もうひとりの息子 Le fils de l'autre

●「もうひとりの息子 Le fils de l'autre」
2012 フランス Rapsodie Production,Cité Films.105min.
監督:ロレーヌ・レヴィ
出演:エマニュエル・ドゥヴォス,パスカル・エルベ,ジュール・シトリュク,マハディ・ザハビ,アリーン・オマリ他
e0040938_11254639.jpg

<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
イスラエルとパレスチナという今なお激しい対立が続くエリアでの、衝撃の出来事を
家族というレベルで描いた、なかなかの佳作。終わり方も悲劇的でないので、本作を
悪くいう人はそう居ないとは思うけど、個人的にはやや美しく仕上がりすぎで、平板だ
ったかな、という印象。故に★は8に届かなかった。

12年の東京映画祭でグランプリを獲った作品なので、実力はあるのだと思うが、
東京で獲ったというのが、日本人のメンタリティ視線が大きいと感じる。欧米では
こんな綺麗事で済むか、というもっとな生々しい現実なんだろう。

とはいえ、単純な赤ちゃん取り違え事件から家族という単位で、人間の本質、
民族や宗教での対立や不寛容の不条理と現実を魅せつけていく流れは見やすく
彼の地での絶望感みたいなものを始めとして、見ている人はおそらく人間に関する様々な
思いが去来するだろう。その辺りはすっきりしていて良いと思った。
取り違えられたパレスチナの家族がもう少し貧しい(十分貧しいのだがベンツ乗っているもの)
描き方で落差を付けたほうがより悲劇性が際立ったのではないか。

またヤシンの兄が、実は本当の弟ではないと分かってからの態度が、母から「心を
開きなさい」と言われたことをきっかけに、割りと早いうちに、イスラエル側と馴染んで
しまうのもやや不自然さを感じた。両家とも当地ではそこそこ恵まれた家であったのも円満
解決の遠因であったようだし、取り違えられた子同士がいいやつだし、母親同士も
頭いいし、そのあたり無難だったかな。

しかし、赤ちゃん取り違えで、世界で一番やってはいけないユダヤとアラブの取り違えと
いうのは思いつきそうでなかったテーマなんだな。そうなる設定が難しいのかも。
イスラエル人とアラブ人の赤ちゃんが同じ病院にいる、とうのが。今回はそれを
湾岸戦争のドタバタを利用したわけだ。

18年間、自分はユダヤ人でイスラエル人と思っていたヨセフ、片やパリで勉強した
パレスチナ人ヤシンも、自分の出自はアラブであり、パレスチナに医師として帰って
来ることを夢見ていた。その二人がある日突然、アイデンティティの崩壊に瀕する
訳だ。それはそれはショックだったと思うけど、二人は仲良くなっちゃうんだな。
それぞれの両親も18年間自分の子供として大切に育ててきたのにある日、自分らの
子供ではないことが分かるショックというものは、私らの想像を超える。それが
イスラエルとパレスチナという構図の中では、日本人はリアリティを持ちにくいだろう。

結局2つの家族は様々な難局を乗り越えて、心を通わしていくわけだが、
「人類は皆家族」「地球上の人間がいがみ合っていてどうする」というお気楽な感想が
出てきてしまうのだが、現実はそう簡単ではないのだな。
この女流監督さんは、人類の壮大な矛盾を家庭というミニマムな社会単位において
告発しているのだが、その表現の優しさゆえに物足りないとするか、いやいや優しさ
故に余計に胸に響く、という二手の見方になるのではないか。

見て損はない佳作である。
e0040938_1126984.jpg

<ストーリー>
「いまなお根深い対立が続くイスラエルとパレスチナの問題を背景に、それぞれの家族の
間で子どもの取り違え事件が発生したら、という衝撃的な題材で描き出す感動の家族
ドラマ。
子どもの誕生から18年目にあまりにも残酷な事実を突きつけられた憎しみ合う2つの
家族の動揺と、幾多の葛藤を重ねながら辿る選択への道のりをリアルな筆致で描き出す。
監督は本作が長編3作目となるフランス人女性、ロレーヌ・レヴィ。
2012年の東京国際映画祭では、みごとグランプリと最優秀監督賞の2冠に輝いた。

 テルアビブに暮らすフランス系イスラエル人家族の18歳になる息子ヨセフ。ある日、兵役
検査で両親の実の子ではないことが判明する。18年前、湾岸戦争の混乱の中、病院で別の
赤ん坊と取り違えられていたのだ。しかも相手は高い壁の向こうに暮らすパレスチナ人夫婦の
息子ヤシンだった。最初は事実を受け止めきれず激しく動揺するヨセフとヤシン、そして
それぞれの家族たちだったが…。」(allcinema)

この映画の詳細はこちらまで。
by jazzyoba0083 | 2014-11-10 22:30 | 洋画=ま行 | Comments(0)