クロワッサンで朝食を Une Estonienne à Paris

●「クロワッサンで朝食を Une Estonienne à Paris」
2012 フランス・エストニア・ベルギー 94min.
監督・脚本:イルマル・ラーグ
出演:ジャンヌ・モロー、ライネ・マギ、パトリック・ピノー、フランソワ・ブークラー、フレデリック・エポー他
e0040938_15471340.jpg

<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
原題は「パリのエストニア女性」というものだが、邦題はちょっとオシャレ過ぎな感じだ。
理由は違うが、同じパリの空の下で暮らす二人のエストニア人女性の心の交流を描く。

これは女性が観た方が女性の心理は分かりやすいかもしれない。冒頭は雪のエストニア。
老いた母を介護する日々のアンヌ。成長した子供たちは疎くなってしまい、酒乱の夫とも別れた。
やがて訪れた母の死。紹介する人があり、パリに家政婦として赴く決心をする。若い時にフランス語を
勉強していたこともあった。50がらみの人生、このまま終わっていいわけはない、という
彼女なりの覚悟もあったのだろう。

そうやって出てきたパリは、エストニアとは違う花の都。そして家政婦として面倒を
見ることになったのは、わがままで頑固で嫌味でいじわるなバアサン(ジャンヌ・モロー)。
お金持ちらしいが、自殺願望があり、薬が入っている箱には鍵が掛けられている。
彼女が唯一といっていい心を開くのがカフェのオーナーで、かつて愛人として生活していた
ステファン。

嫌味なバアサン、フリーダは、毎朝クロワッサンと紅茶で朝食を摂るのを習慣としている。
アンヌが用意したのはスーパーで買ってきたもの。「プラスチックを食べさせる気?」と言われて
しまう。確かにパリには美味しいパン屋さんがたくさんあり、焼き立てのクロワッサンを
食べることが出来る。エストニアの暮らしと、フリーダの暮らしの落差がこれ1つで一気に
描かれてしまう。

フリーダは、意地悪(ホントは根っからの意地悪ではない)な一方、どこへも出かけなくても
シャネルのスーツを着て、ネックレスもちゃんとして毅然としている。 アンヌと一緒にカフェに
行くときエストニアから着てきたコートにダメ出しをし、バーバリーだかの高級そうなトレンチ
コートをワードローブからひっぱり出してきて、「あげるわ」、などと気前のいいこともいう。

しかし、カフェのオーナーで元愛人のステファンに「カフェを持たせてもらったことは感謝して
いるけど、自分の人生はフリーダを中心に回っているわけでじゃないんだ」と言われてしまい、
ショックを受けたフリーダは、何も口にしなくなってしまう。
アンヌがエストニア料理を作っても、地元のものを使ってない料理は食べないというし。
そこでアンヌはフリーダがかつて所属していた教会コーラス隊の旧友を探し出して自宅に
招くが、昔の男女のいざこざを反省してのこと、と思っていた友人たちは、フリーダが何も
変わっていないことに呆れ、怒り、フリーダはアンヌが余計なことをした、と言って出ていって
と言ってしまう。アンヌもフリーダの世話にほとほと手を焼いていたので、故郷に帰ることに
する。実はアンヌとステファンは男女の仲になっていて、フリーダは鋭い女の勘でそのことに
気が付いていた。旅行バッグを持って空港に向かうが、結局ステファンのカフェに戻ってきて
しまい、二人してフリーダの家に行く。フリーダはアンヌが戻ってくることを予期していたかの
ように、「ここはあなたの家よ」と迎え入れたのであった。

もう先が長くないと知りながらもオシャレをして毅然としてマイペースな人生を生きている
フリーダだが、心の中には埋めがたい空洞を抱えている。そして30歳くらい離れているが
やがて歩く道だ。母の看護に疲れ、ひそかに母の死を願う心は、実はステファンにも共通して
いて、彼はフリーダが亡くならないか、と願った時もあったと告白したのだ。
老いていく人たちが背負わなくてはならない人間共通の苦悩、しかし、女性として実感のある
人生も歩みたい、そんな二人の女性の思いが、欧州的な映画の作法の中で描かれていく。
特に感動を呼ぶとか、大向こうを唸らせる作品ではないが、奥の深さを感じることが出きる。
個人的にはなかなか背後にあるものまで読み切れないので申し訳ないが。

全てのシャネルの衣装を自前で用意した、というジャンヌ・モローの演技なのか素なのか
分からない演技?は圧倒的。 しわだらけの顔や手をさらけ出しても今の自分を演じ切る
女優根性は素晴らしいと感じた。
e0040938_1547351.jpg

この映画の詳細はこちらまで。
トラックバックURL : http://jazzyoba.exblog.jp/tb/22231906
トラックバックする(会員専用) [ヘルプ]
by jazzyoba0083 | 2014-07-23 22:55 | 洋画=か行 | Trackback | Comments(0)