質屋 The Pawnbroker

●「質屋 The Pawnbroker」
1964 アメリカ Landaw Company,116min.
監督:シドニー・ルメット
出演:ロッド・スタイガー、ジェラルディン・フィッツジェラルド、ブロック・ピータースほか
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<★★★★★★★★☆☆>
<感想>
「Living Dead」 生ける屍・・・見終わって最初に思い浮かんだ言葉。もちろん劇中にも
出てくるが。クリスマスイヴに見る映画として、妥当かどうかは悩ましいが(苦笑)、
重く、かつ台詞に含蓄のある言葉がたくさん出てくる。

解説によれば、ユダヤ人をこういう角度で取り上げたのはアメリカ映画史上初めてだそうだ。
人種を描いた作品ではあるが、宗教との兼ね合い、人生の価値観という重要なテーマが
グイグイと迫ってくる。

つまりは、ホロコーストを一家の中で一人生き抜き、NYでギャングの下で質屋を経営している
ユダヤ人が、収容所や、一家が惨殺されたことが、トラウマとなりフラッシュバックしてくる
人生。 自らの殻に閉じこもり、友人を作らず、再婚もせず、「生きる屍」となり「金」を
万能と語ることを隠れ蓑として生きている、そんな男の話だ。

彼の質屋に採用されるラテン系の青年Jesus(イエスだが、映画では違う発音をしていたと
思う)は、まじめな青年で社長に金儲け術を教えてもらおうとするが、悪い仲間と売上金を
奪う強盗を計画、仲間が銃で脅すところを「撃つな」と飛び込み、自らが撃たれて絶命する。

主人を慕ってくれた青年を見殺しにしてしまったこと、青年はイエスのメタファーであり、
主人が後悔の念にかられ、メモ差しのピンを自らの手のひらにつきとおすのは、
十字架刑の再現である。 自らの神を見殺しにしてしまった彼は、町中に悄然とさまよい
でるのであった。

「ユダヤ人」とは何か。「ホロコースト」とは何か。「人生と金」とは何か。「人は人と交わらずに
生きられるのか」など、考えざるを得ないのだ。
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ロッド・スタイガーはこの作品でオスカーにノミネートされ、ベルリン国際映画祭で主演男優賞を
獲っている。ことほどの名演技だ。特に、質屋にやってくる、それぞれの事情を抱えた客との
会話、それに対して、希望金額の数分の1しかに査定しない「ケチ」ぶりが興味深い。

1964年の映画のスタイルが超短いフラッシュバックの挿入といい、ドキュメンタリータッチの
映像といい、クインシー・ジョーンズの音楽といい、すべて出ている、と言えるかもしれない。
あえてモノクロをチョイスしたのは、色を出すことでの映像の意味を殺しておきたかったからだと
感じた。

<ストーリー>
「若くして死んだアメリカの小説家エドワード・ルイス・ウォーラントの、2作目の小説を、
デイヴィッド・フリードキンとモートン・ファインが脚色、「グループ」のシドニー・ルメットが監督に
あたった。
撮影は「グループ」のボリス・コーフマン、音楽は「冷血」のクインシー・ジョーンズが担当した。
出演は「夜の大捜査線」のロッド・スタイガー、「ラインの監視」のジェラルディン・フィッツジェラルド、
「野良犬の罠」のブロック・ピータース、プエルトルコ生まれの舞台俳優ハイメイ・サンチェスほか
ニューヨークの舞台人たち。製作はロジャー・ルイスとフィリップ・レインジャー。

ソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)はニューヨークの貧民街で質屋を営んでいる。
かつてポーランドで大学教授だったが一家は大戦中ナチの強制収容所に入れられ、言語に
絶する苦しみの中で妻子は殺された。

今は、妻の妹や、その家族と一緒に何不自由なく暮らしていたが、心はいつも孤独だった。
死んだような彼の店に毎朝、生気を吹きこむのは助手のジーザス(ハイメイ・サンチェス)だ。
プエルト・リコ生まれの元気な若者で、ゆくゆくは質屋経営をしたいと考えている。

ところでソルのスポンサーは自称紳士のロドリゲス。実は彼はスラム街のボスで質屋の店は
彼の隠れみのだった。ある日ソルの店に毛色の変わった訪問者があった。マリリンという女性の
社会福祉事業家だ。ソルにも仕事に一役買ってもらおうと説得に来たのだが彼は拒絶した。
だが彼女には心ひかれた。しかし彼女とかかわり合いになることは世の煩わしさに巻き込まれ
ることだ。彼は恐れた。

一方助手のジーザスは街で知り合った3人のチンピラにそそのかされ、自分の勤める店に
強盗に入るはめになった。というのは彼自身も金が欲しかったし、尊敬するソルの「世の中、
金がすべてだ」という言葉に深い驚きと絶望を感じたからだ。
その日は、ロドリゲスから金の届く日だ。一方ジーザスの恋人メイベルは、この計画を知り、
ジーザスの身を救うため1人でソルを訪れた。愛する男のために体で金を作ろうとしたのだ。
だが目の前に投げ出された彼女の体から、ソルが感じとったのは、かつて妻が、彼の目の前で
ナチの犯されたいまわしい記憶だった。
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1949 Buick Super, from the movie.

そして、その夜強盗が行われた。だが、その夜に限ってソルは金庫を開けなかった。
しびれをきらした3人組はジーザスの合図を待たずに店に押し入り、ソルを脅迫。彼が拒むと、
3人組はピストルを発射した。とっさにジーザスはソルをかばい、彼の身代わりになって死んだ。
この事件は、ソルのかたくなな心を溶かした。彼は収容所以来、初めて人間を信頼する気持ちに
なった。」(goo映画)

ストーリー解説の最終段、こんな簡単な説明では言い切れない。
この映画の詳細はこちらまで。
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Tracked from RE940の自作DVDラベル at 2012-02-03 21:34
タイトル : 質屋
1964年 アメリカ 116分 監督:シドニー・ルメット 出演:ロッド・スタイガー ジェラルディン・フィッツジェラルド ブロック・ピータース セルマ・オリヴァー ジェイミー・サンチェス  かつて戦時中、ポーランドで家族と共にユダヤ人収容所に入れられて想像を絶する苦難を味わった末にただひとり生き延び、今やNYで質屋を営みながら暗い日々を過ごす中年男。彼の現在の灰色の日常生活と、彼の脳裡にたえず蘇る過去の忌まわしい記憶を、先鋭的な編集技法を駆使して重ね合わせながら...... more
Tracked from 或る日の出来事 at 2012-02-25 10:24
タイトル : 「質屋」
ひとりの男の、ホロコーストの記憶に苦しむ姿。果ては、イエス・キリストとの関係までも触れていくかのような、ずっしりとした作品。... more
by jazzyoba0083 | 2011-12-24 23:10 | 洋画=さ行 | Trackback(2) | Comments(0)