ボクサー The Boxer

●「ボクサー The Boxer」
1997 アメリカ Universal Pictures.114min.
監督・脚本:ジム・シェリダン
出演:ダニエル・デイ=ルイス、エミリー・ワトソン、ブライアン・コックス、ジェラード・マクソーリー他
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<評価:★★★★★★★☆☆>
<感想>
ブリテンとアイルランドの抗争を舞台に、かつてIRAに身を投じたボクサーの苦悩の
人生と恋愛を描く。仲間をかばって投獄され14年ぶりに出てきた男。最愛の女性は
親友の妻となっていて、その親友も投獄されていた。 ベルファストはいつもどんよりと
曇っていて、ああ、イギリスの映画っぽいなあ、という感じ。基本的にはほろ苦い恋物語
なのだが、設定が北アイルランド紛争なので、プロテスタントとカソリックの宗教対立も
描かれていて、浮つかない重い雰囲気が逆に良かった。ボクシングシーンも良く撮れて
いたと思うし、若きダニエル・デイ=ルイスが絞られた体でボクシングも上手かったし
自分の信じる道を歩きたいがなかなか状況が許さない苦悩の男を静かに好演した。

ストーリーもバックは基本的には北アイルランド紛争をめぐる愛憎であるのだが、
自分が刑務所にいるうちに親友と結婚し大きな子供もいる女性との愛の成就の
物語であり、心理的にもトレースしやすい作品だった。ただ、繰り返すが背景が
北アイルランド紛争なので、気安く観流せるものではなく、宗教の怖さ、歴史的な
遺恨の深さを感じざるを得ない。この事件に関して知識があればさらに面白く見られる
ことだろう。こうしてみると中東や印パの紛争は本当に根が深く難しい問題だと
感じるのだ。

あまり好みではないが恋人を演じたエミリー・ワトソンも、和解派のボスの娘でもあり
多感な息子の母でもあり、何より主人公を深く愛し続ける芯の強い女性をこれまた
好演していた。暖かさを感じるラストも良かったと思う。地味だがなかなか面白い作品
であった。
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<ストーリー>
「北アイルランド、ベルファスト。ボクサーとして有望視されながら、IRAに参加したことで
服役していたダニー(ダニエル・デイ=ルイス)は14年ぶりに故郷の町に帰ってきた。
元恋人で組織の幹部ジョー(ブライアン・コックス)の娘でもあるマギー(エミリー・ワトソン)は、
親友の妻となり、息子のリアムを育てながら服役中の夫を待つ身だった。

ダニーはマギーへの愛を胸に、元コーチのアイクの助けを借り、再びボクサーとして
リングへあがる。再燃するかに見えたダニーとマギーの仲は、穏健派のリーダーである
ジョーにも従わないIRAの過激な闘士ハリー(ジェラード・マクソレー)をはじめとする組織の
監視の目に阻まれた。
そして警察互助会会長のレジー・ベルが主催するボクシングの試合の日。強敵をくだす
ダニーだが、直後、会長が暗殺される。暴動の中、ジムも炎上。放火したのはマギーと
ダニーの密会に疑いを抱いたリアムだった。マギーからことの次第を聞き、ショックを受ける
ダニー。そこをハリーたち過激派が急襲、ダニーは拉致される。トンネルの中、ダニーを
殺そうとするハリーはジョーの手で倒された。かくしてダニーは町にとどまることを誓うのだった。」
(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2014-06-04 23:30 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)