秋刀魚の味

●「秋刀魚の味」
1962 日本 松竹映画 113分
監督:小津安二郎 脚本:野田高梧、小津安二郎
出演:岩下志麻、笠智衆、佐田啓二、岡田茉莉子、三上真一郎、中村伸郎、加東大介、
   吉田輝雄、三宅邦子、東野英治郎、杉村春子、北竜二、岸田今日子、環三千代他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
3回目の鑑賞。監督としては遺作となる。年代も進んで昭和37年となったが、
今の時代から見るとまさに昭和そのものだ。
小津の作品はどうしてこう心安らぐのか。自分の原風景みたいなものだから、か。
短く、繰り返しの多いセリフがテンポ良く、生理的に合うのか。

相変わらず、パンやドリーを使わないフィクスな映像、それでいて、会話の
やりとりは短いカットで切り返し、ナメを多用しない。役者のせりふは
棒読みのようであり、表情は豊かとは言えない。
それゆえ、感情が出たときの言葉や、表情が生きてくるのだが。小津映画では
毎度書くのだが、小津を神と仰ぐファンが多いので、やたらなことは言えない。

ここでの主眼は、娘を嫁がせる父親の哀感。小津作品のサブテーマになっている
ような父と嫁ぐ娘のお話だ。評価は「晩春」のほうが高いが、私は本作も好きで
ある。55歳定年の頃だから、笠や中村、北らの同窓生はまだ55前ということに
なるのかな、あるいは自由に退社しているから役員なのかも知れない。
送迎の車とか自由に使っているし。

それにしても、家と会社と居酒屋それに兄のアパート以外にはあまり場面設定が
ないので、笠らは実に良く飲んでいる。箸を手にしていないと会話が出来ないか、
と思わせる。東野の実家も中華料理店だし。
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しかし、4回目を観るか、といわれればおそらく1年経ってWOWOWやNHKで
放送していれば観るだろうな、と思うくらい好きな作品だ。

<ストーリー>
「小早川家の秋」のコンビ、野田高梧と小津安二郎が共同で脚本を執筆。
小津安二郎が監督した人生ドラマ。撮影は「愛染かつら(1962)」の厚田雄春。

長男の幸一夫婦(佐田と岡田)は共稼ぎながら団地に住んで無事に暮しているし、
家には娘の路子(岩下)と次男の和夫(三上)がいて、今のところ平山(笠)には
これという不平も不満もない。
細君と死別して以来、今が一番幸せな時だといえるかもしれない。わけても中学時代から
仲のよかった河合(中村)や堀江(北)と時折呑む酒の味は文字どおりに天の美禄だった。
その席でも二十四になる路子を嫁にやれと急がされるが、平山としてはまだ手放す気に
なれなかった。
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中学時代のヒョータンこと佐久間老先生(東野)を迎えてのクラス会の席上、話は
老先生の娘伴子(杉村)のことに移っていったが、昔は可愛かったその人が早く母親を
亡くしたために今以って独身で、先生の面倒を見ながら場末の中華ソバ屋をやっている
という。
平山はその店に行ってみたがまさか路子が伴子のようになろうとは思えなかったし、
それよりも偶然連れていかれた酒場“かおる”のマダム(岸田)が亡妻に似ていたことの
方が心をひかれるのだった。
馴染の小料理屋へ老先生を誘って呑んだ夜、先生の述懐を聞かされて帰った平山は
路子に結婚の話を切り出した。路子は父が真剣だとわかると、妙に腹が立ってきた。
今日まで放っといて急に言いだすなんて勝手すぎる--。
しかし和夫の話だと路子は幸一の後輩の三浦(吉田)を好きらしい。平山の相談を
受けた幸一がそれとなく探ってみると、三浦はつい先頃婚約したばかりだという。
口では強がりを言っていても、路子の心がどんなにみじめなものかは平山にも幸一にも
よくわかった。秋も深まった日、路子は河合(三宅)の細君がすすめる相手のところへ
静かに嫁いでいった。やっとの思いで重荷をおろしはしたものの平山の心は何か
寂しかった。酒も口に苦く路子のいない家はどこかにポッカリ穴があいたように
虚しかった。」(goo映画)
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それぞれの人物描写が、淡々とした中から浮かび上がってくるいつもの小津映画。
特に平山、路子、ひょうたん先生の3人の心の中は、観客が共感しつつも推し量るが
推し量りかねる、という小津流のカタルシスが設定されていると感じたのだが。

この映画の詳細はこちらまで。

また、こちらのブログが
面白い考察をしています。
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Tracked from RE940の自作DVDラベル at 2011-10-28 22:40
タイトル : 秋刀魚の味
1962年 松竹 113分 監督:小津安二郎 出演:岩下志麻  笠智衆 佐田啓二 岡田茉莉子 三上真一郎 吉田輝雄 牧紀子 中村伸郎 三宅邦子 東野英治郎 杉村春子 加東大介 北竜二 環三千世 岸田今日子  元海軍将校だった初老のサラリーマン、平山周平。既に妻を亡くしているが、娘の路子と次男の幸一との3人暮らしをしており、これという不平も不満もない。中学時代から友人の河合や堀江と時折酒を呑むが、この席で堀江から二十四になる路子を嫁にやれと急がされるが、平山としてはまだ...... more
by jazzyoba0083 | 2011-10-23 23:50 | 洋画=さ行 | Trackback(1) | Comments(0)