ヒッチコック Hitchcock

「ヒッチコック Hitchcock」
2012 アメリカ Fox Searchlight Pictures.99min.
監督:サーシャ・ガヴァシ  
原作: スティーヴン・レベロ 『アルフレッド・ヒッチコック&ザ・メイキング・オブ・サイコ』(白夜書房刊)
出演:アンソニー・ホプキンス、ヘレン・ミレン、スカーレット・ヨハンソン、トニ・コレット、ダニー・ヒューストン
    ジェシカ・ビール、マイケル・スタールバーグ、ジェームズ・ダシーほか。
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
原作の名前の通り、ヒッチコック最大のヒット作「サイコ」が生まれるまでのストーリーだが、
「サイコ」を観ておくとさらに面白いことは観た人が全員思うだろうし、観たことがある人も
また観たくなるだろう。
個人的にヒッチコックという人物がどういう個性の持ち主か分かっているわけではないが、
一般的に思われている(だろう)サスペンスの巨匠というステレオタイプの監督像ではなく、
プロデューサーサイドとのやり取り、初めて知った映倫とのシャワーシーンのやりとり、
優秀な妻の動向が気になってしかたがない夫・男としての懊悩、しかし、女優に対する
厳しさなどが短い時間に巧く纏められていて、面白く観た。また、「サイコ」は実話をもとに
した物語だが、実在の殺人鬼をイメージとして登場させ、監督と会話させた手法も
良かった。

特殊メイクのアンソニー・ホプキンスは強気、弱気、嫉妬、愛情がないまぜとなるヒッチコックの
キャラクターを巧く浮かび上がらせていた。これは脚本の勝利(原作もだけど)だろう。
それ以上に、妻アルマを演じたヘレン・ミレンが見事であった。ヒッチコック活躍の裏にこれだけの
妻女の存在があったとは寡聞にして知らなかったのだが、夫の脚本にアイデアを出すに
止まらず、熱を出せば現場に行って監督の代わりまでしてしまう。一方で脚本家としても、
行き詰った脚本家(男)と共同執筆を始め、ヒッチコックをハラハラさせる。しかし、彼女無しでは
ヒッチコックが傑作「サイコ」を生み出せなかったことが良く分かる。しかし、もちろんヒッチコックの
次作も次作も傑作を要求される中で、周囲の反対を押し切り、自己資金で製作をすることを会社に
納得させた芸術家としての非凡さも当然あるわけだが。

一番興味深いのはスカーレット・ヨハンソン演じるジャネット・リンの有名なシャワーシーン撮影の
シークエンスだろう。監督はスタントに対する恐怖の演技が気に入らず、自らナイフを持って
演出した。裸が写っているということで映倫ともめた結果、短いカットの積み重ねになり、なおかつ
例の音楽にも拘ったあたりが、さすがにサスペンスの巨匠と云われるだけのことはあると理解できる
構造になっている。ラストシーンはちょっとクサいけど、次作が誰もが知っている「ああ、あれだな」と
分かる構造になっている。

「サイコ」は大当たりをし、以降、それを上回る作品を作ることはできなかったヒッチコック、
オスカーとも無縁で、名誉賞を受賞した時に「アルマに捧げる」というようなスピーチをしたのも
うなずけるというものだ。
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<ストーリー>
「映画監督として数々の名作を生み出し、“サスペンス映画の神”とも称されるアルフレッド・
ヒッチコック。賞レースから嫌われ、無冠の帝王だった彼の心の葛藤と、そんなヒッチコックを
脚本家としても支えた妻との知られざる姿に迫るヒューマンドラマ。
名優アンソニー・ホプキンスが特殊メイクを施し、ヒッチコックを熱演する。

「レベッカ」や「白い恐怖」などサスペンス映画を世に送り出したアルフレッド・ヒッチコック
(アンソニー・ホプキンス)。1959年、彼は新作「サイコ」の製作に向かっていたが、演出の面
でも技術面でもあまりにも斬新な手法を用いるため、資金難などの壁に当たる。さらには彼に
とって最大の理解者である妻アルマ・レヴィル(ヘレン・ミレン)との関係もぎくしゃくしだす。
映画製作に情熱を注ぐヒッチコック。様々な思いを抱えるアルマ・レヴィル。
映画史に残る不朽の名作の裏側とは……。」(Movie Walker)

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by jazzyoba0083 | 2014-06-26 23:20 | 洋画=は行 | Trackback | Comments(0)