ブラッド・シンプル ザ・スリラー Blood Simple

●「ブラッド・シンプル ザ・スリラー Blood Simple」
1984(1999) アメリカ Foxton Entertainment,River Road Productions,99(94)min.
監督:ジョエル・コーエン 製作:イーサン・コーエン 脚本:ジョエル&イーサン・コーエン
出演:ジョン・ゲッツ、フランシス・マクドーマンド、ダン・ヘダヤ、サム=アート・ウィリアムズほか
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WOWOWのコーエン兄弟特集の1つ。こういう特集でもないと敢えて見ようと思わない映画です。
このところ、「良く解らん」と言いながら、「ミラーズ・クロッシング」「ノー・カントリー」などコーエン
兄弟の作品を観ていて、本作は、彼らの原点とも言うべき作品という触れ込みだったので、彼らの
ルーツはどんな所にあるのだろう、という興味で観賞してみました。この映画でジョエルの夫人となった
というマクドーマンドの処女作品であるという点も興味がありました。
84年に150万ドルという低予算で無名の俳優を使って作った作品を、再編集してデジタル処理して
99年に再公開したいわばディレクターズカット。冒頭、架空の映画修復会社社長、モティマー・ヤングなる
人物が出てきて、そんないきさつを説明する。この人、実在しないコーエン兄弟のお遊びの部分。
向かって左上にあると思しきカンペに流れる眼線も、凝っている。この映画が、デジタル技術により
永遠になった、「フォーエバー・ヤング」って、自分の名前でダジャレまで行ってます(汗)。

テキサスの片田舎でバーを営むマーティは、妻のアビー(マクドーマンド)と従業員のレイ(ジョン・ゲッツ)
の間に何かあるとにらみ、探偵を雇い、浮気現場の写真を手に入れる。激怒したマーティは、二人がいる
モーテルに忍び込み、アビーに襲いかかるが、彼女の逆襲に会い、ほうほうの体で逃げていく。
怒りを募らしたマーティは探偵に1万ドルで二人を殺すよう、依頼する。まず、探偵がしたことは、二人の
モーテルに忍び込み、アビーのバッグから銃を盗むこと。そして探偵は、ベッドで寝ている浮気現場の
二人の写真を、殺したように加工して、マーティーに見せ、さらに、マーティをアビーの銃で射殺した上に
現金を奪って逃げてしまう。銃は指紋を拭いて、床に放置した。アビーの犯行に見せかけたのだ。

店を辞めるにあたり、数週間分の金を貰おうとバーの事務所にやってきたレイは、マーティが死んでいるの
を見つける。そばにアビーが護身用に持っていた銃が転がっていたため、てっきりアビーがマーティーを
殺したのだ、と感違いし、懸命になって現場をきれいにし死体を郊外に運び、穴を掘って埋める。
埋めるときにはまだマーティーは生きていたが、レイは生き埋めにしてしまった。

その後、アビーの元に行くと、どうも話が合わない。自分は何もやってない、と言うと、誰かとグルだな
と信用しないレイは、「別れよう」と言って出て行ってしまう。アビーはマーティの事務室に行ってみると
血の跡があり、自分の銃が落ちていた。それを拾い現場を離れる。やはりレイがマーティを殺したのか?

「バーの金を盗んでマーティと揉めたんでしょ。殺したのね」と、そこでレイは、殺したて埋めたことを
アビーに告白する。驚いたアビーは、バーの店員仲間に知らせに行くが、「金が盗まれたと俺の家の
留守番電話に声が入っていたぞ。どこかで生きてる」と言って探しに出かける。

一方探偵は、自分のライターが無いことに気が付き、マーティ殺害現場にバーに行くが、ライターはない。
探偵は、レイとアビーがライターを持っていて、危険だと睨み、二人がアパートで話しているところを隣の
ビルから狙撃する。そこでレイは射殺され、アビーも、アパートに侵入してきた探偵に襲われる。
アビーは隣の部屋に逃げ込む。壁越しにライフルを乱射されるが、何とか逃れ、ドア越しに探偵を撃ち、
殺す。「怖くなんかはないわ、マーティ」。すると絶命間際の探偵は笑いながら「負けたよ。あの世に行った
ら、やつに伝えておくぜ」と。 アビーは自分が撃った相手がマーティーでないと判っただろうか。
絶命する探偵の顔の上は、洗面台の裏のパイプ。そこから水のしずくがまさに彼の顔に落ちようにして
いるところで映画は終わる。冒頭のナレーション「世の中、確かなことなど一つもありゃしない」に収斂
していくのだ。
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マーティもレイも探偵も死に、アビーだけが残るという構図。不条理なスリラーとして、良くできているな
という感想です。どこか「ノー・カントリー」につながる臭いを持つ作品ではないでしょうか。
少々鼻につくけど、映像も凝っている。夜明けのシーンが同フレームの中で表現されたり、留守番電話
のボタンを押す指が、死体を運んだクルマの後部座席のシートの血痕を調べる指に同ポジで重なったり、
レイとアビーが、マーティー殺しを話している時に、玄関の窓に飛んできてぶつかる朝刊だったり、
探偵の放つライフルの銃痕から流れる光といい、最後の洗面所のシンクの裏側といい。 引きの画、
タイトな画、明るい画、暗い画のメリハリは、リズムがあって、魅力的だと感じた。印象的だったのは
冒頭近くで、バーの店員仲間が、ジュークボックスでこの映画のテーマ(フォートップスのIt's same
old song")を流して、バスケットシューズで店内を進み、カウンターに土足で上がりステップを踏む
ところかな。また陰影を上手く使った表現も目立つ。効果的だが、いささか若さを感じるのも事実。暴力
シーンで流れる「ケチャ」と思しき音楽も、ギリギリ、いい感じでした。

なるほど、コーエン兄弟の語法とは、そのあたりにあるのだな、という確認は出来た。映像化された表現は
理解できる出来ないを超えて一級品だろうとは理解できる。だが、好きか好きでないかはまた別の話。
コーエン兄弟を研究したい映画映像の学生さんの論文材料としては恰好ではないかな。1フレームづつ
観ていっても面白いと思いますよ。若きコーエン兄弟が映像にどういう意味を持たせようとしたかが
具体的に判る映画だから。

しかし、彼らの作品が不思議な光を放ち、なぜか引き寄せられれ観てしまう自分がいることもまた確か
なんだな。
この映画の詳しい情報はこちらまで。
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Tracked from 大好きな外国映画 at 2009-07-06 05:20
タイトル : 映画、ミラーズの感想
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by jazzyoba0083 | 2009-06-01 22:50 | 洋画=は行 | Trackback(1) | Comments(0)