いちご白書 The Strawberry Statement

●「いちご白書 The Strawberry Statement」
1970 アメリカ MGM,Chartoff-Winkler Production,103min.
監督:スチュアート・ハグマン  原作:ジェームズ・クーネン
出演:ブルース・デイヴィソン、キム・ダービー、ボブ・バラバン、ジェームズ・クーネン、バッド・コート他
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出演者と同じ世代を生きていながら、また荒井由実・バンバン「いちご白書をもう一度」('75)も、リアル
タイムで経験しているが、私は大学時代に「授業を抜け出して」この映画は観に行かなかった。
この後、観る「アリスのレストラン」もそうだが、当時の私は、典型的なノンポリで、政治に怒りを覚えつつ
学生運動を横目で見て、ジャズと女の子にうつつを抜かしていた。そういう学生にとって、この種の映画
は遠いところにあったのだ。

今観てみると、しかし、同じ世代を生きてきたものとして、共感は他の世代に比べたら強烈に感じること
が出来る。
コロムビア大学で実際に有った学園紛争を綴ったジェームズ・クーネンの原作を映画化したものだが、
舞台はなぜかサンフランシスコだ。この当時のサンフランシスコはフラワームーブメントの中心地であり
ヒッピーの天国だった。この映画でも音楽を提供しているジョニ・ミッチェルもここに住んでいたことが
ある。だが、サンフランシスコであることの意味は本作では、あるわけではない。

大学のボート部員のサイモンが、女の子目当てなのか、何なのか良く解らない状況で学園紛争に首を
突っ込む。そこでリンダという女子学生の闘争家と出会い、活動に目覚めていく。
「アリスのレストラン」のところでも書くことになるのだが、「行き場のない怒り、持て余す若いエネルギー」
は、どんな人も青春時代に経験するものだろう。20歳前後って、何だか、怒りっぽくて、それが暴走族に
なっちまうやつもいれば、政治活動に身を投じる奴もいた。女の子専門でエネルギーを発散したり
ロックに没頭している奴らもいた。サイモンもそうした青春を生きている青年であり、これも若さの特権で
ある、チャランポランで自堕落な生活が、学園紛争を通して次第に変わり、好きな女性と出会うことで
自分が変わっていく。しかし、モラトリアムな彼らは、所詮、体制の大きなうねりの中からは出ることは
出来ず、ラストの警官隊による強制排除のシーンに繋がっていくのだ。

結果は無残だったが、結果を恐れて何もしないよりは、自分たちの信じたことを貫いてみよう、当時の
学生たちには、そういう気概みたいなものはあったと思う。今の学生たちはどうだろう?「アリスのレスト
ラン」もそうだが、悲しいことではあるのだが、青春とはそういうものだと思うのだ。
年をとって振り返ると照れくさく恥ずかしいけれど、でも青春の良さってそういう純粋さに有るのだと思う。
この映画はそうしたことを感じさせてくれる作品だ。

若い時に観ると、おそらくそんなことをはっきりとは自覚できなかっただろう。恥ずかしいばかりの若さを
爆発させていた時代を、今になって観て初めて、ああ、青春て、こういうものだったんだよなあ、と
感じることが出来たと思う。

音楽青年でもあった私にとって、バフィ・セントメリーの歌う「サークル・ゲーム」は、まさしく青春への回帰
剤である。あの微妙に気持ち悪いビブラートに乗せて歌われる切ない歌は、この映画に実にフィットして
いる。現在DVDは発売されていないんで、WOWOWを録画されたかたはDVDに保存されると良い。
あらすじはこちら
のgoo映画まで。
また詳しいことはこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-06-10 22:40 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)