2011年 11月 19日
瞳の奥の秘密 EL SECRETO DE SUS OJOS
2009 スペイン・アルゼンチン 129min.
監督:ファン・ホセ・カンパネラ
出演:リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル、パブロ・ラゴ、ハビエル・ゴディーノ、カルラ・ケベド他
<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
いい映画を見た。すでにオスカーも獲り、本国でも大ヒット映画であり、評価が定まった作品
なので、見る方も安心して観てはいたのだが。それにしてもいい映画だった。
出ている人を誰も知らない、会話もポルトガル語なので片事もも判らないのが、私には
映画にリアリティを与えてくれた。実際に起きた事件がベースになっているので脚色の
勝利であり、演出の勝利なんだろう。もちろん役者もいい。
私は、もっと別の結末を予想していたが、いい意味で見事に裏切られた。妻を殺された男の
愛情は、「異常」な形に歪んではしまったが、主人公に、貫く愛の尊さを教えてくれたのだった。
そこに単純だが力強いこの映画のメッセージがある。
やや長めの映画ではあるが、緊迫したストーリーは飽きることがない。よく締まった作品だった。
映像も、オーソドックスながら、これぞ「映画」という作り込み。
一つだけ個人的に気になったのは、犯人を追いつめる執念の持ち主だった主人公が、愛する
女性をみすみす他人に嫁がせることになった状況には、個性のありようとして疑念が湧いたの
だった。
<プロダクションノート&ストーリー>
「2009年8月に本国アルゼンチンで公開され、歴史的な大ヒットを記録したという本作。
アルゼンチン・アカデミー賞では13部門で受賞を果たすとともに、第82回アカデミー賞
外国語映画賞を受賞した話題作だ。
アルゼンチンの名監督、フアン・ホセ・カンパネラが、70年代の祖国の情勢を背景に、
過去の記憶に支配され苦悩する男の姿を描くサスペンス・ドラマ。
主演のリカルド・ダリンはカンパネラ監督作の常連で、アルゼンチンの国民的俳優と言われている。
過去と現在を巧みに交差させ、一人の人間の罪と罰や祖国の軌跡を浮き彫りにする構成が巧みだ。
軍事政権下の不穏な空気に包まれるアルゼンチンの政情、そして衝撃的な秘密が暴かれる
ラストが興味深い。
刑事裁判所を定年退職したベンハミン・エスポシト(リカルド・ダリン)は、仕事も家族もない
孤独な時間と向き合っていた。残りの人生で、25年前の殺人事件を題材に小説を書こうと
決意し、久しぶりに当時の職場を訪ねる。
出迎えたのは、彼の元上司イレーネ・ヘイスティングス(ソレダ・ビジャミル)。変わらずに
美しく聡明な彼女は、今や検事に昇格し、2人の子供の母親となっていた。
彼が題材にした事件は1974年にブエノスアイレスで発生したもの。幸せな新婚生活を
送っていた銀行員リカルド・モラレス(パブロ・ラゴ)の妻で23歳の女性教師が、自宅で
暴行を受けて殺害されたのだ。現場に到着したベンハミンは、その無残な遺体に衝撃を
受ける。やがて、捜査線上に1人の男が容疑者として浮上。その男はリリアナの幼なじみ。
古い写真に写った、彼女を見つめる彼の瞳には暗い情熱が宿っていた。ベンハミンは
部下で友人のパブロ・サンドバル(ギレルモ・フランチェラ)と共に、その男の居場所を捜索。
だが、判事の指示を無視して強引な捜査を行ったことで、事件は未解決のまま葬られること
となってしまう。
そして1年後。ベンハミンは駅で偶然、モラレスと再会。彼は毎日、曜日ごとに駅を変えて
容疑者が現れるのを待っていた。彼の深い愛情に心を揺さぶられたベンハミンは
“彼の瞳を見るべきだ。あれこそ真の愛だ”と、イレーネに捜査の再開を嘆願。
ベンハミンとパブロはようやく容疑者逮捕の糸口を掴み、事件の真相に辿り着くが……。
25年後、タイプライターを前に自分の人生を振り返るベンハミンに、イレーネの存在が
鮮やかに甦る。いまだ過去に生きる自分と決別するために、彼は事件の裏側に潜む謎と、
今も変わらぬイレーネへの想いに向き合うことを決意する。果たして、ベンハミンは失った
歳月を取り戻すことができるのだろうか……?」
8万人からのサッカースタジアムで犯人が見つかる偶然には驚いたけど・・。
それと、犯人を逮捕しておいて、判事は、「犯罪組織への潜入者」として利用するために
釈放し、銃まで与えた。このことは、妻を殺されたモラレスの信念を固くしたに違いない。
「死刑は反対です。死ぬことで罪から解放されるなんて・・。犯人には長い間罪と向き合って
暮らして欲しいのです」 このモラレスの言葉がラストに繋がっていく・・・。
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