スラムドッグ$ミリオネア Slumdog Millionaire

●「スラムドッグ$ミリオネア Slumdog Millionaire」
2008 イギリス・アメリカ Pathe Pictures,Celador Films,Film4,120min.
監督:ダニー・ボイル  原作:ヴィカス・スワラップ著「ぼくと1ルピーの神様」
出演:デヴ・パテル、マドゥル・ミッタル、フリーダ・ピント、イルファン・カーン他
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<2008年度アカデミー賞作品、監督、脚色、撮影、作曲、歌曲、音響、編集賞受賞作品>

遂に公開された、この映画。今年のアカデミーを席巻し、インドのムンバイを舞台に、無名の配役、
低予算で製作されたにも関わらず、そのストーリーの素晴らしさ、インドの俳優の名演で、8部門を獲得
してしまいました。

話題作にも関わらず、MOVIXでは、「クローズゼロⅡ」や「名探偵コナン」の客が優先で、小さい小屋で
の上映でした。入りはまずまず。

で、感想。「素晴らしい!」。ぜひ皆さんに見ることをお勧めしたい映画です。変に小理屈を捻るでもなし
ムンバイを舞台に、そこにある人生を力強く生きていく、ジャマールやラティカたちの、日本には絶対に
ない青春を味わってほしい。ストーリーの核をなすのが日本でもおなじみの「クイズ・ミリオネア」なので
理解しやすい。テンポ、映像、音楽、演技、そして暑さを感じさせるムンバイの景色。オスカーの名に
恥じない、見事な出来だと思う。評価の定まった映画を褒めることはたやすいことだが、この映画は
日経新聞で渡辺祥子が言っていたように「映画の面白さとはここにある」。

ストーリーも単純で、冒頭、番組で1000万ルピアまで獲得し、最後の2000万ルピアに挑戦するところ
で「おまえはインチキしているのに違いない」、ということで、不正行為を疑われ警察で取り調べを受ける
ことになるムンバイのスラム街育ちの青年ジャマール。
しかし確かに学校もろくに行っていないジャマール少年が、なぜ難しいクイズの最後まで来たのか、
一問一問の正解にたどりつくまでの幼いころの、酷い生活を警部に答えるという形で
進行していく。たまたま、自分のこれまでの人生の困難なシーンで出くわしたことがクイズに出てくる、
というご都合主義の匂いもあるが、そこにムンバイの下層市民が搾取されながらも力強く生きていく
さまが描かれる仕組みになっている。親のない子供らを集めて歌わせて金を稼ぐ悪徳男。酷いことに
盲目だと、3倍ほど稼げるということで、幼い子を薬で眠らせておいて眼を潰してしまう。なんと残酷な
ことが行われているのか!しかし、子供らはしたたかに生きていく。それがムンバイで生きるということ
だからだ。

また、幼いころから恋心を寄せ続けていたラティカへの変わらぬ想いもストーリーの中核をなす。
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彼は、街のボスに売られていったラティカも観ているに違いないと、この番組に出たのだった。彼に
最後の質問に正解するところまでいくとは思いもしなかったろう。オフィスの電話オペレーターの
お茶くみ少年に、医者や弁護士でさえ答えられない問題が判る筈がない、と司会者やスタッフも思うが、
あにはからんや、出てくる問題がどれも、自分の酷い人生で偶然知りえたことだった。とんとんと
正解を続け、最後の前でその日の放送が終わる。
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そこで、司会者は警察にジャマールを不正行為の疑いで引き渡し、捜査が始まるが、ジャマールの
話を聞いていくうちに警部も彼がなぜ正解を続けるのかを理解し、不正がなかったことを確信し、
次の日の番組に出演することを許可する。その夜のうちに、スラム街出身の少年が億万長者になるかも
しれない、というので、最後の問題に挑戦する次の夜の番組には全国の国民から注目が集まった。

愛するラティカは、街のボスに囲われ半ば軟禁状態。ボスの手下となって働いていたジャマールの兄
サリームが、彼の携帯をラティカに渡し、ここから逃げろ、という。幼いころは仲の良かったジャマールと
サリームだったが、サリームが暗黒街に身を置くようになり、ラティカをボスの元に送り込んだことから
ジャマールとは縁を切った状態だった。クイズ番組に挑戦している弟が何をしようとしているかが判った
兄は、ラティカを解放し、自分はボスたちと相撃ちになって死んでいく。サリームは芯からの悪党では
無かったのだ。ジャマールの栄光と入れ違うように、消えていく・・・。

サリームに逃がしてもらったラティカは、テレビ局に向かうが、渋滞に引っ掛かってしまう。奪ってきた
クルマを降りて電気店のテレビで番組を見ていると最後の質問が判らなかったジャマールはライフライン
のうちテレフォンを使った。相手は兄だ。しかし、兄の電話は今はラティカの手に。

鳴り続ける電話に応答がない。テレビで自分が持っている電話が鳴っていることに気付いたラティカは
急いでクルマに戻り、電話を取る。出た女性に、司会者は「お兄さんじゃないようですね」と。
すぐにラティカと気がついたジャマールは、最後の質問
「デュマの三銃士の3人のうち、アトス、ポルトス、ともう一人は誰?」という質問をラティカに聞くが、
ラティカも判らない。ジャマールは勘で、Aのアラミスと答える。ファイナルアンサー。

そして、司会者から出たのは「大正解!」。こうしてスラムドッグは、億万長者になったのだった。
ラティカとジャマールは、テレビ局では会えなかったが、駅で偶然2人はお互いの姿を見つけ、ついに
ジャマールの長い長いラティカへの想いは叶ったのだった。
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文章で書くと、映画の感じが出づらいが、2時間というちょうどいい時間の中で、クイズ番組という緊張感
と、ジャマールのムンバイでの短いのだけど、ヒンドゥーとイスラムの対立で母が殴り殺されたことを
始め、様々なインドの、ムンバイの問題が提示されていくので、息つく暇もない。子役たちがよく頑張って
いたし、無名だとはいえ、映画大国インドの俳優は、したたかで上手い。ラスト、出演者が皆で踊る
シーンは、インド映画のお約束。
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映画の冒頭に“彼がなぜミリオネアになれたのか?”という問いが字幕で出てくる。
A:インチキだった B:ついていた C:天才だった D:運命だった
 
答えは最後に出てくるが、ここまでのあらすじを読んだ方は、どれが正解かはお判りでしょう。
エンタテインメントの中に人間を見事に描いたダニー・ボイル、次作が楽しみだ。
この映画の情報はこちらまで。
Commented by oguogu at 2012-07-11 10:58 x
TB&コメントさせてもらっちゃいますね~。
私も見るのは遅くなってしまいましたが、色々な人に紹介したい映画だと感じました。
インド映画って私の中ではイマイチだったのですが、コレは感動しました。
おっしゃるとおり、ムンバイで生きる子供がとてもしたたかでした。
ふと思ったのが、幼い頃からあんな生活をしてきて、大人になってるのですから、そりゃぁ今の日本人がかなうはずがないとw
Commented by jazzyoba0083 at 2012-08-06 15:54
oguoguさん、済みません、気にはしていたのですが
超遅レスで・・・。4年前の映画なので、読み返してみてストーリーを思い起こすという始末。ご指摘のようにああいうしたたかな子供たち、バイタリティの固まりのような子供たちのいる国の未来は明るいですね。
by jazzyoba0083 | 2009-04-19 12:30 | 洋画=さ行 | Comments(2)