2009年 09月 24日
動く標的 Harper
1966 アメリカ Warner Bros.Pictures,121min.
監督:ジャック・スマイト 原作:ロス・マクドナルド 音楽:ジョニー・マンデル
出演:ポール・ニューマン、ローレン・バコール、ジュリー・ハリス、ジャネット・リー、ロバート・ワグナー
シェリー・ウィンタース、パメラ・ティフィン、アーサー・ヒルほか。
タイトルは昔から知っていて、ポール・ニューマンの探偵もの、という理解はあった。このたび、
WOWOWで、「ポールニューマン没後1周年記念特集」で本作を放送していて、観賞した次第。
アメリカでは、私立探偵ものという映画は一つのジャンルが確立するほど、様々な作品が製作されて
いる。代表例が、レイモンド・チャンドラー原作によるフィリップ・マーロウシリーズ。アルトマン監督
エリオット・グールド主演「The Long Goodbye」など、楽しくも興味深い作品だ。マーロウ役は
ロバート・ミッチャムもまた別の趣きがある。それぞれに、固定的な熱狂的なファンを獲得している
シリーズである。
で、本作も、ポール・ニューマンの代表作品に挙げる人もいるほど、熱烈なファンを持つ作品だ。
観賞の感想としては、内容としては取り立ててどう、ということは無いのだが、ポール・ニューマン演じる
探偵ルー・ハーパーは、スタイリッシュでカッコよく、スーツの似合うアメリカのあの時代の探偵の
一つのアイコンとして魅力を放っていると感じた。ストーリーは、不必要に複雑、というかややこしい。
それを、綺羅、星の如くの配役が補っている。
どなたも取り上げる、冒頭のシーン。目覚まし時計よりも早く起きて、コーヒーを入れようとするが、
粉が無い。そこでゴミ箱から昨日の出がらしの粉を、もう一度再利用して飲むが、顔がゆがむほどの
味。お洒落な感じでスタート。また音楽が映像とシンクロしていて、またジャズのメロディーが
探偵ものの雰囲気を盛立てる。
どうして探偵ものってフォービートが似あうんだろう。60年代から70年代の探偵映画って、ほとんど
BGMがミュートトランペットを活かしたメロディーが目立つような感じがする。代表例はマイルス・
デイヴィスの「死刑台のエレベーター」だろう。
ストーリーは、私立探偵のハーパー(原作ではルー・アーチャー。なんで変えちゃったんだろう)が、
親友の弁護士アルバートの紹介で、富豪のサンプソン夫人(ローレン・バコール)の夫の失踪事件を
追うことになる。そこには、サンプソン氏の愛人で女優のフェイ(シェリー・ウィンターズ)、
サンプソン氏の自家用ヘリコプターお抱え操縦士のアラン(ロバート・ワグナー)と愛人のバー
「ピアノ」の歌手、ベティ(ジュリー・ハリス)、サンプソン氏の娘ミランダ(パメラ・ティフィン)らが複雑に
絡み、事件が進行していく。加えて、ハーパーの離婚問題として妻のスーザン(ジャネット・リー)との
夫婦の愛情事情も縺れ合っていく。
探偵ものの常道として、怪しそうな人物をたくさん登場させ、それぞれに意味を持たせ、ストーリーを
こんがらがらせているが、結局は、一番身近にいた弁護士のアルバートが仕組んだ犯罪であった
のだが。とにかくストーリーは複雑で、判ったようで良く解らないというのが本音。だけど、映画全体の
持つスタイルが、見せてしまう力を持っている。ハーパーのクルマがポルシェ356スピードスターの
オンボロだったりするのも計算されている。(コロンボのオンボロ車と通底するものがあるが、カッコよさの
追求というと対極にある小道具といえよう)
映画「いそしぎ」のテーマ「The Shadow of Your Smile」を作曲してオスカーとグラミーを同時に
獲っちゃったジョニー・マンデルの音楽が、時代を感じさせはするが、とてもいい!ジャズファンとしても
味わい十分だ!それと、計算されたアングルがいい。ちょいと目につきすぎるかな、というくらいに
計算された構図が美しい。
これはストーリーを楽しむというより、お洒落な映画ってこんなんよ、という雰囲気を味わう作品といえる
でしょう。
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