2010年 07月 01日
突然の訪問者 The Visitors
1972 アメリカ United Artists,Home Free 88min.日本劇場未公開
監督:エリア・カザン 脚本:エリア・カザン
出演:パトリック・マクヴィ、ステーヴ・レイルズバック、パトリシア・ジョイス
ジェームズ・ウッズ、チコ・マルティネス
<感想とストーリー>
「波止場」「エデンの東」のエリア・カザンの晩年の作品。ヴェトナム戦争をベースにした
社会派の掌編。出演者も少なく、閉鎖的な空間で繰り広げられる息が詰まるような作劇だ。
ヴェトナム帰りのビル(ウッズ)は、ヘリコプター工場に勤務するが、嫁の父が西部劇の
人気小説家で、金に不便はしていなかった。広大な妻名義の土地の建つ割と大きな家に
住み、生まれたばかりの息子がいて、取り立てて変化も無いが、幸せ?な暮らしをしていた。
そこに、ある日ビルの戦友であるヴェトナム帰還兵の二人が突然訪れた。ビルは戦争中
仲間の兵隊がある村を掃討作戦中、少女をスパイとして拉致しみなで犯したうえで殺した
のだが、それを告発、仲間からは恨まれていた。そんな中で来た二人の仲間たち。
何をしに来たのか。
しかし、この二人は離れで生活している嫁の父で作家のハリーと意気投合してしまい、
ハリーは、何泊かしていけ、と言うのだが、ビルは当然面白くない。
やがて、やはり戦争中のことで揉め始めケンカとなる。そうしているうちに嫁と軍曹が
出来てしまうのだ。ビルと妻は、どこかわだかまりをもって生活をしていて、お互いに
心を許していなかったのだ。やがてもう一人の仲間にも体を許した妻。
ラストはケンカも終わり仲間が引き上げていったあと、イスに座りうつむいて対峙する
二人を映して終わる。後味が悪い映画だ。ベトナムで犯された少女が、帰還兵に身体を
許した妻に重なるのだが、それが何を意味しているのか、にわかには判然としない。
これはヴェトナム戦争後のアメリカで、盛んに作られた映画の一つで、こうした映画の中には
傑作も生まれてきたわけだが、この映画は、日本で劇場後悔されなかったのも理解できる
不出来な作品。虚無的な雰囲気を出そうとしたのだろうか、「タクシードライバー」などの
レベルにはとても到達できていない。
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