実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

●「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」
2008 日本 若松プロダクション、スコーレ 190分
監督・脚本・製作:若松孝二  音楽:ジム・オルーク
出演:坂井真紀、ARATA、並木愛枝、地曳豪、伴杏里、大西信満、中泉秀雄、伊達健士、奥貫薫ほか。
ナレーション:原田芳雄
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昨年のキネ旬ほか、ネット上でも評判が良く、気になっていたものの、若松監督の作品は観たことが
無かったし、第一190分という超長編にチャレンジする勇気もなかった。ただ、この事件はリアルタイムで
見聞していて、あさま山荘事件は大学時代、東京の下宿でテレビの生中継にかじりついていた。
通う大学も、学園紛争末期で、学内で「反帝学評」のデモが行われていた。タテ看もびっしりだった。
大学は2年時の年末にロックアウトし、その後期はすべてレポートでの試験だった。
世の中が政治の季節であったことはリアルタイムの経験がある。私は当然ノンポリであったが・・・。

そんな自分のおよそ40年前の記憶と体験を確認する意味も含め、WOWOWの録画を紐解きました。
確かに長い映画ではあった。特に前半の1時間は、1960年代初頭からの日本の学生運動の流れを
原田芳雄のナレーションで当時のアーカイブ映像を使って説明するパートなので、だれてきます。
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ただ、いよいよ、真岡での銃砲店襲撃事件、交番襲撃拳銃強奪事件、そして赤軍と京浜安保共闘の
榛名山麓や、大菩薩峠での軍事訓練など、ドキュメントタッチで、冷徹に淡々と(でもないか)描いていく
あたりから俄然、映画に迫力が出てくる。
結局、頭が良く、弁が立つ森恒夫と、それに追随する永田洋子の二人の下、山中で「武装革命」をなしと
げるため、「自己を共産化し」するという大義のもと、「自己反省」と「総括」というリンチが(当時は内ゲバ
とか呼ばれていた)行われ、10数人の青年たちが命を落としていく。
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彼らは「共産主義的暴力革命」がなしえると信じて疑わず、それだけ純情だったのかもしれないが、
見ていると、ある種新興宗教ともいうべき、盲信的な部分に幼さを感じざるを得ない。官憲の包囲網が
狭まり、山での訓練も出来なくなった一行は、二手に分かれて逃げるが、森、永田は早々に逮捕され
大菩薩峠周辺から、「総括」の名の下のリンチで死んでいった兵士の遺体が次々と発見される。

もう一方の、坂東國男、高校生の加藤元久らは、逃げ場を失い「あさま山荘」に侵入し、たまたま一人で
留守番をしていた牟田泰子さんを人質に取って立てこもった。彼らは牟田さんに「あなたに危害を加える
つもりはない。あなたは人質でもない。私たちに味方せよとは言わないが、警察にも味方しないでほしい。」
と訴える。牟田さんは「裁判で私は証言は一切しません」と自分の立場を守ろうとする。

後は、ご存じのガス銃と放水、鉄球での山荘破壊、そして突入。逮捕と至るわけだ。この映画では
(予算の関係もあるだろう)終始、山荘の内側しか描かない。外からの音と、警察や赤軍メンバーの
家族の訴え、牟田さんの夫の励ましなどの声で、警察などの動きを描く。
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「突入せよ!あさま山荘事件」は、佐々淳行ら、時の権力側から、警察がいかにして、あさま山荘事件を
解決したか、と言う内容で、赤軍派は単なるテロリストとしてしか描かれていないが、実は彼らの
バックには、理解しなければならない事実があったのだ、ということを本作は訴えている。

必要以上とも思える、「総括」「処刑」の、禍々しいシーンは、森と永田を中心にした圧倒的なイデオロギー
に、誰も反論できない。単なる「サディストによるリンチ殺人」、みなそうは思っても、誰も口に出来なかった
のはなぜか、ということを、その時代の風潮を背景に見ている人に問いかけてくる。最後のシーンで
加藤元久が「みんな勇気がなかったんだよ!」と絶叫するが、まさに、「革命を成し遂げる」という勇気には
止まり、考え、異なる意見を交換しあい、時に引く、という勇気もまた一方で、必要なのだが、彼らにはその
勇気が欠けていたのだ。
翻って、時の権力も、また勇気を欠いていた。当時、連赤を鬼畜のように、唾棄すべき殺人テロリストと
して決めつける論調が主であったし、事実そのような部分が大きいことも確かだ。ただ、どうして、そういう
「時代のお化け」を生み出してしまったのか、その時代の日本という国の権力構造をしっかりと見ておかな
ければならない、といことだ。

「全学連」が大学から去っていくと、大量消費と高度成長の波の中で、大学での政治の季節は急速に
終息していく。今の大学生に、異常であり、犯罪ではあり決して肯定は出来ないが、あの頃の学生の
ような情熱はあるだろうか。パリの五月革命、中国の天安門事件、ベトナム戦争以降のアメリカの政治
活動など、中心はいつも大学生であった。しかし、体制側モラトリアムとしての大学生活を送る今の
大学生たちにとって、自分たちが政治に関わることなど、考えられもしないことなのだろう。

ただし、当時の学生が、全員政治的だったか、といえば、そうではなかった。私の周りのほとんどの仲間
は、それぞれの青春を、政治意外で謳歌していた。だから「連合赤軍」は、尖鋭化した一部にすぎないが、
それでも、彼らはまぎれもなく当時の大学生たちであったのだ。加藤元久などは高校生だ。
それが幸せなのか、不幸なのか。殺された彼ら、犯行を犯した彼らとほぼ同じ年代の私はそんなことを
考えていた190分だった。

坂口真紀と奥貫薫以外は観たことのない俳優さんばかり。だが、森恒夫役の地曳豪、永田洋子役の
並木愛枝(不気味なくらい迫力あるブスを好演)は見ごたえがあった。永田洋子は逮捕されたとき
バセドウ氏病だとの報道が、妙に記憶に鮮明である。ジム・オルークの音楽も良かった。
疲れる映画ではあったが面白かった。
この映画の情報はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2009-05-25 23:50 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)