椿三十郎

●「椿三十郎」
1962 日本 東宝映画 98分 
監督:黒澤明  原作:山本周五郎『日々平安
出演:三船敏郎、仲代達矢、小林桂樹、加山雄三、団令子、志村喬、藤原鎌足、入江たか子
清水将夫、伊藤雄之助、土屋嘉男、田中邦衛、江原達怡、平田昭彦、小川虎之助ほか。
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
WOWOWで放送中の黒澤明シリーズ。この巨匠を食わず嫌いだった私は
先日、名作の誉れ高い「七人の侍」を鑑賞し、目からウロコであった。
そこで、今回は、本作をチョイス。上映時間としては、随分短かったので気楽に
楽しむことが出来た。
黒澤監督作品=芸術性の高い作品=近寄り難い、という自分なり固定イメージを
作ってしまっていたので、本作は、全然違うじゃないか、と理解した次第。
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「七人の侍」の中でも菊千代(三船)のキャラクターとしてコメディチックな
演出もあったのだが、本作は、時代もくだったこともあろう、小林桂樹の
「捕虜になってしまった押入れ侍」の、あたかも植木等の「およびでない?」の
ギャグも斯くやとばかりのところ、それに菊千代のキャラが思い浮かべられる
椿三十郎(三船)のキャラクターも、ユーモラスな部分も良い味付けである。
更に、城代家老の奥方(入江たか子)と娘(団令子)のボケ振りもなかなか。
更にさらに、ラストあたりの伊藤雄之助の、タヌキおやじなんだけど、実は
慧眼の持ち主である城代家老が、「乗った人より馬は丸顔」などという味わいは
素晴らしかった。
100分に満たない作品にして、無駄ということが全く感じられないテンポの良さ
であった。
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加山雄三は、三船に比べるとまだまだセリフも下手だし、演技も比べるべくもない。
冒頭の田中邦衛、江原達怡、らの前で演説することろはまるで城南大学の田沼雄一君
だったな。加山は若大将シリーズが始まったばかりの頃だ。団令子も若大将ファミリー
ではある。
それに引き替え、仲代達矢の目の演技、敵側の志村喬、藤原釜足らの目のクマが
自分達がやばくなるに従い濃くなっていく様は、良かった。志村の目の演技も
良かったなあ。
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先に『用心棒』を観れば良かったなと感じた。三船敏郎の魅力満載の一篇であるが、
一人で十人以上を切りまくるシーンは、これは刃こぼれや血あぶらで、そんなには
斬れないだろうと感じた。ラストの仲代との決着、黒澤映画てこういう風だったかな
というくらいびっくりした。組織になじまない男『抜身のギラギラした刀』の
痛快な剣劇であった。ストーリーは非常に単純。

ただ、「七人の侍」のところでも書いたが、音が聞き取りづらい。早口なんだな。
三船、仲代、伊藤雄之助くらいのスピードでしゃべってくれるといいのだが。
息せき切ってしゃべる時は滑舌を徹底的に注意しなくては・・・。
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<ストーリー>
「ある城下町の夜、薄暗い社殿で九人の若侍が密議をこらしていた。城代家老睦田に、
次席家老黒藤と国許用人竹林の汚職粛清の意見書をさし出して入れられず、
大目付菊井に諭されてこの社殿に集っていたのだ。

その真中へよれよれの紋付袴の浪人者が現れて、九人をびっくりさせた。
その上、その浪人者は、城代家老が本物で、大目付の菊井が黒幕だといって皆を
仰天させた。その言葉の通り、社殿は大目付輩下の手の者によって取りまかれていた。
あおくなった一同を制してその浪人者は、九人を床下へかくし一人でこの急場を救った。

その時、敵方の用心棒室戸半兵衛はその浪人者の腕に舌をまいた。かしこまる若待を
みた浪人者は、急に可哀そうになり力をかすことにした。
城代家老は屋敷からはすでにどこかへ連れていかれた後であり、夫人と娘の千鳥が
監禁されていた。浪人者はこの二人を救い出し、若侍の一人寺田の家にかくまった、
寺田の家は黒幕の一人黒藤の隣だ。黒藤の屋敷は別名を椿屋敷と言われるくらい、
椿の花が咲いていた。夫人の言葉にその浪人者は名を椿三十郎と名乗った。

皆は、城代家老の居場所を探すに躍起だ。黒藤か菊井か竹林の家のどこかに監禁されて
いるはずだ。三十郎は敵状を探るため、室戸を訪ねていった。室戸は三十郎の腕を
買っているので、即座に味方につけようと、菊井、黒藤の汚職のことを話し、
自分の相棒になれとすすめた。三十郎を信用しない保川、河原は、三十郎に
裏切られたら大変だと、三十郎の動向をうかがうことになった。

三十郎を支持する井坂、河原も、あの二人には任せておけないと三十郎の後をつけた。
しかし室戸と三十郎に見つけられた四人は当身をくって捕えられた。
三十郎は室戸の隙をみて、番人を斬り倒し、自分をしばらせて四人を逃がした。
三十郎はこれで室戸から用心棒稼業を馘になってしまった。

寺田の家に帰って来た三十郎は若侍をどなりつけた。その時、夫人が椿屋敷から
流れてくる川の中から意見書の紙片を拾って来た。この川は寺田の庭の隅を通って
いるのだ。家老は黒藤の家に監禁されていると決った。
三十郎は、黒藤の警固を解かせるため、むほん人の一味が光明寺に集っていると
知らせに行くことになった。その留守になった合図に椿の花を川に流すというのだ。
計略は図に当った。警固の一隊は光明寺に向った。だが、光明寺の門の上に寝ていた
という三十郎の言葉に嘘がばれてしまった。光明寺には門がないのである。
三十郎は捕えられた。しかし、臆病な竹林は三十郎の罠にかかって、川に椿の花を
流した。若待必死の斬込みで城代家老は救われた。三十郎と半兵衛の一騎打は--。
三十郎は若侍九人の見送りをうけて静かに去っていった。」(goo映画)

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Tracked from RE940の自作DVDラベル at 2012-09-13 21:12
タイトル : 椿三十郎
1962年 東宝 96分 監督:黒澤明 出演:三船敏郎  仲代達矢  小林桂樹 加山雄三  団令子  志村喬 藤原釜足  入江たか子 清水将夫 伊藤雄之助 久保明  太刀川寛 土屋嘉男  田中邦衛  江原達怡  三船がワイルドに演じる素浪人、またの名を桑畑十三郎、またの名を椿三十郎は今回、上役の不正を暴こうと立ち上がった9人の若侍に助太刀する立場を買って出るが……。一説によれば黒澤監督は、かつて映画化しようと準備した山本周五郎原作「日日平安」の脚本をベースに本作を構想...... more
by jazzyoba0083 | 2012-08-29 23:10 | 邦画・旧作 | Trackback(1) | Comments(0)