ブルー・ジャスミン Blue Jasmine

●「ブルー・ジャスミン Blue Jasmine」
2013 アメリカ Perdido Productions.98min.
監督・脚本:ウディ・アレン
出演:ケイト・ブランシェット、アレック・ボールドウィン、ルイス・C・K、サリー・ホーキンス、ボビー・カナヴェイル
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
好きなウディ・アレンの新作にして、主演のケイトがこれでオスカー主演女優賞を獲得した、と
あれば、行かなくてはなりますまい。アレン44作の中の5番目のヒットだそうだ。
アメリカ人が好きそうな中身ということだね。観ればさもありなん、という感じはよく伝わる。
人生の皮肉を描かせると、この人はたしかに上手い。ケイトの立場は男だったらアレンが
主役を務めるのだろうが、それでは当たり前すぎで面白くない。ケイト・ブランシェットという
女優を持ってきたところが、アレンの面目躍如というところだ。そのケイトの「精神安定剤を
飲みながらもセレブであると勘違いしている自分を棄てない痛い女」を好演!素晴らしい。

ブルー、とは「憂鬱な」という意味が掛けられているわけだな。NYでどっぷりとセレブ生活を
してきたジャネットはジャスミンと名前まで変えていた。だが旦那(ボールドウィン)が自らの
密告で逮捕され、全財産を失い、単身妹ジンジャーの住むSFへとやってくる。二人共
里子として育てられたので実の両親は違う、という設定。コンビニのレジ打ちをしながらも
ささやかな幸せを求めているジンジャーもまた男の問題を抱えていた。

方や、セレブ生活が抜けないジャスミンは、自分の虚栄を保つために嘘に嘘を重ね、
自ら泥沼にハマっていってしまう。ドワイト(サースガード)というセレブな男に出会い、
結婚まで決意させたものの、子供がいたことなどの嘘がバレ、それもお流れに。
ジンジャーも苦労するが、ジャスミンにバカにされながらも、労働者階級の男と小さな
幸せを見つける。ジャスミンといえば、相変わらず、虚飾を捨てきれず、自らに振りかかる
不幸を他人のせいにして、人生を呪ってばかり。自ら働いたことのないセレブ女性の
どうしうようもない虚勢、虚飾、見栄などを徹底的に皮肉ってみせる。

ジャスミンが主人公であることは確かなのだが、一方で普通の暮らしのなかで苦労しつつ
子供を育て、なんだかんだと不満はありながら小さい幸せを見つけていく妹ジンジャーが
ジャスミンという女性のカウンターとして表現されている。「ジャスミン」と「ジンジャー」という
名前が既にそれを表していると思う。 ジンジャーを演じたサリー・ホーキンスが、オスカーの
助演女優賞にノミネートされたのは当然だろう。またジャスミンの暮らした東部、ジンジャーが
暮らす西部という対比もアレン流なのだ。
自分自身を見つめて、分相応の幸せを得るということがどういうことなのか、例によって
いろんなテーゼを投げかけているのだ。 ジャスミンの「痛さ加減」は、彼女だけのことじゃ
ないでしょ、ということだね。 みんなだれでも小さなジャスミンが心に住んでいるわけだ。
痛々しいほどに「イタい」ジャスミンに、「ディオールのスーツは脱いで、ユニクロにしたら?」
と言いたくなるのは私だけではないはずだ。 作品中、ジャスミンのテーマとして流れる
JAZZの名曲「ブルー・ムーン」が意味深長である。
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<ストーリー>
「ニューヨークのセレブリティ界でもてはやされていたジャスミン(ケイト・ブランシェット)だが、
実業家のハル(アレック・ボールドウィン)との結婚生活が破綻し、家庭も資産も失う。質素な
アパートに住むシングルマザーの妹ジャンジャー(サリー・ホーキンス)のもとに身を寄せる
ことにし、妹がいるサンフランシスコへ向かうことにする。過去にしがみつき抗うつ薬とウォッカを
手放せないジャスミンは、どうにか再び華やかな世界へ舞い戻ろうと画策するが、慣れない
仕事に神経をすり減らす。
精神的にバランスを崩し八方塞がりの中、エリート外交官のドワイト(ピーター・サースガード)と
出会い、彼のことを自分に以前のような幸せを再び与えてくれる存在であるかのように見る
ジャスミン。さらにプライドと現実逃避から彼女は嘘を重ねていく……。」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2014-05-11 11:40 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)