インサイド・マン Inside Man

●「インサイド・マン Inside Man」
2006 アメリカUniversal Pictures,Imagine Entertainment,etc.128min.
監督:スパイク・リー
出演:デンゼル・ワシントン、クライヴ・オーウェン、ジョディ・フォスター、クリストファ・プラマー
    ウィレム・デフォー、キウェテル・イジョフォー他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
もしかしたら、一度観ているかもしれない。しかし、そうだとしても面白い映画
だった。脚本が良く練られているし、テンポも良い。何も盗まずけが人も出さない
銀行強盗の裏にあるもの、というストーリーは普通のクライムサスペンスにはない
驚きと期待を持たせる。またクリストファー・プラマーやジョディ・フォスターという
配役が、映画の輪郭をハッキリさせている。

ただ、若干締まらないなあ、と感じたのは、クライヴ・オーウェン一味が何を理由に
銀行家プラマーの過去の秘密を盗み出したのだろう、ということ。銀行に客として
いたユダヤ教のラビも一味だったようだが、彼らは誰???ということも最後まで
分からないまま。

ただ、ストーリーの斬新さ、つまり煙幕弾こそ持っていたが、モデルガンのライフルを
持ち、信託銀行に塗装業者を装って押し入り、(ふつうこういう業者は正面からは
入れないと思うのだけれど)客と従業員に自分たちと同じ格好をさせて、ジャンボと
バスを要求する。殴られる奴は出てくるけど、殺そうという意志も、金を盗むという
意志もない。
そんな謎の集団に、NYPDの敏腕刑事デンゼル・ワシントンと相棒のキウェテル・イジョフォーが
捜査に乗り出す。しかし不思議なことだらけで、一味の要求がよく分からない。

一方、信託銀行の会長クリストファー・プラマーは、辣腕弁護士ジョディ・フォスターを
雇い、銀行にある自分の秘密にかかわるものを守ろうとし、賊と取引をするように
依頼する。ジョディは、銀行内のオーウェンと電話で連絡を取り、中に入り交渉するが
失敗する。ただ、一味の目的はハーケンクロイツの書類の存在で判ってしまった。

実はプラマーは大戦中スイス銀行に勤めていて、ナチスがユダヤ人から奪った
カネや宝石を基に、戦後アメリカで銀行業を始め、成功した。しかし、彼は
親友だったパリのユダヤ人夫婦が財産を没収されるとき、助けることが出来たのに
それをしなかったことにずっと良心の呵責を覚えていて、慈善事業などを積極的に
行い、罪を償ってきたのだった。
そのことがあったからか貸金庫の392番に、彼の当時の所業の記録と、ナチの手から
自分に渡った親友夫人のカルティエの大粒ダイヤをずっとしまっておいたのだった。
(とっとと処分しておけばこんなことにならなかったのだろうと思うのだが)

クライヴ・オーウェンら一味は、それを狙って押し入ったのであり、金は初めから目的
ではなかった。彼らはまっすぐに392金庫に進み、中にあったダイヤの袋多数と、
なぞの書類を奪った。それだけだった。
ワシントンはオーウェンとの交渉に銀行の中に入り、勝ち目はないから
降伏するようにいろいろな取引を持ちかけるが、一味は乗ってこない。
やがてワシントンは時間稼ぎをされている、と勘づく。その目的はまだわからない。

屋上で人質の一人が射殺された(これも実はフェイク)ことをきっかけに
警官隊が突入しようとするが、一味はオーウェンを残しで全員人質に紛れて外に出た。

警察は、とりあえず全員を拘束して、犯人捜しをするが、分からない。ワシントンの上司は
事件をなかったことにするように動く。しかし、一人だけ逃げたオーウェンの目論見を
探し当てたかった。

ワシントンは弁護士ジョディと接触することで、所有者不明の392金庫に会長の
秘密が入っている、と確信。礼状を取って、開錠、すると中からチュウイングガムと
カルティエのダイヤが出てきた。過去の書状はすでにオーウェンに抜き取られていた。
そしてダイヤを追え、というメモも出てきた。

このダイヤを持って会長の元を訪ねると、会長はしらを切るが、ワシントンの中では
構図が見え始めていた。

オーウェンはどこに隠れていたのか。銀行地下の備品倉庫の壁を2重にして、そこの
狭い空間に2週間閉じこもっていたのだ。冒頭の狭い空間とはここのことだった。
そして一味が穴ぼこを掘っていたのはトイレづくりだったわけだ。

2週間後、無事に解放された一味は、銀行から出てきた彼をピックアップしどこかへと
消えて行った。会長は、事件が闇から闇へと葬られたことに対し、弁護士ジョディに
報酬を払うのだった。

さらに、ワシントンがかつて手がけた14万ドルの小切手紛失事件、その小切手も
どこからか出てきたという。ワシントンは今回の仕事で1級刑事に昇進もしたのだった。
そしてポケットには、一粒の大きなダイヤが・・・。実はオーウェンが2週間ぶりに銀行から
出ていくときにワシントンとぶつかったのだが、その時に1粒のダイヤをポケットにしのばせ
たらしい。(なんでこのタイミングが分かったのかなあ)

以上が私の理解だったが、違っているところがあるかもしれない。ネットを見ると
会長が黒幕だった、という見方をしている人がいましたが、それは無いでしょうね。

で、元に戻るのだが、オーウェン一味とラビに扮していた老人は何を目的としたの
だろか。会長の過去の悪事を告発しようとしたのか?ならば392金庫のことを
どうして知っていたのか。内部協力者がいたのだろうか。それこそがタイトルに
なっているのか。老人は反ナチの告発者、オーウェンは冒頭で告白するように
彼に雇われたプロの窃盗団。あの文書がある限り、(会長が生きている限りだけど)
カネを引き出す算段は付いたわけだから。

全体の森は素晴らしく綺麗なんだが、それを構成している木々が何の木なのか
よく分からない、例えは下手だがそんな気分にさせたれた。

しかし、全体としての構成、映像、テンポ、演技、などはどれも一級であることには
間違いはない。
今思えば、人種のこと(第一発見者の巡査がワシントンとの会話の中でヒスパニックの
ことをスぺ公=翻訳:戸田奈津子さん=と呼んだことを叱責する)を取り上げる箇所が
複数あったと思ったが、これは畢竟、ユダヤ×ナチという全体構図の一部だったのかな、
とも思った。

音楽にジャズトランペットの気鋭、テレンス・ブランチャードを持ってくるところ、また
冒頭とエンディングにかかる音楽が何故かインド風というのもスパイク・リーっぽいなあ、
と感じだ。

※今調べたら、2007年(今から6年前)に一度観ていてブログも書いてますね。
宜しければそちらもお読みください。検索窓からどうぞ。
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<ストーリー>
「ダルトン・ラッセル(クライブ・オーウェン)をリーダーとする4人の銀行強盗が、
マンハッタン信託銀行を占拠した。通報を受け、NY市警のフレイジャー(デンゼル・
ワシントン)とミッチェルは現場に急行する。
フレイジャーは以前関った麻薬事件で14万ドルの小切手が紛失するという事態に
巻き込まれ、内務調査課から汚職の疑いをかけられていた。それだけに、今回の事件は
汚名返上のチャンスだったのだ。
また、銀行の取締役会長アーサー・ケイスの命を受けて、ニューヨークでも指折りの
弁護士マデリーン・ホワイト(ジョディ・フォスター)も呼び出される。

銀行内では、ダルトンたちは人質全員にジャンプスーツと覆面を着用させ、自分たちと
同じ格好をさせていた。これでは誰が人質で誰が犯人なのか、区別できない状態と
なる。ダリウス警部率いる作戦指令車には、犯人との電話回線などの全ての準備が
整った。その時、人質の老人が解放され、犯人から「警官が近づいたら人質を2人殺す」と
メッセージが伝えられる。

そんな中、人質がまた一人解放され、犯人からの要求が明らかになる。人質の首に
下げられたボードには、「ケネディ空港にジャンボ機とパイロットを用意しろ。夜の9時以降、
1時間ごとに人質を殺す。銀行には爆弾が仕掛けてある」と書かれていた。
警察側は、要求されたピザの箱に盗聴器をセットして銀行内に運び込む。そんな時、
マデリーンが市長を伴って現場に現れ、政治レベルの問題をちらつかせながら事件に
介入してくる。実はマデリーンは、ケイスから貸金庫にまつわる個人的な密命を受けていた。
事件は混迷の度を深めていくが、フレイジャーは遂にダルトンとコンタクトをとることに成功する。」
(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
 
by jazzyoba0083 | 2013-12-11 23:20 | 洋画=あ行 | Trackback | Comments(0)