2012年 02月 04日
白いリボン The White Ribbon
2009 ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア X-Filme Creative Pool,
Wega Film,Les Films du Losange,Lucky Red.,144min.
監督・脚本:ミヒャエル・ハネケ
出演:クリスティアン・フリーデル、レオニー・ベネシュ、ウルリッヒ・トゥクール、
フィオン・ムーテルト他
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ハネケの映画は初めてだと思う。これは見る人を選ぶ監督だろう。好きな人にはこれぞ、
映画、と思えるだろうし、ダメな人には、暗く、陰鬱で、カタルシスを感じられない、
エンターテインメント性に欠けると思えるだろう。
「カンヌ」受賞系を割と苦手とする私。★は本来なら8,5から9くらいつけるべきなのだろうが
私個人の趣味としては、割り引かざるを得ない。あまりに不条理がストレートに描かれ
過ぎていて、救いがない、観客はうっちゃられて終わる。それがハネケの映画さ、と
言われればそれまでだが。
第1次世界大戦前夜の北ドイツの封建荘園の人々の思いを描く。領主の男爵一家、家令一家、
医師一家、学校の先生と恋人、司祭一家そして、荘園で男爵に使われる人々の政治的にも、
生活的にも精神的にも「抑圧」された日々を、男性教師の語りで綴る。
「白いリボン」とは親が子供に、未だ躾足らずである身、というある種の罰として付けさせる
ものだ。 しかし、一揆すら起こりかねない男爵の圧政、宗教的に厳しい戒律に抑圧された
生活、大人は子供を信用せず、子供らは大人を毛嫌いする。領主は労働者を信用せず、
労働者は、ひたすら耐える。司祭は信徒を信用せず、信徒もまた司祭を胡散臭く思う。
また後段、事件の捜査にやってくる警察は、当然住民を信用しない。
これではナチは遠からず、台頭するだろうなあ、という素地を描いても見せている。
こうした「どんよりとした曇り空」(北ドイツに普通にありそう)のような暮らしのなかで、
次々と奇怪な事件が起きる。犯人は判らない。ますます疑心暗鬼に暮らす人々。
馬に乗ったドクターが道に貼られた針金につまずいて転倒、重傷を負ってしまうところから
話が始まる。医師の妻は早世、そのあとの世話をした助産婦と医師の腐った縁。退院
してきた医師が、助産婦に投げかける、罵詈雑言。「早く死んで欲しんだよね」。
収穫祭の日、男爵のキャベツ畑が荒らされる、荘園の納屋が焼かれる、男爵の男児が
逆さに吊るされ、尻をひどく打たれた姿で発見される、助産婦の子供は精神障害が
あるのだが、彼が、ある日目をナイフで刺され失明の危機に瀕する。
そして、助産婦は犯人が解った、と言って街の警察にいったまま戻らず、医師も
同時に姿を消す。怪我をしているはずの助産婦の子供の姿もまた消えていた。
そして、助産婦の家を覗き見る、クララら子供たち・・・。一体だれが何のために
犯行に及んだのか。
折しもサラエボでオーストリア大公が暗殺され、第1次世界大戦が始まっていた・・。
このミステリを語る教師も、男爵家の17歳の新しい家政婦に恋をし、親に結婚を
申し込むが、1年待てと言われる。デートに誘うと、どうやら彼女は「湖」に秘密が
あるらしい。
何一つ解決を見ないまま映画は終わっていく。それぞれ想像しなさい、という
ハネケの演出だ。ちなみにエンディングで語られるのは、精神障害の子供は
医師と助産婦の間のなさぬ子で、堕胎に失敗し障害が出たと。
WOWOWで解説を担当していた小山薫堂は、障害児の目を潰したのは
母である助産婦であり、彼女は、医師から捨てられたことから彼の気を引くため
実の子に手をかけ、そうすれば医師は毎日往診に来ざるを得ない、と
踏んだのだろうと。証拠に、往診に来た医師(父とは知らない)の手を取って
話さない障害児は、医師が行くと、母がまた何をするか判らないと語って
いるようだったと。 そうすると、ドクターを転倒させ、男爵の男児を虐待したのは
あの助産婦だったのか。 男尊女卑、という「抑圧」もまたここに見えてくる
のだった。いや、宗教や大人に「抑圧」されたクララら子供たちこそ怪しい・・・。
<ストーリー>
「第一次世界大戦前夜の北ドイツの村で起きた奇妙な事件。ひとつひとつは小さな
事件かもしれないが、その奥には不気味な通低音が流れている。
それは何かの“罰”なのだろうか。だとしたら、誰が、何のためにしているのか。
ハネケ監督は『隠された記憶』でも、小さな事件が重なる事によって不気味なうねりを
作っていたが、今回も“謎解き”ではなく、事件の背後にあるものを私たちに考えさせる。
事件の裏には子供たちが関係していることは察しがつくが、その理由も行為も明らかに
していないからだ。観た人それぞれに解答はあるだろう。ヒントは、この映画の舞台と
なった時代のドイツの子供たちは、1930年代にナチズムが台頭したときに、それを
支える世代になったという事だ。
1913年7月、北ドイツの小さな村。ドクター(ライナー・ボック)が自宅前に張られた
針金のせいで落馬し、入院する。隣に住む助産婦(スザンヌ・ロタール)が、
彼の子供たちの面倒をみる。牧師の娘と弟マルティンは帰りが遅くなり、牧師から
“白いリボン”の儀式を言い渡される。
翌日、男爵の家の納屋の床が抜け、小作人の妻が亡くなる。教師(クリスティアン・
フリーデル)は、男爵家の乳母エヴァ(レオニー・ベネシュ)と初めて言葉を交わす。
秋、男爵家で収穫祭の宴が行われている頃、小作人の長男マックスは、男爵家の
キャベツ畑を荒らしていた。その夜、男爵家の長男ジギが行方不明になり、
杖でぶたれ逆さ吊りの状態で見つかる。
後日、男爵夫人は子供たちを連れ、実家のあるイタリアに向かう。退院したドクターは
診察室で助産婦と情事に耽る。
冬、次々起こった事件は一向に解決しない。さらに、部屋の窓が開いていたため
家令の赤ん坊が風邪をひくという出来事も起こる。エヴァが町で働くことになり、
教師は求婚に行くが、父親から1年待つよう言われる。
ある夜、男爵家の納屋が火事になり、小作人が首を吊って死んでいるのが見つかる。
ドクターは助産婦に、一方的に別れを告げる。春、男爵夫人は子供と新しい乳母を
連れ、戻ってくる。教師は家令の娘から、助産婦の息子カーリが酷い目に遭う夢を見た
と聞かされる。
その後、カーリが失明するほどの大怪我を負って発見される。自分の息子たちがジギを
川に突き落としたことを知った家令は、杖で体罰を加える。カーリの事件の犯人が
分かったと聞いた教師は、子供たちの関与を疑う。ドクターと助産婦と子供たちの姿が
消え、一連の事件は彼らの仕業だと噂が広がる。
その後、教師はエヴァと結婚し、徴兵される。終戦後は町で仕立屋を開き、村人たちとは
2度と会うことはなかった。」(goo映画)
この映画の詳細はこちらまで。
『ピアニスト』『隠された記憶』のミヒャエル・ハネケ監督最新作。昨年のカンヌ国際映画祭のパルム・ドール授賞作品だ。第一次世界大戦直前の北部ドイツの村を舞台に次々と起こる不可解な事件と、そこに暮らす人々の心の闇を描き出す。出演は『善き人のためのソナタ』のウルリッヒ・トゥクール、『ベルリン、僕らの革命』のブルクハルト・クラウスナーら。... more