東ベルリンから来た女 Barbara

●「東ベルリンから来た女 Barbara」
2012 ドイツ Schramm Film Koerner & Weber.105min.
監督:クリスティアン・ペツォールト
出演:ニーナ・ホス、ロナルト・シェアフェルト、ライナー・ボック、ヤスナ・フィリッツィ・バウナー他
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<2012年度ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作品>

<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
ドイツの映画であるけど、東側の匂いがプンプンしてくる仕上がり。(舞台が東ドイツだから
あたりまえかもしれないけれど) 淡々と進んでいるようで、その背後には当時(1980年)の
東ドイツの息が詰まるような生活が描かれていく。

西の世界にあこがれる一人の東ドイツの女医の物語に、同僚の男性医師、西ドイツの
恋人、可愛そうな問題児ステラのことなどが横糸として絡む。一度西ドイツへの移住を希望し
却下されてから、監視付で東ベルリンの大病院から地方の病院に転属させられた
バルバラは、西ドイツの恋人(この人どういう人なのかよく分かりませんでした)から金を
貰って貯めて、西ドイツへの脱出の時期を探っていた。

週に一度、家じゅうをひっくり返される捜索と全裸になっての身体検査を受けるという日々。
監視社会、密告社会が静謐な進行の中に描かれていく。勤務することになる病院の
小児科では、同僚の医師アンドレとともに運びこまれる問題の多い少年少女らの治療に
当たっていた。その中に問題児ステラもいた。彼女はバルバラにだけは心を開き、助けを
求めていたが、人民警察に連れて行かれる。またビルから飛び降りた青年は奇跡的に
一命は取り止めたが、脳内出血で意識がおかしくなっていた。
「孤立するなよ」とアンドレに言われるが「孤立させていただきます」と周囲とは距離を置く
バルバラ。当然西への脱出を計画していたからだ。導くのは時々会いに来てくれる西ドイツ
の恋人である。 
しかし、かたくななバルバラの心も、アンドレの言葉や態度の元、柔らかくなり、次第に
アンドレに惹かれるようになる。が、彼女の決心は固い。
いよいよ西側への脱出となった夜、ステラがまたまた施設から脱出し、バルバラの部屋に
助けを求めてきた。バルバラは彼女を自転車に乗せて海に向かい、手引きにやってきた
潜水士にステラの身を預けるのだった。彼女は東側に留まることした。また機会もやって
来るだろうと踏んだのだろうか。

強い風の中を自転車に乗るバルバラ、大きな木の十字架の下からお金を出すバルバラ、
全体を覆う陰鬱な雰囲気であり、ドラマとしての起伏に乏しいので、この手の映画、
「ベルリン」や「カンヌ」で賞を獲るような映画はどうも、という人には向かないかもしれない。
感情を移入しづらいというか。人物の配置も分かりづらいところがある。
北欧の映画とも違った「重さ」を持った作品だ。ただ、監督賞を獲るだけはあり、サスペンス性
も含めてどこか力を持った映画であることも確かだ。 私個人の好みとは遠いところにある
作品である。
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<ストーリー>
「1980年、夏。東ドイツ、バルト海沿岸にある小さな町の病院に、女医バルバラ
(ニーナ・ホス)が赴任してくる。西ドイツへの移住申請を出したため、東ベルリンの
大病院からこの地に左遷されてきたのだ。そんな彼女に、医師アンドレ(ロナルト
・ツェアフェルト)と秘密警察<シュタージ>の諜報員シュッツ(ライナー・ボック)の監視の
目が光る。

ある日、トルガウの矯正収容施設から逃亡して、髄膜炎を発症した少女ステラ(ヤスナ・
フリッツィー・バウアー)を警察が連れてくる。バルバラは、西ベルリンに住む恋人ヨルク
(マルク・ヴァシュケ)が用意した逃走資金を協力者から回収して森に隠していた。
長旅から戻ると、突然シュタージの家宅捜索と女性職員による屈辱的な身体検査を
受ける。
翌朝、アンドレは血清を作っていてステラの妊娠に気づいたことを告げる。翌日、バルバラは
森の奥でヨルクと密会する。アンドレの血清のお陰で回復したステラは、施設に戻りたくない
と懇願する。アンドレはかつて致命的な医療ミスを犯し、政府にもみ消してもらう代わりに
地方勤務と密告の義務を課せられたことをバルバラに告白する。その直後、ステラは
人民警察によって強制退院させられる。

3階から転落して意識不明に陥った少年マリオ(ヤニク・シューマン)が運ばれてくる。
マリオの脳にはレントゲンでも見えない血栓がある可能性があったが、リスクを伴う
開頭手術をするか、アンドレは苦悩する。
その夜、外国人専用ホテルでヨルクと密会したバルバラは土曜日に密航することを
告げられる。翌朝、マリオとの会話で頭蓋骨内出血による記憶障害を直感したバルバラは
アンドレを探すが、彼は末期癌を患うシュッツの妻を診察していた。嫌悪感を示すバルバラに、
アンドレは病人なら助けると答える。マリオの手術はバルバラの出奔と同日に決まる。
バルバラが旅立とうとした瞬間、再び逃亡してきたステラが彼女を訪ね、一緒にいてと叫ぶ。
西側での新生活か、医師としての責務か、運命の決断が迫る……。」(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2013-12-25 22:55 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)