スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~ La voz dormida

●「スリーピング・ボイス~沈黙の叫び~ La voz dormida」
2011 スペイン Audiovisual Aval SGR,Maestranza Films,Warner Bros. 124mim.
監督・共同脚本:ベニト・サンブラノ
出演:インマ・クエスタ、マリア・レオン、マルク・クロテット、ダニエル・オルギン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
スペイン国内のアカデミー賞といわれるゴヤ賞を数々獲得した作品として国内での
評価は高い。が、スペイン内戦を理解していないとなんで主人公が投獄され、刑死しなくては
ならないのか、が今ひとつピンとこ無いだろう。優秀な映画だと思うけど、「暗い」「暗すぎ」。
救いがない。太陽が出てこない映画だ。そういう趣旨で作られているので、内戦という
家族、親族同士でも敵味方という悲惨な状況をリアルに描くためにはこの監督はそのほうが
いいと考えたのだろう。主人公は助かるのか?「第七騎兵隊」は来るのか、とずっと期待するが
その期待はあえなく裏切られ、主人公は赤ちゃんを出産したあと銃殺されてしまうのだ。
その残酷なありようは、徹底していて、それが故にこの映画に力強さを与えていることも確か
なのではあるが。

主人公は姉妹なのだが、この妹役の新人さんが素晴らしい。ちょっとした表情の作り方など
新人離れしている。国際的な共産組織に後押しされた共和派とファシストが後ろに控える
フランコ総統率いるファランへ党などのナショナル党との内戦において、フランコらの共和派が
勝利し、共産党員を始めとした共和派を迫害するのだが、それが本作の背景になっている。

旦那が共和派だというだけで、夫人たちは投獄され、簡単に死刑にされていく。そうした中で
オルテンシアは、共産党員の夫が地下に潜り、自分も反ファシストを堂々と主張するので
投獄されるのだが、妊娠していた。おルテシアの妹ペピートは、ノンポリを決め込もうとするの
だが、持ち前の勝ち気な性格と、姉をひどい目にあわせるナショナル派とカソリック教会に
反発、さらに、姉の夫の男性が恋人となるに及び、強い女になっていく。
夫は戦闘で負傷、恋人も捉えられ、ペピートも警察で拷問に合うが、決して口を割らなかった。

事態は好転せず、総統に手紙を書き司教に渡したりなんとか、母となる姉を救おうとあの手
この手を試みるがことごとく潰える。そしてついに姉に死刑の判決がでた。しかし執行は出産の
後ということに。戦う女である姉は死を恐れるものではないが、しかし、自分の分身でもある
幼子とわずかな時間で別れなければならないことには胸を引き裂かれる思いだった。
彼女は赤ちゃんを妹に必ず託すと、こころある女性看守に頼み、共和国バンザイと叫びながら
刑場の露と消えたのだった。

赤ちゃんは妹の手に渡り、とらえらていた恋人は死刑を逃れることが出来、長い懲役の末
二人は結ばれたのだった。もちろん姪は自分の娘として育てたのだった。
妹は姉に言われたとおり、大きくなった娘に、母がどういう人物であり、どういう境遇で死んだ
のかを語ったのだろう。ラストは大きくなった姪のモノローグで、叔母(妹)のことが語られるの
だが、姪もきっと母の精神を継いだ女性になったに違いない。
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まさに報復裁判で、まともな審理もなく、官選弁護士ですら死刑に賛成する始末。そして独裁
政権の片棒を担ぐスペインのカトリック教会。唯物論の共産主義者との対峙という意味合いから
敵対するのは理解できるのだが、あまりにも非道。
強い姉とおろおろする妹。その妹も次第に強くなり(ならざるを得ない)、なんとか過酷な時代を
生きようとする。その二人の姿が感動的だ。「生まれた時代は選べない」と語っていたのが
印象的であった。

このスペイン内戦をテーマにした芸術は多く生まれ、ヘミングウェイ「誰がために鐘は鳴る」や
ピカソ「ゲルニカ」、また報道写真家ロバート・キャパの作品も有名だ。芸術家をして何かの
形にしなくては居られない悲惨さ、残酷さを持った戦争であったのだ。フランコ体制は1975年まで
続くのだ。

おそらくあまりの暗さとスペイン内戦がテーマという日本には馴染みのないことから我が国では
DVDスルーとなっている。これだけどっぷり暗いとさすがに映画館に行こうという気がなかなか
起きないかなあ。

この映画の詳細はこちらまで。
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by jazzyoba0083 | 2015-01-08 23:20 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)