醜聞(スキャンダル)

●「醜聞(スキャンダル)」
1950 日本 松竹 104分
監督:黒澤明
出演:三船敏郎、志村喬、山口淑子、桂木洋子、千石規子、小沢榮、日守新一ほか。
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
黒澤が松竹で撮った初作品。カストリ雑誌(時代が判るな)対新進画家&歌手の
スキャンダル報道を巡る争いに、ダメダメな弁護士とその一家が絡むという筋立て。
ロケとセットを上手く使い分け、新聞記事の撮りきりなども含めてこの手の
ストーリー展開には必要なテンポ感だそうとしたが、クリスマスイブの「きよしこの夜」の
歌声、喫茶店で志村と三船らが歌う「蛍の光」がいささか長すぎ、画竜点睛を欠いた。

裁判シーンでは、あえて誇張して弁護士蛭田(志村)のダメっぷりを誇張していたが、
あそこまで何もしないのは、いくら被告側から買収もどきをされていたとはいえ、ちょっと
オーバーすぎたと感じた。そんな弁護士をずっと使い続ける青江と西条の原告コンビが
いい人過ぎるだろうとも。それとラスト、画家青江(三船)が「星が生まれた瞬間を
目撃したんだ」と記者に話す下りは、これまで観てきた黒澤作品には無かった、
「オチ」の押し付けを感じたのだ。ゆえに全体のお話としてはそこそこ面白いのに
黒澤映画の中では、ちょっとグレードが低いか、と感じた次第。

志村の演技は、若き三船もバタ臭い山口も食ってしまっているが、あの肩を落として
しょぼくれる姿は、2年後の「生きる」での「渡辺市民課長」そのものであった。
街中に占領軍憲兵司令部のバス停があったのは時代だなあ。また黒澤映画の定番の
ようになっている街中のドブ、本作でも健在である。
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<ストーリー>
「新進画家青江一郎は、ある日愛用のオートバイを飛ばして伊豆の山々を写生に
出掛けた。三人の百姓が不思議そうな顔をして彼の絵を眺めている。
そこへ美しい歌声が聞こえてくる。やがて派手な格好をした一人の女が山を登って来た。
人気歌手西條美也子である。バスが故障で歩いて来たが宿屋までが大変だ、と嘆く。

よろしい、それなら荷物だけでも僕のオートバイに積んでってあげましょうと、青江が
申し出た。ついでの事に貴嬢も乗っけて行きましょうということになった。オートバイの
相乗りで二人は宿屋まで素ッ飛ばした。百姓は呆れてそれを見送っていた。

二人のカメラマンが突然宿屋に現れ、女中に西條美也子に逢わせてくれいう。
西條さんは写真は撮りませんと女中は断った。二人は残念そうに宿屋の廻りをうろつき
歩く。風呂に入った美也子の部屋に青江が挨拶に来る。二人は庭に面した手すりに
もたれて話を始めた。その時、先程のカメラマンがこれを見つけて、パチリとシャッターを
切って、シメシメと逃げてしまった。

このカメラマンはカストリ雑誌アムール社の写真部員だったのである。現像を見た
社長の堀は有頂天に喜んだ。こいつは特ダネだ!そこで彼は編集長に命じて、青江と
美也子のラブロマンスをでっち上げさせた。
新進画家青江一郎と人気歌手西條美也子の秘めたる恋。恋はオートバイに乗って!
煽情的見出しでこの雑誌は飛ぶように売れた。一万部刷り、堀は図に乗って大々的
宣伝をやり出した。青江一郎は仰天し、憤怒の形相物凄くアムール社に乗り込んだ。
堀は馬鹿丁寧に挨拶した。その顔に青江の拳固が一発飛んだ。この事は雑誌の売れ
行きを更に増した。青江は遂に訴訟問題にしようと定めた。

ちょうど、ひどくはやらない弁護士蛭田乙吉がわざわざ一肌ぬいでやろうと現れたので、
彼に弁護を頼んだ。彼の家はひどい暮らしをしていた。一人娘の正子は胸を病んで
長らく寝たままであった。青江はこの清純な少女がすっかり好きになった。この娘の
父親なら蛭田はキット正義に味方する人物だろうと思い込んだ。ところが堀は蛭田に
手を廻して自分の有利に裁判を導こうと札ビラを切って彼の丸め込みに成功した。

十万円の小切手が蛭田のフトコロに入った。彼は娘の正子を見る度に良心の呵責に
耐えかね酒ばかり飲んだ。一方西條美也子は訴訟は取り下げてくれと青江に言ったが、
彼は正義は必ず勝つんだと言い張って聞かなかった。
堀の方は弁護士として法曹界の重鎮片岡博士が出馬した。裁判は開かれた。蛭田の
弁護はシドロモドロで青江は反って不利になっていった。二回三回と公判は進んだ。
片岡博士の論陣は明快で鋭かった。蛭田は十万円の小切手の為、言わねばならない
証言さえ黙って答なかった。青江の立場はいよいよ妙な所に追い詰められていった。

美也子も遂に公判に現れた。この馬鹿々々しい醜聞は是非とも消してしまわなければ
ならなかった。そんな時、正子が遂に不帰の客となったのである。蛭田の悲嘆ぶりは
ひどいものであった。最終の公判に臨む蛭田の面上には今迄とまるで違う気魄が感じ
られた。彼は証人台に立ち十万円の小切手を取り出した。片岡博士は、自分の側の
敗訴をあっさりと認めた。青江と美也子は晴れて愛情を打ち明ける仲となった。」
(goo映画)

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by jazzyoba0083 | 2013-01-03 17:50 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)