君と歩く世界 De rouille et d'os

●「君と歩く世界 De rouille et d'os 」
2012 フランス/ベルギー Why Not Productions,Page 114,France 2 Cinéma・・・112min.
監督:ジャック・オーディヤール  原作:クレイグ・デイヴィッドソン 『君と歩く世界』(集英社文庫刊)
出演者:マリオン・コティヤール、マティアス・スーナールツ、アルマン・ヴェルデュール他
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<評価:★★★★★★★★☆☆>
<感想>
見ごたえあり。結構過激なセックスシーンがあるのでR15+になるのは仕方がないが
それを含めての作品なので。マリンランドでシャチの女性調教師をしているステファニー(マリオン)と
5歳くらいの男の子づれ、ボクシングとムエタイを経験していて、倉庫番とか警備員とか
していたが、結局格闘技~ボクシングで生きることになる直情的でぶっきら棒だが、人間味は
失わない男、アリ(スーナールツ)の愛と再生の物語。しかし、美談とか甘さの残るラブストーリー
ではなく、「ハードボイルド・ラブ&人生ドラマ」とでも言えようか。愛情とハードさの織りなす
ある種の心地よさがこの作品にはある。

足を失った女と、氷の張った湖に子供が落ちて、その結構厚い氷を割るために間近に
ボクシングの試合が控えているのにも関わらず本能の命ずるまま、手の骨を折ってまで救い
出す男。拳で氷を割り我が子を救いだした男。
なにか「足」と「手」が「女」と「男」の失ったもの、得たもの(愛情含めて)のメタファーになって
いるのでは無いかとみるのは穿ちすぎか。

主役の二人が良かった。マリオンの両ひざ下が無い映像に不自然は無く、こうした面でも
VFXの進化は映画を変えるなあ、と思って観ていた。どうやって撮ったんだろうというシーンも
多々出てくる。

男が警備を担当していたディスコでケンカに巻き込まれ暴力を振るわれたステファニーを
介抱し、家まで送って行ったことから知り合った二人。
男は貧乏極まっていて、姉の家に息子と一緒に転がり込む。その姉一家の生活も
楽ではなく、姉は勤めているスーパーから捨てられる期限切れの食品を持ち帰り、
冷蔵庫の足しにしていたりした。時として気が短いアリは息子に暴力を振るったりする
のだが、姉は甥っ子には優しかった。

ステファニーは水族館でシャチの調教師をしていたが、ある日、事故に巻き込まれ、
興奮したシャチに両足ひざ下からをかみ切られてしまう。と思ったら、単純に舞台が
崩れて足が挟まれたんだね。あのシャチの歯のアップはなんだったんだろう。
当然絶望の日々が続く。

再会した二人だが、アリは、部屋に閉じこもり、死んだような目をして、臭気さえ放つ
ステファニーを外に連れ出し、障害者となったステファニーを差別することなくごく自然に
海水浴に連れて行ったりしていた。アリには彼女を障害者として扱ってはいけないんだ、
などという思考はない。ただ本能の命ずるままにそのようになる男なのだ。

そんな折アリに格闘技をやらないか、と持ちかけた男がいた。格闘技と言っても
そこらへんで素手で殴り合うストリートファイト、それを賭けにするものだった。アリは性に
合わない仕事より、昔取った杵柄、本能の命ずるまま格闘技にのめりこむ。そして連戦連勝。

アリは倉庫警備を担当しているとき、店員らの不正を暴く隠しカメラの設置に協力、
これが後で、自分の姉が期限切れの食品を持ち帰っている動かぬ証拠となり、姉は
首となってしまった。そして、姉夫婦から、出ていけ、と言われる。当然の怒りだった。

だが、胴元の男が例の監視カメラ事件で身を隠さなくてはならなくなり、ステファニーが
アリのマネージャーと胴元をすることになったのだ。

今や義足で器用に歩くようになり、前向きになっているステファニーは、アリとともに
戦う日々を送る。今や彼女は鋼鉄の義足さえ見せて歩きさえしている。
そして、女性としての機能がまだあるのか、見てやるということでセックスもする仲に。
ステファニーの心は次第にありに傾くのだが、アリは相変わらずセックスフレンドとの夜を
楽しんだりもしている。分からなくなり、アリを問い詰めるステファニー。
アリはトラックの運転手をしながらボクシングの練習に精を出し、正式なボクシングの興行の
世界に進出できたのだ。
ステファニーは、マリンランドにも行ってみて、シャチとも再会することろまで心も回復してきて
いた。

そんなおり、凍った湖で遊んでいたアリと息子、目を離したすきに息子が氷を破って
落ちてしまう。氷の下に入ってしまったことから、試合が間近であったにもかかわらず、
アリはこぶしで氷を割って、息子を救出。4時間昏睡状態だったが、危機は脱したのだった。

みなが応援するなか、後日アリは、ボクシングでチャンピオンになったのだった。
そしてそばには微笑むステファニーの姿があった。

荒っぽい映画な感じだが、実は愛情と優しさ、勇気に溢れた作品であり、上辺だけの
綺麗ごとに終わらせない仕掛けは、作品に重みを与えていた。人物とその状況設定も
良かった。オスカー女優、マリオンは私の好みの女優さんだが、ここでの演技は素晴らしい。
そして初めて知ったがアリ役のスーナルツという男優さんも良かった。プーチンに似ていたな。
「最強の二人」もそうだったけど、ちょっと聞くと目を背けたくなる状況を、明るくでもしっかりと
描いた作品。観終わって清々しい作品であった。原作ありきなんだろうけど、はやり脚本、
俳優、それに監督の力量が優れている、ということなのだ。
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<プロダクションノート&ストーリー>
『預言者』で第62回カンヌ国際映画祭グランプリに輝いたフランスの名匠ジャック・
オーディアール監督によるラブストーリー。事故で両足を失ったシャチの調教師と彼女の
心の支えになろうとする男との愛が描かれる。『エディット・ピアフ 愛の讃歌』で
アカデミー賞主演女優賞に輝いたマリオン・コティヤールがヒロインを熱演する。

南仏アンティーブの観光名所マリンランドのシャチ調教師、ステファニー(マリオン・
コティヤール)は、シャチのショーを指揮している最中にステージが崩壊、両足を失う
大怪我を負ってしまう。過酷なハンディキャップを抱え、生きる希望さえ失っていく日々。

そんな失意のどん底に沈んだステファニーの心を開かせたのは、彼女自身にとっても
意外な人物だった。ナイトクラブの元用心棒で今は夜警の仕事をしているシングル
ファーザー、アリ(マティアス・スーナーツ)。彼は他者への愛を表現する術を知らない
不器用な男であったが、他の人々のように同情心でステファニーに接するのではなく、
両足がないことを知りながら彼女を海の中へと導いていく。
やがてステファニーは、どこか謎めいていて獣のように野性的なアリとの触れ合いを
重ねるうちに、すでに諦めていた生きる喜びを呼び覚まされ、自らの意思で未来へ
踏み出す力をつかみ取っていくのだった……。」(Movie Walker)

この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2014-06-18 23:44 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)