悪人

●「悪人」
2010 日本 東宝 139分
監督:李相日  原作:吉田修一 脚本:李相日・吉田修一 音楽:久石譲
出演:妻夫木聡、深津絵里、岡田将正、樹木希林、柄本明、満島ひかり、塩見三省ほか。
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
昨年、日本アカデミー各章、モントリオール映画祭主演女優賞などを獲得した年度を
代表する作品。やっと鑑賞。昨年は本作と「告白」という話題作が賞を分け合っていた。

原作は未読だが、映画は面白く観た。ただちょっと長いかな。あと10分は短く出来ると
思った。終わって頭に浮かんだ言葉は「朝日を見て涙を流す人間に悪人は居ない」と
いうことと、「絶望的な愛」だった。
タイトルどおり、「悪人」の定義を見ている人に問うてくる。保険外交員芳乃が殺される
のだが、最初にいい加減に引っ掛け、峠でクルマから足蹴にして放り出した大学生増尾が
悪人か、激情に駆られたとはいえ、実際に手をかけた清水が悪人か、出会い系で
メールをやりとりして出会った清水に、逃亡を誘い、深みに嵌めた「紳士服フタタ」の
店員光代が悪人か。殺されたとはいえ、男にだらしの無い芳乃が悪人か。

何かの拍子に悪人になってしまう人生、深みに嵌り抜け出せなくなる絶望感、真面目に
生きてきた人間と、ちゃらちゃらいい加減に生きてきた人間が神様から正当にあるいは
平等に扱われない不条理。それらが、見ている人にぐいぐいと迫ってくる。
清水を演じた妻夫木聡、最初はミスキャストじゃないか、と思ったけど、あの甘い表情は
ラストシーンまで隠して終始鬱屈した青年を好演、光代役の深津、恋愛体験が浅いだけに
一旦嵌るととことんのめりこむ恐ろしさを熱演、さらに脇の柄本、樹木、塩見、岡田、ら
が全体を締める。
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また佐賀と長崎など九州が舞台であり、九州弁のセリフが背景を補強し、映画を強くして
いる。さらに季節を冬に置くことで、全体の寒々しさが補強されている。

しかし舞台となった灯台、あんなに簡単に人が入れちゃうものなの??
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<ストーリー>
「吉田修一のベストセラー小説を『フラガール』の李相日監督が映画化。
原作者の吉田修一は李相日と共同で脚本も手掛けるほどの意欲作。この作品で描かれる
のは、他人と理解しあうことなく、孤独な日々を生きている人間たち。
彼らは他者との触れ合いを拒絶しながらも渇望しており、ちょっとしたきっかけで
犯罪に巻き込まれていく。
彼らは善人でも悪人でもなく、善人でも悪人でもあるのだ。そんな二つの顔を持つ
主人公・清水祐一を演じるのは、妻夫木聡。髪を金髪にし、これまでの爽やかな
イメージとは違った一面を見せる。馬込光代役の深津絵里も、清純派のイメージを
かなぐり捨て、性欲やエゴイズムを持った生身の女性の姿をリアルに演じている。

土木作業員の清水祐一(妻夫木聡)は、長崎の外れのさびれた漁村で生まれ育ち、
恋人も友人もなく、祖父母の面倒をみながら暮らしていた。
佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代(深津絵里)は、妹と二人で暮らすアパートと
職場の往復だけの退屈な毎日。そんな孤独な魂を抱えた二人が偶然出会い、
刹那的な愛にその身を焦がす。
だが祐一にはたったひとつ光代に話していない秘密があった。彼は、連日ニュースを
賑わせている殺人事件の犯人だったのだ……。

数日前、福岡と佐賀の県境、三瀬峠で福岡の保険会社のOL・石橋佳乃(満島ひかり)の
絞殺死体が発見された。事件当日の晩に佳乃と会っていた地元の裕福な大学生・
増尾圭吾(岡田将生)に容疑がかかり、警察は彼の行方を追う。
久留米で理容店を営む佳乃の父・石橋佳男(柄本明)は一人娘の死に直面し、
絶望に打ちひしがれる中、佳乃が出会い系サイトに頻繁にアクセスし、複数の男相手に
売春まがいの行為をしていたという事実を知らされる。
そんな折、増尾が警察に拘束されるが、DNA鑑定から犯人ではないことが判明、やがて
新たな容疑者として金髪の男、清水祐一が浮上する。幼い頃母親に捨てられた祐一を
わが子同然に育ててきた、祐一の祖母・房枝(樹木希林)は、彼が殺人事件の犯人だと
知らされ、連日マスコミに追い立てられていた。

一方、警察の追跡を逃れた祐一は光代のもとへ向かい、佳乃を殺めたことを打ち明ける。
光代はその事実に衝撃を受けるが、警察に自首するという祐一を光代は引き止める。
生まれて初めて人を愛する喜びを知った光代は、祐一と共に絶望的な逃避行へと
向かうのであった。やがて地の果てとも思える灯台に逃げ込んだ二人は幸福な
ひとときを迎えるが、その逃避行が生んだ波紋は被害者の家族、加害者の家族の
人生をも飲み込んでいく……。」(goo映画)
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Tracked from LOVE Cinemas.. at 2011-10-20 10:44
タイトル : 悪人
芥川賞作家・吉田修一の同名ベストセラー小説の映画化。九州で起きた殺人事件、その犯人の男と、男が出会い系サイトで知り合った女が愛し合い出口の無い逃避行を繰り広げる。主演は『ノーボーイズ、ノークライ』の妻夫木聡と『女の子ものがたり』の深津絵里。共演に岡田将生、満島ひかり、柄本明、樹木希林といったベテランと若手の演技派が揃う。監督は『フラガール』の李相日。... more
Tracked from Viva La Vida.. at 2011-11-25 05:25
タイトル : ■映画『カラフル』
『クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦』、『河童のクゥと夏休み』で知られる原恵一監督の最新作『カラフル』は、現代を生きる中学生たちへの応援歌。 要所要所で流れる「大地讃頌」、「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」の合唱の調べや、エンディングに流れるTHE BLUEHEARTSの... more
by jazzyoba0083 | 2011-10-19 23:20 | 洋画=あ行 | Trackback(2) | Comments(0)