白いカラス The Human Stain

●「白いカラス The Human Stain」
2003 アメリカ Miramax Films,Lakeshore Entertainment,108min.
監督:ロバート・ベントン  原作:フィリップ・ロス「ヒューマン・ステイン」
出演:アンソニー・ホプキンス、ニコール・キッドマン、エド・ハリス、ゲイリー・シーニーズ
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
邦題「白いカラス」、よく出来たタイトルで、映画を見終わる頃に、なるほどね
と判ってくる。一方、ロスの小説「ヒューマン・ステイン」とは映画の中では
「人間の傷」と訳されていたが、ステインとは、汚れ、汚点との意味もあるので
両方の感覚が、表現されていたのだったな、とこれも終わってから判る。
それが悪いことなんじゃなく、しみじみと、映画の内容と絡まって、心に
染みてくる。

深い思索的な映画、散文的な表現(映像も良い)の中で、登場人物が背負った
人間の「業」や「性(さが)」と言った、抜き差しならぬ「負」の感情を
淡々と描いていく。しかし、その淡々とした進行の背後に描かれるものの深さに
「淡々」が故に、不気味であり「深刻」であることが表出されていたようで、
これは監督の勝利であろう。アメリカが抱える様々な今日的な「傷」を
散文的にまとめた映画であるが、淡々と進むが故に眠くなるかもしれない。

ただ、好悪の分かれるタイプの映画ではあると思う。「一体何を言いたいのか」に
象徴されるように。

しかし、私には意外に簡単な構図に思えた。白人にしか見えないが、実は黒人と
いう人種詐称の有名大学古典学教授(ホプキンス)ベトナム帰りの夫のPTSD、
彼からの暴力と、自分だけ助かり子供を殺してしまった自身も幼児虐待の体験を
持つキッドマン。
青年の頃のポプキンスに、結婚を理由に縁を切られる黒人の母、それに激怒して
兄弟の縁を切るという兄。妻となった女性にも自分が本当は黒人ということを
打ち明けてない。妻はそれを知らずに死んでいく。

青年期のホプキンスの最初の恋人が、彼の母親に紹介され、母が黒人だったこと
に衝撃を受け、あんなに愛していたのに彼の元を去っていくシーンは、
アメリカならではの現実であり、日本人には中々理解しずらいだろうけど、
重要なシーンであった。それから彼はユダヤ人と称して学部長まで上り詰めたが
「スプーク」という黒人蔑視の言葉を授業中に使ってしまい、それが元で
学校を追われる。なんという皮肉だろうか。
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その後、教授は、キッドマンと出会う。彼は彼女の中に傷を同化して癒しあえる
感情を見出していたのに違いない。だから彼女に自分の出自を教えるのだ。
教授との関係を知ったベトナム帰りの夫はキッドマンを追い掛け回す。
そして、冒頭のシーンとなるわけだが、雪の道で前から来たキッドマンの
夫のクルマ、避けようとして川に転落する、教授とキッドマンのクルマ。
二人は車に閉じ込められて死んでしまう。まるで、「人生の傷」から
逃げるように。冒頭でぶつかる直前に見せた教授(ホプキンス)の表情は
何か、悟ってしまった、そして人生にさようならをいっている顔つきに
思えてならなかった。
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こうした話を、教授と親友になった売れない作家(ゲイリー・シーニーズ)が
「The Human Stain」という本にして出すことになるのだが、
大学をクビになり、その話を本にしてくれ、と作家を訪ねるところから
作家の語りで映画は静かに進行していく。
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一つ難点を言えば、(原作があるのでどうしょうもないのだが)キッドマンの
不幸が、ちょっとステレオタイプな感じであり、もう少し、ひねりを
加えられなかったかな、と感じた。私が本作の中で、教授が白人の風貌ながら
実は黒人だった、という「業」を背負っていると気が付くには、最初の恋人を
母親に連れて行ったことでは判らず、そのずいぶんあとになってからで、
このセッティングが「おお、そういうことだったか」とかなりの衝撃を受けた
ことからすれば、キッドマンの「業」が、ありきたりな感じに感じたのだ。
「白いカラス」。なるほど、という感じである。

<ストーリー>
「1998年、米マサチューセッツ州。名門アテナ大学の学部長コールマン・シルク
(アンソニー・ホプキンス)は、ユダヤ人として初めて古典教授の地位に昇り
つめた学者。だが勇退を目前に、何気なく発した言葉が黒人差別だと非難され、
辞職に追い込まれてしまう。

半年後。いまだ怒りのおさまらないコールマンは、湖畔で隠遁生活を送る作家の
ネイサン・ザッカーマン(ゲイリー・シニーズ)を訪ね、自分の屈辱の経緯を
本にしてくれと依頼する。それには尻込みしたネイサンだが、孤独な二人の間には
友情が芽生えていった。

1年後。コールマンはネイサンに、恋人がいることを打ち明ける。
彼女の名はフォーニア・ファーリー(ニコール・キッドマン)。義父の虐待、
ベトナム帰還兵の夫レスター(エド・ハリス)の暴力、子供の死という悲惨な
過去を背負った、清掃の仕事をしている34歳の女性だ。
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一方、コールマンも自身の出生にまつわる秘密を、長年連れ添った亡き妻にさえ
隠していた。実は彼は白い肌に生まれついた黒人であり、社会でうまく生きて
いくためにユダヤ人だと偽っていたのだった。
互いに深い傷を持つコールマンとフォーニアは、ネイサンの忠告を無視して、
どんどん愛にのめり込んでいく。そしてコールマンがフォーニアに自分が黒人で
あることを告白した後、ふたりは交通事故死してしまうのだった」(goo映画)

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by jazzyoba0083 | 2012-04-09 23:30 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)