誘拐報道

●「誘拐報道」
1982 日本 東映 134分
監督:伊藤俊也 原作:『誘拐報道』讀賣新聞大阪本社
出演:萩原健一、小柳ルミ子、岡本富士太、秋吉久美子、宅麻伸、三波伸介、藤谷美和子
   池波志乃、松尾嘉代、伊東四朗、大和田伸也、丹波哲郎、中尾彬、藤巻潤、平幹二朗他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

もう、今から35年も経つんだなあ。鬼籍に入られた俳優さんも多い。逆に宅麻伸なんか
若すぎて誰だか分からなかったし。最近の同様な映画、「64(ロクヨン)」とどうしても
比べてしまう。まだ邦画の作り方に「64(ロクヨン)」のようなシリアスなテイストが
持ち込まれる前の、どちらかというとテレビの2時間サスペンスのようなタッチの作りで
深みに欠ける恨みがあった。それは演出の、というより、誘拐に巻き込まれた加害者被害者、
警察、新聞記者と、大きく3つのジャンルのエピソードを全部ぶっこもうとしたことから
破綻が起きてしまったからというほうが正解だろう。

故にタイトルの「誘拐報道」に釣られ、ジャーナリストたちの苦悩の話か、と思うと
さにあらず、であるわけだ。主たる観点は、誘拐を企てる萩原健一と小柳ルミ子夫婦と
子供を拐われる医師岡本富士太と秋吉久美子夫婦の被害者加害者の心の苦痛でえある映画
じゃないか。原作は未読だが、新聞記者が「報道協定」というシバリの中で、何とか
真実を伝えたい、というジャーナルな映画にはなっていない。故に、警察側も新聞社側も
中途半端な描かれ方。丹波哲郎も三波伸介も平幹二朗も勿体無い。加えて加害者被害者の
描き方にも深みがないので、結局映画全体として中途半端になってしまった。

この映画のことだけいえば、主人公は萩原健一であり、自分の子供の友だち(医師の子)
を誘拐したものの、後のことをちゃんと考えていないので、どんどん破綻に追い込まれ
ていく様は、本当は心底悪いやつではないのだが、勢いで事件を起こしてしまい、
どうにもならなくなってしまった、というところだろう。(喫茶店経営に失敗し、誘拐に
使う自家用車が当時は珍しいAudi80 LEというところに彼の見栄っ張りさも見えているのに
これも勿体無いない。)
個人的に職業柄「誘拐による報道協定」の中に身を置いたものとして、身につまされる
ものはあったが、あんなに沢山の記者が出てきて右往左往するだけではストーリーには
ならない。唯一救いだったのは、萩原健一が逮捕され、パトカーに乗せられてくるところを
取材車で止めて、ガンクビ写真を撮る所かな。あと、宅麻伸が夜逃げする小柳ルミ子と
娘の写真をスクープしながら、彼らの心情を思いデスクに出さなかったところか。
上記のことから演技が良かったのは萩原健一、小柳ルミ子、そして幼い娘を心配しつくす
素人っぽい母親を熱演した秋吉久美子、といったところか。

結局、宅麻伸と藤谷美和子の恋愛も含め、あれも言いたいこれも言いたいでパンクして
しまった。だからずるずると時間だけが130分以上もかかってしまったのだ。中身の割に。
しかし、俳優もようけ出ていたなあ。今のようにスマホやカーナビ、などがあれば事件も
だいぶ変わっていように。(それを言い出すと、過去の警察小説は読めなくなっちゃうんだ
けれどね。例えば松本清張「砂の器」なんか、スマホがあれば、とは思っちゃだめですからね)
新聞の鉛活字を使った輪転機も今や珍しい。

最後になったが主題歌「風が息をしている」(作詞:谷川俊太郎 作曲:菊池俊輔)は
大変素晴らしい歌だ。
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<ストーリー:結末まで書かれています>
豊中市の私立学園一年生の三田村英之が、下校途中に誘拐された。県警本部の発表で、
犯人が英之少年の父で小児科医の三田村昇に三千万円の身代金を要求していることが
分かった。各新聞社に“報道協定”の要請があり、子供の生命がかかっているため、各社は
受けざるを得なかった。
三田村家には遠藤警部以下六名の警察官が入り込み、昇や妻の緋沙子と共に電話を待った。
武庫川の川原に緋沙子が一人で来るようにとの電話があった。川原には英之の学帽と
ランドセルが置かれてあった。

山岳地帯を貫いて、日本海側へ向かう高速自動車道。早朝の不甲峠を一台のアウディが
通過していく。数刻後、そのアウディからサングラスの男が降り、公衆電話ボックスに
向かった。ダイヤルをまわした先は三田村家。男は今日中に金をそろえるように指示して
受話器を置いた。
この知らせに大阪読売本社は色めきたった。「協定を結んだ以上、取材・報道は
自粛するが、協定解除に向けて取材の準備はおこたりなく!」檄をとばす吉本編集局長。

同じ頃、日本海を見下す断崖の上から、犯人が布団袋に入れた子供を投げすてようとするが、
密漁者たちがいるために失敗。その足で犯人=古屋数男は老母のいる実家へ寄る。
そこへ数男の妻・芳江から電話がかかってきた。芳江は喫茶店をだましとられた数男を
助けようと造花工場で働いているのだ。気が弱いくせに見栄っばりな数男は娘の香織を
私立学園に通わせていた。その香織と英之は同じクラスで仲良しだったのだ。

実家を出た数男は再び英之を殺そうとするが、袋の中から「オシッコ!」と訴える英之に
小用をさせているうちに殺意はしぼんでいった。途中で財布を落とし、持ち金も無くなった
数男は、三田村家に電話を入れ、取り引き場所として宝塚市内の喫茶店を指示。
捜査本部はあわただしく動き、記者たちも店を張り込んだ。危険を感じた数男は店に
近づかなかった。風邪気味だった英之が悪寒を訴えた。このままでは英之が死んでしまう。

焦る数男は、最後の指示を三田村家に伝えた。箕面市のレストランだ。三田村夫婦は警察に
張り込まぬように哀願し、レストランの前で待った。しかし、数男は路上に張り込んだ刑事
たちの姿を見つけた。万事休すだ。子供が死んでしまう。もう身代金は取れない……。
翌朝、路上に停車して呆然としている数男が逮捕された。トランクの中の英之は無事だった。
(Movie Walker)

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=148248#1こちらまで。

# by jazzyoba0083 | 2017-04-24 23:20 | 邦画・旧作 | Comments(0)

デッドプール Deadpool

●「デッドプール Deadpool」
2016 アメリカ 20th Century Fox.108min.
監督:ティム・ミラー
出演:ライアン・レイノルズ、モリーナ・バッカリン、エド・スクライン、T・J・ミラー他
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>

「アメコミファン」して評価に多少のゲタを履かせて頂きました。が、それをおいても
面白い映画だと思う。マーベル初のR指定になるほどの、お下劣、残酷、なのだが、
いわば「大人版マーベル映画」として、とっても楽しい時間を過ごせた。コミック映画って
最初のうちは、無邪気にノーテンキに正義のミカタをやっているのだが、シリーズが
進んでいくと、内省的になり、小難しい点が出てくる。バットマン、スーパーマン、
スパイダーマンなどなどまたアヴェンジャー系も皆そんな歴史を踏んでったような気がする。

ところがこの映画は、冒頭から徹頭徹尾、「とことん復讐」「やるなら容赦なく」という
男の子映画が持っていてほしいと願うカタルシスを十分すぎるほど積み込み、スピード感に
溢れ、楽しいことこの上ない。ただ、下ネタ満載(下ネタの画像も)だし、血がドバドバなので
それ系が嫌いな人にはお勧めできない。

もともと普通の人間だった男がミュータント化されるのはX-MENシリーズでもあったから
珍しい展開ではないのだが、ストーリーの展開が、なにせ、「いまからおバカ映画を始めます」
というクレジットが流れるくらい、人を食った、おバカで、お下品で、というもので、
眉間にシワを寄せて、なんて本来アメコミには要らない(と私は思う)要素はとことん排除し
その「過激っぷり」「バカっぷり」「おふざけぶり」の、半端ない突き抜け方を褒めたいと思う。
脚本と演出が上手く機能した結果だ。

また「デッドプール」こと、ウェイドの乾燥した性格もいい味付けで、醜い顔にさせられちゃう
のだが、めげずに愛する人のために悪と戦うという姿もカッコイイ!セリフもウィットが
効いていて楽しい。これぞアメコミの基本!アクションシーンのガジェットも含め闘いの工夫も良く
考えられていると感じた。加えてアクションの容赦・中途半端さが全く無い(非道無情ではあるが)
というのも、この手の映画を観ているものとしてはスカッとする。

また時制を前後させたり、敢えてデジタルの早送り場面を見せたり、CGの派手な使い方も
含めて、画作りにも興奮させられた。このところ観たマーベルものでは一番といってもいいかも
しれない。クセは強いけど。で、これがアメリカで大ヒットしたので、さっそく現在パート2を
製作中。今度はIMAX 3D版で観ようかな。本作の監督、これが一作目らしいけど、やるじゃん。

しかし、アヴェンジャーもどんどん増えていくけど、X-MENもどんどん新メンバーが増えて
いくなあ。
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<ストーリー:結末まで触れています>

ニューヨークでトラブルシューターをしながら日銭を稼ぎ生活しているウェイド・ウィルソンは、
高級娼婦のヴァネッサと出会い交際し始める。愛し合い結婚の約束をしたウェイドは、
意識を失い病院で末期ガンと診断される。

ウェイドは酒場に来たリクルーターの男の誘いに乗り、がんの治療と引き換えに極秘の
人体実験の被験者となることを決める。それと同時に、ヴァネッサの前から姿を消す。
ウェイドは施設でフランシスというミュータントの男から細胞を変異させる薬品を投与され、
変異を誘発する為に拷問を受ける。
ウェイドの細胞は変異し、不死身の肉体を手に入れるが、引き換えに全身が爛れた醜い
姿に変異した。意図的に火事を起こして施設から脱出したウェイドだったが、ヴァネッサが
醜い自分の姿を受け入れるとは思わず、再会を避けて盲目の老婆アルの家に居候する。

フランシスの言った言葉を頼りに元の姿に戻るため、覆面をつけて死人が出るかどうかの
賭け(Dead Pool)に由来したデッドプールと名乗り、フランシスと組織につながりのある
人物を襲撃する。

リクルーターの男からフランシスの居場所を聞きだしたウェイドは高速道路でフランシスを
襲撃する。
フランシスを追い詰めるが、そこにテレビ放送で騒動を見て駆けつけたミュータントの
ヒーローチーム「X-MEN」のコロッサスとネがソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド
が現れ、彼らと問答している間にフランシスに逃亡されてしまう。

デッドプールの正体を知ったフランシスは人質にヴァネッサを誘拐する。これを知った
ウェイドは、コロッサスとネガソニックの協力を得て、フランシスがいる巨大航空母艦が
ある廃棄場に向かい、フランシスの傭兵を相手に戦いを始める。
ウェイドはフランシスを追い詰め元の姿に戻すよう迫るが、フランシスは「元通りにする
方法などない」言いウェイドはフランシスを射殺する。

戦いの後にウェイドとヴァネッサは対面し、ウェイドは素顔を見せるが、ヴァネッサは
ウェイドを受け入れて二人が結ばれて物語は終わる。(wikipedia)

<IMDb=★8.0>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:84% Audience Score:90%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355574こちらまで。


# by jazzyoba0083 | 2017-04-20 23:10 | 洋画=た行 | Comments(0)

●「アイヒマン・ショー/歴史を映した男たち The Eichmann Show」
2015 イギリス Feelgood Fiction,BBC,and more.96min.
監督:ポール・アンドリュー・ウィリアムズ
出演:マーティン・フリーマン、アンソニー・ラパリア、レベッカ・フロント、アンディ・ナイマン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>

セミドキュメンタリーのような作りの中で、初めてテレビ放映された裁判として歴史に
名を刻むことになった、1961年を中心としたテルアビブでの「アドルフ・アイヒマン裁判」での
テレビ側の人間を中心に裁判が描かれる。
ユダヤ人が初めてナチを裁くという歴史的な裁判であり、この裁判で証言をした200人以上の
絶滅収容所体験者の口から出た言葉に世界が衝撃を受けた裁判としても有名なものだ。

本作では、歴史的なこの裁判をなんとかテレビを通して世界に送り出し、ナチスが欧州の
ユダヤ人に何をしたかを詳らかにしなくてはならない、と正義に燃えるテレビプロデューサーと
彼にフィーチャーされた赤狩りにあって仕事がなくなったドキュメンタリー映画監督の
コンビが、イスラエル当局の様々な制限を打ち破りついに放送にこぎつける。アメリカなどには
生で送れなかったので、ビデオテープにして空輸し放映したという。(この時代にもうVTRが
あったとはちょっと驚いた)

この映画でのハイライトは、もちろんアイヒマンやヘスらがユダヤ人にした仕打ちの人道的な
弾劾であることは勿論なのだが、この裁判を通して、表情を崩さないアイヒマンの変化を
何とかして捉えようとするドキュメンタリー作家としてのディレクターと、「テレビ映え」
視聴者受けに次第に傾いてしまう箇所(特に、ガガーリンの宇宙旅行とキューバ危機がこの
裁判に重なり世界の興味からこの裁判が遠のいてしまうことを危惧する時期)では、
プロデューサーとしてのテレビ的成功が全面に出てきてしまう側面との対比が、見せ場では
なかったか。プロデューサーとて正義感にあふれてはいるのだが、所詮テレビ業界の人間
なんだなあ、と。観てもらえてナンボじゃないか、という口だ。

そして、裁判でアイヒマンに見せる収容所の凄惨な場面は、作品中でもスタッフが気分が
悪くなり持ち場を離れざるを得ないようなものすごいものなのだが、ディレクターが狙い
たいアイヒマンの表情の揺れは撮れなかった。逆に証人が証言中に失神したりする。
その映像は、自分たちが作っているテレビ番組が超えることの出来ない圧倒的な存在を
示していた。
また当時は迫害されたユダヤ人たちがその様子を語ると、「そんなことがあるわけがない」と
世間から信用されなかった、という事実はショックだった。このアイヒマン裁判が、そうして
隠れてしまっていたホロコーストの実態をあぶり出す世界史的な役目もしたわけだ。
片や、ディレクターの宿の女主人とのやり取りで、結局アラブの地であった場所を
イスラエルとして建国してしまったことに始まる大いなる不幸も片方には出来てしまった
わけだ。イギリスの三枚舌外交の悪辣さはあったとはいえ、だ。

結局アイヒマンは人道に対する罪やユダヤ人迫害についての罪などで絞首刑になるのだが
自分に責任はない、と終始主張していた。多くのナチ司令官がそうであったように。
自分は命令されていただけだと。アイヒマンの本当の心情は語られることは無かった。
「所詮小役人に過ぎない」といえるのかどうかは誰も分かるまい。
本作でも最後にプロデューサーが語るが、こうした「正気の沙汰ではない」ことをする
のが、出来てしまうのが人間なのだ、ということ。今の世界情勢を見る時、当時のナチの
存在を、「歴史に消えた汚点」と言い切ってしまえない怖さを改めて感じさせた。

粛々と進むドラマではあるが、当時の映像も含め、見る価値のある映画である。今だからこそ。
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<ストーリー>
1961年にイスラエルで開かれた“アイヒマン裁判”を撮影し、世界にホロコーストの真実を
伝えたテレビマンたちの実話を映画化したドラマ。
歴史的TVイベントの舞台裏を通して、幾多の困難を乗り越え、世紀の裁判のTV放映を
実現させた男たちの葛藤と信念を描き出していく。
出演はマーティン・フリーマン、アンソニー・ラパリア、レベッカ・フロント。
監督は「アンコール!!」のポール・アンドリュー・ウィリアムズ。

 1960年、ユダヤ人絶滅計画を推し進めたナチ親衛隊の将校アドルフ・アイヒマンが
逃亡先のアルゼンチンでイスラエル諜報機関により拘束される。その後、彼はイスラエルへ
移送され、エルサレムの法廷で裁かれることに。
アメリカの若き敏腕プロデューサー、ミルトン・フルックマンはこの裁判のTV放映権を
獲得、監督に赤狩りで職を失っていた米国人ドキュメンタリー監督レオ・フルヴィッツを
起用するなど一流のスタッフを編成し、万全の体制で本番に臨もうと意気込む。
そんな彼らの前には、思いも寄らぬ数々の困難が待ち受けていたのだが…。

<IMDb=★6.5>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:--- Audience Score:56%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=355429#1こちらまで。

 

# by jazzyoba0083 | 2017-04-19 22:55 | 洋画=あ行 | Comments(0)

極秘捜査 Geukbisusa

●「極秘捜査 Geukbisusa」
2015 韓国 108分
監督・(共同)脚本:クァク・キョンテク
出演:キム・ユンソク、ユ・ヘジン、チョン・ホビン、ソン・ヨンチャン、イ・ジョンウン他
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<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

WOWOWのオンデマンドで、「誘拐報道」と間違えて観始めてしまった作品。このところの
こともあり、余程の興味が向かないと韓国映画は観ないのだが・・・。
最後に本人たちの写真のも出てくるのだが、1978年、釜山で実際に起きた誘拐事件を扱った
ものだ。が、これが事実に基づいたものじゃなくて単なる創りものだったら絶対に見続けよう
とは思わなかった。というのも、捜査の大きな力になっているのが「導師」といわれる
占い師だからだ。もちろん警察がそういう捜査を公認しているわけではないのだが、ソウル対
釜山とか、内部闘争とか、腐っている警察の中で、誘拐された子供の母親の気持ちを考えれば
いたたまれず、捜査に乗り込む際の、たまたま相棒となるのが、導師だったわけだ。

幼い幼稚園児が誘拐され身代金が要求されるのだが、心当たりがない。捜査を任されたのは
両親とつながりのあるコン刑事。母親はあちこちの占い師にすがるのだが、だれもが「もう
死んでいる」という。最後に訪れたキム導師のみは「まだ生きている」と占う。
そこからコン刑事とキム導師の真剣な捜査が始まる。そうしているうちにも、警察内部の
足の引っ張りあいや、「極秘捜査」を進めるコン刑事に対し、公開捜査をしようとする
上層部、敵はあちらこちらにいるのだった。

そうこうするうちに、キム導師が、四柱推命から土、水、などの気を受けて、誘拐された
児童がいそうな場所を予言する。これに従って、コン刑事らが動き出すが・・・。

結局、借金だらけのそこらにいる男が犯人で、逮捕され、幼児も無事に保護され一件落着
だったが、警察で表彰、昇進したのは、コン刑事の足をひっぱり最後だけ美味しいところを
もっていった嫌な幹部だけ。さらに、占いを当てたキム導師は、恩師である導師に手柄を
譲ってしまった。ラストシーンで、キム導師は、コン刑事が今後活躍し、身分もどんどん
昇進する、と予言し、字幕では、実際に今刑事は出世し、警視正にまでになったという
説明がなされる。

70年代の韓国警察のカネで動く腐り具合がちゃんと出ているし、リアルに起きたことの
緊張感はあるし、相変わらず彼の国の人はエキセントリックだし、まあまあ面白く観ました。
現代は韓国語がわからないと意味不明だろうが、カタカナにすると「グクビスサ」。
極秘捜査のハングル発音であります。
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<ストーリー>

韓国犯罪史上に残る奇妙な少女誘拐事件を映画化した実録サスペンス。ある裕福な家庭の
少女が誘拐され、担当刑事は母親の信頼する占い師と協力して捜査に当たることに。

釜山。小学生の少女が何者かに誘拐された。少女の家庭が裕福だったことから営利目的か
と思われたが、犯人からは一向に身代金を要求するような連絡がない。
担当のコン刑事は、安全を優先する極秘捜査の継続を主張するが、膠着状態が続き、
公開捜査に踏み切るべきという声は高まるばかりだった。
彼が自信を失う一方、少女の両親、特に母親は、信頼する占い師のキム導師が言う
「コン刑事が娘を救う」との予言を信じ続けるが……。
(WOWOW)

<IMDb=★6.3>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=356447#1

# by jazzyoba0083 | 2017-04-17 23:00 | 洋画=か行 | Comments(0)

●「ジャッキー/ファーストレディ最後の使命 Jackie」
2016 アメリカ Fox Searchlight Pictures,LD Entertainment,Wild Bunch.99min.
監督:パブロ・ラライン
出演:ナタリー・ポートマン、ピーター・サースガード、グレタ・ガーウィグ、リチャード・E・グラント他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

ジャクリーン・ケネディ、華やかで悲劇的な存在。大統領暗殺の数年後、ギリシアの大富豪オナシスと
再婚し、死亡時の名前は、ジャクリーン・ケネディ・オナシス、であった。また長男のJFKジュニアも
自ら操縦する自家用機の墜落で死亡、いまやJFKの直系の血を継ぐのは、現在楽天に勤務している
キャロライン・ケネディの長男となってしまった。
そのあたりの毀誉褒貶がないまぜになり、ジャッキーの本心というか実態は我々普通の日本人には
あまりよく理解さいれていないのではないか。また多くのアメリカ人庶民とても。

そんなジャッキーの、JFK暗殺後ほぼ1週間後に雑誌記者からインタビューを受ける形で、ホワイト
ハウスでの生活やJFKを巡る、あるいは子どもたち、ホワイトハウススタッフたちを巡る、結構
重い話が展開される。有名な話は知ってはいても、彼女が語る真実は、ジャッキーの新しい
イメージとして、個人的には面白かった。(映画に書かれたことが本当かどうかは分からないが)

ジャッキーは美人だし、富豪の娘だし、頭はいいし、ファッションアイコンでもあったので
ミーハーな気分で観に行くと、あかんですよ。映画は「重い」。けだし本作は、脚本と
ナタリーの演技を味わうものなのだろう。

ダラスで夫が銃弾に倒れた後、脳が飛び散る頭を押さえ、必死に呼びかけた。しかし、夫は
既に死んでいたことは判ったという。国の安全と政治を継続的に執行するために、棺を乗せ
ワシントンへともどるエアフォースワンの中で、副大統領リンドン・ジョンソンの次期大統領
への宣誓式が行なわれる。(有名なシーンだ)ジャッキーは側近のアドバイスを受け付けず、
血の付いた服で、どうどうと飛行機の先頭出入り口から外へと出ていく。

ジャッキーがホワイトハウスに入り、調度品を全て国民と現代のモチーフに会うように変更した
ドキュメンタリーの再現映像も使われ(この初めてホワイトハウス内部を公開した
ドキュメンタリーでジャッキーはエミー賞を獲得した)、自分がファーストレディとして
ホワイトハウスをどう変えようか、また夫をどうサポートしようか腐心したことが語られる。
一方で、暗殺後ジャッキーは、周囲からは同情の目で見られるが、立場的には「元大統領婦人」。
自分と夫がやってきたことが次々とジョンソンのスタッフににより上書きされていってしまう。

夫の葬儀さえ、自分の主張が通らなくなってきている。しかし自分を主張するジャッキー。
そこには、自分とJFKの仕事とホワイトハウスでの時間を、国民の心に永遠に残して欲しかった
という強い思いがあったからだ。それが二人の生きた証だからだ。そこにジャッキーの強い
こだわりを感じるのだ。そこには大統領夫人として幸せだったのか不幸だったのか、などの
感情は入らない、入れてもらえない。ラスト。最初に流産した子と、産まれた直後に死亡した
二人の子供の棺を夫の隣に埋葬してもらったシーンにおいて、彼女のケネディ家の嫁として
またJFKの妻としての「私的な」感情が戻ってきたシーンであったように思えた。

ナタリーのジャッキーは、似ている似ていないは置いておいて、そのほとんど笑わない演技は
弱さと毅然さがよく演じられ迫力があった。
アップの多用、記者との会見は正対ショットで、いわゆる「ナメ」を使わない新鮮さ、モノクロの
映像でホワイトハウスを紹介するドキュメンタリー映画の質と、当時の音声の再現、葬儀を
中心として時折使われる当時の映像も巧みであった。ジャッキーの心情を代弁するような、
いささか大仰ではあるが、音楽も映像・物語にマッチしていたといえる。

JFKがどういう人であったかとか周囲のスタッフがどうであったか、自分の子供たちはどうで
あったかとかはあまり関係なく、「元ファーストレディ」としてどう振る舞わなければなら
なかったか、そうでなければ、自分とJFKは歴史に残らなくなってしまう、という側面を
ジャッキーサイドから描いた映画である。
故に、サースガードがいきなりボビーとして出て来るが、アメリカ人なら知っている所では
あってもこれが、弟で司法長官だったロバート・ケネディとすぐには分かりづらかろう。また
もう一人の弟、エドワード・ケネディも作品中で紹介されることはない。

ひたすら「元ファーストレディ」となってしまったジャッキーの心情が綴られる作品なのだ。
毎度のことながらRotten Tomatoesでは、玄人筋に受けが良く、一般客にはそうでもない、と
いうのも理解出来る。日本でもヒットはしづらかろう。
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<ストーリー>
1963年11月22日、ジョン・F・ケネディ大統領は、テキサス州ダラスでのパレードの最中に
銃撃される。
目の前で愛する夫を暗殺されたファーストレディのジャッキーことジャクリーン・ケネディは、
怒りと衝撃に震えていたが、悲しんでいる時間はなかった。
すぐに副大統領が新たな大統領に就任して激務を引き継ぎ、刻一刻と夫が過去の人になって
いくのを目の当たりにしたジャッキーは、彼の名前と功績が後世に残るかどうかは、
この数日間の自分の行動にかかっていると気付いたのだ。
自らの手で築き上げてきた<ケネディ伝説>を永遠にするために、ジャッキーは命の危険さえも
顧みず、最後の使命に身を投じる──。(公式HPより)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:89% Audience Score:63%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=358900こちらまで。



# by jazzyoba0083 | 2017-04-16 16:40 | 洋画=さ行 | Comments(0)

●「ハイヒールを履いた女 I,Annna」
2012 イギリス・ドイツ・フランス Embargo Films.92min.
監督・脚本:バーナビー・サウスコーム 原作:エリサ・リューイン『わたしはアンナ』
出演:シャーロット・ランプリング、ガブリエル・バーン、エディ・マーサン、ラルフ・ブラウン他

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評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>

日本未公開映画を放送するWOWOWの「ジャパン・プレミア」で鑑賞。「愛の嵐」から39年の
シャーロット・ランプリング。相変わらず、何を考えているのかいないのかよく分からない謎の
配役。個人的には、ラストの孫の交通事故の下りあたりで訳がわからなくなり、ネットで調べて
ようやく理解した次第。まあ、私の観方が稚拙であったのおしかりは甘んじますが、それにしても
埋められた伏線がわかりづらくて・・・。空のブランコ、留守番電話・・・。後で言われれば、
なるほどね、とは思うけど、これじゃ分かりづらいでしょ?

人が入り乱れるので、あれがこれでこれがあの人でって確認していてこれだから、しれっと観飛ばすと
なんのこっちゃか全くわからない映画になってしまうのじゃないか。原作ものだから、といって映像化上、
無理からぬ事、とは到底思えない欠点となっていると思う。

中年の独身者を集めた「お見合いパーティー」があるよね、で、そこで主人公アンナ(ランブリング)が
ジョージ・ストーンという男と出会うね、で意気投合してジョージの家に行くよね、するとそこに、
悪の入り口に立ってしまっている息子が来ちゃうよね。息子は気まずく出ていくよね。
一方、殺人事件が発生するよね、殺されたのはジョージだわな。近くにいた刑事バーニーが現場に
急行するよね、するとそこでアンナ出会うよね、彼女はカエルさんデザインの孫の?傘を探して
いたと、いうね。バーニーは妻と上手く行かず別居しホテル住まいだね、バーニーはどうやら
彼女に一目惚れしちゃうふうだね。で、彼女を付けていくうちに、また独身パーティー会場に
やってくるね。お互い偽名を使って話し合うね。で意気投合するけど、その夜は送って帰るね。

アンナには娘と孫娘がいて、部屋に出入りしているんだね。一方警察の捜査は防犯カメラから
アンナのクルマを割り出すね。で、ジョージもアンナが犯人らしいとは思うけど、自分で何とか
したいと考えるね。(どうしようっていうんだろうかね)で、アンナの家に行くね。警察も来るね。
フラッシュバックとして、ジョージの頭を美術品で殴り殺しているシーンがでるね。やっぱり
ジョージを殺したのはアンナで正解。で、アンナは部屋にカギをかけ訪ねてきたバーニーを締め出し
窓から飛び降り自殺しようとするね。そのフラッシュバックでは、遊ばせていた孫娘が自分から
離れていってしまい交通事故に会う、というところだ。それを娘に知らせるという辛いシーン
だったな。そうか、娘と孫は随分前に死んでいたわけだな。それが理由で精神が不安定になり
男漁りをしていたのか? 消火器でドアを壊して部屋にバーニーはアンナの腕をつかみ、
「君が死ぬことはないんだ」と説得するね。それで終わり。
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まず、この刑事、ストーカーまがいで脇が甘い。事件に私情を持ち込みすぎ。そして殺された
ジョージの妻や息子、その仲間というか上層部にいる悪の存在は何だったの?全編の中で
アンナと孫の登場するシーンの置き場所は適切であったの?と制作上いろいろと突っ込んで
観たくなる所一杯。冒頭からネタばれを読んでから観ても大丈夫な映画だと思うので、観たい、
と思う人は映画にまつわる伏線や、生きている人なのか死んでいる人なのかを知ってから観ても
いいんじゃないかなあ。そんな映画でした。

<IMDb=★6.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:60% Audience Score:50%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=359843#1こちらまで。


# by jazzyoba0083 | 2017-04-13 22:30 | 洋画=は行 | Comments(0)

愛の嵐 The Night Porter

●「愛の嵐 The Night Porter」
1974 イタリア・アメリカ Lotar Film Productions.117min.
監督・(共同)原作・脚本:リリアーナ・カヴァーニ
出演:ダーク・ボカード、シャーロット・ランプリング、フィリップ・ルロア、イザ・ミランダ他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

私が大学3年生の時の作品。当時の印象は「キワモノ」。(それほど映画に興味が無かった時期
でもあるのだが)今回、WOWOWがシャーロット・ランプリングの作品を沢山放送した機会に
ちゃんと本作を観てみることにした。賞の対象になるような映画ではなかったが、その表現が
(時代も有ったのだろう)大変評判になった作品だから。シャーロットの上半身ハダカで
サスペンダーにナチSSの帽子、というポスターや雑誌への掲載写真は衝撃的ではあった。

1957年のウィーンで始まる本作は、かつて収容所にいた少女ルチア(シャーロット)と、そこで
この少女を倒錯した愛情の世界で愛した親衛隊のマックスが、意外なシーンで再会することから
始まる。今や高名なクラッシック指揮者の妻となったルチア、かたやホテルのマネージャーと
いう立場であった。
そこから、二人の戦時中の映像がカットバックしながら、現在の二人の「愛」?の行方を追う。
一方で、今でもヒトラーを信奉するSSの生き残りたちは、マックスの正体がバレ、ルチアが彼が
SSであったことの証人となることを恐れ、二人の口を塞ごうと説得を重ねる。

さもありなんのヒトラー親衛隊のユダヤ人を相手にした倒錯した、あるいは屈折した性癖は
衝撃的であるし、男娼の存在、性に対する異様な態度など、今でこそそうびっくりはしないの
だが、当時は衝撃を持って迎えらたのだろう。そこで記録係としてフィルムを回していた
マックスは、収容所のユダヤ人の中にルチアという独特の美しさを持った少女を見つけ、いわば
彼女を「調教」していくのだ。 

こうしてストーリーや映像表現を追っていくと、「変態映画、エロ映画か」と思い至ることは
簡単である。
確かにマックスの性癖はまともではない。そして、異常な環境で、死んで当たり前という中、
形はどうあれ、愛情を示してくれたマックスに対し、まともではないにしろ、深い愛情を
感じてしまっていくルチアではあったのだ。それは戦後15年ほども経過して後も、二人の心に深く拭い
切れずに残っていたわけで、再会でその炎に火が付いてしまったのだ。マックスは戦後
「ドブネズミとして生きる」と称し、SSであったことを伏せ、静かに暮らしていたいと
思っていた。ところがルチアの登場で、状況は全く変わってしまう。マックスの口からナチ
シンパのグループがバレてしまわないか、彼らは二人をなき者にしようとして来たのだった。

自分のアパートに閉じこもり、外には全く出ず、食い物はなくなり、仲間に拉致されることを
恐れルチアは鎖で繋がれる。だが、夫と離れマックスといることを選んだのはルチアであった。
マックスには同情は出来ないが、死の淵から形はいびつだが愛情という手を差し伸べ命を
救ってくれたマックスを深く愛してしまったルチアこそ悲劇(本人は悲劇とは思っていないが)
であった。

当時まだ20代であったシャーロットのあの独特の眼差し、そしてまるで少年のような薄い胸。
狂気の愛に取り込まれたユダヤ少女とその成長した姿は凄味があった。かたや一見人の良さそうな
おっさん風のダーク・ボガード、変態を突き抜けたある意味「純愛」を貫いた中年男の悲哀が
出ていた。二人は死出の服を着て、街から逃亡しようとするのだが、待っているのは悲劇であり、
二人はその結末を甘んじて受ける覚悟だったのだ。歪んではいたが、これも一つの「愛に生きた」
男女の話なのだ。女流監督の手により脚本も作られていることを思うと、ルチアの側面が一層
心を打つのだった。
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<ストーリー>

1957年、冬のウィーン。とあるホテルで夜番のフロント係兼ポーターとして働くマクシミリアン
(マックス)は、戦時中はナチス親衛隊の将校で、現在は素性を隠してひっそりと暮らしていた。
ある日、客としてアメリカから有名なオペラ指揮者が訪れる。マックスはフロントに現れた指揮者の
妻を見て困惑する。彼女、ルチアは13年前、マックスが強制収容所で弄んだユダヤ人の少女であった
からだ。ルチアもまた驚きの表情を隠せなかった。

ルチアは夫に早くウィーンを発とうと促すものの、出発の直前になって何故か一人で留まることに
決める。自らの出身地でもあるウィーンの街をさまよいながら、彼女は強制収容所での異常な体験を
追憶していた。収容所に入れられた当初からマックスに目をつけられ、彼の倒錯した性の玩具として
扱われたこと。周囲の冷たい視線を浴びながら、着せ替え人形のように順応せざるを得なかったこと―。


一方で、弁護士のクラウスやバレエダンサーのバートら、元ナチ将校の面々がホテルの一室に集まって
いた。彼らは戦後のナチ残党狩りを生き延びるために、ナチス時代の所業を互いにもみ消し合い、
時には証人の抹殺まで行っていた。そんな彼らの会合の中で、奇しくもルチアの存在が取りざたされる。
会合を盗み聞きしていた彼女は、身の危険を感じ今すぐ出発することに決めた。

部屋で苛立ちながら荷造りをするルチアのもとに、マックスがやってきた。彼はいきなりルチアを
殴りつけ、詰問する。「どうして今さら、目の前に現れたんだ!」しかしマックスは、彼女の腕に
残る囚人番号の入れ墨に、思い出したように唇を寄せる。2人は激しくもみ合ううちに、熱い息を
吐き、けたたましく笑いながら交わっていた。たちまち13年間の空白は消え、ルチアとマックスは
再び倒錯した愛憎の嵐へと叩き落とされたのだ…。(wikipedia)

<IMDb=★6.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:68% Audience Score:70%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=200こちらまで。


# by jazzyoba0083 | 2017-04-11 23:15 | 洋画=あ行 | Comments(0)

●「あの日のように抱きしめて Phoenix」
2015 ドイツ  Schramm Film Koerner & Weber 98min.
監督:クリスエィアン・ペッツオルト  原作:ユベール・モンティエ『帰らざる肉体』
出演:ニーナ・ホス、ロナルド・ツァフェルト、ニーナ・クンツェンドルフ、ミヒャエル・マールテンス他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>

戦争がもたらす不幸の一形態を、サスペンスの要素を巧妙に取り入れて訴えた。個人的には
好きな作品だ。原作があるので、ストーリーの面白さは映画が本来持っていたものではないのだ
ろうが、映像化することにより、この物語が持つ重要性が一層大きく示されたといえる。
舞台は第二次世界世界大戦終結後のベルリンである。

ナチ対ユダヤというとどうしても問題が大きくなる部分に目が行きがちだが、夫婦という最小限の
他人同士のユニットの間に訪れたこの問題が、夫婦だからこその濃さと主張を持って迫る。

加えて、ジャズの名曲「スピーク・ロウ」をこの映画の重要なファクターに置いたという点も大きな
評価になる。オープニングのベースのみの旋律で始まり、ラストは主人公ユダヤ人ネリーが夫のピアノ
伴奏で歌うのだが、その歌詞の内容とリンクした夫の驚愕の表情、そして歌い終わり光の中に消えていく
ネリーの姿は彼女の未来への一筋の希望を示していて鮮やかであった。それが原題へと続くのだろう。

また、ネリーの友人にしてナチス・ドイツを憎み、パレスチナに建設されるユダヤの国に一緒に行こうと
誘う弁護士ルネ、彼女は何くれと無くネリーを助けるのだが、「死者にしか思いが向かないの」と言って、
最期は自殺してしまう。ナチスにメチャクチャにされた人生と結局シオニズムに身を投ずることもなく
死んでいくルネにも、戦争が一人の人生・精神を如何に破壊するものか、を示していて興味深いものが
あった。死んだルネはネリーの夫がネリーがナチに逮捕される前に既に離婚を申し立ていたという書類を
残していた。そして彼女が残した銃で夫を殺そうか、という思いに至る時期もあった。が、ネリーは
夫を愛していたのだ。心から。しかし、その書類を見るに及び、ルネが言っていた「あなたの夫は
あなたが死んだことで、遺産を独り占めしようとしているのよ」という言葉を信じるに至る。

本当の妻なのに、ナチスにより顔に壊滅的な怪我を負って整形をしたため、本当の妻と見抜けぬ
裏切りの夫は、それなりの小物っぷりがそれはそれで良かった。彼の人生を誰が咎められようか。あの
戦時に置いて。声や体つきで本物と分かるだろう、整形うますぎだろう、とかいうツッコミは
さておくとして、長い映画ではないが、2時間以上の映画を見たような「思い」が残った。
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<ストーリー>

1945年6月、敗戦直後のドイツ・ベルリンに元歌手のユダヤ人女性ネリーが強制収容所から
奇跡的に生還する。顔に深い傷を負った彼女は、親友の弁護士レネの助けで顔面修復手術を受ける。
傷の癒えたネリーは愛する夫ジョニーとの再会を果たすが、彼女が死んだと頑なに信じている
ジョニーは彼女を妻によく似た別人と思い込み、彼女の一族の遺産を手に入れるために妻に
なりすましてほしいと頼む。
激しいショックを受けたものの、ジョニーとの再会のみを心の支えに収容所で必死に生き抜いて
来た彼女は、ジョニーの提案を受け入れ、ジョニーと共同生活を始める。
元の顔を失い、自分自身をも失っていた彼女はジョニーの言うままに昔のネリーを演じる中で
本来の自分を取り戻せたような気持ちになっていく。

一方、ジョニーが保身のためにネリーをナチスに売り、彼女の逮捕直前に離婚までしていた
事実を知るレネは、ネリーにジョニーは裏切り者なので縁を切れと言う。ネリーも疑念を抱く
ものの、事情があったのだと思い、ジョニーの言うがままに妻を演じ続ける。
そんなある日、レネが自殺する。レネの遺書には、ジョニーが一方的にネリーと離婚していた
ことを示す書類が同封されていた。

ジョニーは昔のネリーを知る友人たちとネリーとの「再会」の場を設ける。「ネリー」として
受け入れられた彼女は、友人らの前でジョニーとの思い出の曲「スピーク・ロウ(英語版)」を
歌いたいとして、ジョニーにピアノ伴奏を頼む。動揺しながらもピアノを弾き始めたジョニーは、
ネリーの歌声と腕に刻まれた囚人番号でようやく彼女が妻本人であることに気づく。
伴奏の手を止め、呆然とするジョニーを無視してネリーは歌い続ける。そして、ジョニーを残して
その場を去っていく。(wikipedia)

<IMDb=★7.3>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:98% Audience Score:78%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=353091こちらまで。


# by jazzyoba0083 | 2017-04-10 22:50 | 洋画=あ行 | Comments(0)

●「LION/ライオン ~25年目のただいま~ LION 」
2016 オーストラリア The Weinstein Company,Sea/Saw Films.119min.
監督:ガース・デイヴィス  原作:『25年目の「ただいま」』サルー・ブライアリー
出演:デヴ・パテル、ルーニー・マーラ、サニー・パワール、ニコール・キッドマン、デヴッド・ウィンハム他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想:ラストまで書かれています>

タイトルがなぜ「LION」なのかは、映画の最後の最後に明かされるので、ネタバラシは
しておかないで置きます。今年のオスカー6部門にノミネートされた作品がようやくシネコンに
やってきました。「ムーンライト」が単館(名古屋では)上映になっている状況であれば、
本作がシネコンで上映されたのが奇跡のようだ。そのくらい内容は地味目である。
ちなみにうちの直ぐ側のイ○ン系のシネコンでは上映していない。まあ、今は春休み系の戦隊もの
やアニメ、JKものなどが幅を効かせているからなあ。

さて、本作、原作がある実話ものなので、感動のゲタを履いているとはいえ、よく出来た映画では
ある。では何故個人的に★が7つ(7.5)なのか。その理由が、少年時代を描く時間帯が長すぎた
んじゃないか、と感じたからだ。その部分では映画の抑揚が少ないと思った。確かに、成長してからの
主人公が仕事を捨ててまでグーグルアースを使って自分の出身地や実母、実兄と会いたい、との
思いを強めるための仕掛けとは理解出来るのだが、物語が大きく動き出すまでが平板な感じだった。
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インド、コルカタ付近で暮らしていた貧しい一家。兄弟はある日はぐれてしまい、弟サルーは動くな、と
言われていたのに列車に乗って、迷子となる。それ以来25年。彼はオーストラリアのお金持ちの
慈善篤志家の養子となり、何不自由無い成長をしていた。そして、同じインドの施設からは兄貴分と
して、自傷癖のあるマントッシュという男の子も養子として貰われてきたのだった。
成長し、ホテル経営を学ぶためメルボルンの大学で学ぶことになる。そこには多くの仲間がいた。
中に恋人となるルーシー(ルーニー・マーラ)もいた。サルーは育ての母スー(キッドマン)に
大きな感謝と愛情を感じていつつも、実の母は、兄は元気でいるだろうか、気になって仕方が
ない。友人の勧めで、グーグルアースを使って、幼いころの記憶を元に、実家のありかを探し始めた。

熱中する余り、仕事もやめ、恋人ルーシーとの間も思わしくなくなる中、彼は遂にインドの実家を
割り出す。
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インドの孤児を養子に迎えるというオーストラリアの夫婦。子供を作ることは出来たが、生まれた
子供が必ず幸せになるだろうか、ならば自分らの子供を持たず、養子を取り、彼らを立派するほうが
この世に意義がある、ということからの行動だが、カルトでもないのに、こうした夫婦がいるんだ
なあ。ブラピとアンジーみたいに自分の子もいて、養子もたくさんいて、慈善に熱心という金持ち
なら多少は理解も進むのではあるるが。

それと、観終えて一番思ったのは、たまたま前日にトランプがイランにミサイル攻撃をした直後
だったからかもしれないが、この映画に描かれているように、殆どが善人だったら世の中どんなに
いいだろう、ということとその反面、年間8万人いると説明されるインドの行方不明の子供の
原因の多くが貧困であり、中東問題も宗教問題も大きいが、貧困の問題も見逃されないものだ、
ということ。
一方で、どんな事情があるにせよ、実の家族を思う人の愛情の強さ、とは何者にも変え難いと
いうこと。さらに一方で、サルーのように恵まれた家庭に引き取られPCを自在に扱え、
実家を探し当てて、その土地まで行く金銭的な余裕があった、という側面も忘れてはならない
とも。サルーの家族への愛、そして努力を否定するものではないし、よくやったとは思うけど、
彼みたいな子供ばかりではないということも私たちは知っておかなくてはならないだろう。

ラストに本物のサルー一家とオーストラリアの育ての母が対面する動画が出て来るが、スチル
写真のほうが効果があったと思うのだが。

出演者陣については全体に良いと思う。特に最近個人的に注目のルーニー・マーラがここでも
大事な役割を担っていて好演。
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<ストーリー>
5歳の時に迷子になり、オーストラリア人夫婦の養子として育てられたインドの少年が、
大人となりGoogle Earthを駆使して生家を見つけ出し、25年の時を経て実の家族との再会を
果たした奇跡の実話を「スラムドッグ$ミリオネア」「奇蹟がくれた数式」のデヴ・パテル主演で
映画化した感動ドラマ。
共演はルーニー・マーラ、デヴィッド・ウェンハム、ニコール・キッドマン。
監督は、これが長編デビューとなるオーストラリアの新鋭、ガース・デイヴィス。

 優しい養父母のもと、オーストラリアで何不自由なく育った青年サルー。友人や恋人にも恵まれ、
幸せな日々を送る彼だったが、ひとつだけ誰にも言えない悲しい過去があった。インドの田舎町に
生まれたサルーは5歳の時、不運が重なり兄とはぐれ、たったひとり回送列車に閉じ込められて、
遥か遠くの街コルカタに運ばれてしまう。
そして言葉も通じない大都会で過酷な放浪の末に、オーストラリア人夫婦に養子として引き取られた
のだった。
ある時、サルーの脳裏にこれまで押しとどめていたそんな少年時代の記憶が強烈によみがえる。
インドの家族への思いが募り、わずかな記憶を頼りに、Google Earthで故郷の家を見つけ出すと
決意するサルーだったが…。(allcinema)

<IMDb=★8.1>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:86% Audience Score:92%>

この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=359060#1こちらまで。

# by jazzyoba0083 | 2017-04-09 11:20 | 洋画=ら~わ行 | Comments(0)

●「ミッシング・サン Meadowland」
2015 アメリカ Bron Studios,Itaca Films.94min.
監督・撮影:リード・モラーノ
出演:オリヴィア・ワイルド、ルーク・ウィルソン、ジョバンニ・リビシ、エリザベス・モス、タイ・シンプキンス他
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<評価:★★★★☆☆☆☆☆☆☆>
<感想>

IMDbの評価は低かったが、「突然消えた子供に、夫婦は・・」というサマリーに釣られ
観てみた。いや、辛かった。「辛い人生」って意味じゃなく、観ているのがシンドいと
いう意味で。何を言いたいのか分からなかった。子供を失った夫婦の悲しみを表現しようと
しているのか?それだったらもう少し細部にコダワリがほしい所だ。

ドライブの途中で寄ったガソリンスタンドのトイレからこつ然と消えた一人息子ジェシー。
何処へ言ったのか、誰かが誘拐したのか、事故か、事件か。全く手がかりが無いまま、ラスト
では、警察から当時着ていたジェシーの服が証拠として示される。まあ、だれかに拉致され
殺されたんだろうな。ま、そういう平仄を合わせるに際し、ちらりと決定的なものを見せる、と
いう手法も分からない訳ではない。

では、子供を失った教師サラはどうか。精神安定剤を服用しながらも酒を飲む、学校にいるアスペルガー
の子どもアダムにジェシーの面影を重ね、彼の父親と会い、セックスに至る。何、この母の心情。
つまり壊れた、ってこと?まだ証拠のシャツの事を聞く前だよ。壊れたらそれでいいじゃない?
そして、アスペルガーのアダムへの対応の始末は?像の涙で終わりかい!って感じ。あのあたりは
情緒に流され過ぎではないか。警察官のオヤジの立場も今ひとつはっきりしない。
この手の神隠し映画はこれまでもいろいろあったけど、話が抽象?過ぎて分かりづらかった。
Rottentomatoesのtomatometerの100%は、壊れているんじゃないか?
日本劇場未公開作品。
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<ストーリー>
TVドラマ「The O.C.」で注目されたワイルドが、消えた息子を案じるあまり精神を崩壊させて
いく母親役を熱演したサスペンス。共演は「キューティ・ブロンド」シリーズのL・ウィルソン、
「テッド」のG・リビッシ。加えて「ジュラシック・ワールド」の子役T・シンプキンスが孤独な
少年役で印象深い好演を見せた。
サスペンスより、むしろ最愛の息子を突然奪われた両親の苦悩を描く人間ドラマに重点が置かれた
演出が光る。「最高の人生のはじめ方」などの撮影を手掛けたR・モラーノが監督デビューを飾った。
(WOWOW)

<IMDb=★5.8>
<Rotten Tomatoes=Tomatometer:100%  Audience Score:57%>


この映画の詳細はhttp://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=357398#1こちらまで。



# by jazzyoba0083 | 2017-04-07 22:40 | 洋画=ま行 | Comments(0)