フライド・グリーン・トマト Fried Green Tomatoes

●「フライド・グリーン・トマト Fried Green Tomatoes」
1991 アメリカ universal Pictures,Act ⅢCommunications,131min.
監督:ジョン・アヴネット 原作・脚本:ファニー・フラッグ
出演:メアリ・スチュアート・マスターソン、メアリー=ルイーズ・パーカー、
   キャシィ・ベイツ、ジェシカ・タンディ、シシリー・タイソン、スタン・ショウ他
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<感想>
タイトルからの印象として、何かのパロディかと思っていた。ところが、観てビックリ。
とてもハートウォーミングで良くできた映画。脚本も配役も素晴らしい。こういう映画、
好きですね。揚げた青トマトというのはアメリカ南部にある料理だそうですが、決して
美味しい、というものではないみたいです。

キャシー・ベイツ演じる倦怠期の主婦が狂言廻しの役を務め、湿りがちになるストーリーに
奇妙な明るさを加えていきます。絶望を救う役目、とも言えるのだろう。
映画は茶色く錆びた古びたトラックが川から引き上げられるところから始まる。これは何か?

そして1930年代のアメリカ・アラバマ州。男の子まさりのイギーと、お嬢様のようなルース
は仲の良い親友。イギーの兄バディと3人で遊んでいる時、風に飛ばされ線路を転がるルースの
帽子を取りに行くが線路に足を挟んでしまい、折悪しく通りがかった列車に轢かれ亡くなる。
ルースは少女心にもバディと結婚する、と決めいていて、その死に打ちひしがれる。
最愛の兄を亡くしたイギーもまた心を閉じてしまった。しかしイギーとルースは性格は違うけど
お互いを愛し理解できる真の友であった。

その二人が駅前に開いたのが「ホイッスル・ストップ・カフェ」。街の人たちが集まる
人気のカフェになった。そこの名物が「フライド・グリーン・トマト」だったのだ。

翻って1980年代。優しいが会話の少なくなった夫を抱え、チョコバーばかり食べて太って
しまった主婦イブリン(ベイツ)は、親類を見舞いに行った老人施設で、ニニー(タンディ)
という話し好きの老女と出会う。彼女は、イギーとルースの話をイブリンに聴かせるのだった。

イブリンはニニーの話を聞きたくて、お見舞いなぞそっちのけでホームに通った。

ルースはやがてフランクという男と結婚する。後に二人を訪ねたイギーは彼女の顔に暴力の跡を
見取り、ルースの家の召使でいまはカフェを手伝ってくれている黒ビッグ・ジョージとともに
フランクを脅し、ルースを奪い返してくる。

やがてルースは男の子を産み、かつて大好きだったバディという名前をつける。するとフランク
が子供を奪いにルースの留守にやって来て、赤ちゃんを奪おうとする。これを召使の黒人女性
シプシーがフライパンでフランクの頭を殴り、また浮浪者のようなスモーキーという白人も
普段からルースに優しくしてもらっていたので、フランクを止めに入る。
そうしてフランクはその晩から行方不明になってしまった。イギーとルースは疑われるが証拠が
ない。しかし、ある日大雨が降り、洪水が起きて、川底から古いトラックが発見された。
冒頭の川から引き上げられる錆びたトラックはこれだったわけだ。

フランクのトラックだった。イギーが好きだた保安官は彼女らを逃がそうとするが、何もしてい
ないのに逃げることはしない、と逮捕されるほうを選んだ。そして裁判にかけられるが、神父の
粋な証言で、裁判長の「司祭がああいう証言をしているのに裁判を続けるのかね」と検事に
いう。そして「フランクは祭りの夜に酒をのんでトラックを運転し、川に落ちたのだ、裁判は
中止!」と宣言し、二人は晴れて無罪放免となる。

そんな話を聞いているうちにイブリンの生き方が変わってくる。自堕落な生活から自らに厳しく
する生活に転換。チョコも辞め、ダイエットもして。映画でも彼女の表情がどんよりした主婦
から活き活きした輝きを持つ顔に変化していく。そのあたりベイツの演技は素晴らしい。

ルースの息子バディはやんちゃで亡くなったバディのように線路で遊び、片腕を失うという
事故に遭うが、息子もルースも周囲も暖かく生きた。しかし、ルースはガンを患い、バディに
看取られて亡くなっていった。
一人ぼっちになってしまったイギーはその後どうしたのか・・・・。

ニニーがホームを退院すると聴いて、自分の人生を変えてくれたニニーを自分の家に引き取
ろうと決めたイブリン。旦那の反対を押し切り、家を改造した。
そして、ニニーは、ルースの墓に案内、自分がイギーであることを打ち明けたのだった。

ニニーがイギーではないか、とはタンディの凛としたおばあちゃんぶりを見ていると、ネタばれ
だが、そんなことは置いといても、なかなか楽しいストーリーテリングであった。
禁酒法あたりの時代なので、黒人差別、KKKの登場、女性の地位の低さ、など当時のアメリカが
抱えていた社会問題が映画に微妙に影を落とす。それがまた作品に厚みを加える。
主演のふたりが割と地味なので、あまりマスコミに取り上げられることも無い映画で、私も
今回WOWOWでの放映が無かったら知らなかった映画。アンダーレイテッドな作品ではないか?
フランクの行方についてのブラックなオチとかベイツの狂言廻しに違和感を覚える人もいるかも
しれない。しかし、総じて良くできた映画だと思った。多分年末に今年観た作品の良作の中に
入れる映画になることは確か。
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by jazzyoba0083 | 2010-03-25 23:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)