ウソから始まる恋と仕事の成功術 The Invention of Lying

●「ウソから始まる恋と仕事の成功術 The Invention of Lying」
2009 アメリカ Warnor Bros.Pictures,100min.<日本劇場未公開>
監督・製作・脚本:リッキー・ジャーヴェイス
出演:リッキー・ジャーヴェイス、ジェニファー・ガーナー、ロブ・ロウ、ジョナ・ヒルほか。
ウソから始まる恋と仕事の成功術 The Invention of Lying_e0040938_13184324.jpg

<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想とストーリー>
リッキー・ジャーヴェイスと言う人、初めて観たし、知ったのだが、発音から判るのだがイギリス人だ。
自分で制作や脚本も手がけている、ということはこの映画、作りたかったんだろう。
ベースが「ウソを言わない世界」というあり得ない設定なので、あまり真剣に見ない方がいい。
あるいは、下の引用ブログの方のように、重大な意味を汲みとれる人は、幸せであろう。
そのあたりはイギリス人監督・主演の映画の本領か。シェークスピアの世界である。

出だしから、下ネタ炸裂で、こりゃ、劇場公開しても客を呼べないわなあ。で、中ごろまでは
いい調子で見せるのだが、だんだん弛んでくる。あり得ない世界の話なのでテンポは
大事だと感じた。

以下は高評価ブログ『Simply Dead』より引用:

「ここはウソの存在しない世界。主人公マーク(リッキー・ジャーヴェイス)は、
レクチャー映画社に務める平凡な脚本家である。
ある晩、彼はとびきり美しい女性アンナ(ジェニファー・ガーナー)とデートするが、
「あなたの遺伝子は欲しくないから、二度と会わないと思うわ」と冷たく言い放たれてしまう。

翌日、会社に無能と判断されたマークは仕事をクビになり、売れっ子脚本家のブラッド
(ロブ・ロウ)からは「前から君が嫌いだったよ」と爽やかに言われる始末。
家賃も払えず切羽詰まったマークは、銀行に行って貯金を全額引き出そうとする。
その瞬間、彼の脳髄に未知のショックが! 預金額を聞かれ、彼はとっさに「800ドルです」と
多めの額を口にしてしまう。そのデタラメを銀行員はそのまま素直に信じ、彼に金を手渡した。
一体これはどういうことだ!? マークは人類で初めて「ウソ」をつく能力を得てしまったのだ

ジャーヴェイス演じるマークは、ふとしたきっかけで「ウソをつくこと」を体得し、世界でただひとりの
ウソつきとなって、街角に出てあらゆるウソを試す。彼の言うことをなんでも素直に
受け取ってしまう純粋な人々のリアクションも含めて、とても面白いシークェンスだ。
最初に彼の口からついて出るウソが金銭絡みであるという卑小さが実にリアルであり、
同時に作り手の計算高さを感じるところでもある。始まりはとにかく小市民的な、気まずくなる
ほどしょーもないウソであることで、のちに主人公がつく一世一代の「大ウソ」や、あるいは
個人的欲望からくるウソとは明らかに性質の違う「誰かのためにつくウソ」が“発明”される瞬間が、
ひときわ光り輝くのだ。

 そして、想像力や洞察力といったものも、物事を見たとおりにそのまま判断する「事実しかない
世界」の視点からは生まれないのだと、この映画は語る。
ウソをつく力を得たことで、主人公は突飛なことを想像できるイマジネーションを手に入れ、
“フィクション”という概念をこの世に誕生させる(もちろん、他の人々にとっては驚くべき
“事実”として受け止められるのだが)。イマジンという行為は、世界を異なる視点で捉える
力を獲得することであり、それは他人を理解しようとすることにも繋がってくる。
それが後半の展開にも大きく効いてくるあたりも、また深い。

この映画で最も重要な場面……病院のベッドで、死を前にして怯える母親に対してマークが
「大丈夫。怖くない。死んでも人は無になったりしない。幸せな世界が待ってるんだ」という
シーンは、“天国”という概念がまったくのウソから誕生したことを示唆すると同時に、
人が誰かのためにつく最も優しいウソのかたちを描いてもいる。観る者の涙腺をかなりの
高確率で決壊させる屈指の名場面ではないだろうか(今思い出しても、ちょっと涙ぐんで
しまうくらい)。それだけでも泣かせるのだけど、横で聞いてる医者や看護婦たちも
キラキラした目で「本当?」と聞き入っているカットで、もうバーストしてしまった。
ホントずるい。しかも医者やってんのが、心ないキャラクターを演じさせたらピカイチの
ジェイソン・ベイトマンなんだもの。

 それから物語のスケールはにわかに大きくなる。“天国”の存在を示してしまった
主人公は、人々にその詳しい説明を求められ、やがてイエス・キリストやモーゼと同じ
「預言者」の役割を担うことになる。マークはピザの箱に殴り書きした「十戒」を人々の前で
読み上げ、雲の上にいる全能の主“The Man in the Sky”=神の存在をその場で
でっち上げるのだ。つまり、ウソという概念がなければ、宗教すらも成立しないのだという
奥深いテーマまで突っ込んでいく。このあたりは、町山さんもラジオで指摘していたように、
実に秀逸なやり方で宗教や神という概念の成立過程を暴いてみせた、ホントに見事な
展開だと思う。

映画の後半では、あらかたウソを出し尽くしてしまった主人公が、今度は他人から「真情」を
引っ張り出そうと奮闘する。ジェニファー・ガーナー演じるヒロインは、ブサイクで冴えない
完全ストライクゾーン外の主人公と友人として付き合ううち、彼に感化されて想像力や
洞察力を少しずつ身につけていく。
やがて、彼に対して愛情を抱き始めるものの、彼女は完璧な遺伝子目当てに、性格の
悪いイケメン脚本家と結婚しようとする。つまり無意識に、自分の「真情」にウソをついてしまう。
ここは「ウソのない世界」だが、言いたいことを口ごもり、本当の願いを心の奥に閉じ込め、
自分自身を抑圧することは可能なのだ。主人公はそれまでウソにウソを重ね、
それを純粋な人々に易々と信じ込ませてきたが、ここに来てようやく、己の真情だけで
相手にぶつかっていく。愛する人に「ウソをつかないで」と言うために。
その姿は、やっぱり胸を打つのである。」

う~む、ここまで深く読めるとは・・・。己が未熟なのか!!喝!かな。
この映画の引用先はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2011-08-20 13:27 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)