木洩れ日の家で PORA UMIERAC

●「木洩れ日の家で PORA UMIERAC」
2007 ポーランド Tandem Taren-To, Kid Film,.104min.
監督・脚本・編集:ドロタ・ケンジェジャフスカ
出演:ダヌタ・シャフラルスカ、クシシュトフ・グロビシュ、パトリツィヤ・シェフチク他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
全編モノクロ、殆どおばあさんの独り言と愛犬との会話。舞台は彼女の家の中。
監督の趣味なのか、アップが凄く多い。おばあさんの皺に満ちた表情がアップで
飛び込んでくる。しかし、この当時91歳であったという女優さん、昔はさぞかし
綺麗な人だったのだろうな、という気品を感じるので、モノクロということもあり
嫌な感じはしない。エッジの効いたモノクロ画面は、思いのほか、濃厚な映像
効果をもたらすものだな、と感じた。ドロタ監督は自分で編集も担当したので
(脚本もだけど)相当の思いいれをこの映画に込めていて、キャメラの動きや
映像のつなぎにもこだわりを感じる。主人公の家は広大な土地に建つガラスを
多用した大きな独特のデザインの家。ということは昔は裕福だったんだなと
いうことは判る。そのガラスが昔のものなのでそれを通して観る景色や人が
歪むのだが、それがまた作品に微妙な味わいや意味合いを付加している。

女優ダヌタ・シャフラルスカの一人舞台の様相であるこの映画は、彼女の
顔の表情を含めた演技が見るべき点となっている。それと愛犬フィラデルフィア。
演技の上手い犬だねえ。ラスト、老女アニェラが天に召されたとき、椅子に
座っている彼女のひざにあごを乗せて見上げるシーンなどは、素晴らしいと
感じた。全編よく吼えすぎのキライはあるけど(笑)

ワルシャワ郊外の広大な一軒家に住む91歳のアニェラという老女の、上映
時間だけの短い間に示される、生き方を、息子一家、隣に住み、老女の家を
買収したいと考える一家、また音楽教室を開く若きカップルと教室の生徒らを
絡めながらストーリーを進め、思い出、行く末、そして決断と観る人との
思いを重ねていく。ラストは想像通りにはなるのだが、クレーンで空へと
向かっていくモノクロの森と空と雲は、彼女の心情そのもののようであった。

<プロダクションノート&ストーリー>
「僕がいない場所」のドロタ・ケンジェジャフスカ監督が、撮影当時91歳になる
ポーランドの名女優ダヌタ・シャフラルスカを主人公にシナリオを当て書きして
撮り上げた感動ドラマ。

ワルシャワ郊外の林の中に佇む古い屋敷を舞台に、そこに暮らす老女が愛犬と
過ごす晩年の日々を、全編モノクロによる詩情溢れる映像で描き出していく。

 ワルシャワ郊外の緑に囲まれた木造の古い屋敷。ここで愛犬のフィラデルフィアと
暮らす91歳の女性、アニェラ。
共産主義時代に政府から強制された間借人もようやくいなくなり、思い出の詰まった
この家で静かな余生を送っていた。そんな彼女の楽しみは、双眼鏡で両隣の家を覗く
こと。一方は、愛人を囲う成金の家、もう一方には、子どもたちのために音楽クラブを
開く若いカップルが住んでいた。
ある日、成金の使いという男がアニェラの家を売ってほしいと破格の値段を提示して
くる。言下に断るアニェラだったが、残り少ない人生を思い、大切な我が家の行く末に
不安が募る。追い打ちを掛けるように、息子の思いがけない行動を目の当たりにし、
さらなるショックを受けるアニェラだったが…。」<allcinema>

息子の思いがけない行動とは、成金に家を売るように母親に仕向けてくるとこであり、
彼女はそれに対し、家を2階に自分が住むことを条件に、音楽教室の若い二人に
無償で土地と共に譲ってしまう。そしてそんなしがらみが終えたアニェラは木洩れ日の
あたるベランダの揺り椅子で、愛犬に見取られながら天国へと旅立っていったの
だった。ああ、幸せな生き方、逝きかただったなあ、と思ってしまうのだ。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2012-05-31 22:55 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)