2009年 11月 10日
さらばベルリンの灯 The Quiller Memorandum
1966 イギリス Ivan Foxwell Productions,Rank Organisation, The (presents)107min.
監督:マイケル・アンダーソン 原作:アダム・ホール
出演:ジョージ・シーガル、アレック・ギネス、センタ・バーガー、マックス・フォン・シドーほか。
<感想>
イギリスのスパイ映画といえばイアン・フレミングの007シリーズが高名だが、あの派手なアクションと
お色気の対極にある、冷戦の雰囲気そのままの寒々しく、地味で、普通のスパイを、ストーリーで
引っ張るイギリススパイ映画もある。本作はその典型だろう。時期的には007シリーズに当てはめると、
「サンダーボール大作戦」と「二度死ぬ」の間に位置している。私が中学2年の時の作品だ。
ソ連対アメリカ、東西対立という冷戦構造が無くなったいま観ると、しみじみしてしまうな。舞台は当然の
ようにベルリン。本作は東西対立ではなく、ネオナチの台頭に苦慮したイギリス諜報部が、ジョージ・
シーガル扮するスパイ=クィラー(これが原題になっている)に現地に行き、中枢部に侵入して、殲滅
するように指示する。この顛末がストーリーだが、現地のネオナチのシンパとして出てくるセンタ・
バーガーが美しい!!全体として淡々と進むストーリーだが、時代に雰囲気はとてもよく出ているし、
何より、有名なジョン・バリーの主題歌(映画の中ではマット・モンローが唄っている)が、スパイの
郷愁を上手く引き出す役目を演じている。この曲は皆さんもどこかで聞いたことはあるでしょう。
(下のYouTubeで聞いてみてください)
派手さは無いし、一級品とは言い難いがイギリススパイ映画らしい雰囲気を楽しむことが出来た。
<ストーリー・ネタばれしてます>
上記に書いたように、イギリスのスパイクィラーは、POSというボスから、ベルリンに潜入してネオナチの
中枢部を壊滅する指示を受ける。煙草を勧めて、聞かない銘柄ですね、試してみては、では、というのが
味方同士の確認の隠語となっている
彼はフィラデルフィア時評という雑誌の編集者になりすまし、まず最近学校の教師としてネオナチ活動で
追放された同僚インゲ(バーガー)に会いに行き、ネオナチについていろいろ「取材」する。
しかし、その時の飲み物に睡眠薬が入っていて、彼は運転中に前後不覚となり、ネオナチ一味に拉致され
てしまう。
彼らのアジトにはオクトーバーと呼ばれるボスを中心にした幹部が集まっていて、自分たちをかぎまわる
クィルから、まずベルリンのアメリカ情報部の住所を聞き出そうとする。強制自白剤を注射されるが
何とかだまくらかした。すると彼は川のそばに放置されている状態で気がついた。一味はクィルを泳がせ
てみるつもりだった。
クィルはなんとか街のホテルに身を寄せ、インゲ(バーガー)に会いたいと電話する。彼はインゲに
一目ぼれしていたのだ。インゲと会い、自分は雑誌記者なんかじゃない、と打ち明け、インゲも一味の
存在を明らかにした。深い仲になった二人は、インゲの父の友人で一味をしっているという人物に会いに
行く。するとハスラーという男が会われ、今のアジトは判らないが、私より詳しいことを知っている人物を
紹介できる、という。
ハスラーの運転でその人物に会いにいくと、そこにはインゲの学校の校長が現れた。彼女が一味の
アジトを教え、クィルは周囲の反対を押し切りアジトに潜入、するとまた例のオクトーバーが現れ、
そこにはインゲが捕えられていた。オクトーバーは、情報部の場所を教えればインゲもお前も助けて
やる、そうでなければ二人とも殺す、といわれ、クィルはアジトの外へと出される。
ホテルに戻ったクィルだが、周囲は一味に監視されている。ひそかに部屋を出てクルマで脱出を試みる
が、クルマには爆弾が仕掛けてあった。クィルは、爆弾をはずして、エンジンをかけ、ボンネットの上に
爆弾を置き振動で落ちて爆発するように仕掛けを直し、車庫から脱出、その直後に大爆発が起きた。
一味はクィルは爆発で死んだと思ったが、本部に戻ったクィルが一味のアジトを教えると、秘密部隊が
アジトを急襲、全員を逮捕した。しかしその中にインゲの姿は無かったという。
後日、インゲの務める学校を訪ねると、インゲがいて、「自分はラッキーだった。解放してくれたの」と
説明した。信じないクィル。「全員逮捕したけど、全員ではなかったかもしれないな」と。
自分はベルリンを離れる。また機会があれば会おう。ひと時の二人の愛情はすっかり冷えてしまっていた。
(だがどこかでお互いを気にしている風情はある)、学校から去ろうとすると校長の姿も。彼女はクィルを
無視するように立ち去った。校長もインゲも、クィルに協力するふりをしたネオナチのシンパに違いない
という余韻を残して映画は終わる。
この映画の詳細はこちらまで。
トリックやどんでん返しがほとんどなく、シンプルな展開のスパイ映画。スパイをエンターテイメントとして楽しむにはいいんじゃないでしょうか。同じイギリス・スパイ映画の「007シリーズ」との比較も面白そう。... more