2014年 11月 30日
フューリー Fury
2014 アメリカ Columbia Pictures.(a sony campany) 134min.
監督・脚本:デヴィッド・エアー
出演:ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサル他
<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
いい映画なんだよ。分かるんだよ。監督が何を言いたいか、も分かるんだよ。でも
素直に★8つとか9つ付けられない物足りさ?は一体なんだ。
主人公は「戦闘」。「激怒」を意味するFuryと名付けられた戦車の乗組員たちのキャラも
割りとありきたり。ステロタイプですらある。でも、「良い戦争」など有り得ないということ、
(ノルマンディー以降から欧州終戦までは『良い戦争』と言われることもあるのだが)、ブラピ
演じる車長の、一見残虐さも、裏を返せば、仲間を守りたい、一刻も早く戦争を終わらせたい、
という希求から発せられるものであることもよーく分かる。加えて、本物として残り少ない
シャーマン戦車、博物館から借りてきたドイツ軍のティーガー(タイガー)戦車の戦い、キャスト
たちも数ヶ月に及ぶ訓練を受け、最後の6日間は戦車の中で過ごし、5人のチームでタンクを
操縦出来るまでになった努力と苦労は買う。が、しかし「人を殺しあう戦争の虚しさ」「英雄など
いない」というところに収斂していくわかり易さが、かえって素直に映画の評価を妨げているのかも
知れない。
個人的には「プライベート・ライアン」の方が衝撃と面白さがあった。しかし、つらつら
考えると、戦争の悲惨さを訴える映画に面白さが要るのか?という問いも投げかけられる
のだ。でも、どーしても拭えない物足りなさ?は何だろう。繰り返すが、いい映画なんだよ。
映像も、ストーリーもよく出来ている。よく出来過ぎているのかな。
優秀な副操縦士が戦死し、代わりにやってきた新兵。当然、怖いし、理不尽な殺人に
納得が行かない。そこを車長のブラピが鍛えるのだが、捕虜のドイツ軍兵士を殺させる
ところは「ジュネーブ条約」違反だろう。しかし、ブラピ車長は、戦争は殺すか殺さられるかと
いう現実を見せたかったのだ。その後、新兵は「ファッ○クユー!クソナチ野郎!」と
敵に銃弾を浴びせかける様になるのだが、戦争は人格を変えてしまうとはいうものの、
ラスト、この新兵に掛けられた「お前は英雄だぞ」という言葉に素直になれないとは
救いであった。どきどきわくわくしてしまう戦車戦から、やがて忍び寄る「戦争の狂気・
虚しさ」。監督が拘った戦闘のリアリティはそれを出さんがためのものだったに違いない。
本作は戦争アクション映画ではない。「暗い戦争映画」だ。残虐だし、見苦しいし、
綺麗事では片付かない戦争の不条理性を、良く描いていると思う。戦闘シーンは迫力が
ある。これは「殺るか殺られるか」という、理屈もへったくれもない戦争現場でのおぞましさを
観るべきリアリティなのだ。
映画の中でブラピが新兵に言う「理想は平和だ。しかし歴史は残酷だ」というセリフに本作の
すべてが凝縮していると見た。
キャストはブラピを筆頭にラブーフ、ペーニャら、また新兵のローガン・ラーマンも、良かった。
ブラピは、50歳を過ぎて、セリフではないところで映画の主題を演じ出せるようになったなあ。
シネコンの大スクリーンで繰り広げられる戦車戦。若いお嬢さんたちも結構見に来ていたが
何を思ったのだろう。聞いてみたいと思った。
<プロダクションノート&ストーリー>
「たった一台の戦車で300人ものドイツ軍に戦いを挑む5人の男たちの姿を描く、ブラッド・ピット
主演の戦争ドラマ。ピット扮するベテラン兵が乗り込むシャーマンM4中戦車“フューリー”と
ドイツ軍のティーガー戦車との激しい戦車バトルでは本物の戦車を使用するなど、リアリティを
重視した戦闘シーンが見ものだ。
1945年4月、第二次世界大戦下。ナチス占領下のドイツに侵攻を進める連合軍の中に
ウォーダディー(ブラッド・ピット)と呼ばれる米兵がいた。長年の戦場での経験を持ち、
戦車部隊のリーダー格存在である彼は、自身が“フューリー”と名付けたシャーマン
M4中戦車に3人の兵士と共に乗っていた。
ある日、ウォーダディーの部隊に新兵のノーマン(ローガン・ラーマン)が副操縦手として
配属される。だが彼はこれまで戦場を経験したことがなく、銃を撃つこともできない兵士で
あった。繰り返される戦闘の中、想像をはるかに超えた戦場の凄惨な現実を目の当たりに
するノーマン。5人の兵士たちがぶつかりあいながらも絆を深めていく中、ドイツ軍の攻撃を
受け、他部隊はほぼ全滅となる。なんとかウォーダディーの部隊は生き残るが、300人もの
ドイツ軍部隊が彼らを包囲していた。そんな状況下、ウォーダディーは無謀にも“フューリー”で
敵を迎え撃つというミッションを下す……。」(Movie Walker)
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