チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~ Poulet aux prunes

●「チキンとプラム~あるバイオリン弾き、最後の夢~ Poulet aux prunes」
2011 フランス/ドイツ/ベルギー 92min.
監督:マルジャン・サトラビ  原作:マルジャン・サトラビ「鶏のプラム煮」
出演:マチュー・アルマリック、エドゥアール・ベール、マリア・デ・メディロス、ゴルシフテ・ファラハニ他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
なかなか無いタイプの映画。夢見ているように過ぎる1時間半だが、ラスト15分ほどの
折りたたまれた顛末は、感動的だった。ストーリーを言えばきわめて単純なもので、これを
様々な映像と挿話により、完成度の高い作品に仕上がった。

話の展開が有りがちなストーリーをひっくり返すように進むのでいちいちビックリしたり
感動したりするのだ。時制の持って行き方もいい感じだった。

ヴァイオリンの勉強に出かけた若者をひたすら待ち焦がれた女性。彼女と結婚し、子供も
出来たのだが、男は妻に愛情を感じていない。売れない芸術家を夫とし、日々苦労する
妻は家でバイオリン(ストラディバリウス)の練習をする夫のヴァイオリンを取り上げて
放り投げて壊してしまう。

男はこれで死ぬことを決意する。なぜそういうことになったのか、の8日間が過去に
遡り解説されていく。修行を始めたころバイオリンの師匠に「お前の音はクソだ。ため息を
捉まえるようになれ」と酷いことを言われ、再び修行の身となるが、そこで一人の女性と出会う。
美しい女性と恋に落ちたが、しがないヴァイオリン弾きとの結婚に大反対する女性の
父の頑固さに、女性は引き下がる。この恋を通して、彼の音色は師匠に「もう教える
ものはない」とまで言わしめ、愛蔵していたヴァイオリンをプレゼントされたのだった。
このヴァイオリンで彼は一時的に脚光を浴びることになる。 そのヴァイオリンを壊された
わけだ。

そうして帰ってきた故郷にまっていたのが今の妻だった。周りの勧めもあり、結婚した
ものの。妻は男を心から愛していて、彼の帰りを21年間も待っていたのだった・・。
だが、忘れられないのは、分れた女性。彼女のお蔭で獲得した「心の音楽、ため息を
捉まえる音楽」。妻にヴァイオリンを壊されたのは、彼が人生を掛けて獲得した
愛情を壊されたのと同義だったのだ。だから彼はもう生きていても仕方がないと
決意したのだ。彼の死は昔の彼女への想いと獲得した音への死と同義。

ヴァイオリンを壊される前にもうおばあちゃんになったかつての恋人と町で出会ったのだが
彼女は、昔の男と分かっていて「だれでしょうか?」と否定する。そして別れて後に
「愛しい人・・・」とつぶやき涙するのだった・・・。

結局男は断食して死ぬのだが、ヴァイオリンを壊したとはいえ、最後まで愛されることの
無かった彼の妻も可愛そう、そして父の反対で恋愛が成就せずに別れてしまった昔の
彼女も可愛そう、そして自殺してしまう男も可愛そう。みんな可愛そうなのだ。
でも、観終わったにみじめな気分は残らないのがこの映画の凄いところなんだろう。 
自殺の手段を考えるところ、ヴァイオリンの師匠の口のきき方、途中で現れる悪魔との
会話あたりはコメディ要素もあるが、全般的には悲恋の話だ。
キャストもよく合っている。昔の彼女(ファラハニ)が美しい。

タイトルのチキンとプラムというのは、愛されない妻が、夫の笑顔を見たくて作る夫の
好物「チキンのプラム煮」からつけられたが、その裏側にあるものが分かると、悲しい
タイトルと分かるのだ。
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<ストーリー>
「自伝的コミックを映画化し、カンヌ国際映画祭審査員賞に輝いた『ペルセポリス』の
マルジャン・サトラピが、自作を初めて実写映画化したせつないラブストーリー。
バイオリンを壊されて死ぬ決意をした天才音楽家が、自身の人生を振り返る様を
幻想的な映像とともにつづる。主演は『潜水服は蝶の夢を見る』のマチュー・アマルリック。」

「天才的音楽家・ナセル・アリ(マチュー・アマルリック)は、愛用のバイオリンを壊された
ことをきっかけに、自殺を決意。自室にこもって静かに最期の瞬間を待つ8日間、ナセルは
思い通りにならなかった人生を振り返る……。

空っぽな音だと叱られた修業時代。絶大な人気を得た黄金時代。誤った結婚、怖くて愛しい
母の死。大好きなソフィア・ローレンとチキンのプラム煮。そして今も胸を引き裂くのは、
イラーヌ(ゴルシフテ・ファラハニ)との叶わなかった恋。やがて明かされる、奇跡の音色の
秘密とは」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2014-01-31 15:31 | 洋画=た行 | Comments(0)