ファーゴ Fargo

●「ファーゴ Fargo」
1996 アメリカ PolyGram Filmed Entertainment, Working Title Films,98min.
監督:ジョエル・コーエン 製作:イーサン・コーエン 脚本:コーエン兄弟
出演:フランシス・マクドーマンド、スティーヴ・ブシェミ、ウィリアム・H・メイシーほか。
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<1996年度アカデミー賞主演女優賞、オリジナル脚本賞受賞作品>


<評価:★★★★★★★★☆>
<感想>
コーエン兄弟の独特の映像は、これまでも可能な限り観てきた。最近では「ノー・カントリー」が、
旧作では「バートン・フィンク」あたりが印象深い。当然、最近の「トゥルー・グリッド」も期待大で
ある。
そのコーエン兄弟の諸作の中でも、ひときわ評価の高い本作を、やっとDVDで観賞することが
出来た。皆さんおっしゃる通り、誠に良くできた映画であり、映像美、物語の構成、キャスィング、
演技、音楽、上映時間、どれをとっても、殆ど文句の付けようのない完成度だと思う。
私がこここで★を9つも献上する映画はそうそうない。

まず、映像美、白い雪の世界を、日本画の雲よろしく、上手く使い、他の色との対比が物語に
インパクトを与える。ストーリーも、殺人シーンもあるが、人間は面白くて悲しい、というタグライン
が言っているように、サスペンスのようなコメディのような、分類不可能な映像表現の面白さ、
「人間、その愚かしきもの」「そして哀しきもの」という訴えが、ある種ストレートに、時として
変化球を持って、観る人にさ迫る。 マクドーマンドを昔慕っていた、ちょいと精神がおかしい
日系人のエピソードなどは、ちょっと???という感じもあったが。
W・H・メイシーの中古車営業部長ジェリーは「面白ろ、哀しい」人生は、一旦バカなことを考えると、
次から次へと不幸の連鎖に巻き込まれる、という人間喜劇を体現している。この映画の
一方の主人公である。中西部の田舎町、そして冬、という場所と季節の設定も絶妙であった。
「Yeah?」「Yeah!」で会話が成立するのは、あのあたりの土地の特徴であろうか。
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そして、メイシーに雇われる二人の誘拐犯の内、ブシェミの演じるカールもまた、ジェリーと表裏
一対の「哀しさ」を表現している。また、もう一人の寡黙な殺人鬼グリムスラッドと、ジェリーの
中古車でエンジニアをしている仮釈放中のネイティブアメリカンの二人の存在は、「ノー・
カントリー」でのオカッパ頭の殺人マシンに通じるものがあると感じた。
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実際の妊娠中に(夫は監督)この映画を撮影したフランシス・マクドーマンドはオスカーを獲った
訳だが、むしろ私としてはメイシーやブシェミに賞をあげたかったな。
しかし、妊婦の警察署長マージは、ある種狂気のストーリーに置いて、理性と正義と「普通」の
メタファーとなっている。そうした意味での飄々とした演技は、オスカーもむべなるかな、という
気もする。
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コーエン兄弟の作品には、「何を言いたいわけ??」という「ウッチャリ型」の映画が多く、また
それはさそれで魅力なのだが、本作は、短い時間に、彼らの訴えたい世界観が見事に凝縮し
ていて判りやすかった。
参ったのは冒頭「この映画は実話である。1987年にミネソタ州で発生、存命中の人もいるので
云々」という字幕にすっかり騙されたが、これはまぎれもない創作である。これもコーエン兄弟の
イタズラであり、これも含めて「ファーゴ」であるわけだ。

<ストーリー>
「アメリカ中北部の田舎町を舞台に、偽装誘拐が引き起こす惨劇とそれに関わる人々の奇妙な
姿を描いたユニークな犯罪ドラマ。
 ミネソタ州ミネアポリスに住むカー・ディーラーのジェリー・ランディガード(W・H・メイシー)は
借金返済のために自分の妻ジーンを誘拐し、会社のオーナーでもある義父から身代金を
いただこうと考えた。誘拐を実行するのは、前科者の従業員から紹介された妙な二人組、
カール(S・ブシェミ)とグリムスラッド(P・ストーメア)。
だがジーンを自宅から誘拐した二人は、隣町ブレイナードまで逃げたところで、停車を命じた
警官と目撃者を射殺してしまう。

ブレイナードの女性警察署長マージ・ガンダーソン(F・マクドーマンド)は事件を追って
ミネアポリスに赴くが、その間にも狂い始めた誘拐計画は次々と犠牲者を産んでいく……。
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コーエン兄弟はその特異な作風で知られる、80~90年代アメリカ・インディペンデント映画界の
雄だが、この作品はその真価がもっとも発揮された一編と言っていいだろう。
実話を基にしているとはいえ、ほとんどは創作だというストーリー自体の面白さももちろんだが、
個々のキャラクターのおかしさとさりげなくも効果的な台詞の数々は、ドラマの完成度を極限ま
で高めている。雪に覆われた白い町で起こる血みどろの物語。まさに“白のフィルム・ノワール”と
呼んでもいい。カンヌ映画祭で監督賞に輝いただけでなく、アカデミーでは主演女優賞と脚本賞も
獲得した逸品。」(allcinema)
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by jazzyoba0083 | 2011-03-19 22:50 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)