ゼア・ウィル・ビー・ブラッド There Will Be Blood

●「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド There Will Be Blood」
2007 アメリカ Miramax Films,Pramount Vantage,Ghoulardi Film Company,158min.
監督・脚本・製作:ポール・トーマス・アンダーソン 原作:アプトン・シンクレア「石油!」
出演:ダニエル・デイ=ルイス、ポール・ダノ、ケヴィン・J・オコナー、ディロン・フレイジャーほか。
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<2007年度アカデミー賞主演男優賞、撮影賞受賞作品>


この年のオスカーは、本作といい「ノー・カントリー」といい、地味で良く解らん映画が評価された年でした。
シネコンも集客というにはちょっと、という感じで、懸りはしたものの、あっという間に終わってしまいました。
かくいう私もWOWOWでいいか、てな感じで今日まで待っていた、という次第。

PTAの作品は「マグノリア」に次ぐ観賞。まだ本作で5作目なんですね。寡作の割に賞の確立が高い
監督さんです。しかしだ。「マグノリア」の時もそうだった記憶があるが、何を言いたいのか良く解らん
という点は一本筋が通っているんだな。他の作品もそうだろう。最後のクレジットにロバート・アルトマンに
捧ぐと出てくるが、PTAがアルトマンに多大な影響を受けたことは、画面からも理解できる。アルトマン
作品も相当不条理だが、PTAほどじゃあない、と思うけど、どうだろう。
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で、この作品。20世紀初頭のアメリカ西部。石油に一攫千金の夢を追う、ダニエル・プレインビュー
(ダニエル・デル=ルイス)は、子供のH・Wを連れて、旅を続けていた。或る時、ポールという青年から
自分の家の敷地には絶対石油がでる、という情報を買う。
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さっそくそのサンデー牧場へ出向き、ウズラ撃ちに来たのだと嘘をいい、H・Wと、広大な土地を石油の
痕跡を追って歩きまわる。すると、H・Wがつまずいた土の中から、黒い原油がにじみ出ているのを
発見した。さっそく主人に、実は息子が健康を害していて、新鮮な空気がなにより、と言われている。
そこで、この土地を買いたいが、どうだろう、と持ちかける。
しかし、ポールの弟のイーライが、ダニエルの狙いが石油であることを見抜く。そこで自分の主宰する
教会に5000ドルを寄付することも条件にして、売ることに同意する。

石油採掘の仲間を呼び寄せたダニエルは、サンデー牧場の小高い丘の上に第一号油井を建設し
あえて、油井にサンデー家の末っ子のメアリーの名前を付けて、付近の住人の歓心を買い、採掘を
始めた。その一方で、石油が出た場合、ドラム缶を列車で運ぶコストを考えて、海までパイプラインを
敷くことを計画、ユニオン石油と手を組み、油井を買いあげたいと行ってきたスタンダード石油とは
ケンカ別れとなる。このためにパイプラインを敷設する周辺の土地を買い上げていくが、バンディという
一家は、良い返事をしない。ダニエルはこの土地の周辺が油田地帯だと踏み、不動産屋に買占めを
命じる。
その頃、ダニエルの弟だ、と名乗る男が現れる。実の妹からの手紙を持っていたため、自分には兄弟
なんていないと思っていたダニエルだが、彼のことを信じ、仕事を一緒にすることになる。
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そんな折、石油が噴き出る前のガスの噴出で、近くにいたH・Wが吹き飛ばされ、怪我こそなかったが
聴力を失う。だが、石油は勢いよく噴出してきた。大金が入ったことで浮かれるダニエルと自称弟だった
が、ダニエルは、自称弟を疑っていた。そして、ついに彼の口から、「あんたの弟だという人と知り合い、
兄に会いに行くということだったが、彼は病気で亡くなり、日記も頂戴して、弟さんになり済まして
あんたに会いにきたんだ」と告白を聞くことになる。だまされたダニエルはこの男を許さず、射殺してしまう。
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見事石油を掘り当てたダニエルだが、問題はバンディ家が土地を売らないこと。パイプラインが敷設
出来ないからだ。そこで自らバンディに会いに行く。するとバンディは、イーライの教会に行き、懺悔を
しろ、罪びとだと認めるのだ、そうすれば土地は譲ろう、という。イーライの胡散臭い宗教活動を軽蔑し
馬鹿にしていたダニエルだが、石油が運べなければ金にならないので、教会での儀式に参加すること
に承諾する。そして、イーライの悪魔払いのような儀式のなかいで、ダニエルは「自分は罪びとだ!」と
絶叫させられる。だが、決して改心してはいないし、口で懺悔を叫びながら、心で「やった!パイプライン
だ!」と快哉も叫んでいたのだった。その後、イーライは全国を布教して回る、と土地を離れていく。
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もう一方の問題は聴力を失ったH・Wの扱いだった。彼は自分も行くと見せかけて、列車で遠くの施設に
送り込んでしまった。しばらくしてまた引きとるのだったが、H・Wは大いに傷ついた。その後H・Wは
幼いころから良く遊んでいたサンデー家のメアリーと結婚したのだった。

10数年が経過し、ダニエルは自宅にボーリング場もあるような邸宅に住み、石油成金になっていた。
ある日、成人したH・Wが、オヤジを愛しているが、妻とメキシコに行き、自分も石油事業を始めてみたい。
自分の手で石油を掘る、家をでる、と言い出す意。(手話で。その頃は専属の手話通訳を連れていた)
しかし、一緒に仕事をやるのだと信じていたダニエルは、息子がライバルになりかねない事態に激怒し、
「お前は俺の子どもなんかじゃない。孤児だったんだよ。砂漠に捨てられていたのだ。石油が出る土地を買う時の小道具として育てた。何をいうか、役立たずのロクデナシ!」と隠されていた(真実かどうかは判らないが)ことを暴露する。事実を知ったH・Wは「あんたの血が流れていないことを神に感謝するよ」と言って
ダニエルのもとを去っていった。
この時、しゃべれないと思っていたH・Wが口を利くのだが、デフを装っていたのか、たまたましゃべれた
のかは明らかでない)
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そんな折、イーライが現れる。彼とは息子(であった)H・Wがイーライの妹と結婚したため、義理の兄弟
になっていたのだ。そのイーライは、ダニエルの孫がハリウッドに出て、俳優になりたがっている、
この際、バンディの土地を買い上げるため、私の教会が間に立とうか、と持ちかける。それにあたっては
10万ドルと教会への寄付5000ドルが必要だ、と。「妥当だな。君とは仕事をしようと思っていた」と
ダニエル。だが、それには条件がある。「偽預言者だ。神は迷信にすぎない」と言うんだ。と、かつて
バンディ家の土地の一部をパイプラインの敷設のため、教会で受けたみじめな懺悔の復讐に出たのだ。

(投資に失敗して金に困っていた)イーライは、ダニエルの前で、言われたことを絶叫する。そんなイーライ
を観ていたダニエルはボーリングのピンで、イーライを「おれこそ第三の啓示だ!」と叫びながら、撲殺して
しまう。そこで映画は終わる。

2時間半。長く重い映画を、どう受け止めるべきか。観客を突き放すような終わり方は何なんだ?
石油と金に取りつかれた男の「寂しい人生」を哀れむべきなのか。H・Wが自分の元を去って行ったあと
彼は、幼いころのH・Wと楽しく遊ぶシーンが回想されるが、これは本当はH・Wを愛していたということか。
ダニエルの生き方に何を感じればいいのだろうか?
ストーリーとしては理解できても、映画の主張が見えない、「ノー・カントリー」もそうだが、そういう映画から
何を得ろ、というのか。
アルトマンも難しい映画だが、まだ「映画の主張」がPTAよりは判りやすいと感じる。畢竟、私とPTAの
相性の問題なのだろうな。コーエン兄弟にも同じようなことを感じる。
アルトマン>コーエン兄弟>PTAという相性かな。今のところ。
一匹狼の一攫千金石油男VSオイルメジャー、資本VS宗教、親子、兄弟VS周囲を信用しない孤独な男
など、さまざまな側面を読み取ることは出来るが、それがPTAの言いたいことなのだろうか、本当に
それでいいのだろうか、私には、この映画は重すぎて、手に余る。カタルシスのないタイプの映画、
確かにオスカーを獲得したダニエル・デル=ルイスの演技は、凄まじいものだった。映像もいいし、
音楽もいいのだがなあ・・・。

「ストーリーは判るが、映画の主張が見えない」、最近そんな映画ばかり観ているような気がする。
映画が病んでいるのか、アメリカが病んでいるのか・・・・!そんな映画がオスカーを獲るって・・・!
この映画の詳しい情報はこちらまで。
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Commented by はらやん at 2009-05-31 19:23 x
jazzyoba0083さん、こんばんは!

重いテーマだったので、観終わった後どっと疲れました。
でも何かいろいろと人間について考えさせられることもありました。
PTAの映画はヘビーな感じがしたのでずっと避けていたのですが、本作を観た後に「マグノリア」を観てみました。
同じように人間の醜いところ、そしてそれが哀れなところというのを感じさせられました。
寡作な監督ですよね。
でもこれだけヘビーな映画だと作る方も体力気力ともにいりそうですから、多作はのぞめないでしょうね。
by jazzyoba0083 | 2009-05-27 23:30 | 洋画=さ行 | Trackback(2) | Comments(1)