画の
描かれる世界と提示されるエンタテインメントは全然異なるのだが)こちらのほうが
上だと感じた。同じベンアフの映画であれば、だが。ベンアフも弟くんがオスカーを
獲り勢いに乗ってくるだろうから、二人していい作品をどんどんと生み出していって
欲しいものだ。ベンアフの昔からのファンとしてそう思う。

さて、本作。主人公の会計士クリスチャン(ベン)は、高感度自閉症といわれる病気を
持つ。幼い頃からその矯正には苦労していて、今でも寝る前には激しく点滅するライトの
中で大音量のロックを聞き、足を鍛える作業を課し、クスリを飲んで寝るという日々だ。

高感度自閉症とは何か、よく分かっていないのだが、アスペルガーとかどこかサヴァン
症候群にも似ている感じを受けた。人とのコミュニケーションが苦手だったりする
一方、特殊な能力に長けている。クリスチャンの場合、数字を操ることだった。
これで彼は軍人から会計士となり、また闇に生きる人間となっていくのだった。

冒頭に出てくるギャングを次々と仕留め、親分らしきやつも容赦しない戦闘能力は
(ここ伏瀬になっているわけだが)、どうして身につけたのか。会計士と裏の
暗殺者としての彼を電話でコントロールする女性は誰か?依頼されたロボテック社に
雇われた武装集団を率いる男はだれか?クリスチャンはなぜ軍事刑務所に入っていた
のか、そこで出会ったギャングの会計士との関係は何か。ロボテック社でクリスチャンと
会計監査に当たる女性デイナ(アナ)とクリスチャンの関係はどうなっていくのか?
ロボテック社の真の悪は誰か、などなどが、先述のように冒頭のギャング惨殺シーンから
始まる一連の伏線が回収されていく過程で明らかにされ、エンディングまで観ている人を
引きつけて離さない。
このあたり、脚本もいいが、監督の作劇のうまさが光る。それとベンアフのほとんど
笑顔がない演技も主人公をクールに描き、いい感じだった。

本国の興業もヒットし、続編も企画されているらしい。ボーンシリーズのようになって
行くのだろうか。期待してしまう。
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<ストーリー>
田舎町のしがない会計士クリスチャン・ウルフ(ベン・アフレック)に舞い込んだ
大企業からの財務調査依頼。彼は重大な不正を見つけるが、なぜか依頼は一方的に
打ち切られてしまう。その日から、何者かに命を狙われるウルフ。
実は彼は、世界中の危険人物の裏帳簿を仕切る裏社会の掃除屋でもあった。
年収1000万ドル、天才的頭脳を持ち、最強のファイターで命中率100%のスナイパー。
本籍・本名・私生活、そのすべてが謎に包まれた会計コンサルタントは、
アメリカ政府やマフィア、一流企業に追われながら危険な仕事に身を投じていく……。
(Movie Walker)

<IMDB=★7.4>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:52% Audience Score:77%>





# by jazzyoba0083 | 2017-05-16 23:30 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)

●「美女と野獣 Beauty and the Beast」
2017 アメリカ Mandeville Films,Walt Disney Pictures.130min.
監督:ビル・コンドン アニメ版『美女と野獣』に基づく
出演:エマ・ワトソン、ダン・ステゥィーヴンス、 ルーク・エヴァンス、ユアン・マクレガー
   スタンリー・トゥッチ、イアン・マッケラン、エマ・トンプソン他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

"This is Disney!!"という映画だ。本作はこれまでも実写やアニメで幾つか作られて
来たが、ついに本家がアニメ版を基本に実写版を制作した。
劇中の歌も、おなじみのアラン・メンケン、ティム・ライス(アニメではオスカーの
作曲賞と主題歌賞を獲得しているね)らに依るもの。
個人的には劇団四季の公演を何回となく見ているのでスジはしっかり理解している。
演出も大筋、アニメ版に沿ったものだ。エマ・ワトソンのベルは問題なく可愛いし
歌もうまい。メイクしていしまうと誰が誰だか分からないが、しっかりとした配役を
得て、劇としてもちゃんとしている。プロダクションデザインも美しい。

ビル・コンドン監督は、最新のCG、VFXを得て、この物語にダイナミズムを与え、
2時間以上の映画を大いに見どころのあるものに(特に作画的に)仕上げた。
ただ、VFXにかけてしまうと、なんでも出来てしまうので、そのあたりの加減の
難しさはあったろう。華やかな"Be Our Guest"のシーンは、私は劇団四季の舞台の
方が、インパクトがあった。限られた舞台という空間での美術、特効は素晴らしい。
それに比べると映画は何でも出来てしまうからなあ。最後のガストンが城から落ちる
ところも。先にも書いたけど、もう映画や舞台、アニメで完成されたものの実写化の
難しいところだろう。

上記を割り引いても、エンタテインメントとしては上質であり、見応えは十分だ。
日米でもヒットしているのは分かる。大団円では、結末は分かっていても、所詮
童話の世界のことと分かっていても胸が熱くなるのは、今の時代、「愛に対する視界が
くすみ過ぎで」「見を捨てるほどの真実の愛」があまりにも少ないからだろう。
「君の名は。」のラストの純愛と通ずるものを感じたのだった。
みんな本作を見て、濁った愛の洗濯をすると良いだろう。
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<ストーリー>
ある時、ひとりの美しい王子(ダン・スティーヴンス)が、魔女の呪いによって醜い
野獣の姿に変えられてしまう。魔女が残した一輪のバラの花びらがすべて散る前に、
誰かを心から愛し、愛されることができなければ永遠に人間には戻れない。

呪われた城の中で希望を失いかけていた野獣と城の住人たちの孤独な日々に変化を
もたらしたのは、美しい村の娘ベル(エマ・ワトソン)であった。
聡明で進歩的な考えを持つベルは、閉鎖的な村人たちになじめず傷つくことも
あったが、それでも人と違うことを受け入れ、かけがえのない自分を信じていた。

一方、野獣は人と違う外見に縛られ、本当の自分の価値を見出せずにいた。そんな
二人が出会い、やがて惹かれ合っていくのだが……。(Movie Walker)

<IMDb=★7.7>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:71% Audience Score:85%>



# by jazzyoba0083 | 2017-05-14 15:00 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(2)