たそがれ清兵衛

●「たそがれ清兵衛」
2002 日本 松竹 製作委員会(松竹・日テレ・住友商事・博報堂・日販・衛星劇場) 129分
監督:山田洋次
出演:真田広之、宮沢りえ、小林稔侍、大杉漣、田中泯、神部浩、草村礼子、岸惠子ほか。

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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
歴代の日本映画を代表する1作である。映画化された藤沢周平「海坂藩」3部作の
中でも、本作が一番好きだし、良くできていると思う。「隠し剣 鬼の爪」も良い
映画だとは思うけど。何回か目の鑑賞であるが、いつみても感動は減らないものだ。

公開された年の日本アカデミー賞を助演女優賞(岸惠子)以外で全部最優秀賞を
獲得、さらにアカデミー賞外国語映画部門にもノミネートされた。
決して短い柄画ではないが、ゆるゆると流れる山形・庄内地方の田舎藩下級武士の
話を飽きさせず、ストーリーの緊張を継続されていく手法は山田洋次監督の
凄腕、である。キャメラも音楽もまた良い。そして真田広之、宮沢りえらのキャストも
押さえながらもツボを得た演技を見せ、良質な映画の大きなポイントとなって
いる。

時代劇の文法を変えた、といえば黒澤明であるが、山田洋次監督の本作も
藤沢作品の主題を描き出すために徹底的にリアリズムにこだわり、田舎の藩の
下級武士の人生を叙情的に映像化した、という意味で画期的であった。
下級武士の日常、男女のこと、そして激しい剣戟、まとまりのいい作品である。

江戸時代の人たちは夜になれば寝るしかなく、おんなたちは家事をし男に
仕えるだけが人生だったのだなあ、それが当たり前で疑問の持ちようも
なかったのだなあ・・。人生って当時の下級の人たちはどう捉えていたのだ
ろうか、などと思いながら観ていた。

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<ストーリー>
一見冴えない侍だが、実はなかなかの使い手、というのは藤沢作品の王道であるが、
ここでも50石、手取り30石の家禄しかない上に幼い子供二人とボケが来た母親を
抱え、虫篭づくりの内職を余儀なくされる下級武士井坂口清兵衛は、実は剣術道場の
師範代を務めたほどの名手である。が、最近は剣の修行もままならず、腕はなまって
いる。小役人である彼は「たそがれ」時になると、仲間からの酒の誘いも断り
ボロボロの衣服と伸びた月代の手当てもせず、そそくさと家路に付くのだった。
それゆえ仲間から「たそがれ清兵衛」という綽名を付けられていた。

物語はそんな井口の妻が労咳で亡くなって、葬式を出すシーンから始まる。長じた
長女(岸恵子)がナレーターとなって物語を説明していく。
赤貧洗うが如しの井口の家に、幼馴染の朋江(宮沢りえ)が、離縁してヒマだと
いって遊びに来た。子供たちはすっかり朋江になついた。楽しい時間が流れて行った。

ある日、朋江を送っていくと、分れた夫(大杉漣)が来ていて、酒に酔って暴れていた。
それを取り押さえた清兵衛であったが、後日、果し合いをすることになってしまう。
しかし、なまったとは言え、剣術の名手である清兵衛は、棒切れで元夫を叩きのめして
しまう。その話が城下に広まって行った。

400石取りの武家の娘である朋江には縁談が舞い込むが、朋江の本心は井口の
ところに嫁に行くことだった。ある日、朋江の兄と釣りをしている時、兄から朋江を
嫁に貰ってくれないか、と言われる清兵衛であったが、50石の下級武家の暮らしが
どんなに酷いか、分っていない、亡くなった妻も結局身分の違いに慣れることは
なかった、しばらくはいいが、3-4年すれば必ず、やっていけなくなる、と申し出を
断ってしまった。兄は「朋江はそんな女ではない。覚悟はできている」と説得した
のだが、聞き入れることは無かった。

そんな話があってから朋江が清兵衛の家に来ることは無くなってしまった。

そんな折、藩内で跡取りのことから紛争が起き、粛清が行われたのだが、一人
余五善右衛門(田中泯)のみが、「なぜおれが、腹を切らねばならぬ」と抵抗、
自宅に閉じこもって、成敗に来た目付も切り捨てた。その刺客に選ばれたのが
清兵衛だった。ある夜、老中に呼び出され、藩命だ、と言われてしまう。
自分には幼い子供や母もいるので、最初は断ったのだが、聞き入れられることは
無かった。

成敗に出かける支度を、朋絵を呼んで手伝ってもらった。出がけにもし戻って
来ることが出来たら、嫁に来てくれぬか、と勇気をもって語りかけたが、
朋江はすでに他家への縁談を決めた、と口にするのだった。

余五の家に行くと、彼も藩の騒動に巻き込まれた不遇の身の上をつらつらと
酒を飲みながら語りかける。「逃げる、逃がしてくれ」とも。
しかし、小太刀使いの清兵衛の長刀が竹光(妻の葬式代出すために売ってしま
った)と知り、「俺を竹光で斬りに来たか、甘く見たな」と態度を豹変、
剣戟となった。死闘の上、清兵衛は余五を斃した。

自分も傷を負い、家に帰った清兵衛は、迎えた朋江と抱き合うのだった。

それからは長女の語りとなる。清兵衛と朋江は夫婦になったが平和に暮らせ
たのは3-4年。明治維新の嵐が海坂藩にも訪れ、佐幕であった藩は大勢の
官軍に攻め込まれ、清兵衛は鉄砲に撃たれて亡くなった、とのことだ。

「たそがれ清兵衛は不運な男だという人もいるが、私はそうは思わない。
私たち娘を愛し、美しい朋江さんに愛され、充足した思いで短い人生を
過ごしたにちがいない。そんな父を誇りに思う」と。
長女のそんなセリフで映画は終わる。

この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2013-04-02 23:33 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)