2011年 05月 09日
カティンの森 Katyn
2007 ポーランド 122min. (R15+)
監督:アンジェイ・ワイダ 原作:アンジェイ・ムラルチク 『カティンの森』(集英社刊)
出演: マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジミイェフスキ、マヤ・コモロフスカ他。
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
それとなくは理解していたつもりの「カティンの森事件」の背景がこんなに深く、残忍で
陰謀渦巻くものであったと、恥ずかしながらこの映画を通してしった。
ラストシーンがあまりにも衝撃的なので、最高ランクの観賞制限が付いた。まあ、これは
仕方がないが、中学生くらいからは見て欲しい映画ではある。戦争の悲惨さ、バカさ加減が
事実をもって重厚に観る人の胸にぐいぐいと来る。見終わってスッキリするタイプの映画
だから、苦手な人もいるだろう。
たまさか、先日この事件もからんだ「エニグマ」という映画も見ていたし、カティンの森
事件追悼イベントに参加しようとしたポーランド大統領らを載せた旅客機が墜落し、
全員が死亡して1年、更に、最近碑文をロシアが勝手に変えた、と騒ぎになっていたので
注目された方も多いのではないでしょうか。
ポーランドはショパンの昔から大国のはざまの中で翻弄された運命を持つ。その最後となった
のが、先の大戦で、ドイツとロシアの両方から攻め込まれたことだ。そんな中で起きた
カティンの森事件。現時点での歴史家は、「ロシア軍が優秀なポーランド将校の活躍を
怖れ、せん滅を計画した」との評価であるが、当時大量の遺体を発見したドイツ軍は
これをロシア軍の蛮行として徹底的にプロパガンダに利用、片やロシアは、ヒトラーによる
虐殺事件だ、と主張、事実は対戦が終わるまで、いちおう謎ということになっていた。
しかし、大戦後、調査が進み、虐殺はロシアが手を下したことをロシアも認めた。これはもう
つい最近のことだ。ある種国際社会のタブーとなっていたこの事件を、自らの父もこの事件で
殺されたアンジェイ・ワイダ監督が、ドキュメンタリータッチで、描いた。
人間が逃げてはいけない史実として、描かずにはいられなかったのだろう。私たちはこれを
重く受け止めなくてはならないと感じた。
こうした歴史の事実に翻弄されるある家族に視点を据えて、特に行くえ不明の夫を諦めずに
さがすアンナという女性を中心に物語性を加え、判りやすく共感を生みやすく仕上げてある。
<ストーリー>
「第二次大戦下、ナチス・ドイツとソ連の両方から侵略され、両国に分割占領されたポーランド。
そんな中、ソ連の捕虜となったポーランド人将校のうち1万数千名の行方が不明となり、
後にソ連によって虐殺されていたことが判明する。いわゆる“カティンの森事件”と呼ばれる
この悲劇は、ソ連の支配下にあった冷戦時代のポーランドにおいて語ることの許されない
タブーとされてきた。
本作は、自らの父親もこの事件の犠牲者の1人であるポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ
監督が、そんな歴史的犯罪に改めて光を当てるとともに、国家の欺瞞に翻弄される犠牲者
家族の苦悩を描き出す入魂の人間ドラマ。
1939年9月、ポーランドは密約を結んだナチス・ドイツとソ連によって分割占領されてしまう。
ソ連側では多くのポーランド人将校が捕虜となり収容所へと送られた。
その中にはアンナの夫アンジェイやその友人イェジも含まれていた。
一方、ソ連領に取り残されていたアンナと娘ニカは、1940年春にようやく国境越えに成功、
アンジェイの両親のもとへと戻る。しかし、そこに義父の姿はなかった。彼はドイツ軍に
逮捕され、収容所で命を落としてしまう。アンナは義母と娘と3人でアンジェイの帰りを
待ち続ける。そんな中、1943年4月、ドイツ軍はソ連領のカティンで多数のポーランド人
将校の遺体を発見したと発表する。その犠牲者リストにアンジェイの名前がなかったことに
望みを託し、ひたすら帰りを待ち続けるアンナだったが…。」(allcinema)
「1939年9月、ポーランド・クラクフの女性アンナは娘を連れ、夫のアンジェイ大尉を
探しに行く。
アンジェイや仲間のイェジたちは、ソ連軍の捕虜となっていた。
アンジェイは、見たことすべてを手帳に書き留める決意をする。アンナはクラクフに
戻ろうとするが、国境を越えられない。
11月、アンジェイの父はドイツ軍の収容所に送られる。翌年初め、アンナと娘、アンナの
義姉と娘は、ロシア人少佐の家に匿われていた。義姉親子は強制移住のため連れ去られるが、
アンナたちは逃げ延びる。春、アンナと娘は義母のいるクラクフへ戻り、義父の収容所での
死を知る。
アンジェイはイェジから借りたセーターを着て、大将、ピョトル中尉らと別の収容所に
移送される。1943年4月、ドイツは一時的に占領したソ連領カティンで、多数の
ポーランド人将校の遺体を発見したと発表する。
犠牲者リストには大将、イェジの名前が記され、アンジェイの名前はなかった。大将夫人は
ドイツ総督府で夫の遺品を受け取り、ドイツによるカティンの記録映画を見る。
1945年1月、クラクフはドイツから解放される。イェジはソ連が編成したポーランド軍の
将校となり、アンナに(自分の名前入りのエーターをアンジェイにあげたことで、アンジェイは
イェジとして殺されたことになっていた、という)リストの間違いを伝える。
イェジは法医学研究所に行き、アンジェイの遺品をアンナに届けるよう頼む。
イェジは大将夫人から“カティンの嘘”を聞き、自殺する。国内軍のパルチザンだった
アンナの義姉の息子タデウシュは、父親がカティンで死んだことを隠すよう校長から
説得されるが、拒否する。その帰り道、国内軍を侮辱するポスターを剥がした彼は警察に
追われ、大将の娘エヴァと出会う。校長の妹はカティンで遺体の葬式を司った司祭を訪ね、
兄ピョトルの遺品を受け取る。そして兄の墓碑にソ連の犯罪を示す言葉を刻み、秘密警察に
狙われる。法医学研究所の助手グレタはアンナに、アンジェイの処刑されるまで付けていた
手帳を届けたのだった」(goo映画=一部補遺)
登場人物が、連綿と繋がってくるので、油断していると展開が判らなくなる恨みはなるが
難しいストーリーでは無い。つまり、戦争が追わり、ソ連の衛星国となったポーランドでは
ソ連の蛮行を表ざたにすることは出来なかったのだ。その中で、勇気をもって事実を主張
しようとするアンナの義姉の息子タデウシュの想いなどには、嘘を隠してはいけないという
ポーランド人の勇気を感じるのだ。
この映画の詳細はこちらまで。
2008年のアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品。第二次世界大戦中にポーランド軍の将校がソ連軍に虐殺された「カティンの森事件」の映画化。監督はポーランド人監督のアンジェイ・ワイダ。監督の父親もこの事件の犠牲者であり、ソ連支配下の共産主義時代には語ることすら許されなかったこの事件の真相が今初めて語られる。戦争の歴史の闇の一つがまた明らかになった問題作だ。... more
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