普通の人々 Ordinary People

●「普通の人々 Ordinary People」
1980 アメリカ Paramount Pictures,Wildwood Enterprises,124min.
監督:ロバート・レッドフォード
出演:ドナルド・サザーランド、メアリー・タイラー・ムーア、ティモシー・ハットン、ジャド・ハーシュ他
普通の人々 Ordinary People_e0040938_23927100.jpg

><1980年度アカデミー賞作品、監督、助演男優、脚本賞受賞作品>

<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
良く出来た心理劇だ。まず、脚本が素晴らしい。さらに配役も素晴らしい。特にオスカーを
獲ったティモシー・ハットンの若く脆く、揺れる青春の表情、演技は光っていた。また
いかにも理解が足りない母親役のメアリー・タイラー・ムーアもオスカー・ノミニーに恥じない
いい演技だった。セラピストのジャド・ハーシュもいい。

どこか舞台劇を思わせる設定で、会話劇のなかに、登場人物を浮き彫りにしていく。とは
いうものの、次男が食べない朝食をまるごとディポーザーに投げ込んだり、ナプキンを
神経質にしまう母親の仕草のカットや、微妙に変化する主人公コンラッドの表情も
また映像的な見ものになっている。初監督でいきなりオスカーを獲ってしまったロバート・
レッドフォード、これはフロックなのか? 流石なのか。脚本によるところが大きいと思う
のだが。

タイトルの「普通の人々」は、反語的。出てくる一家はちっとも普通ではない。
弁護士の父とキャリアウーマンの母、できのいい兄弟。一見「普通に見える」一家も
一皮剥けば、問題だらけで、結婚21年の夫婦もやがて崩壊していく。

悲劇的なヨット事故で、兄を亡くした弟コンラッドは、優秀なのに事故は自分のせいだと
ずっと自分を責め、一時入院し、退院したあともセラピストに通っている。
父は理解あるが、「兄しか愛していない母、いや自分しか愛することしか知らない母」と
次第にうまくいかなくなる。コンラッドは自殺未遂を起こす。母の心は余計に離れる。
そういう母を疎ましく思う父。一家は崩壊に向けて転落していく。さらに病院で一緒で
仲が良かったカレンが自殺する、という事件が重なり、コンラッドはパニックになる。
そこを救うのがセラビスト、バーガー医師。「良き友だ」と彼を受け止めてくれた。

また同じ教会のコーラス隊で一緒のガールフレンドのジェニンの素直さも悩める
コンラッドにカタルシスをもたらしてくれた。
こうして自らの心の開放に成功するコンラッドだったが、片方で、父は母に絶望、母は
荷物をまとめヒューストンの兄のもとへ去っていった。

結局、「自分しか愛せない母の頑迷さ」が、すべての原因だったのか。父をして
「虚しい人生だった」と21年間を言わしめたのだから。そういう見方で正解なのだろうか。

コンラッドの一家3人は、恐らく映画を見に行った、誰でも、自分のこととして共感できる
姿ではないだろうか。
普通の人々 Ordinary People_e0040938_2395895.jpg

<ストーリー>
「カルヴィン・ジャレット(ドナルド・サザーランド)はシカゴに住む有能な弁護士。
妻ベス(メアリー・タイラー・ムーア)とは結婚して21年になる。息子コンラッド
(ティモシー・ハットン)は17歳、ハイスクールに通い聖歌隊のメンバーでもある。

彼は時々悪夢にうなされ、父のすすめで精神科医バーガー(ジャド・ハーシュ)の
治療を受けている。彼の病気は兄バックの事故死が原因のようだった。
秀才でスポーツ万能だったバックは皆に愛されていたがコンラッドと2人でボートで
遠出した際にボートが転覆しコンラッドだけが助かったのだった。
そして、その直後自殺をはかったコンラッド。バックを溺愛していたベスは、
時々コンラッドを見て凍ったように口を閉ざす。

病院でいっしょだったカレン(ダイナ・マノフ)と、退院後久しぶりに会ったコンラッドは、
彼女の元気な姿に安心するが、分析医に通っているかという彼の質問に表情を
くもらせ、彼女は席を立っていった。
一方、カルヴィンは、コンラッドとべスの間のわだかまりを解きほぐそうと必死の
努力を試み苦悩する。聖歌隊の合唱仲間ジーニン(エリザベス・マクガヴァン)に
よい声だとほめられたコンラッドは、彼女とデートし、明るい気分にひたる。

クリスマスの休暇に入り、カレンにお祝いの電話を入れたコンラッドは、その時
カレンが自殺したことを聞き茫然とする。取り乱したコンラッドに、バーガーは
医者の立場から言葉をかけ、コンラッドを苦しめている罪の意識から解放させる。
落ちつきを取り戻した彼はジーニンを訪れ、好きだと告げた。

ある晩居間にいた父母の元にコンラッドが現われ、初めて自分から進んでベスに
キスをした。しかし、ベスは抱き返すことなくそのままの姿勢でじっとするだけだった。
夜中に目を覚ましたベスは、階下の部屋で1人泣いているカルヴィンの姿を見て
当惑する。彼は妻に初めて君への愛があるのかわからないと本心を告げた。
明け方、彼女は家を出て行く。庭で1人立ちつくすカルヴィンのもとにコンラッドが近づき、
2人は無言のままいつまでも抱き合うのだった。」(goo映画)

この映画の詳細はこちらまで。
Tracked from RE940の自作DVDラベル at 2012-03-15 21:21
タイトル : 普通の人々
1980年 アメリカ 125分 監督:ロバート・レッドフォード 出演:ドナルド・サザーランド メアリー・タイラー・ムーア ティモシー・ハットン ジャド・ハーシュ エリザベス・マクガヴァン  平穏な日常生活を送っていた家族4人の家庭に、長男の事故死、続いて次男の自殺未遂という事件が起こる。この出来事を契機として、愛情と信頼によって固く結ばれていた筈の一家が、激しく揺り動かされ、目に見えない緊張が家の中を支配していく。そして映画は、3人がそれぞれの苦悩を抱えて噛み合わない...... more
by jazzyoba0083 | 2012-03-10 23:00 | 洋画=は行 | Trackback(1) | Comments(0)