悪い奴ほどよく眠る

●「悪い奴ほどよく眠る」
1960 日本 黒澤プロ、東宝  150分
監督:黒澤明 脚本:黒澤明、橋本忍、小国英雄、久板平二郎、菊島隆三
出演:三船敏郎、森雅之、香川京子、三橋達也、志村喬、西村晃、加藤武、藤原釜足、笠智衆他、
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
昨年の今頃、WOWOWで放映していた「黒澤明シリーズ」、これまで黒澤作品の喰わず嫌い
だった私は、まずは見てみようと見始めたら、すっかり黒澤ワールドに魅了されてしまい、
放映された作品はほとんど見たが、本作だけは見逃してしまった。その後、再放送もされ
なかったため、今回初めて宅配DVDレンタルを利用し、鑑賞した次第。

昭和35年の芸術祭参加作品である。これまでの経験から古い黒澤映画はセリフが聞き取り
にくいので、字幕を出して観た。

長い映画だったが、脚本を5人で練ったことだけのことはあるよく出来たプロットで、後期の
黒澤一人だけの脚本作品の独善性と比べると、この初期中期ごろの複数脚本のほうが
出来が良いと自分は感じるのだが。それにしてもこれだけのオリジナル脚本を今の日本の
映画が出来るだろうか。ほとんどは原作あり、だもの。

さて、たまさか「特定秘密保護法」が国会を通り、成立、汚職ではないが、政治の不条理を
痛感していた昨今、実に今の時代にフィットしていた、というか日本の政治・官僚・経済の
中枢の腐れ具合は全く変わっていないのだな、と感じた。そういう風土を突いた黒澤の
慧眼は流石である。本作以前の「生きものの記録」もそうだけど、これだけ社会を告発する
映画、このところ新作は見ない。

三船敏郎は、時代劇で見られるようなコミカルさを押さえ、(映画の中にややコミカルな
タッチもあったりはするのだが、それは個人的な演技上のことではない)3年後の
「天国と地獄」(個人的には黒澤作品で一番好き)に繋がる現代の悩める男を好演する。
また、撮影当時49歳であった森雅之の、老副総裁ぶり、巨悪に押しつぶされていく
下っ端役人、西村晃の狂気が、個人的にはヒットした。三橋達也は面白い役どころだった
が今一つ生かし切れていなかったのではないか。
森雅之の副総裁、最後は「参りました」となるのか、と思うのだがそうでは無いところに
面白さがあり、さらに、ラストに副総裁が電話でヘイコラする相手こそ巨悪であり、
その悪こそが、この本当の主人公であり、タイトルの言わんとする所であるわけだ。
フレンチノワールの邦題のようなこのタイトル、優れものだと思う。

長台詞の長回しは、いささか説明的過ぎる面も。特に、ラストでの加藤武による三船の
最期の説明は、画竜点睛を欠いたと言わざるを得まい。(多くの人が指摘している事)

音楽の佐藤勝は早坂文雄の弟子であるが、「生きものの記録」の後、黒澤作品には
無くてはならないスタッフとなった人だが、三船が劇中で口笛を吹く音楽は、いかにも
黒澤作品ぽいメロディーラインで、不思議な旋律だが映画にマッチしていると感じた。

三船が公団に就職する前に、加藤武と経営していたのが外車のディーラーなので
懐かしいアメ車が出てくる。また、三船の嫁、香川美子の兄三橋達也の所有していた
のが当時のMGAで、これがまたカッコいい。クルマ好きにはそんな点も魅力だった。
面白い映画であったが、黒澤現代劇としては個人的には「天国と地獄」に軍配を
挙げたい。

この映画のストーリーなどの詳細はこちらのwikipediaをご参照ください。

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by jazzyoba0083 | 2013-12-16 23:45 | 邦画・旧作 | Trackback | Comments(0)