ザ・イースト The East

●「ザ・イースト The East」
2013 アメリカ Scot Free Productions.116min.
監督:ザル・バトマングリッジ   (共同)製作・(共同)脚本:ブリット・マーリング
共同製作:リドリー・スコット  製作総指揮:トニー・スコット
出演:ブリット・マーリング、アレキサンダー・スカルスガルド、エレン・ペイジ、パトリシア・クラークソン他
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<評価:★★★★★★★☆☆☆>
<感想>
面白かった。★は7,5でもいいかな。ただ、前半の終わり当りでややテンポが落ちて
だらけるのが難点だと感じた。その他では、初めて知ったのだが、主役もやっている
ブリット・マーリングという女優さん(脚本家、プロデューサー)は、美醜は別として才人で
あるなと感じた。今後に注目したい。
リドリーとトニーのスコット兄弟が全面バックアップしている。そのあたりも出来の良さに
繋がっているかも。

環境テロと潜入捜査官という立場の物語なのだが、時事問題を抉る側面ももちろん一義的に
あるのだが、サスペンス的要素が加わって、見応えがあった。
主人公のサラは、元FBIの捜査官で、今は、環境テロから大企業を守るための調査の潜入
捜査員をしている。恋人がいるのだが、本当のことは言っていない。
彼女に新たに命じられたのは、イーストと呼ばれる環境テロ集団に潜入し、どこの企業が
狙われるのかを察知して報告、テロを未然に防ぐ、という役割だった。

自らの手で体に傷を付けるなどして、イーストのアジトに潜入することに成功した。そこでは
リーダー、ベンジーと医者でマラリアの副作用で体が不自由になってしまったドク、また
イジーという女性など7-8人が共同生活を送っていた。そのありようは殆どカルトだ。
拘束服での食事シーンは、考えさせられた。どうやって食べてもいい、と言われたサラだったが
自分の口でスプーンを加えておかずを皿に移し、犬のように食べた。しかしその後に
彼女の観た光景は・・。二人組みになって、一人が口でスプーンをくわえそれを隣の人の
口に運ぶのだ。つまり「自分勝手で生きない」「人のための行動を旨とする」という主義の
現れだった。それが彼らイーストの考えだった。 

公害を垂れ流す大企業に攻撃を加える(武器を使うわけではないのだが)ことを目的とし
リーダーによればさしあたり3つの企業を攻撃するという。
最初に狙われたのが、ドクがマラリア予防で飲んだ薬を作った製薬メーカー。彼の妹はケニアに
居た時、これを予防のために服用した所、自分の顔が分からないという症状など、精神や
肉体にひどい副作用が出て、自殺してしまっていた。実際に副作用があるのか、ドクも同じ
薬を飲んで、同じような症状になってしまった。未だに手の震えが止まらない、足を引きずるなど
の後遺症に悩んでいた。彼らは製薬会社のパーティー会場に潜入、社長の義理の息子が
ドクの友達だったこともあり、会場に潜入し、乾杯用のシャンパンに、マラリア用のその薬を
入れたのだった。副作用があれば、飲んだ人にはひどい症状が出るはずだ。

作戦は成功した。イーストは犯行声明を出すが、どうやら副作用は出ていないようで、マスコミは
テロは失敗と報じていた。
イーストは一度解散、しばらくして狙った2番めの相手はイジーの父が経営する工場。この工場は
ヒ素や亜鉛を垂れ流していて、川の下流では公害が発生していたが、工場は罪を認めない。
イジーは株主総会に現れて父と対面し、彼をなじるが、父は受け入れない。そこでイジーは隠し
持っていた睡眠薬をテーブルの下で注射し、仲間が用意したニセの救急車で拉致をする。
そして公害物質が溜まった池の淵で父と母に服を脱いで池に入れ、と迫る。抵抗する母だったが
ついに本音を吐いた。そして父はイジーにあやまりつつ池に入ったのだ。
その時、警察が駆けつけ、逃げるイジーらに発砲、イジーは腹を撃たれて重傷となる。

アジトに引き上げたイーストだが、瀕死のジギーをドクが手術しようとするが手が震えてダメだ。
そこでサラは自分がやると言って、メスを取り、ドクの指示の元手術をし、弾丸を摘出した。
しかし、イジーは亡くなってしまう。
再びしばしバラバラになるイースト。サラは会社に戻り一部始終を報告する(イジーの件など
肝心なところは伏せるが)

サラは、イーストと過ごすうちに彼らの考えていることに共感を覚えるようになる。そして、
リーダー、ベンジーと森のなかで結ばれる(この辺り、彼女の彼らに対する共感が男女の関係
が大きな理由と誤解されるので要らないところと感じた)。

サラは、会社がイーストに対しFBIと共同し摘発することになったことを知り、アジトに戻り
ベンジーにしばらく攻撃を控えるようにそれとなく言うが、彼は聞かない。3番目の攻撃場所に
連れて行くよ、と彼女を連れて入ったそこは、なんと彼女が所属する調査会社だった。

ベンジーは、サラが最初から潜入捜査員であることを知っていて、彼女のような人物が来るのを
待っていた、というのだ。目的は世界中の潜入調査員の名簿を盗み、これを基に彼らを排除し
ようというのだ。正体がバレたサラは脅されて、会社に戻り、名簿を携帯のカメラに収めて
出ようとするが、ガードマンに携帯を取り上げられてしまう。
リストが手に入らなかったことに怒るベンジーだったが、国外に逃亡する決意をする。
一緒に行こうというベンジーだったが、彼女は断る。この頃には彼女はイーストの思想に相当
染まリ始めていた。一人になったリサは、トイレで胃の中に飲み込んで隠しておいたミニSDカードを
吐き出し、これを元に、彼らと接触を始める。この辺りで殆どエンドロールに入るのだが、
字幕を見ていくと、彼女に感化された調査員たちの活動で、公害企業が次々と制裁を受ける
シーンが流れていく。映画でははっきり言ってないが、見ていると、リサは一人イーストとなり、
社会に仇なす悪い企業に自分なりの罰を与える行動に出始めていたようだ。

やはり衝撃的なのは、リーダー、ベンジーたちがリサが潜入調査員と知っていて逆に利用して
いたこと、そして3番目の攻撃対象が、リサの会社であったのがわかった時だ。予想も出来なかった。

こいうした状況はアメリカでは実際にあるということで、企業に潜入捜査員を送る会社も存在
するとか。またグリーンピースやウィキリークス、アノニマスに代表されるように、悪徳企業と
決めつけられるとネット上で晒されたりサイバー攻撃を受けたりするのニュースは我々も接する。

アメリカ人が見ると我々よりももっと切実なイメージが持てるのだろう。リアリティを感じる分
引きこまれてみることが出来た。最初にも書いたがカルトの生活を描く当りでややタルくなる
時間帯がある。これが勿体無い。それとベンジーとサラのセックスシーンは不要と感じた。
それ以外はよく出来ていたのじゃないかな。ベンジーも、死んじゃうイジーもお金持ちや
大企業の子供らというのが皮肉だ。親のやっていることに我慢がならんということだろう。
普通は腑抜けのボンボンやお嬢ちゃんになっっちゃうのだが、イジーはブラウン大学を3年で
中退した設定だからかなり頭のいい子だったのだろう。
こうした映画はもう少しマスコミ等に取り上げられるといいのになあ。出演者が地味だから、
日本ではダメなのかなあ。
チャンスがあれば観てもいい映画だと思います。
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<プロダクションノート&ストーリー>
「カルト教団をテーマにした「Sound of My Voice」で注目された監督のザル・バトマングリッジと
主演のブリット・マーリングのコンビが、自らの実体験をヒントに再び共同脚本を手がけて
描く戦慄の社会派サスペンス・ドラマ。
大企業の依頼で謎の環境テロリスト集団に潜入したヒロインを待ち受ける衝撃の運命を
スリリングに描く。
共演はアレキサンダー・スカルスガルド、エレン・ペイジ、パトリシア・クラークソン。
 
元FBIエージェントのジェーンは、大企業をクライアントに持つセキュリティ会社に雇われ、
実態の掴めないテロ集団“イースト”への潜入という任務を与えられる。
イーストは、世界各地で環境破壊を行っているグローバル企業に対して過激な報復活動を
行っている正体不明の環境テロ集団。ジェーンは彼らの身元を割り出すためサラと名乗り、
たった一人で潜入捜査へと向かう。そしてイーストとの接触に成功、無事彼らに迎えられた
サラ。彼らと行動を共にするうち、大企業の横暴ぶりやビジネス優先の上司に疑問を感じる
一方、リーダー、ベンジーの思想に共感していくサラだったが…。」(allcinema)

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by jazzyoba0083 | 2015-02-05 23:05 | 洋画=さ行 | Trackback | Comments(0)