晩秋 Dad

●「晩秋 Dad」
1989 アメリカ Amblin Entertainment,Ubu Productions.118min.
監督・脚本・製作:ゲイリー・デヴィッド・ゴールドバーグ
出演:ジャック・レモン、テッド・ダンソン、オリンピア・デュカキス、イーサン・ホーク、キャシー・ベイカー他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
昨年惜しくもこの世を去った、G・D・ゴールドバーグは、テレビシリーズで活躍してきた人で
劇場映画は3本しか作っていない。そのうち監督を務めたのは、本作と「理想の恋人.com」と
本作だけ。「理想の恋人.com」はラブコメだったので、シリアスな映画を作ったのはこの1本
のみということになる。この映画を悪く言う人はおそらくいないんじゃないかというくらい
良作の鏡のような作品。でもよく出来過ぎていて、逆にこそばゆい感じもするのだ。
親子三代に渡る愛情やら家族の再生、親子の再生ということが、ちょっと押しつけがましい
感じもするし。長男もマゴもいい子すぎるんだなあ。素晴らしい人間がたくさんでるわけだ。
その中で唯一といっていいクセモノの役である老父の妻の落としどころもいまひとつ釈然と
しなかったし。まあ、自分と老夫婦の世代が近いので身につまされる、ということもあるのだけれど。
89年ごろアメリカでミーイズムが盛んだったころに、家族愛、夫婦愛を訴える、いかにもアンビリン
映画、スピルバーグが好きそうなテーマだ。 老父が他界するところの画面転換は見事だった。
1947年のワールドシリーズの話をする老父のベッドに這い上がって添い寝する息子、そして
次のシーンは自宅での会葬となる。ジメジメせずに老父の持つ雰囲気をよく出し得た場面転換だ
と思った。

また一度膀胱ガンに罹った老父が病気故にぼけてしまうのだが、医者を変えて奇跡的に元へ
戻るところ、またこれが長年老父が抑え込んできた思いの爆発につながるところなどは上手い
演出だなあ、と感じた。

従って親子や家族に関する「良い言葉」がたくさん出てくるが、中でも私が一番心に響いた
のが老父ジャック・レモンの「死は誰にでもやってくる。死ぬことは罪ではない。むしろ生きない
ことの方が罪だ」(ちなみに本作の翻訳は戸田奈津子さん)というセリフ。

ガンの通告が「患者の知る権利」だから医者は言わなくてはならないんだ、とする風潮が
アメリカにはそのころあったのだな、。(今でもかもしれないけど)

役者は老け役を好演したジャック・レモンを始め、マゴのイーサン・ホークまでそれぞれ
いいひと振りは宜しいのだが、デュカキス演じる妻が老父を長い間抑え込んでいたという
設定で、憎まれ役っぽい存在なのだが、彼女が良かった。しかしその彼女とて夫が亡くなった
あとでも彼を愛する気持ちは揺るぎのないものであることはここでも。
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<ストーリー>
「家族を犠牲にして仕事に生きるジョン・トレモン(テッド・ダンソン)のもとに、ある日母の
ベット(オリンピア・デュカキス)が心臓麻痺で倒れた、と知らせが入る。ジョンが病院に
到着した時、母は安定を取り戻していたが、彼にとって逆に父のジェイク(ジャック・レモン)の
老いた姿が驚きだった。
そしてジョンはその日から、すっかり生気を失った父の面倒をみて、一緒に暮らしてゆくことを
決意するのだった。息子の愛情あふれる介抱に、ジェイクはすっかり元気を取り戻す。
そしてふたりのもとに、離れて暮らしていたジョンの息子ビリー(イーサン・ホーク)が訪ねて
やって来る。そしてベットも退院。ジェイクは、久しぶりに娘のアニー(キャシー・ベイカー)や
その夫マリオ(ケヴィン・スペーシー)たちにも囲まれ、幸せな日々を過ごす。

しかしそんな折、ジェイクがガンに犯されていることが分かり、それを知らされたジェイクは、
ショック状態に陥った。つきっきりのジョンの看病と、チャド医師(ゼイクス・モカエ)の配慮で、
数週間後の朝、ジェイクは意識を取り戻す。
しかし今度は、気の強いベットとの生活の中で、ジェイクはもうひとつの生活を夢みる二重
人格的な行動をとるようになる。そんな夫に反発するベットも、ジョンの説得でそれを受け
入れた。こうしてジェイクは、家族の理解に包まれて、静かに息を引きとるのだった。」
(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2014-02-27 23:40 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)