グラン・トリノ Grand Trino

●「グラン・トリノ Grand Trino」
2008 アメリカ Warner Bros.Village Roadshow Pictures,Malpaso Production,117min.
監督・製作:クリント・イーストウッド
出演:クリント・イーストウッド、ビー・ヴァン、アーニー・ハー、クリストファー・カーリー他
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<すべてネタばれしています>

「チェンジリング」に次いで早くもイーストウッドの新作を見られる幸せ。なんでこんなに間を置かずに
製作しちゃったのかな。来年のオスカー各賞には受賞資格があるのかな。ダブっているならもったいない。

で、先週末封切られ、本日の鑑賞となりました。32回目の結婚記念日を奥さんと「グラン・トリノ」を観る、
って、どういう風でしょう。
シネコンはゴールデンウィークということで、コナンやレッドクリフ目当ての人でごった返していました。
この映画の小屋には高年齢の人が多かったですね。派手な映画ではないですから。

で、ラスト、主題歌の「グラン・トリノ 」」が流れると、もう、ダメ。涙が止まりませんでした。私は普段
奥さんと映画を見に行く時は、涙はこらえるのですが、今日はダメでした。エンドロールが終わり、館内が
明るくなってから、奥さんに断ってひとしきり泣かせてもらいました。嗚咽が漏れるような感じでした。
なぜ、泣いたのだろう。会場のあちこちですすり泣く音が聞こえていましたが、「ベンジャミン・バトン」の
時とは涙の種類が違うような気がして、もう一度反芻して考えてみました。

①主人公ウォルトが可哀そうだから?
②主人公ウォルトの生きざま死にざまに心打たれたから?
③エンディングの歌が、物語を締めくくるにふさわしいとてもいい歌だったから?
④隣人のタオの将来に希望が持てたから?

やはり、②のウォルトの死にざまに心打たれた、からというのが一番近いでしょうか。他の要因も複合的に
重なっているのですが。ぶっきらぼうで頑固な老人が、自分に心を開いてくれ、受け入れてくれた人々の
ために、自分なりのやり方で恩返しをした、朝鮮戦争のトラウマをずっと引きずってきた老人が、
ようやく自分にけじめをつける糸口を見つけ、それを人のために役立てることが出来た幸せが、あまりにも
哀しい(あわれっぽいということではなく)。

ラストシーンで、ウォルトの遺言で自分のものになった72年型グラン・トリノを、ウォルトの愛犬だった
スージーとドライブ、そのバックに優しくも哀しい「グラン・トリノ 」の主題歌が流れると、もうだめ。

イーストウッドは、特撮や、大向こうをうならせるセットなどに凝らず、日常にある生活の中で、ある男の
生きるさまを描いて見せた。キャスティングも知っている人はいないし、製作費はそうかかっていないので
ないかと推察できる。「強い女」を描いた「チェンジリング」で相当金を使った彼が、対極にあるような
「強い男」の話を金をかけずに作ったという形かしら。彼はこの作品で俳優としては引退するそうだが、
タイプとしては「許されざる者」に近い匂いがするが、最後に、すごい作品を創りましたね。
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『長年一筋で勤め上げたフォードの工場を引退し、妻にも先立たれた孤独な老人ウォルト・コワル
スキー。(イーストウッド)自宅を常にきれいに手入れしながら、M-1ライフルと72年製フォード車
グラン・トリノを心の友に静かで退屈な余生を送っていた。
しかし彼の暮らす住宅街に、もはや昔馴染みは一人もおらず、朝鮮戦争帰還兵のコワルスキーが嫌って
やまないアジア人をはじめ移民の外国人ばかりが我が物顔でねり歩く光景に苦虫をかみつぶす毎日
だった。
そんなある日、彼が大切にする庭で、隣に住むモン族の気弱な少年タオが不良少年グループに絡まれて
いた。
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彼らを追い払おうとライフルを手にしたコワルスキーだったが、結果的にタオを助けることに。
タオの母親と姉がこれに感謝し、以来何かとお節介を焼き始める。最初は迷惑がるものの、次第に
父親のいないタオのことを気に掛けるようになるコワルスキーだったが…。』(allcinema)

タオを助けたのは、彼が不良仲間から、ウォルトのグラン・トリノを盗んでこい、と言われて、ウォルトに
見つかってしまい、そのドジを責められていたのだった。
不良の仲間に入ろうとしないタオは、家族の名誉だからといって1週間、ウォルトの家で何かを手伝うと
いう償いをしたい、と申し出る。迷惑顔のウォルトだったが、了解して、色んな事をやらせてみると、真面目
にしっかり仕事をするタオに興味を覚える。
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頑固一徹で、二人の息子家族ともあまり付き合いたがらないウォルトだが、隣人のモン族の家族とは
バーベキューをやるまでに心を開くようになる。そして、ウォルトはタオを、知人の建築現場監督に紹介し
仕事も斡旋してやったのだった。
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しかし、タオに絡みつく従兄弟のワルたちは、彼にしつこく付きまとい、現場から帰ってくるところのタオを
囲み、ウォルトが貸していた工具も壊してしまった。真面目に働こうとするタオが酷い目にあったことに
激怒したウォルトは、従兄弟たちの家に行き、一人の男をぼこぼこにやっつけてしまった。
これを恨んだワルたちは、ウォルトの家にマシンガンを撃ちこみ、タオの姉をレイプしてしまったのだ。
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これにはタオも切れて、すぐにでも報復に、とウォルトを誘うが、計画はしっかり念を入れて練らねば
ならない、と説得する。そうして、彼はあれだけ嫌がっていた教会での懺悔を告白し、床屋に行き、
スーツを仕立て(これが死に装束の注文だったことになるのだ)、自分の家の地下室にタオを軟禁して、
一人で、ワルたちの家に向かった。
ウォルトが来たことを察知したワルたちは、全員が銃を持って現れた。ウォルトは、たばこをくわえ、
火を貸してくれ、というが、当然貸すわけもない。じゃあ、しょうがないな、自分で、と腕を胸のポケットに
入れた瞬間、ワルたちの銃が一斉に火を噴き、ウォルトは、ひとたまりもなく斃れた。

ワルの家に行く前に、ショックで寝たきりになっているタオの姉に電話でタオが自分の家の地下室にいる、
家の鍵は玄関の飾りの下にあると連絡してきた。
従兄弟の家にいってみると、ウォルトはすでに黒い死体袋に入れられていた。様子を聞いた警官は、
彼は、本当にライターを取ろうとしたのだ、丸腰だったのだ、目撃者がいるから、撃ったやつらは長期刑に
なるな、と説明したのだ。
タオら一家に迷惑がかからないように、ワルたちに復讐するために、ウォルターは、わざと撃たれに来た
のだった・・・。

遺産分けを聞く、息子家族。弁護士からは、家と敷地は教会に寄付、そして、へそピアスの姪が欲しが
っていたグラン・トリノは、タオに、一切の改造を認めないという条件で、譲ることになっていた。

そして、ラスト。グラン・トリノをドライブするタオ。まるでウォルトの化身のようなグラン・トリノは、優しく
タオを包んでいるように見えたのだ・・・。ウォルトの思いは、しっかりタオの心に伝わったことだろう。
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<Ford Gran Trino 1972model>

細かいセリフ回しの面白さとか、汚い言葉のやり取りとか、グラン・トリノの話題、ウォルトが朝鮮戦争で
いかに辛い目を見て来たか、など映画の味付けとなる個所はいっぱいある。
ただ、ウォルトが肺ガンと思しき病気に侵されているのだが、吐血するシーンは必要なかった気がする。
それとなく映像化できたのではないか。こういう自ら死に行く爺さんが余命いくばくもない、というのは
良くある話になってしまうので、そのあたりの押し付けはもう少し軽い方が良かったと思う。

いずれにせよ、私としてはとてもいい映画で感銘を受けたことは確か。宣伝のように「老人もこういう役立ち
かたがあるのだ」というような単純な話ではない、と思う。銃を持たずに決戦に臨む頑固老人は、
ワルたちを殺して自分も死ぬ、という選択肢も当然あったはずだが、朝鮮戦争で、自分がしてきたことを
考えると、そうすることでは未来への解決には決してならないということが判っていたからだ。
それはタオたちへの至上の愛にほかならない。
自らを受け入れてくれた人々に対し無償の愛を返すという崇高な物語であると感じたのだが。

会社の後輩から「レボリューショナリー・ロード」「ベンジャミン・バトン」「チェンジリング」「スラムドッグ・
ミリオネア」それに「グラン・トリノ」の順位を付けてみてください、という宿題を貰った。
さて、困ったぞ。イーストウッド作品が2つも入っている。涙が流れたのは「ベンジャミン~」と「グラン・
トリノ」だ。そのほかの作品も大変面白かった。面白さの方向が違うので、甲乙を付けるのはしんどい
作業だが、う~ん!!
①「グラン・トリノ」  ②「ベンジャミン・バトン」 ③「スラムドッグ・ミリオネア」 ④「チェンジリング」
⑤「レボリューショナリー・ロード」  というところかなあ。しかし、この順位付けはほとんど意味がない。
私にとっては全部が一位であると思う。ただし、同じイーストウッド作品同士を比較するのなら、
「チェンジリング」より「グラン・トリノ」の方に軍配を上げたい。訴えるものがストレートに伝わってくる強み
なのだろう。それにしても、イーストウッドという人、すごいなあ。

ラストシーンに流れる、テーマ、最初はイーストウッド自身が歌っています。以下が泣かせる歌詞です。
Jamie Cullum - Gran Torino lyrics | LyricsMode.com
この映画の情報はこちらまで。
Commented by samurai-kyousuke at 2009-04-29 19:13
観て来ました。
良い映画でしたね。
犬も車も無事でほっとしました。(笑)
Commented by つよし at 2009-05-14 18:45 x
今日、グラントリノを観てきました。ラストシーンで俳優としてのクリントイーストウッドが亡くなった気がして泣けてきました!
Commented by jazzyoba0083 at 2009-05-17 00:41
つよしさん 
コメントありがとう!この映画、ホント泣けました。何気ない日常に
潜むアメリカという国の深層を垣間見せてくれたイーストウッドは
さすがに上手いですね。
Commented by ヒロシ at 2011-04-04 16:37 x
泣けるぜぇ…
by jazzyoba0083 | 2009-04-29 12:20 | 洋画=か行 | Comments(4)