イン・トゥ・ザ・ワイルド Into the Wild

●「イン・トゥ・ザ・ワイルド Into the Wild」
2007 アメリカ Paramount Vantage,River Road Entertainment,148min.
監督・製作・脚本:ショーン・ペン  原作:ジョン・クラカワー「荒野へ」
出演:エミール・ハーシュ、マーシャ・ゲイ・ハーデン、ウィリアム・ハート、ジェナ・マローンほか
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こところ数本、期待にかなわぬ映画をたてつづけに観ていたので、いい映画をみたいなあ・・・、と
思って、シルバーウィークも明日を残すのみとなった夜、チョイスしたのが、ショーン・ペン監督の
本作。長い映画だったが、長さをこんなに感じさせない映画も珍しいな、と思って見入ってしまった。
更に、ラストまで観きったあと、この映画の与える重い命題に、思わずたじろいでしまった。
それほど良くできた映画だと、感心しました。ショーン・ペン恐るべし。

原作のアダプテーションによる脚本で、しかも実際にあった話なので、迫力については多少の下駄を
はいていると見ていいでしょう。それにしても、、圧倒的なアラスカの大自然の中で、たった23歳の
若者が一人で、自分を見つめながら自然と対峙していくさまは、「事実は小説より奇なり」を地で行く
ものだ。 23歳にしては、バロンとかニーチェとか哲学的、形而上的な、説教めいたことをたくさん
いうので、少々鼻白むところもないではないが、それがこの青年の本来の姿だとすれば、真実として
素直に受け入れられる。

長いので物語を全て網羅して書くわけにはいかないが、ジョージア州の大学を優秀な成績で卒業した
クリス・マンカンドレス。彼と妹は、実は母の私生児でったことが20歳すぎて判明し、クリスは非常に
内省的になっていく。人間は何のために生きているのか。それを見つけるために、たった一人で
アラスカ行きを決意、家族はだれにも言わずに、オンボロ車に乗って、カリフォルニアを北に向かう。
出発に際しては、2万6000ドル程の有り金を慈善団体に寄付し、食用の野草を見分ける図鑑を
持ち、最低の暮らしが出来る体制での旅立ちだった。
幼いころから両親のケンカと、それを取り繕うため金とモノで子供の心に蓋をしようとしてきた両親の
態度にも反抗していたのだろうが、クリスは実際、金や物にた頼らない人生を送ってみたかったのだ。
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途中、コロラド川を無許可で下り、警官に追いかけられたり、結局メキシコまで行って、身分証明書も
出発の時に焼いてしまったので、そこでUターンし、貨物列車に飛び乗りまた北を目指す。
途中、サウスダコタでは彼の無鉄砲を諫めてくれる陽気な兄貴分ウェインと親交を深め、そこの農場で
アルバイトをして、アラスカに行くための準備をするいくばくかの金を稼いだ。スラブスではキャンピング
カーで放浪生活をして歩く夫妻に出会い、またヒッピーなどアウトサイダーたちが集うコミューンに身を
寄せ、そこで美しい少女トレイシーと出会う。彼女はクリスに好意を抱き、抱いてほしいとクリスマスの
日にいうが、彼女が16歳であることを知り、「いけないよ」と押しとどめる。その間にも彼は体を鍛え
アラスカに行く準備を整えていた。
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さらに出発直前にロンという老人と出会う。彼は自分が1957年に沖縄に駐留中、本国で妻子が
酔っ払い運転のクルマと激突し死んでしまったという。彼はクリスを実の息子のように接し、出発に
際してもナタや魚のタモ、などを与えた。そして、アラスカから帰ったら養子になってくれないか、と
頼んだのだった。

一方その頃、残された家族。1年たち、1年半たってもクリスからは手紙や電話の1本もない。最初は
警察に捜査願いをだしたりして、怒ったり心配したりしていたが、その遠因を自分たちが作ったことに
思いを致し、次第に、許しの気持ちになり、人が変わったようになっていく。何とか無事でいてほしいと
心底から願うのであった。
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クリスは、アラスカに入り、だれが置いたか、廃バスの中で暮らすことに決めた。「不思議なバスの日々」
と名付けられた日々を、自給自足の中で送り、清明な心を得ていく。、10週間のアラスカ生活を終えて、
街へ戻ろうとする。しかし、大雨で川があふれ、戻るに戻れない。
その時、不幸にも口にした野草が図鑑の見間違いで毒草を食べてしまい、あっという間に体力が無くなっ
ていく。そして、
「幸福が現実になるのは,それを分かち合えるた時だ」、また生涯の伴侶を得ること、という真実を悟った
とき、彼には死を待つしか出来ることが無かった。
ついには廃バスから抜け出る気力体力も、失い、彼は大自然の中で神に召されていく。死期を悟った彼は
こぎれいな服に着替え、古ベッドに身を横たえ、観念して、泰然として死を受け入れたのだった。
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彼の遺体は死後2週間後、ヘラジカ狩猟のハンターにより発見された。

両親を含め、彼の行動に巻き込まれた人たちは、いずれも自らの人生を内省し、クリスから何かしらを
貰っていくことになる。23歳にして、大したものだ。
映画では、ストーリーを同じ私生児であった妹の語りと、クリスが、廃バスの中で綴っていたのであろう、
ウェインあての私信で綴られていく。ラストに本物のクリスが笑顔で廃バスに持たれた映像が出てくるの
だが、だれが撮ったのだろう。それに、あの廃バスはどうやって持ってきたのだろうか?ラスト、毒草を
食べてしまってから、助けを求めに行かなかったのだろうか?

彼が亡くなる直前、家族と再び再会を果たし、皆で抱き合う光景がフラッシュバックされるのだが、結局
家族の愛を欲していたのだな。人は決して一人では生きていけない、ということを彼は2年間の旅と、
10週間のアラスカ生活で悟ったのだ。過酷な自然の中で自分をギリギリまで追い詰めることで、真理を
得たのだ。だが、死んでしまっては何にもならない。彼は自然と対峙し、悟りを得ることと引き換えに
命を失った。最後、苦痛に顔をゆがめて叫ぶ彼は、「こんなことで死んでいくことは理不尽だ!」と
叫んでいるようだった。いや、そうに違いない。結局、彼は自然に負けてしまったということだ。
しかし、クリスは人生の敗者か? 決してそうではないだろう。勝者では決してないが、23年間の人生、
普通の人の70年分くらい圧縮して生きたのではないか?だから最後に悲壮感がないのだ、と私はそう
思った。
実に見ごたえのある映画だった。
この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2009-09-22 23:55 | 洋画=あ行 | Comments(0)