ゼロ・グラビティ Gravity

●「ゼロ・グラビティ Gravity」
2013 アメリカ Warner Bros.Pictures.91min.
監督・製作・脚本:アルフォンソ・キュアロン
出演:サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー、(ナレーション)エド・ハリス
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<評価:★★★★★★★★★☆>
<感想>
すでにオスカーの呼び声も高い作品の登場。本日封切り二日目にして
宇宙もの大好きな私はシネコンに飛び込んだ。
昼過ぎに見終わったのだが、感想をどうかこうか、もの凄く悩んでしまった。
断っておきますが、これは「スターウォーズ」とか「スター・トレック」のような
活劇ではありません。むしろ結構内省的思考を楽しむ映画だと思います。
後で言いますが、エンタメとしても無論楽しいですけどね。

「世紀の傑作!」という人もいれば「ストーリー性もあまり感じられず
つまんない」と言う人もいるでしょう。(これまでネット上で見る限り絶賛の
嵐ではあるようだが)

また「画面が綺麗だった」「素晴らしい3Dだった」「たった二人の出演者だったが、
二人共素晴らしい演技、特にサンドラは素晴らしかった」「91分という尺に
感動をまとめ上げた監督の手法には感動した」「音の使い方が最高だった」
などなど。どれも正解でしょう。究極の感動としては、やはり「生きる」という
点に涙した人も。

さように、この作品は、今、観る人が置かれている状況に因って、また映画に
何を求めるかに拠って、受け取るものが大きく変わるのではないか、という
タイプの映画だと感じたのだった。

個人的に一番心に残ったのは、ソ連の衛星に入って、無線交信を試みた
サンドラの耳に聞こえてきたのが、地球のアマチュア無線の交信であった
ところ。
言葉は分からないが、犬の声、赤ちゃんの鳴き声・・。ああ、宇宙にはない
温かいものが、地球にはある、安心に包まれた平穏な時間が、今、そこでは
流れている、ということを思うサンドラ。そこには宗教性にも似た、生死感、
人生観、宇宙観が収斂されていくのだ。自分の不注意で幼い娘を事故死させて
しまったサンドラの行き場の無い愛情と無念、そしてどこかに静かに流れる
生への確実な希望が去来する。 私にはここが本作のハイライトのような気がした。

もちろん、ラスト、地上に立ったサンドラの胸中に去来したものを想像してみる
というところの余韻の醍醐味もあろう。

本作には91分の短い間にそうした観る側の想像力を刺激するプロットが上手く
埋め込まれている。相棒クルーニーとの会話や別れ、幻想に現れるクルーニーの
啓示、破片がヘルメットを突き破り死んでしまう同僚の手に巻かれた家族の写真、
などなど、ガジェットも含めて、よくも短い時間にいろんなことを言ったな、ということ。
ラスト、中国の宇宙船に乗り移ったサンドラが宇宙から大気圏に突入し、青空に
パラシュートが開き、そして湖に着水、さらにあけたドアから水が入り、沈没し
そこから思い宇宙服を脱いで水面に上昇、泳いで砂浜に着き、砂を掴んで立ち上がり
そして空を見上げる・・。ここの一連の宇宙~大気圏~青空~水中~地上の流れは
絶対に何かのメタファーであるはずだ。あなたは何を感じるだろうか。

91分と短い映画ではあるが、ある意味2時間超の映画より多弁であったと言えよう。

そして、映画好きなら、この映画は本当に傑作だと感じると思う。監督がそこに
詰め込んだことが理解しやすいからだ。そういう人にはこの映画はたまらなく魅力的
になるだろう。クブリックの「2001年宇宙の旅」のように。

片や、ものすごく自然な3D(私は自分のメガネが故障しているのかと一度外して
画面を見てみたくらい)は、これみよがしの効果を狙うのではなく、宇宙と、下に見える
地球という空間全体の奥行、爆破されたロシアの宇宙船の破片が時速何万キロで
ブッ飛んでくるという奥行を見事に映し出し、ほぼ全編宇宙空間という舞台を極めて
効果的な舞台となしえている。また、宇宙服の頭のガラスの部分の映り込みを実に
上手く表現上に活かしていて見事だ。
もちろん、優れたVFX、効果的な長回し(冒頭は12分)さらに、どうやって撮ったのだろう、
と不思議でならなかった自然な無情力状態の表現、ハラハラドキドキの帰還にいたるま
での流れなど、エンターテインメントとしても成功しているといえよう。

加えて、本作に備えて体を絞ったに違いないサンドラの二人芝居、一人芝居。特に
ひとりぼっちになってからの心の揺れや諦観、覚悟、生への執着など、宇宙と機会が
相手の舞台で、素晴らしい演技だった。
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これは3Dで観なければ絶対に損だ。出来れば可能な限り大きな画面で、小屋の真ん中
位で見るのがよろしかろう。ただ、多くの方も指摘されいるが、「音」が大きな演出の
キーになっているので、ポップコーンとかガサゴソする音を立てるものは持ち込まない方が
ご自身も楽しめる。本作はWOWOWでやっていても、見る価値が4分の1位になってしまう
劇場用の映画だ。今年シネコンに行った映画で、こんなに考えされられ、また映像に
引き込まれた作品はない。

アカデミー視覚効果賞はまず確定か。さらにサンドラの主演女優賞、さらに作品賞、
監督賞にもノミネートされるだろう。残念ながらこうした奥行の深い作品は今の日本には
作れない。
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by jazzyoba0083 | 2013-12-14 13:30 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)