重力ピエロ

●「重力ピエロ」
2009 日本 アスミック・エース、「重力ピエロ」製作委員会、119分。
監督:森 淳一 企画・脚本:相沢友子  原作:伊坂幸太郎
出演:加瀬亮 岡田将正 小日向文世 吉高由里子 渡部篤郎 鈴木京香ほか
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<感想>
このところドップリ浸かっている伊坂幸太郎の映像作品を初めて観た。あのどこか
村上春樹にもにた世界をどう映像化するのだろう、と興味津々で見始めた。
原作は、とても面白く読んだ。特に弟の春のキャラクターが際立っていたのだが、
この映画では岡田将生が、実によく頑張っていたし、監督は原作の雰囲気を壊さず
表現できていたと思う。

「2階から春が降ってきた」という台詞で始まるのは原作も映画も同じ。映画は原作を
ほぼ忠実に再現している。ある意味つかみ所の無いような浮揚感のある伊坂ワールドを
この森淳一という監督はよく表出していたと思う。兄の泉水を演じた加瀬亮も上手かった。

二人の父親(春の生物学的父親は違うが)である小日向文世もいいんだが、私としては
もう少し、あごがこけた鋭角的な父親像が読後、頭にあったのでいさかかいい人過ぎた
感があったが、原作を知らない人は、別にどうでもいいことだろう。

これも原作に忠実に仙台ロケを敢行し、カメラも編集もいい出来だと感じた。
相対的に原作を面白く読んだものとしても満足の行く出来で、原作を知らない人にも
楽しめたのではないか。ただ、本のもつ微妙なニュアンスはやはり映像化できないし
逆に原作にない魅力を映画は獲得していたことも確か。キャスティングは全体に良。

<ストーリー>
仙台に住む市役所職員、奥野正志(小日向)は、雪の中でスタックしたモデルの梨江子
(鈴木)を助けようとして同じく危うく遭難、という目に会う。そんな奥野のクルマで
流れていたのがローランド・カークという盲目のジャズ・マルチリードプレイヤー。
(これは本編とはあまり関係ない)。
梨江子は、押しかけるように奥野の女房になり、長男泉水が生まれる。しかし、泉水が
小さい頃、買い物帰りを狙われた梨江子は、押し入ってきた高校生に強姦される。
その結果生まれたのが次男の春だ。性格は違うが両親の分け隔てのない愛情を
受けて仲良く育ってきた兄弟だが、町の人たちは、春が襲われた結果できたこどもである
ことを知っていた。強姦魔はその後逮捕されるのだが、梨江子は交通事故で死亡する。
本当に自己だったのかどうかは不明だ。

そして、仙台の街に放火が相次ぐようになる。それと同時に放火現場の近くに必ず
スプレーで書かれたグラフィティアートがあった。それぞれに英語の単語が
係れていて「GOD」「CAN」「TALK」「ANTS」「GO TO」「AMERICA」など一見
意味がないような単語だった。
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大学院で遺伝学を研究している泉水は、これらの単語の頭の文字が人間のDNAの
組み合わせを示していることを突き止め、その近くにある建物の名前とも一致すると
気が付いた。

春は、何とか犯人を捕まえるといって張り込みをしたりするが、やがて父がガンを
煩うことになる。ある日、かつての強姦魔が出所して仙台市内で風俗店を営業して
いることを泉水が突き止め、彼はその男の周辺を探る。そして行きつけのバーで
吸殻を拾い、春のベッドにあった頭髪とを研究室のDNA分析器にかけてみるの
だった。結果は想像どおり99,7%のマッチング。
また、かつて春のストーカーをしていた夏子さん(吉高)も、全身整形をして春や
泉水の前に現れ、泉水に放火しているのは春さんだ、と話す。
愕然とする泉水だが、春の部屋のガンジーのポスターをはがすと、その下からは
かつて強姦があった場所と、放火があった場所を示すピンが押されていた。

実は春は、彼の父親である強姦魔である男の所在を突き止めていて、放火が掲載
された新聞を切り抜いては男に送りつけていたのだ。
そして二人は、かつて親子4人で住んでいた家で対決することになる。春は家に
油を撒いて火をつけて男を逃がさないようにし、「おれはお前の父親だぞ!」と
叫ぶ男にバットを振るった。駆けつけた泉水が着いたときはあとの祭りだった。

二人は家に戻ったが、父親から、詰問はされるが、そのままとなった。
泉水が春に言った「あの事件のことはお前以上に考えてきたヤツはいない。その
お前がしたことに検事や裁判官にあれこれ言われる必要はない」という台詞が
印象深い。やがて父はガンで他界。兄弟二人は父親が趣味としていた蜂蜜作りを
してみるのだった・・・。

伊坂の作品は、どこか毒があり、また浮世離れしているところがある。そういう
ニュアンスを判らずに見ると、うっちゃられ感のある映画かもしれない。
意味を求めようとすると、カタルシスを感じづらい映画かもしれない。でも総体的に
よく出来た映画だ、と思った。
この映画の詳細はこちらまで。
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Tracked from ☆彡映画鑑賞日記☆彡 at 2010-07-21 18:30
タイトル : 重力ピエロ
 『俺たちは最強の家族だ』  コチラの「重力ピエロ」は、「アヒルと鴨のコインロッカー」をはじめ「陽気なギャングが地球を回す」、「フィッシュストーリー」と映画化が続く伊坂幸太郎のベストセラー小説を映画化した5/23公開の感動ミステリーなのですが、早速観てきちゃ....... more
Tracked from はらやんの映画徒然草 at 2011-09-22 20:24
タイトル : 「重力ピエロ」 自分で考えろ
遺伝か、環境か? 劇中でも語られていたように、ある人の人間性を形成するのは、遺伝... more
by jazzyoba0083 | 2010-07-19 23:20 | 邦画・新作 | Trackback(2) | Comments(0)