8MM

●「8MM」
1999 アメリカ Columbia Pictures Co.,123min.
監督:ジョエル・シューマカー
出演:ニコラス・ケイジ、ホアキン・フェニックス、ジェームズ・ガンドルフィーニ、ピーター・ストーメアほか。
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困った顔の男をやらせたら天下一品のニコラス・ケイジが挑んだ猟奇ミステリー。面白いですが、SMや
ボンデージ、などのアブノーマルセックスに眉をひそめる方は敬遠されたほうがいいかもしれません。

アメリカ東部。大学の奨学生であった成績優秀なトムは、なぜか私立探偵を営んでいる。人に訊かれると
「将来有望かと思って」と答えるが、そうばかりではなさそうだ。

彼が受けた新しい依頼は、最近亡くなった大富豪の未亡人。顧問弁護士や、執事曰くは、亡くなってから
隠し金庫は業者に開けさせたが、現金や株券と一緒に妙なものが出てきた。その出自を調べて欲しい、
というものだった。妙なものとは、1分かそこらの8ミリフィルムであった。
写っているのは、いわゆる「スナッフ・フィルム」という、殺人シーンを写したものだった。弁護士らは、
これは巧妙に作られた作り物だ、と主張。トムは富豪の家で見せてもらうが、若い女性が、革で出来た
頭を全部包むマスクをかぶった男により、ナイフで嬲り殺されるところだった。

未亡人には、作り物でしょう、警察に分析してもらったら、と勧めるが夫の名誉を気にする未亡人は
警察なんかとんでもない、依頼人の秘密を守る、と評判なのであなたを呼んだ、という。
もし作り物ならば、写っている少女の安否を知らせて欲しい、と依頼したのだった。

トムには生まれて間もない女の子と奥さんが居た。奥さんは家を空け勝ちで、しかも危険な探偵という
仕事に引っ掛かりを覚えている。

かなりの報酬もあり、依頼を引き受けたトムは、まずFBIに行き、過去の家出人リストを見せてもらうこと
にした。膨大な人数のリストの中から、ようやくフィルムの少女に似た女性を見つけた。
メリー・アンというその少女の住所をたどって行くと、中年の女性が出てきて、娘は私や夫と仲が良く
無かったの、特に本当の父親では無かった旦那とは折り合いが悪く、男とどこかへ行ってしまった、
旦那もその後、家を出て行った、と説明した。家の中を捜していたトムは、トイレのタンクの中から
メリー・アンの日記と家出に当たっての母親宛ての手紙を見つけた。そこにはボーイフレンドとハリウッド
に行き、女優かモデルになるの、と書かれていた。

トムは、ボーイフレンドの親に会うと、彼はカリフォルニアどころか郡刑務所にいるよ、という。刑務所で
彼に会うと、あんな女、捨てたさ、という。ハリウッドに飛び、怪しげなポルノビデオ屋などをあさり手がかり
を探していたトムは店でミュージシャンを夢観ていたが食いつぶして今はポルノ屋の店員になっている
マックス(ホアキン・フェニックス)と出会う。彼に案内されて、スナッフフィルムを探すが、なかなか
見つからない。どんどんディープなアブノーマルな世界へと足を踏み入れていく。
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トムはさらにマックスの紹介でポルノ映画のプロデューサー、エディという男に会い、メリー・アンの写真を
見せ、この少女を知らないか、と聞くと、マックスの顔は凍りついた。「知らない」と言い張るエディだが、
絶対に怪しいと踏んだトムは、向かいのビルに部屋を借りて、電話を盗聴しながらマックスの
動静を見張っていた。そして、大量のポルノを見るうちに、あのフィルムに出てきた男と同じ、手に星の
刺青をしている男が出ているテープを発見した。トムは、匿名の電話で、殺人フィルムの全貌が判って
しまった、とエディを脅した。エディは、NYにいる監督のディーノに電話し、やばいことになった、と説明
したのだ。そちらに行くかもしれないと。マックスによれば、手に星の刺青をしていた男はマシーンといわ
れていてディーノ・ベルベット監督のお気に入りだというトムは、マックスを伴い彼らがいるニューヨークに
飛ぶ。

ディーノに、1万ドル出すから、ポルノビデオを作って欲しい、条件は、現場を見れることと、マシーンと
いう男優を使うことだ、とオーダーした。猟奇ビデオ専門の怪しい監督ディーノはこの仕事を引き受ける
と了解した。

しかし、このあたりから、トムの周辺に男の影が見え隠れし始める。危ない世界に嵌っていく危険を感じ
ていたトムは、自分も一緒に行動する、というマックスをカリフォルニアに帰し、1人で撮影現場に乗り
込む。
しかし、そこで彼を待ち受けていたのは、全てを知っていたディーノとマシーンだった。トムは捕らえら
れた。そしてフィルムを返せ、といわれる。さらに、カリフォルニアに帰ったはずのマックスが、血まみれに
なって縛られて、部屋に連れてこられ、フィルムを渡さないと、彼を殺すぞ、と脅したのだ。そしてさらに
部屋に登場したのは、あの富豪の弁護士だったのだ!

彼の説明によると、金を権力でなんでも出来ると思い込んでいた富豪は、スナッフフィルムの制作を100
万ドルで弁護士に依頼、弁護士は、ディーノとマシーンに依頼して、街で引っ掛けたメリー・アンに
女優になれるよ、カメラテストをしようと誘い出して、あのフィルムを撮影した、というのだ。

弁護士と一緒にクルマに戻りフィルムを取ってきたトム。ディーノは、彼の目の前でそれに火を付けて
燃やしてしまった。「これで何も無かったということだ」と。トムは、電話で未亡人が、使途不明の金が
主人の口座から100万ドル出金している、と聞いていたので、「あの100万ドルはどうしたんだ、3人で
分けてもまだ、金が欲しいのか」と弁護士に吹きかける。そんな話は知らないマシーンが暴れ始め
仲間割れが始まった。ディーノは、弁護士の銃により、射殺される。トムは手錠でベッドに繋がれていたが
襲ってきたマシーンの腹をナイフで刺し、手を伸ばして銃を取り、手錠を切って、追うエディをかわして
逃亡に成功した。

トムは真実を告げに未亡人の元に行くと、電話で会うと約束をしていた未亡人は自殺をしていた。そして
トムに1通の手紙を残していた。そこには「私たち夫婦のことは忘れて」と書かれていた。
そして、メリー・アンの母親にも電話し、真実を告げ、「私に彼らを罰していいといってください」と頼むの
だった。何の罪も無い娘を自分の性の満足の為に殺したエディとマシーンを許せないトムは、
いいかげんに愛想を尽かしていた妻に、未亡人から貰った報酬を全て渡し、判れる、と言い残して、
ロスへと飛んだ。

そこで、トムは、エディを探し出して、メリー・アンが殺された場所でエディを殴り殺し火をつけた。
さらに、警官になりすまして腹に傷がある男を捜し、ついにマシーンの住む家を見つけ、夜間に押し入った。
だが、逆にマシーンに襲われ、ナイフで腹を刺されてしまう。だが、トムも負けず、マシーンにナイフを刺し、
マスクを取れ、と命じる。マスクの下から現れたのは、ごく普通の中年にさしかかった男だった。
「悪魔でもあらわれると思ったか」とマシーン。「俺はただ、こういうのが好きなだけだよ」とその異状振りを
トムの前でさらけだす。そして襲い掛かるが、トムが逆にナイフでマシーンの腹を刺し、復讐は終わる。

また家族3人の生活が戻ってきた。庭掃除をしていると郵便が来て、封書の一つにメリー・アンの母親
からの手紙があった。そこには、娘を殺した男たちが死んだと聞いて安心しました。誰からも相手にされ
なかった娘だけど、少なくとも私とあなたは娘のことを気にしたわ、と書かれていた。
険しかったトムの顔にようやく少し、笑顔が戻ったのだった・・・・。

ジョエル・シューマカーの作品は何本か観ているが、「ヴェロニカ・ゲリン」が印象に残っている。この手の
猟奇ものは、ブライアン・デ・パルマあたりがお得意にしていそうな作品だが、アングルとかの映像で
見せているわけではない。異常な世界と普通の世界のハザマを歩く主人公を通して、生のある側面を
切り取ってみせたのだろう。最後にまた我が家に戻ってきたトムが幼いわが娘を見つめて泣くところに
快楽の為に殺されたメリー・アンの不幸を思うところがあったのだ。誰でも夢を見てそれに向かって生きて
いけるのに、それを己の快楽のために断ち切る奴らがいる・・。そんな闇の世界を垣間見た2時間だった。
この映画の詳しい情報はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-06-16 23:10 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)