天国の門 Heaven's Gate

●「天国の門 Heaven's Gate」
1980 アメリカ United Artists,Partisan Productions.219min.
監督・脚本:マイケル・チミノ
出演:クリス・クリストファーソン、クリストファー・ウォーケン、ジョン・ハート、イザベル・ユペール他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
この映画についてはネットで検索すれば腐るほど感想が出てくる。その内容はおおよそ
似たようなもので、映像は素晴らしいが、台本の出来が驚くほど悪く、締りが無い、という
ものに集約されるようだ。先日NHKBSで放映され、INTERMISSIONがあるという映画で
見始めるのをビビったが、都合で2日に分けて鑑賞した。

「晩期黒澤的様式美を連想させる全編茶色の間延びしたカタルシスのない映画」というのが
私の感想の骨子。1891年にワイオミング州で実際に起き、映画「シェーン」の背景にも
なっている「ジョンソン郡事件」がベースなので、実録を見る観点からは面白さもあるのだが、
なにせ、1つのシークエンスが意味もなく(と思う)長い。それは冒頭のハーバード大学の
卒業式から始まり、円舞シーンも含めそこだけで30分はあろうか、というものだ。
で、彼ら東部のエスタブリッシュメントな同窓生がそれぞれの立場を異にして、13年後の
ワイオミングで再開するのだが、それらにつながる人物説明はなされない。

多くの批評に書かれているように、本作の台本の致命的な欠点は作品の長さに必要な
人物説明が、背景説明以上にオミットされている点である。だれが、どういう繋がりになって
いて出自は何なのか、さっぱりわからないまま物語は進む。

例えばエラ(ユペール)はどこから来た移民か?ネイサン(ウォーケン)はどういう出自か?
ネイサンと保安官エイブリル(クリストファーソン)はどういうエラを愛しているという間柄だけの
関係だったのか?そして最大の謎は、エイブリルは過去に結婚していたらしく、2ショットの
写真たてがしばしば出てくるが、ラストシーンでまたエスタブリッシュメントに戻ったエイブリルが
豪華な個人所有の船上で、妻と思しき(エラではない)その写真を飾りつつ、何を思って
いるのか、一切はっきりしない。 細部には分かる点があるのだが、肝心の大筋が見えてこない。
大学の卒業式で、傑作な卒業スピーチをしたビリー(ジョン・ハート)は、東欧移民虐殺を
保安官に教えるものの、畜産家連盟側の人間として、先頭の中で意味なく撃たれて死んで
いく。彼の人生にチミノは何を言わせたかったのか?
かように、3時間40分の台本には「もっっとはっきりさせてくれよ」というようか隔靴掻痒の
ポイントがいくつも出てくる。しかもシークエンスがだらだと長いので、嫌になるのだな。

最大の見所は牧場主側が雇った50人の殺し屋と、酒場の親父(ジェフ・ブリッジス)が
率いる東欧移民部隊が、ローマの兵法を使って凄惨な戦闘を繰り広げるシーンである。
移民の妻らも戦闘に加わり、殺し屋たちの餌食になるのだが、結局この先頭も牧場主
連盟の親玉が騎兵隊を連れてきて、全員解散を命じ終りとなる。親玉は大統領などの
政治家との強いパイプを持っていて、(血縁的にも)、自分の意思は大統領の意思だ、
などと嘯く割に、援軍として連れてきた騎兵隊に中を取り持たれるというなんか締りのない
戦闘の結末に、見ている方はたたらを踏まざるを得ない。

実際の「ジョンソン郡事件」はチミノ台本のものとは相当違っている。チミノはこの史実から
何を抽出したかったのだろうか、一大叙事詩という側面はあながち当たらずとも遠からず
なのだが、チミノの趣味に付き合うのは観客として我慢の限度もあろう、というものだろう。
結局、製作会社と制作費や映画の長さ、でもめにもめた挙句公開されると惨憺たる興収で
結局60年の伝統があったUAを潰してしまったのは有名な話だ。
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配役陣では、いまや渋い役どころが多いベテランとなった若きクリストファー・ウォーケンが
危なげな若い殺し屋を演じ、魅力的だった。またエラというキーになる女性を演じた
フランス人女優イザベル・ユペールも美しい裸体も含め良かったと思う。
ジェフ・ブリッジス、ミッキー・ロークも短いながら光っていたと感じた。もったいないのは
先述のようにジョン・ハートである。保安官クリス・クリストファーソンは終始謎の人物で
秘密を持っている感じなんだろうけど、取り立ててどう、というところを感じずに終わった。
台本に足を掬われた感じで損したのかもしれない。

失敗作ではあろうが、音楽、撮影、など見るべきところもあり、単に駄作として切り捨てて
映画史から抹殺することは出来ない価値ももっているのではないか、と感じた。
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<ストーリー>
1870年、東部の名門ハーバード大学の卒業式。総長の祝辞を熱い視線でみつめる
生徒たちの中にジェームズ・アベリル(クリス・クリストファーソン)とビル・アーバイン
(ジョン・ハート)の顔があった。
それから20年、アメリカは混乱期を迎えており、ワイオミングにも、東ヨーロッパからの
移民たちがおしよせ、すでに生活を築いていたアングロ・サクソン系の人々とのトラブルは
避けられなかった。
ある日、家畜業者協会の評議会が召集され、リーダー、フランク・カントン
(サム・ウォーターストン)は、移民による牛泥棒の対策として粛清の議案を提出した。
なんとその人数は125名。その会議にはアーバインも列席していたが、彼はかつての
情熱を失い、今は酒びたりの堕落した生活を送っていた。この土地に保安官としてやって
きたアベリルは、再会したアーバインから、粛清の計画を聞き、なんとか阻止しようと、
移民の集まる酒場の主人ジョン(ジェフ・ブリッジス)に協力を求めた。
そして、彼が想いを寄せる娼館ホッグ・ランチの女主人エラ(イザベル・ユペール)のもとへ行く。

彼女を愛しているもう1人の男ネイト・チャンピオン(クリストファー・ウォーケン)は、牧場主に
雇われた殺し屋だ。2人の愛の間でゆれ動くエラ。ジョンンン郡に移民1人殺し値50ドルで
雇われた庸兵たちが向かっている頃、移民たちの憩いの場のローラー・スケート場天国の門
では、集まった人々に、アベリルが例の粛清の件を告げリストを読み上げた。
むごい仕打ちにおののく人々。一方、チャンピオンから求婚されたエラ′は、彼の家族に紹介
され、その誠意に心うごかされるが、その日、ホッグ・ランチに戻った彼女はレイプされ、
店の女たちは全員惨殺された。カントンの傭兵による仕業だ。天国の門では、移民たちの集会が
再び開かれ、人々はそこで団結の絆を固める。

その頃、チャンピオンの家が傭兵に襲われ「エラを頼む」という手紙をのこして彼は死んでゆく。
戦いは開始された。予期せぬ移民たちの逆襲で庸兵たちは倒れてゆく。
かけつけた州兵騎馬隊たちによって平定された時は、あたりは死体の山と化していた。
新しい出発を誓い合うアベリルとエラ。しかし、喜びに満ちたエラが、生き残っていたカントン
一味に惨殺されるという悲劇が突然襲う。

数十年後、今はヨットの上で安定した生活を送っている年老いたアベリル。しかし、ヨットの上で
彼が想うことは若き闘志に燃えた頃の自分、それにネイト、エラのことだった。」(Movie Walker)
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この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2014-11-01 23:00 | 洋画=た行 | Trackback | Comments(0)