まあだだよ

●「まあだだよ」
1993 日本 大映製作・東宝配給 134分
監督・脚本:黒澤明
出演:松村達雄、香川京子、井川比志、所ジョージ、油井昌由樹、寺尾聰、日下武史ほか
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
黒澤映画を観飛ばしている昨今。今回は遺作となった「まあだだよ」。
最初の頃のギラギラした心理描写とアクション、触ったらきれそうな演出も
この頃にいたると、すっかり角が取れて、老境に達した巨匠の作品という
風情。
内田百閒の半生を教え子らとの師弟愛で結ばれたいくつかのエピソードで綴って
行く。だが、長すぎのうらみは否定できず、「摩阿陀会」の長々として
宴会に付き合うのはいささかしんどい。黒澤の映画を全部観たわけではないのだが、
物語が幾つかのエピソードを消化しつつ、緊張感を維持させている初期作品に
比べれば、次に何が起きるのか、という緊張感はまるでなく、のほの~んと
進んでいく。これが黒澤の狙いだったのかもしれないが。
事実に基づいているらしいが、はっきりいってどうでもいいストーリー。ただ、
「先生」のような人物、そして彼を敬愛してやまない教え子たちの存在は
火薬と金の匂いのする昨今の映画のアンチテーゼなのかも知れない。
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大きく分かれるシークエンス。つまり
・冒頭、今日で先生を辞める、と宣言した教室。「仰げば尊し」の大合唱に
 涙する先生。
・文士として生きていくことが決めた先生の引っ越しを手伝う教え子たち。
 「馬鹿鍋」に舌鼓を打つ(敗戦が近い頃であった)ここでも「仰げば尊し」の
 大合唱。空襲警報が鳴る・・・ 
・焼け出された先生と奥様。隣の男爵の御庭番のおじいさんが住んでいたという1畳
 しかない小屋で、「鴨長明の方丈記」にあこがれているからいいんだとやせ我慢。
 季節が巡る。(あの小屋に大人二人が生活できるのかな?)
・教え子たちが、先生の新居を作る。庭にはドーナツ型の池。先生と奥様は
 迷い込んできた猫の「ノラ」と楽しく暮らしていた。
・「第一回摩阿陀会」先生は大声で「おいっちに」を歌う。
・隣に土地を買った男、3階建てを立てると挨拶に。土地を所有者の男は
 3階建てなら売らない、と言いだし、買い手は怒って帰っていく。
 教え子らはその土地をみんなで買い取ることに決める。
・ある日ノラが行方不明に。先生がひどく落ち込む。ご飯も酒も喉にとおらない
 ほど。教え子はもとより、小学生、町内会などみなが探してくれる。一度
 ノラらしい猫が発見、との報が入ったが違った。さらに落ち込む先生だったが
 そこに、別のノラ猫が登場。先生たちはその猫を飼いネコとして、元気を
 取り戻したのだった。
・時代は下り、「第十七回摩阿陀会」。教え子たちもすっかりおじいさんに
 なっていて、先生も喜寿となりそのお祝いも兼ねていた。孫たちからの
 バースディケーキを吹き消した先生は、その場にうずくまる。持病の不整脈が
 悪くなったのだ。しかし隣で一緒に飲んでいた主治医が適格に処置し、大事ないことが
 判明、中座して家に戻る先生に「仰げば尊し」の大合唱が沸き起こった。
・そして先生の家。先生が隣で寝ている部屋で、教え子たちは飲み始めた。
 熟睡する先生が見る夢は、幼いころのカクレンボ。「まーだだかい」
 「まあだだよ」。幼い子供が見上げる夕空には、面白い雲が出ていた・・・・。

という展開。村松達雄の先生は、飄々としてユーモラス、愛すべき毒舌家でもあり
反骨の人でもあった。何より他人を動物を愛した。豪放ではないが、磊落ではあった。
そんな先生と、教え子たちの愛情は、突き抜けた無償の愛であろう。
「大黒様はだれでしょう・・・・」という因幡の白ウサギの歌が耳について
離れなかった。シークエンス毎に先生は童謡とか古い曲を歌うのだ!

黒澤は老境に達し、世情も考え自分の老いも考え、こんな作風にしたのだろう。
だが、私の好きな黒澤からすれば、これが遺作となったことに寂しさを禁じ得ないのだ。
ラストカットの夕空の雲は何を表現したかったのだろうか・・・。

この映画の詳細はこちらまで。
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Tracked from RE940の自作DVDラベル at 2012-10-05 21:00
タイトル : まあだだよ
1993年 大映 135分 監督:黒澤明 出演:松村達雄 香川京子 井川比佐志 所ジョージ 油井昌由樹 寺尾聡 日下武史 小林亜星 平田満 渡辺哲 頭師孝雄 松井範雄 杉崎昭彦 冷泉公裕 岡本信人  1943年、「姿三四郎」で衝撃的な監督デビューを飾ってから、ちょうど50年。日本映画界のトップランナーとして長く活躍し続けてきた黒澤監督が、人生の晩年にあたって、またもや“師弟愛”をテーマに、自らの敬愛する作家・内田百かんとその門下生たちとの心温まる交流を感動的に映画化。1...... more
by jazzyoba0083 | 2012-09-17 23:15 | 邦画・旧作 | Trackback(1) | Comments(0)