2014年 10月 09日
ハワイ・マレー沖海戦
1942 日本 東寶映畫 企画:大本営海軍報道部 協力:海軍省 117分
監督:山本嘉次郎 特技・撮影・特技監督:円谷英二
出演:伊藤(伊東)薫、原節子、加藤照子、藤田進、大河内傳次郎他
<評価:対象外>
<感想>
海軍が国策映画として開戦1周年を記念して作らせた、国威発揚映画。なんで
こんなものを観たかというと、円谷英二の特撮の原点といわれる映像が見られると
聞いたから。 山本と円谷は、作れと言っておいて軍事秘密をたてにまったく非協力的な
海軍に腹を立てていたという。そこで山本は軍艦や空母の実物大セットを作ってしまった
という。一方、円谷の特撮技術は、海軍省提供の実写フィルムと相まって、さすがの
出来であった。モノクロなので、特に完成度の高さが目立ったと思う。カットを短くし字幕を
はさみながら、アラがバレにくくしてて、なおかつ、戦闘機の主翼ナメとか操縦室の股下からの
ショットなど工夫が凝らされている。有名な山を回転させあたかも止まっている飛行機が
山肌をかすめて飛んでいるシーンとかも見られる。
今はVFXに見慣れている我々が感心するくらいだから、公開当時は本物のドキュメントと
思った人が多くいたに違いない。
主人公?が入隊する霞ヶ関の海軍予科練習隊の様子は、ロングショットは本物が
使われたと思われ、この中の何人が生き残っただろうか、と思わずにはいられなかった。
それとエンディングに軍艦マーチとともに意味もなく流れる戦艦陸奥や長門の艦砲射撃の
実写はとてもめずらしいと感じた。
まあ、物語はあってないようなもので、海軍に入り立派に成長し田舎に里帰りした兄の
後を慕って予科練に入った弟が、皇軍魂を鍛えられる様子が延々と流され、後半は
真珠湾攻撃の様子と、レパルスとプリンス・オブ・ウェールズを撃沈したマレー沖海戦の
様子が記録映像のように淡々と描かれるのみ。冒頭あたりの原節子の登場とかは何だった
のだろう? 海軍省に検閲されるので、堅苦しい映画にならざるを得なかったのは
いたし方ないだろう。 予科練の様子も、戦闘中の様子も、本当の軍隊の様子は反映されて
おらずキレイ事が並んでいる。 国民はこういう映画を見て、大本営のいうことを信じるように
洗脳さてていったのだろう。今はテレビとかネットとかで、じわじわと来ている。
円谷の出来、特撮技術史的意味合い以外、反面教師として見なくてはならないだろう。
よもや、かっこいいなどと見てはいけない。ちなみに主人公?の伊藤(伊東)薫は、公開
直後招集され、1ヶ月後に中国で戦死しているという。20歳だったそうだ。
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