カリートの道 Carlito's Way

●「カリートの道 Carlito's Way」
1993 アメリカ Universal Pictures,Epic Productions,145min.
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:アル・パチーノ、ショーン・ペン、ペネロープ・アン・ミラー、ジョン・レグイザモ、イングリッド・ロジャーズ
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デ・パルマは、B級から大作まで、タッチの好きな監督さん。気がつけば、初期のオカルトもの以外は
ほとんど観ている。。特にクレーンを使った長回し、移動を多用する映像表現にとても興味がある。
その点でもこの映画は楽めた。長いけど。イタリア系の因縁か、デ・ニーロと組むことも多いデ・パルマ
だが、今回は「スカーフェイス」以来10年ぶりにアル・パチーノ」と組んでいる。

最近ではその存在感で独特の地位を獲得したアル・パチーノだが、16年前、脂が抜け始め、渋い
ヤクザが似会ういい感じの年頃で、この映画に実にフィットしている。
脱線するが私としては「セントオブウーマン」「インソムニア」の彼が好きだ。

閑話休題。この作品、観終わっての第一印象は、「深作欣二の任侠映画か!」という感じ。主人公の
アルが、義理と人情の世界に生きる話だから。デ・パルマ独特のスプラッタ系の血が飛び散るシーンも
もちろんあるが。

それと、ヤクづけになって破滅していく弁護士を演じるショーン・ペンが、「ミルク」の時の人とは思えない
ソフトアフロのヘアースタイルで、いい感じだ。それと、アルがひそかに心を寄せるダンサーを演じる
ペネロープが可憐で美しく、粗暴だったアルの相手として可憐な花、といいった対象で映画に彩りと
厚みを加えている。
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冒頭、カリートが何者かに撃たれ、キャスターに乗せられ救急車に急ぐシーンから始まる。そのあたり
の映像構成からデ・パルマの世界全開だ。
ニューヨークの麻薬の売人として一時は9000人の手下を配下にしていた伝説の売人、カリート・
ブリガンテ。(アル)。逮捕され30年の刑を喰らい、5年の刑期を終えたところで、再審請求し、
いろんなところにネットワークをもつヤク漬けの悪徳弁護士デヴィッド(ショーン・ペン)の巧みな弁護で
釈放される。
5年ぶりで娑婆に戻ってみると、裏の世界もかなり変わっていた。彼は本気でこの世界から手を引くこと
を決めていて、75000ドルをためて、ふるさとバハマでレンタカー会社を経営することを夢にみて
いた。たまたまいとこのガキがヤクの取引に行くということで同行を依頼され、ついて行ったカリートだ
たったが、そこで銃撃戦に巻き込まれ、いとこは射殺され、取引相手もカリートが射殺してしまった。
「なんて時代だ」と嘆くカリートではあったが、いとこのガキがもっていた3万ドルをくすね、それを元でに
昔馴染みのクラブオーナーを脅して、お前のギャンブルの借金を返してやるから、売り上げの半分を
よこせ、と半ば強制的に経営権を奪ってしまう。しかし、クラブでは新興のブロンクスの売人ベニー・
ブランコが顔を利かせるようになっていた。ある日、ステフィーという店の女にちょっかいを出したべニー
に対しカリートは、2度と見せに顔を見せるな、とせまる。べニーは「お前なんか過去の亡霊だ。やるなら
やれよ。お前がやらなければ、おれがやるぜ」と捨て台詞をはいた。怒ったカリートの仲間はべニーを
殺そうとしたが、カリートは止めた。このことが後々カリートに禍根を残すことに。

さらに、5年前、突然の判れとなった恋人ジルに会いにいった。思いは続いていて、彼はジルを一緒に
アメリカを離れてやくざな生活から離別した生活を送ることをますます固く心に誓った。

しかし、難儀なのは、彼を保釈に導いてくれたヤク漬の弁護士デヴィッドの存在。彼は、刑務所の
親分に呼びだされ、保釈がむりなら、ここから脱獄する、手伝えと。すでに警備員は買収しているので
(船が刑務所になっている)脱出して、海に飛び込みブイにしがみついているから、お前のボートで
息子と一緒に迎えに来てくれと頼まれる。断ると外にいる奴らにお前を消させるぞ、と。

デヴィッドは、この仕事にカリートを巻き込む。手伝ってくれと。カリートはデヴィッドに助けてもらったと
いう恩義があるので、これを最後と、手伝うことにした。

親分脱獄の夜、デヴィッドはボートに親分の息子とカリートを乗せて、ブイに向かう。しかし、後々親分
との関係が続く以上、デヴィッドは、いろいろ絡まれるだろうと思い、まずボート上で長男を殴り殺し、
さらにブイに捕まって助けを求めている脱獄してきた親分も、頭をスコップか何かで打ちつけ、殺して
しまう。デヴィッドは脱獄した親を助けようとした長男が事故を起こした、ということになるさ、と
高をくくっていたが、実は親分にはもう一人息子がいて、デヴィッドとカリートが、親と兄を殺したと確信し
消しにかかる。警察もカリートに疑いの眼を向け、ボートに乗っていただろう、と迫るが、あくまでも、しらを
切りとおす。しかも、警察の盗聴テープには、デヴィッドがカリートを、「ムショから出てきてもヤクの
大掛かりな取引をしている」と裏切りの証言をしていた。それでも、カリートは命の恩人ではある
デヴィッドを警察に売ることはしなかった。

しかし、親分と手下の復讐の手は厳しく、デヴィッドは法律事務所にやってきた男に刺される。さらに
入院していた病院にまで警察になり次男が着て、デヴィッドを射殺していった。
実は、その前に病室に来たカリートはデヴィッドが護身用に持っていたリボルバーからひそかに弾を
抜いてしまっておいたのだ。親分の次男が病室に警官を装って入ってきて銃を向けたが、デヴィッドの
構えた銃から弾がでることは無かったのだ。そのころカリートは「アディオス、弁護士さん」と、いよいよ
デヴィッドとの関係を打ち切る決心をしたのだった。

そして、これまでためた7万ドルを手に、アメリカを脱出しようと、ジルにグランドセントラル駅でマイアミ
行きの特急に乗る待ち合わせをし、チケットを渡し、出発時間前に集合しようと約束した。
しかし、カリートは、親分の二男ら一味に付け回され、命を狙われていた。街中を逃げ回り、地下鉄の
中でのチェイスも踏み切り、駅の構内で大銃撃戦を繰り広げ、親分らの一味をやっつけ、
ジルの待つ列車にようやく到着。

追いかけてきた親分の一味も駆けつけた警察に取り押さえられ、マイアミ行きの列車にジルと乗ろうと
したその時、先日カリートの店の前で、ボコボコにしたものの、皆に消しておけ言われたものの解放して
やったブロンクスのベニー・ブランコが近づき、腕に吊った包帯の中から数発カリートの胸に向けて
銃を放った。崩れ落ちるカリート。絶叫するジル。「私を一人にしないで」と。
マイアミ行きにカリートが乗るという情報をべニーに売ったのは、なんとカリートのボディガード、
しかしそのボディガードも、駅頭でべニーに射殺される。
やくざの仁義はどこへ行った・・・・。

そして映像は冒頭のシーンに戻る。時代に取り残されたヤクザが足を洗おうとしても、この道はそう
簡単には抜け出せないのだ。後悔先に立たず。それにカリートの弁護士デヴィッドに対する義理の
返しかた。そんな任侠心も、彼に通じない世の中になっていた。恋焦がれる女に対する純情も捨て
られず、有能な弁護士がヤク漬けになり、どんどんヤクザそのものになっていき、古いタイプのヤクザが
生きて行けなくなった任侠の世界の寂寥をアルが熱演していた。ラストの南の島の夕景の中のダンスの
シルエットが、余計にあわれさを誘う。

グランドセントラル駅での、追跡劇で見せる、ステディカムを使った手持ち長回しとクレーンショットが
緊張感を生む。このあたりはデ・パルマの真骨頂だろう。ケヴィン・コスナー主演の「アンタッチャブル」の
オマージュか。ま、この駅のシーンはエイゼンシュシュタインがオリジナルだけど。
この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-09-08 23:30 | 洋画=か行 | Comments(0)