2015年 01月 04日
パッション Passion
2012 フランス・ドイツ SBS Production and others.101min.
監督:ブライアン・デ・パルマ
出演:レイチェル・マクアダムス、ノオミ・ラパス、カロリーネ・ヘルフルト、ポール・アンダーソン他
<評価:★★★★★★☆☆☆☆>
<感想>
B級エロ・サスペンスの王者、ブライアン・デ・パルマの新作。「ブラック・ダリア」はなかなか
面白かったけど、本作は、見ている途中で、思わず笑っちゃうほどの仕上がり。
なぜ笑っちゃうかというと、これでもか、これでもか、と繰り返されるどんでん返しと、恋愛を
キーワードにしているから、今ひとつ動機があやふやで(いつものことだけど)、どうなっちゃ
っているわけ??という、むしろ好意的な失笑である。しかし、今やここまで徹底して
「本格的エロ・サスペンス」を作る監督が居るだろうか・・・。貴重な存在である。
まあ、名作「殺しのドレス」は上回れないのだけれど。
本作も、男と女、女と女の愛憎が、もつれにもつれて、どんでん返しの連続で、あれあれ、と
いう間に終わってしまう。で、結局何だったのか、というのはどうでもいいことで、ひたすら
「あれ、あれ」という唖然としてしまう感覚と、スリルを味わうべきであろう。
主な登場人物は3人。NYに本社をもつ広告代理店のベルリン支店に勤務する有能な
アドレディ。クリスティーン(マックアダムズ)とイザベル(ラパス)は、コンビを組んでいる。
あるスマホの提案について、イザベルのアイデアを自分のアイデアのように横取りし、
イザベルに様々ないじわるを仕掛けるクリスティーン。
二人には二股をかけているボーイフレンド、ダークがいた。彼は会社の金を横領していて
クリスティーンから何とかしないと告発する、と脅されていた。
スマホのCMの改定に納得がいかないイザベルは独断で更に手を入れて、YouTubeに
投稿したところ、これが大ヒットとなり、本社からはべた褒めされ、クリスティーンの面目は
丸つぶれ。さらに本店への異動も無くなってしまった。
これに怒ったクリスティーンは、イザベルに対する嫌がらせを加速させ、ついにイザベルは
神経衰弱となり、薬がないと眠れない体となってしまった。
薬で朦朧として寝ている所に刑事が訪れ、クリスティーンが殺されたことを知っているか、
と問われる。現場にはイザベルがクリスティーンからもらったマフラーの糸が残っていた。
警察の取調室で弁護士の止めるのも聞かず、朦朧としたまま、殺人を自白してしまう
イザベル。しかし、あとでよく考えてみると絶対に殺しては居ない。自白を翻して無罪を
主張。クリスティーンの死亡推定時刻に、顔の女は「牧神の午後」というバレエを鑑賞して
いた、劇場の案内人も彼女を覚えているという、さらに、イザベルのマフラーは、家政婦が
勝手にクリーニングにだしていて、現場にあったものでは無いことが判明した。
一方、ボーイフレンドのダークが一連の捜査の中で横領をしていた事実が明らかとなり
一気に彼に嫌疑が向かう。更に、彼のクルマの中から、血まみれで敗れたマフラーが
発見されたのだ。当然ダークは逮捕され、イザベルは釈放された。
彼女の無罪の証明に活躍したのが、イザベルの助手を務めていたダニという女性。
彼女は、レズビアンでイザベルを愛していたのだ。自分が活躍したことで無罪を獲得したこと
から愛を強要するダニ。困惑するイザベル。愛を拒絶すると、意外なことを言い出す。
ダニは、イザベルの行動がおかしいと踏んで、すべての行動をスマホのカメラで録画して
いて、そのファイルは、彼女のボタンひとつで刑事のスマホに送られることになっていた。
それによると、イザベルは、確かにクリスティーンを殺したのだ。で、血まみれのマフラーを
ダークのクルマに隠し、バレエは案内人に顔を覚えてもらうためにわざと席を間違え、
更にバレエの途中で殺しのために退出していたのだ。睡眠薬で飲んでいた、という薬は
ただの甘味剤で、病気を装っていたのだった。そうしておいてダークを嵌めて、自分は
釈放されるという筋書きを書いたわけだ。しかし、ダニが映像を撮っていたとは知らなかった。
さらに、クリスティーンには双子の姉が居て、交通事故で亡くなった、と本人は言っていたが
ダークは、そんなことは嘘だといっていた。しかし、クリスティーンの葬式にその姉らしき
女性が登場!
ダニのしつこさに業を煮やしたイザベルは、彼女のクビを締めて殺す。しかし、彼女は
携帯のファイルを刑事に足の指でスマホのボタンを推し、送って絶命。そこに、双子の
姉が、血まみれのマフラーを巻いて登場、さらに、自分の過ちで逮捕してしまった刑事が
イザベルの所に花束を持って謝罪に来た。その携帯にイザベルの殺人のもようが送られて
来た。それらが同時に重なるのだった・・・・・・。
このようにして、どんでん返しのどんでん返しというなかなか並みの映画ではお目にかかれ
ないテイストは、パルマならではの愛すべき猥雑さ。しかも、彼の映画の特徴として
映像が計算されていて、とても安定しているうえに綺麗なのだな。パーンやスームアウトして
来て手前のものを舐める画とか、これらの上質な絵作りが、ややもすれば単なるB級で
終わってしまうところを踏ん張らしめていると感じる次第だ。
伏線の張り方が唐突な感じもあるが、すべてまとめて愛すべきデ・パルマの作品なのだ。
<ストーリー>
「若くして世界的な広告代理店のエグゼクティヴにのぼりつめたクリスティーン(レイチェル・
マクアダムス)は、現在はベルリン支社の運営を任されながら、ニューヨーク本社への
復帰を狙っている。彼女と二人三脚で新作スマートフォン“オムニフォン”の広告を
手掛けることになったイザベル(ノオミ・ラパス)は、忠実なアシスタントのダニ(カロリーネ・
ヘルフルト)とプロモーション・ビデオを制作。ロンドンでのプレゼンを成功させ、出張に
同行したダーク(ポール・アンダーソン)と一夜を共にする。
イザベルがベルリンに戻ると、クリスティーンが手柄を横取りし、本社復帰の約束を
取りつける。その後もイザベルを翻弄するクリスティーンは、幼い頃不幸な事故で
他界した双子の姉の話を聞かせる。同情したイザベルは思わず忠誠を見せるが、
全て彼女を手なずけようとするクリスティーンの罠だった。ロンドン出張以来親密だった
ダークが突然別れ話を切り出し、イザベルはショックを受ける。会社の金を横領した
弱みをクリスティーンに握られた彼は、利用された挙句、見捨てられたのだ。
クリスティーンの冷酷な本性を思い知ったイザベルは、オムニフォンのオリジナル・
ビデオを動画サイトで公開。それは世界中の視聴者やクライアントの反響を呼び、
イザベルはクリスティーンを出し抜いて本社栄転を勝ち取る。クリスティーンはダークを
操ってイザベルに精神的ダメージを与え、彼女が泣き叫ぶ姿を記録した監視カメラの
映像を社内のパーティで上映する。屈辱から情緒不安定になったイザベルは薬物に
依存する。ある日、クリスティーンが自宅で何者かに刃物で切り付けられ、殺される。
ベルリン警察はイザベルの身柄を拘束。脅迫メールや現場に残された物証から彼女の
犯行だと断定し、厳しい追及を受けた彼女もそれを認める。しかしイザベルは我を取り戻し、
無実を主張する。再捜査の結果、イザベルのアリバイや脅迫メールに関する事実が判明。
ダークが新たな容疑者として浮かび上がるが……。」(Movie Walker)
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