ハート・ロッカー The Hurt Locker

●「ハート・ロッカー The Hurt Locker」
2008 アメリカ Voltage Pictures,Broad Media Studio,131min.
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジェレミー・レナー、アンソニー・マッキー、ブライアン・ジェラティ、
   レイフ・ファインズ、ガイ・ピアース、デヴィッド・モース他。
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<第82回アカデミー賞作品、監督、脚本、編集、音響編集、録音賞受賞作品>

<感想>
「アバター」が大ヒットとなったキャメロン監督の元妻で、お互いに2010年のオスカーに
最多ノミネートされていて評判のキャスリン・ビグロー監督作品「ハート・ロッカー」を
早々にシネコンで観賞。春休み前のマンガ映画が一斉に封切られたこともあり、シネコンは
えらい混雑。本作にも朝いち上映にも関わらず、かなりの入り。

キャスティングにビッグネームが見えないのにこれだけの評価を得ているのは、やはり脚本が
いいのだろう。テーマ設定の勝利であり、ドラマ性を排除したドキュメンタリータッチの
クールな映像は、まるでバグダッドからの生中継を見ているように緊迫する。
観客は131分絶え間ない緊張を強いられるので、見た後実に疲れる。これといったストーリーが
ある訳でなく、3人の爆弾処理班の行動を幾つかのエピソードの中で描いて行くのだが、
見る人によっては、単なる爆弾処理のアクションムービーと映るかもしれない。しかし、まるで
ノンフィクションのような(手持ちカメラの影響もあるか)展開は、ラスト直前まで
徹底して日常を排し、戦争の狂気の中で人間がどう振る舞えるか、ばしばしと観客に投げて来る。
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展開で、感動や感想を与えるような構成では無く、映像を見せることにより観客に答えを求め
てくるタイプの映画だ。戦争とは何と虚しく狂気に満ちているか、と見せておいて、ラスト、
ジェームズ軍曹が再び1年間の任務に就くところは、恐怖を通り越すとそれが快感に変わるのか、
とも受け止めることが出来る。
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また、感性がまるで麻痺してしまうのか、一旦帰国して我が家に帰ってもそれが非日常で
妻との会話が爆弾テロで何十人が死んだ、という内容になっている、スーパーにいって妻に
シリアルを取って来てといわれてその種類の多さに棚の前でしばし立ち尽くす姿は、もはや、
彼にとって戦場が日常であり、帰国が非日常になってしまった現実を提示しているとも受け止め
られる。またそれも戦争の狂気だと、ビグロー監督は言いたかったのか。観客は131分で何を
感じたのか、一定の答えのない映画だ、と思った。それにしても、リアルな戦争というものは、
日ごろのニュースでは見えないところで何かが起きているのだな、と感心もしたのだった。
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<ストーリー>
「2004年夏、イラクのバグダッド郊外。アメリカ陸軍ブラボー中隊の爆発物処理班では、
任務中に殉職者が出たため、ジェームズ二等軍曹を新リーダーとして迎え入れることに。
こうして、サンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵を補佐役とした爆弾処理チームは、任務明け
まで常に死の危険が孕む38日間を共にしていく。
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しかし、任務が開始されると、ジェームズは遠隔ロボットを活用するなど慎重を期して取る
べき作業順序や指示を全て無視し、自ら爆弾に近づいて淡々と解除作業を完遂。任務のたび、
一般市民かテロリストかも分からない見物人に囲まれた現場で張り詰めた緊張感とも格闘して
いるサンボーンとエルドリッジには、一層の戸惑いと混乱が生じる。そして互いに衝突も
生まれるものの、ストレスを発散するように酒を酌み交わし、謎めいたジェームズの一面も
垣間見ることで理解を深め結束していく3人。
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だがやがて、任務のさなか度重なる悲劇を目の当たりにしたことから、ある時ジェームズは
冷静さを欠いた感情的行動に走り、3人の結束を揺るがす事態を招いてしまう…。」(allcinema)
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感情が欠けているのかと思わせるジェームズが人間としての苦悩を示すのが、基地の近くで
DVDを売りつけに来るベッカムと呼んでいる男の子が人間爆弾にさせられて殺されている光景を
見て、さすがに冷静ではいられなくなるところ。無断で基地の外に出て、彼の母親を探しに
出かけるのだが、胡散臭そうな教授と名乗る男が出てきて、あとから現れた女にわめかれて
逃げだしてくる。またその直後に発生した爆弾テロでは、犯人を深追いして、仲間に傷を
負わせてしまう。そんなジェームズの人間臭さが垣間見えるシーンも興味深かかった。
この映画の詳細はこちらまで。

<追記3月13日>
●アカデミー受賞おめでとう、ビグロー監督。あんたは凄いわ。身長も高いけど(爆)今回の
作品賞、監督賞受賞について、「アバター」と比べてどうか、という意見は別れるところだろう。
私には映画的には「アバター」が受賞でも全然納得だったが(だって、映画に新しい地平を開き
興行成績の世界記録を塗り替えた作品だもの)、アカデミー会員は本作を選んだわけだ。
なぜか。人間が人間を描いていたか、という意味で、会員にとって「アバター」は「企画もの」、
悪くいうと「キワもの」という印象が強かったのではないか?
脚本賞については、当然という気がする。本作が強い映画であるのは一にかかって脚本が優れて
いるからだ。というか、ドキュメントタッチで描ききるというハードあるいはクールな仕上げは
監督の手腕もあろうが、やはり本の力だろう。エンターテインメントとしての「アバター」を
高評価するかたも、いちど本作をご覧になるといい。批判より、まず観てみることだと思う。
そして観た後何を感じるか、ということだろう。131分が長くて苦痛だった、というならば、
やはり「アバター」派なのであろう。
Commented by シムウナ at 2010-03-22 19:24 x
TB有難うございました。
ドキュメンタリー風の作品なので
ストーリー性は皆無でしたが、爆弾処理班から
戦争の日常が非常にリアルでした。

今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
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by jazzyoba0083 | 2010-03-07 12:20 | 洋画=は行 | Comments(1)