マーガレット Margaret

●「マーガレット Margaret」
2011 アメリカ Fox Searchlight Pictures,Gilbert Films.150min.
監督:ケネス・ロナーガン
出演:アンナ・パキン、J・スミス=キャメロン、ジャン・レノ、マット・デイモン、マーク・ラファロ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
圧倒的なセリフ劇。罵り合う場面も多いが、非常に練られた会話で、主人公の少女も
頭がいいと見えて、納得性の高いセリフが並ぶ。それがとても面白い映画だったが、
疲れる。マット・デイモンがえらく若いな、と思ったら実際は2005年に制作された作品
であったが、さまざまなトラブルから公開が遅れ、日本では劇場未公開のままと
なった。その間、製作総指揮のミンゲラは亡くなってしまった。
主にもめたのはその上映時間で、プロデュース・監督サイドは3時間近くを要求したが
スタジオ側が150分を超えないことを主張し、訴訟にまでなってしまったという。

濃密なセリフのやり取りのブロックのあとにインターミッションのように流れるNYの景色
とか監督のこだわりを感じさせるシーンは短縮版でも見られる。カットされた30分が
どんなものだったか知る由もないが、この手の作りだと2時間半くらいが限度じゃないかと
観客的には思うわけだが。

主軸はこうだ。NYの女子高生リサ(アンナ・パキン)は家族でキャンプに行くときに被る
テンガロンハットを探していたのだが、たまたま舗道を歩いているとき道路を走っていた
市バスの運転士が、探しているものに近い帽子を被っていたため、舗道から歩きながら
ジェスチャーを交えて、そこ帽子はどこで手に入れたかを尋ねる。

当然、運転士は少女がバスの横を歩きながら何をわめいているのか分からない。
そっちに気を取られているうちに赤信号を見落とし、横断歩道を歩いてた買い物カートを
押す婦人を轢いてしまう。リサは片足をもがれた婦人に声をかけ必死に励ますが、
最初のうち自分の身に何が起きたか分からず、必死に理解しようとしていたが、たちまち
意識が混濁し、救急車が来る前に絶命してしまった。

警察の調べに、自分にも非があることに心を痛めたリサは運転士の生活のことも
考え、とっさに「信号は青だった」と言ってしまう。
事件はリサの証言などから運転士の過失を認めずに終わるが、両親の呵責に耐えかねた
リサは、運転士の家を訪ね、証言を撤回する、という。

だが、運転士に罪の意識は無く、警察も取り合ってくれない。今更証言をひっくり返しても
事態は変わらないという。

そこでリサは母のつてで弁護士を紹介してもらい、運転士の解雇を目的とする裁判を起こす
ことを決意する。しかし弁護士から、裁判は親族しか起こせない性質のものだと言われる。
そこでアビゲイルという親族を探し出す。彼女は亡くなった婦人モニカとは疎遠で、最初は
関わりたくないとしていたが、多額の賠償金が取れると分かり、がぜんやる気を出す。

裁判の結果、和解が提案される。市の交通局は35万ドルの賠償金の支払いに応じるが
運転士の解雇については組合問題をさけるため応じないという。
リサはそれでは自分の目的がかなわないとアビゲイルに主張するが、原告はアビゲイル。
大金を目の前にアビゲイルは和解に応じることを主張し、その結末となる。

母に誘われて出かけたオペラを見ていて、リサはあふれ出る涙を止めることができなった。
彼女の思いが遂げられなかったのと、その間に起きた様々が出来事に対する感情が
ほとばしり出てしまったのだ。会場に来る前に見かけた市バスにはあの運転士の姿が・・・。
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以上が主軸であるが、これに
・自分のことで精いっぱいの舞台女優の母。
・その母と恋愛関係になるラモン(ジャン・レノ)という男性と、彼の急死。
・離婚して西海岸に住む父親との関係。
・処女を捧げる学友ポールとの関係。
・クラスでのアラブ系女子生徒とのテロを巡る激しい論争

が、横軸に絡んでくる。どれもよく整理されていて、状態が混乱することはない。
翻訳も大変だったと思うが、セリフが良く研がれた切れ味のいいナイフのように
スパッスパッと心に響いてくる。本音が炸裂するやりとりは奥行きの深さを感じさせる。
劇場公開されなかったのが残念だ。それにしても主人公リサを演じたアンナ・パキンと
いう女優さん、一見憎たらしいご面相だが、体当たりで迫力あったなあ。
「ピアノ・レッスン」でオスカー助演女優賞を当時史上最年少で獲得したのはダテでは
無かったわけだ。その後コンスタントに活躍しているようだ。今年もう31歳になった。
母親役のJ・スミス=キャメロンも、儚げ、危なげな味が出ていて良かった。

力強さを感じさせる作品だったと思う。

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2013-09-19 23:40 | 洋画=ま行 | Comments(0)